375.破壊兵器の襲撃 大陸外戦(ドラゴン・魔族)
ガイアール王国がある大陸で蜘蛛ロボットが次々と撃破されている頃、大陸から離れた場所でも蜘蛛ロボットが現れた。
霊峰山───
ドラゴンたちが塒にしている場所。
ここにも魔の手が迫ろうとしている。
エルドとは一緒に行かなかった者たち50匹ほどが霊峰山で寛いでいた。
『あぁー、暇だなぁー』
『それなら長とともに人間族の住む場所に行けばよかったじゃないか?』
『それはそれで面倒臭いじゃん』
基本ドラゴンは金銀財宝があるところから離れたくない。
霊峰山に住むドラゴンもこれに忠実だ。
そんなやり取りをしていると全身金属でできた蜘蛛が空を飛んでやってきた。
『ん? 何か飛んできているな』
『本当だ』
『何あれ?』
最初はドラゴンたちは蜘蛛ロボットに気を留めていない。
だが、近づくにつれ蜘蛛ロボットのボディがオリハルコンでできていることに驚いた。
『おい、あの蜘蛛、オリハルコンでできているぞ』
『滅多に手に入らないお宝をゲットできるチャンスじゃん』
『うわぁ・・・面倒臭い』
ドラゴンたちの中でもすぐに討伐派と反討伐派が作られる。
どうするか話し合っていると蜘蛛ロボットはドラゴンたちの住んでいる場所に着陸した。
とりあえず全員が様子見をしていると蜘蛛ロボットが突然1匹のドラゴンに光弾を放つ。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
不意打ちに対処できなかったドラゴンは真面に光弾を受けて爆発した。
『痛ってえええええぇーーーーーっ!!』
『おい、大丈夫か?』
『めっちゃ痛いんですけど』
光弾を受けたドラゴンの悲劇はそこで終わらなかった。
煙が霧散すると自分が所有している財宝を滅茶苦茶されたのだ。
さすがのドラゴンもこれには怒り心頭である。
『きぃー! よくもやってくれたな!!』
それを見て周りのドラゴンたちは笑っていたが、蜘蛛ロボットが立て続けにドラゴンに向けて光弾を放った。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
まさか自分たちがやられるとは思ってもみなかったのだろう。
油断したドラゴンたちは次々と被弾する。
『痛っ!!』
『うわぁっ?! マジ痛いっ!!』
『ぐわぁっ!』
これにより大半のドラゴンが同じ目に合う。
そして、最初に被害を受けたドラゴンと同じく財宝を滅茶苦茶にされる。
『あああああぁー! 俺の宝があああああぁーーーーーっ!!』
『僕の宝がぁっ!!』
『私のもやられたあぁーっ!!』
ドラゴンたちは自分の財宝に傷をつけられて怒りを露わにする。
蜘蛛ロボットに対して容赦なく攻撃を開始した。
爪、尻尾、羽搏き、圧し潰しなどありとあらゆる攻撃を蜘蛛ロボットに浴びせていく。
いくら頑強に作られていてもドラゴンの猛攻には耐えられず、蜘蛛ロボットは【空間魔法】で転移してその場から逃げる。
しかし、直前までのダメージが大きすぎて上空に逃げるのが精一杯だった。
『あ! あんなところにいた!』
『逃がすか!』
『『『『『『『『『『これでもくらえっ!!』』』』』』』』』』
ドラゴンたちは一斉に火炎を吐いた。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
炎の直撃を受けた蜘蛛ロボットは耐え切れずに爆散する。
『よっしゃあっ!!』
『やったわっ!!』
『ざまあみろぉっ!!』
脆くなったボディを壊すには十分な威力だ。
地面に落ちてきたオリハルコンを見て皆嬉しそうにしていた。
『これであれは俺のもの』
『何を言ってるんだ? 僕のものだろ』
『ふざけたこと言わないで、私のものよ』
このあと、ドラゴンたちは蜘蛛ロボットの残骸であるオリハルコンを巡って醜い争いを始めるのであった。
魔族の国───
魔都にある城の一室。
中庭にある中央のガゼボでディルとディルの影武者である影ディルがお茶をしていた。
「シフト殿のおかげでインフラ設備が格段に進んだわね」
「はい。 シフト殿が魔力結晶を量産してもらわなければここまで急激な発展は望めなかったでしょう」
ディルが行ったことは街灯や水道などのインフラ設備強化に魔力結晶を使ったことだ。
今までは魔石で行っていたが、使い捨てのため消費量が激しかった。
しかし、魔力結晶が手に入ったことで、壊れない限りは半永久的に稼働できるようになった。
魔都の発展に満足するディル。
だが、そこで異常を検知する。
「!!」
「ディル様? どうされました?」
「国の外から何かが来るわね・・・これは一体どういうことかしら?」
ディルは1ヵ所に何万という数の魔力を感じた。
「あれをここに持ってきなさい」
「はっ!!」
影ディルはディルの前に投影機を置く。
それは外に設置されている監視機とリンクされていて、魔力を流すことで内にいる状態で外の情報を手に入れることができる。
これらの機器も魔力結晶により半永久的に稼働が可能になった。
投影機を起動するとそこには全身金属でできた蜘蛛が1匹、魔族の国に向かって飛んでくる。
拡大してみると蜘蛛ロボットのボディがオリハルコンでできていることがわかった。
また、蜘蛛ロボットからは何万という数の魔力を感じる。
ディルと影ディルはそれを見て驚きのあまり数瞬だけ絶句した。
「! これは! 危険分子がこの魔都に迫っていることを皆に伝えなさい! 今すぐ最大レベルの警戒態勢を敷くのです!!」
「はっ!!」
「相手はオリハルコンでできた蜘蛛です。 こちらもオリハルコンと同等の武器や魔法で対抗するのです」
「わかりました!!」
ディルから命令を受けた影ディルはすぐに行動を開始する。
影ディルはすぐに魔族の部隊を招集すると蜘蛛ロボットが飛んできている方向を見た。
「これよりあの上空にいるオリハルコンでできた蜘蛛を駆除する! 皆気を引き締めて事に当たれ!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
蜘蛛ロボットは遠距離から光弾を魔都に向けて放った。
「させない!」
影ディルは【光魔法】を発動すると魔都を包む光の壁を作った。
光弾は光の壁にぶつかるとそのまま蜘蛛ロボットに跳ね返す。
『!!』
蜘蛛ロボットは危険を察知して【空間魔法】で転移して避けると同時に魔都の近くに現れる。
「まずはあの蜘蛛を地面に落とす! 空戦部隊、頼んだぞ!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
魔族たちは蜘蛛ロボットのいる上空へと飛ぶ。
部隊長以下何名かを囮に使い、その隙に背中に回り込んだ者がハンマーでぶっ叩いて地面へと落とした。
ダメージこそ受けないが蜘蛛ロボットを地面に落とすことは成功した。
「魔法部隊は結界を張れ! 蜘蛛の転移を防ぐんだ! それと魔力封じも同時に行え!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
魔族たちは洗礼された動きで淀みなく作業を熟す。
魔法で蜘蛛ロボットの周囲に魔法を封じる特殊な結界を張る。
これにより蜘蛛ロボットの転移を始めとした魔法全般を封じた。
蜘蛛ロボットはそれに怒りを感じて暴れだす。
「重装部隊は魔法部隊を死守しろ! 軽装部隊は隙を見てオリハルコンの武器で足を攻撃するのだ!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
魔族たちは分散して蜘蛛ロボットに近づくと影ディルの指示通りに足を攻撃する。
バキッ!! バキッ!! バキッ!! ・・・
影ディルの指示は的確で蜘蛛ロボットを追い詰めていく。
蜘蛛ロボットは何とかしようとするが、魔法を封じ、機動力を削がれたことにより何もできないでいた。
「軽装部隊! 頭を潰して確実に倒せ!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
魔族たちは頭やボディの付け根を狙って次々と攻撃を繰り出す。
理詰めの攻撃に蜘蛛ロボットは成すすべもなく破壊された。
「攻撃止め! 状態を確認しろ!」
「ディル様、鑑定した結果生命力が0と表示されております。 無事破壊することに成功しました」
「よし! 魔法部隊は結界を解除しろ!」
「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」
結界を解くと全員影ディルのところに整列する。
「皆よくやってくれた、ご苦労。 あとで特別報酬を与えるので期待するがいい」
影ディルの言葉に魔族たちは喜びの声を上げる。
それから蜘蛛ロボットの残骸を城に運ぶように命令すると、影ディルは城へと戻っていった。
中庭に到着すると影ディルはディルの前に膝を突いて報告する。
「ディル様、蜘蛛の討伐完了しました」
「無事務めを果たしてくれましたね、ご苦労様」
「勿体ないお言葉です」
「皆に報酬を与えたらあとでゆっくりお茶でもしましょう」
「畏まりました」
事なきを得たディルは静かにお茶を口に含むのであった。