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359.潜在能力を引き出す

リーンが無事に戻って(生き返って)1日が経過した。

シフトは朝食前にリーンのところへ見舞いに行く。

部屋までやってくると扉をノックする。

コンコンコン・・・

『はい』

「シフトだけど、中に入っていいかな?」

『・・・どうぞ』

許可をもらうと扉を開けて中に入った。

リーンはベッドの上で上体だけ起こしてシフトのほうを見ている。

「リーンさん、体調のほうはどうかな?」

「お陰様で順調に回復しているわ」

「それはよかった」

リーンは照れた顔でシフトに話しかける。

「あの・・・ありがとう」

「礼ならベルとユールにいってくれ。 2人が協力してエリクサーを作ったんだから」

「それならもう礼をいったわよ」

いつもと違い今日のリーンは余所余所しい。

「どうした?」

「ベルが惚れるわけね・・・こんなにも頼もしい(男性)だとは思わなかったわ」

「これでもベルたちの主人だからな、無様な恰好はあまり見せたくない」

シフトの冗談にリーンは軽く笑った。

「さて、リーンさんの体調も問題ないことだし僕はこれで失礼するよ」

「わざわざお見舞いに来てくれてありがとう」

シフトはリーンの部屋をあとにすると食堂へと向かった。

食堂にやってくるとすでにルマたちやギルバート、グラント、マーリィアが座っている。

シフトは空いている席に座るとそれを見越したかのようにベルが食事を持ってやってきた。

皆に配膳し終わるとベルも座り食事を開始する。

ベルの作った食事に舌鼓しているとルマが話しかけてきた。

「ご主人様、ベルとユールに聞いたのですが2人の潜在能力を引き出したとか」

「え? ああ・・・うん、そうだけど・・・」

実際には【未知経験】で対象者が未来に経験したことを知ることで今の自分に反映する感じだ。

これにより【未知経験】で得た経験までレベルが底上げされるだろう。

ベルやユールみたいに生涯を経験し得ることもできる。

ただ、生涯を経験して得た情報によりそれ以上レベルは上がらない。

いうなれば人生の経験の前借みたいなものである。

「できれば私の潜在能力も引き出してもらいたいのですが」

「わたしも引き出してほしい」

「あ、それならぼくもお願い」

ルマを皮切りにローザとフェイも潜在能力を引き出してほしいと願い出る。

「僕は別に構わないけどベルとユールから潜在能力を引き出したときの状況を聞いたほうがいいよ」

「え? なにか問題でもあるの?」

ルマはすでに知っているのか首を縦に振るが、ローザとフェイは何も知らないようだ。

「ベル、ユール、ちゃんと説明してあげて」

「すごい情報量で頭がパンクしそうになる」

「脳にそれ相応の痛みが伴います。 ノーリスクとはいきませんわ」

それを聞いたフェイが尻込みする。

「頭が痛くなるの? それはやだなぁ・・・」

「フェイ、無理をしなくてもゆっくり経験を積んでいけばいい」

「そうですわよ。 わたくしとベルさんは必要に迫られたからその選択肢を選んだだけですわ」

ベルとユールがフェイにフォローする。

「ご主人様、私は潜在能力を引き出してもらいたいです」

「ルマ、いいのか?」

「はい」

「わかった。 ローザとフェイはルマの潜在能力を引き出すところを見て判断してもいいからな」

「「はい」」

シフトたちは朝食を終えるとエルドとプラルタがいる南の断崖下まで歩いていく。

なぜかギルバートとグラントも一緒だ。

「グラントにギルドマスター、これからやることは別段何が起きるわけではないですよ?」

「どんなのか気になってのぅ」

「参考までに見たい」

シフトとしてはほかの能力と違い、見せたところで何をしているかわからないだろうから気にするのを止める。

断崖下までやってくるとエルドとプラルタは早朝シフトが置いて行ったサンドワームの肉を平らげて寛いでいた。

「プラルタさん、手伝ってほしいんだけど」

『あ、また【魔力自動回復魔法】を使えばいいんですね? 任せなさい!!』

プラルタはシフトが何をお願いするのかもうわかっているみたいで早速【魔力自動回復魔法】を発動した。

『シフトさん、いつでもオッケーですよ』

「プラルタさん、ありがとう。 それではルマ、いくよ」

「いつでも構いません」

ルマの額に手を触れるとシフトは【未知経験】を発動する。

するとルマの頭の中には未来で経験するであろう膨大な情報が一気に押し寄せてきた。

「ぅうぅ・・・こ、こんな一気に押し寄せてくるとはっ!!」

ルマは頭を押さえながらも膨大な情報を頭に取り入れていく。

ルマはなんとか情報の波に耐えている。

能力を発動してから約3時間が経過した。

ルマが不意に痛みから解放される。

「ルマ?」

シフトがルマに声をかける。

「ぅぅぅ・・・頭はまだ少し痛いけど・・・これが私が未来で得た知識ですか・・・」

シフトは能力を解除すると[鑑定石]でルマの所有している能力を見た。


名前 :ルマ

スキル:★【魔法師〔【火魔法】 レベル6:超越、【水魔法】 レベル6:超越、【風魔法】 レベル6:超越、【土魔法】 レベル6:超越〕】 レベル6:超越

    A【合成魔法】 レベル5:究極


【合成魔法】が最高まで上がっている。

【魔法師】に至ってはベルとユールと同じく人類の壁であるレベル5:究極を超えたことによりレベル6:超越へと昇華していた。

「ルマ、大丈夫か?」

「ルマちゃん、大丈夫?」

「ええ、この通り問題ないわ」

ルマが身体を動かして問題ないことをアピールする。

次に【風魔法】を発動すると掌に小さい風の球を作り出す。

「これが未来の私が得た経験・・・すごい・・・」

傍目から見たらルマはただの【風魔法】を使っているように見えるが本人からしてみれば違うらしい。

その証拠にベルが風の球を【鑑定】して驚いていた。

「ルマ、それすごい威力を持っている。 人に向けて放つと危険」

「そうね、ここまで魔法を自在に制御できるとは正直思わなかったわ」

ルマは掌の風の球を自然と消した。

魔力を完全にコントロールしていなければこんな芸当は中々できない。

「さてと・・・ローザ、フェイはどうする?」

「わたしはもちろん潜在能力を引き出してもらうよ」

「それならぼくはローザちゃんのを見てから改めて回答しようかな・・・」

「わかった。 始めよう・・・といいたいところだけど先に昼食にしよう」

シフトが上空を指さすと太陽が真上に近いところまで昇っていた。

「ご主人様、これ」

ベルがマジックバックから人数分のサンドイッチと水、それに果物を取り出す。

「こんなこともあろうかと作っておいた」

「ベル、ありがとう」

ベルはシフトたちとついでにギルバートとグラントにも配っていく。

「ベル嬢、すまないな」

「ベル君、ありがとう」

「多めに作ってあるか気にせず食べる」

シフトたちはその場で簡単に食事を済ます。

食事を終えたギルバートは王都の見回りに、グラントは公務をしにそれぞれ戻っていく。

食休みを終えたシフトたちは再開する。

「それじゃ、ローザ。 準備はいいかい?」

「いつでもきてくれ」

ローザの額に手を触れるとシフトは【未知経験】を発動する。

ローザは目を瞑って膨大な情報を頭に取り入れている。

「こ、これは想像以上だな・・・」

「ローザ、無理ならやめるけど?」

「ご主人様、気にしなくてもいいぞ。 続けてくれ」

ローザは情報の波に逆らわずに受け入れ続ける。

能力を発動してから約3時間が経過した。

ローザが不意に痛みから解放される。

「ローザ?」

シフトはローザに声をかける。

「ああ、結構脳に来るもんだな・・・だけどこれが未来のわたしが身に着けた知識か・・・」

シフトは能力を解除すると[鑑定石]でローザの所有している能力を見た。


名前 :ローザ

スキル:★【武器術〔【剣術】 レベル6:超越、【槍術】 レベル6:超越、【斧術】 レベル6:超越、【鎌術】 レベル6:超越、【弓術】 レベル6:超越〕】 レベル6:超越

    A【鍛冶】 レベル5:究極

    C【武具錬成】 レベル3:上級

    C【火魔法】 レベル3:上級


【鍛冶】も【武具錬成】も【火魔法】もすべて最高まで上がっている。

【武器術】に至っては3人と同じ人類の壁であるレベル5:究極を超えたことによりレベル6:超越へと昇華していた。

「・・・」

ローザは無言でシフトたちから離れると腰の剣を鞘から抜きその場で剣舞を始めた。

1つ1つの動きが精錬されていて無駄な動きが1つもない。

時間にして3分だが人を引き寄せる魅力がそこにあった。

「・・・ふぅ・・・これが極めたということか・・・」

「ローザ、すごいな」

「ローザ、恰好良い」

シフトたちが称賛の声を上げるとローザが照れだした。

「あははははは・・・ありがとう。 そんなに褒められるとなんだか照れるな」

「何を言っているのローザちゃん。 今までのレベルを逸脱しているよ。 さてと・・・ご主人様、ぼくもお願いするよ」

「フェイ、いいのか?」

「ぼくだけ除け者とかやっぱりヤダからね。 みんなに追いつきたい」

フェイは真剣な表情をする。

「わかった。 それでは始めようか」

「ご主人様、待って。 フェイ、1つアドバイス。 未来の経験以外のことは考えないほうがいい。 フェイのことだから未来の体験も手に入れようとする。 悪い癖」

「ベルちゃん、それは酷いよ」

「事実。 あまり深入りしないほうがいい」

「もぅ・・・わかったよ」

フェイの額に手を触れるとシフトは【未知経験】を発動する。

「・・・うぇ?!」

フェイは目を見開くと叫びだした。

「ちょっと?! これ痛すぎるんですけどおおおおおぉーーーーーっ?!」

「フェイ、やめるか?」

「た、耐えて見せるけど想像以上に激痛が走ってるよぉっ!!」

とりあえず手足をバタバタさせながらも膨大な情報を頭に取り入れている。

フェイは情報の波に飲まれそうになりながらもなんとか耐え続ける。

能力を発動してから約3時間が経過した。

フェイが不意に痛みから解放される。

「フェイ?」

シフトとフェイに声をかける。

「・・・うえぇ・・・ちょっと気持ち悪い・・・だけどこれがぼくの未来の強さか・・・」

シフトは能力を解除すると[鑑定石]でフェイの所有している能力を見た。


名前 :フェイ

スキル:★【武闘術〔【手技】 レベル6:超越、【足技】 レベル6:超越、【関節技】 レベル6:超越〕】 レベル6:超越

    C【斥候】 レベル3:上級

    A【暗殺術】 レベル5:究極

    C【闇魔法】 レベル3:上級

    C【風魔法】 レベル3:上級


【風魔法】は元々最高だったが、【斥候】も【暗殺術】も【闇魔法】もすべて最高まで上がっている。

【武闘術】に至っては3人と同じ人類の壁であるレベル5:究極を超えたことによりレベル6:超越へと昇華していた。

「すごいな・・・これだけの力を生涯のぼくは手に入れるんだ・・・ご主人様、軽く手合わせしてよ」

「ああ、構わないよ」

シフトとフェイはルマたちから少し離れてお互い構える。

「いっくよ~♪」

先に仕掛けたのはフェイだ。

フェイの拳をシフトは掌で受け止める。

(! 予想以上の威力だ・・・)

それからフェイは何度かシフトを攻撃する。

どれも今までのフェイを数段上回る威力と速さを兼ね備えていた。

それ以上にフェイの隙が無い。

しばらくしてフェイは動くのを止めた。

「う~ん、自分が自分じゃないみたいだよ」

フェイは満足したのか大はしゃぎだ。

「気に入ったようで良かったよ」

「ふふん、格闘技ならもう誰にも負けない自信があるね」

「フェイ、その油断で命を落とす危険がある。 自重する」

ベルの真剣な表情を見てフェイはすぐに戒める。

「・・・そう・・・だよね」

フェイが死んだらシフトやルマたちが悲しむ。

いや、シフトたちの誰かが死んでも残された者たちは必ず悲しむだろう。

「さて、これで全員パワーアップ完了だね。 ご主人様、これからどうするの?」

フェイの質問にシフトは考える。

「魔族はもう全員やっつけたから問題ないけど、『この手に自由を(フリーダム)』が今どのような状態かわからない。 それにライサンダーたちの動向も気になる」

実際にはレザクは生き延びてライサンダーたちを引き連れて姿を晦ましていることをシフトはまだ知らない。

「当分は王都での活動になるかな」

シフトたちはしばらくの間、王都を拠点に動く方針で固めた。


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