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362.リーンの陞爵

ギルバートとリーンの潜在能力を引き出し、エルドがドラゴンの国に一時帰国するために旅立った翌日、シフトたちは謁見の間に呼び出されていた。

玉座にはグラントが国王らしく座り、その場に集まった者たちを見ている。

宰相を始め、各大臣や大小様々な貴族たちもこの場に居合わせていた。

シフトたちの目の前にはギルバート、リーン、第一・第二・第三騎士団及び第一・第二・第三魔法兵団の各団長がグラントに対して膝を突く。

「皆、忙しい中よく集まってくれた、感謝する」

グラントの労いの言葉を聞き、ギルバートたちはその場で頭を垂れる。

「リーン名誉伯爵」

「はっ!!」

「今回の襲撃について余の不手際で其方には辛い思いをさせた。 許せ」

「何を仰るのですか、私は臣下として国を守るのは当然のことでございます」

リーンはあくまでも一臣下として国を支えたことだと豪語する。

「其方には特別に褒美をやらねばな」

「陛下、私に褒美は過分なこと。 陛下のお言葉だけで十分でございます」

「そういうわけにはいかん。 国のために働いてくれた者を労わないのは愚か者の所業よ。 リーン名誉伯爵、其方の功績を讃えて名誉伯爵から伯爵に陞爵する」

「! 陛下! ありがとうございます!!」

グラントはリーンを伯爵にすることでギャンザーの謀反を上回る働きを見せたことをこの場でアピールした。

リーンが伯爵になったことでヴァルファール家も一安心である。

それから各団の団長への労いと褒賞を与えていく。

先の戦いで多くの被害が出たが、それでも王都が残っているのは彼ら彼女らの働きのおかげである。

それが終わると今度はギルバートだ。

「ギルバート、リーン伯爵同様に国を守ってくれたこと感謝する」

「勿体ないお言葉です」

「褒美を与えたいが何か要望はあるか?」

「・・・それでしたらモオウォークの発展にご助力いただければ、これ以上の褒美はございません」

「なるほどのぅ・・・わかった、善処しよう」

「ありがとうございます」

ギルバートへの褒美が終わるとグラントがシフトを見た。

「シフト」

「ああ・・・はい」

「其方にはこの王国を救ってくれたこと礼を言う」

「どういたしまして」

この手に自由を(フリーダム)』により王都スターリインは5度も狙われた。

1度目はドラゴンと巨大モンスター軍団。

2度目は1年前の国際会議で帝国の皇子が魅了した30000以上の軍勢からなる混成軍団。

3度目は王国の北東でライサンダーたちが率いた100000以上の軍勢からなる混成軍団。

4度目は1ヵ月半前の国際会議で100000以上の化け物の大軍。

5度目は先日の魔族たち。

その度にシフトが阻止している。

「それでだ・・・これだけの功績があるのに・・・」

「あ、褒美はいりません。 礼の言葉だけで十分です」

シフトはグラントが何か言うよりも早く先手を打つ。

「こら待て、シフト。 其方を束縛するようなことはせん。 本当であれば貴族の爵位を与えて国に仕えてほしいが其方はそれを望まんだろう?」

国王陛下(グラント)、わかっているじゃないですか」

「そこでだ、其方が以前言っていた南西にある砂漠のサンドワームについて自由にする権利を与える」

グラントからすでに許可は得ているが、改めて多くの者に周知することでシフトの許可なくサンドワームを狩ることを禁じるよう振れを出した。

もっとも普通ならサンドワーム1匹を狩るのに一個大隊も必要なのでそんな権利をもらっても誰も喜ばない。

「おいおい、サンドワームって・・・」

「1匹戦うのに一個大隊が必要なんだろ?」

「あんな凶悪な魔物の権利を与えられてもな・・・」

事情を知らない貴族たちの話し声が聞こえてくる。

仮にサンドワームの肉が美味と知っていても、1匹を狩るための利益と損失を天秤にかければ間違いなく損失に傾くだろう。

「えっと・・・ありがとうございます」

「気に入ってくれて何よりだ」

シフトが礼を言うとグラントもそれに合わせて鷹揚に頷く。

「皆、王国のために働いてくれたことに改めて礼を言う。 これからも国や民のために力を貸してほしい」

「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」

グラントが言葉を締めくくると謁見も終わり皆その場をあとにした。


シフトたちが部屋に戻るとグラントに使える老執事がやってきて、グラントから昼食に誘われる。

断る理由もないのでシフトは了承するとルマたちとともに食堂へと向かった。

そこにはギルバートとリーンがすでに座っている。

「やぁ、シフト君」

「先ほどぶりね」

「ギルドマスター、リーンさん、こんにちは」

シフトたちも老執事に勧められた席に各々座る。

「そういえばリーンさん、陞爵おめでとうございます」

「リーンお姉さま、おめでとう」

「あ、ありがとう」

シフトたちが陞爵したことについて祝いの言葉を贈るとリーンは照れながらも素直に受け止める。

「グラントも粋な計らいをするな」

「リーンさんやベル君の父君であるギャンザー卿が謀反を起こす言動をしていたから陞爵は難しいと思っていたんだけどね」

「期待しているがよいとは言われたけど、まさかこれほどの褒美を頂けるとは思ってもみなかったわ。 陛下の温情にはとても感謝しているわ」

グラントとしても有用な臣下であるリーンを失うのは大きな痛手だ。

ユールがエリクサーを作ろうと動いていなければ今頃はもっと酷いことになっていただろう。

シフトたちが雑談しているとそこにグラントが現れる。

「リーン伯爵、ギルバート、シフト、待たせたな」

「陛下、私たちも今来たところです」

グラントが上座に座ると料理が早速運ばれてきた。

シフトたちは和やかな雰囲気で用意された食事を堪能する。

食後のお茶をしているとグラントが話しを切り出した。

「さて、まずこの場にいる皆に礼が遅くなったことを詫びねばならぬな」

「陛下、何を仰いますか」

「そうです。 陛下が気に病むことではありません」

「そういうことだ。 それよりも僕たちをここに集めたということはあの場では言えないことでもあったのか?」

シフトはグラントに食事を誘った本当の目的を聞いてみる。

「うむ、実は『この手に自由を(フリーダム)』について伝えておきたくてな」

「『この手に自由を(フリーダム)』に何か動きがあったのか?」

「各国からの情報が入ってきているのだが、王国以外の国でも残党を見つけては次々に捕縛している。 彼奴らを全員捕らえるのも時間の問題だろう」

この手に自由を(フリーダム)』も多くの仲間を失って相当焦っているようだ。

本来なら水面下で静かに活動するのだろうが、仲間が続けて失敗するものだから落ち着いて行動できなくなったのだろう。

「それと先日王国を襲った者たちの中に幹部クラスの者が多数含まれていた」

それを聞いてシフトたちは驚いていた。

今までは下っ端の構成員たちだけだったのに、幹部クラスが自ら動かないといけないほど『この手に自由を(フリーダム)』が追い込まれていることを。

「グラント、油断しないほうがいい。 まだ、ライサンダーたちが残っている」

「それと『この手に自由を(フリーダム)』のトップも健在でしょう」

「ふむ・・・そうだな。 『この手に自由を(フリーダム)』のトップを押さえない限り、これからも続くだろう」

シフトとギルバートの意見にグラントも同意する。

「それでこれからの方針についてだが何か意見はあるかのぅ?」

「とりあえず1ヵ月ほど様子を見て動きがなければ警戒を解除するのが妥当ではないかな?」

「シフト君の意見に賛成です」

「私もシフトさんの意見を押します」

「わかった。 1ヵ月様子を見ようではないか」

方針が無事に決まったところで話は終了となった。


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