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358.とりあえず半永久封印

リーンが無事に戻った(生き返った)ところでグラントがシフトに話しかける。

「シフトよ、そのエリクサーはどうするのだ?」

グラントはベルの足元に置いてあるエリクサーが入った水差しを指さす。

水差しの中のエリクサーはまだたくさん入っている。

「ああ・・・これは・・・どうしよう・・・」

シフトはその場で悩みに悩んで出した結論は・・・

「半永久封印ですね」

その答えにグラントだけでなくルマたちやギルバート、マーリィア、リーン、エルドにプラルタまで驚いている。

「理由を聞いてもいいかのぅ」

「簡単な話です。 これは戦争の火種にしかならない」

エリクサーの存在は争いごとにしかならないとシフトは考える。

例えばグラントがこの大陸を手に入れるために近隣諸国に戦争をしかけると仮定する。

ギルバートやリーンなどの実力者を前線で戦わせ死んだらエリクサーで蘇らせる。

復活した者を再び前線で戦わせるといったゾンビアタックをされかねない。

ユールがエリクサーを作ろうとしたのはシフトたちが死んだときのためだ。

愛しい人、大切な人のために使われるのならともかく戦争の道具の一部として使われるのは容認できない。

グラントや他国の王がそんなことには使わないといっても、その子供や孫、曽孫(そうそん・ひまご)玄孫(げんそん・やしゃご)来孫(らいそん)昆孫(こんそん)仍孫(じょうそん)雲孫(うんそん・つるのこ)といった遥か未来の子孫たちが全員高潔な思想の持ち主とは限らないからだ。

そんなことでベルやユールの努力を無駄にしたくない。

シフトの考えを聞いたグラントは納得する。

「なるほどのぅ・・・たしかに治世者によってはそんな使われ方をされる可能性もある」

「ベルはそんな使われ方したくない」

「わたくしもベルさんの意見に賛成ですわ」

作成者であるベルとユールがシフトの意見に同意する。

「そういうわけでエリクサーとついでに賢者の石も半永久封印します」

「それは理解したが、どこに封印するんだい?」

「あとで一番安全な場所に封印しておきます」

シフトは部屋に戻ったら【空間収納】にエリクサーと賢者の石をしまう予定だ。

「ベル、ユール、それまでエリクサーと賢者の石を大切に持っていてくれ」

「「はい、ご主人様」」

ベルは賢者の石をユールはエリクサーをしっかりと持つ。

『ふむ、どうやら話も一段落したようだな。 その娘(リーン)も無事に戻って(生き返って)きてなによりだ』

話が纏まったところでエルドが話しかけてきた。

「エルドさん、プラルタさん、本当に助かりました。 ありがとうございます」

『気にするな。 言ったであろう、我も協力すると』

『そうですよ。 ご褒美にサンドワームの肉を所望します』

プラルタがサンドワームの肉を強請るとエルドがすぐにその鋭い爪でプラルタを引っ掻く。

『ぎゃあああああぁーーーーーっ!! 痛いですうううううぅーーーーーっ!!』

『この馬鹿者が! 場を弁えて発言しろ!!』

その光景にシフトたちは苦笑いを浮かべていた。

「えっと・・・あとでサンドワームの肉を提供しますので落ち着いてください」

『本当ですか?! シフトさん、ありがとうございます♪』

『シフト殿、甘やかさなくていいです。 このバカ(プラルタ)にはあとできついお灸をしておきますので』

「いえ、さすがにプラルタさんがいなければリーンさんが戻ってくる(生き返る)ことは叶わなかったでしょう。 エルドさんにもあとでお渡しします」

『うむ・・・なんだかすまないな』

シフトとエルドの会話にグラントがわって入ってくる。

「シフト、すまないがこちらのドラゴンは?」

「ああ、そういえば紹介がまだだったな。 グラント、こちらはドラゴンの国の長であるエルドさん」

『エルドだ。 よろしく』

エルドは長い首を垂れる。

本人なりに頭を下げたのだろう。

「エルドさん、こちらはこのガイアール王国の国王でグラント国王陛下」

「グラントと申す。 こちらこそよろしくお願いする、エルド殿」

グラントもエルドに対して礼をする。

「そういえばエルドさんに・・・というかドラゴンの皆さんに朗報なんですけどグラントからサンドワームについて狩りの許可を得たんです」

『え! サンドワームですか!!』

サンドワームという単語に敏感なプラルタが声を上げる。

『こら! プラルタ! すみません、このバカ(プラルタ)は放っておいて・・・同族のために催促したようで申し訳ない』

「いや、あの砂漠地帯のサンドワームはかなりいるようなのだ。 サンドワームを殲滅できればあの場所を緑化したのち新たな土地として有効活用したいと考えている」

グラントとしてはサンドワームがいなくなればその分使える国土が増える。

サンドワームの駆逐にどれだけの年月がかかるかわからないが、その間はシフトとドラゴンたちの友好関係は続くだろう。

シフトを通してドラゴンたちに何かしら融通してもらえることもできるかもとグラントは国益について考えていた。

例えばドラゴンを足代わりにできればそれだけでこの広い大陸の移動が楽になるのだから。

そのためにはシフトとドラゴンたちの友好関係が続かなければならないという課題が発生する。

それを解決するのがサンドワームの存在であり、シフトとドラゴンたちの友好関係に繋がるのであれば、グラントはサンドワーム狩りを喜んで容認するだろう。

サンドワームが殲滅しようとしまいとどちらに転んでも得をするのだから、グラントにとってはとてもおいしい話だ。

「本来であればもう少しエルド殿と話をしたいのだが・・・」

グラントはリーンを見る。

いくら戻ってきた(生き返った)ばかりとはいえ疲労しているかもしれない。

リーンをゆっくり休ませたいという意思を込める。

『うむ、たしかにここで話し合いを続けていてはほかの者が退屈であろうな』

空気を読むとエルドは人化した。

銀髪イケメン男性が貴族風の服を着て立っている。

「この姿なら問題あるまい。 それではグラント殿、話は別の場所で行おう」

「わかった。 こちらへ・・・」

『ちょっと、長! ずるいですよ! わたしも・・・』

「やめんか! 大勢の前で羞恥を晒すな!!」

プラルタが人化する前にエルドが釘を刺す。

『うううぅ・・・わたし、もうずっとここ(断崖下)にいるんですよ? 暇ですよ』

「お前がちゃんと人化して制御できるなら止めはしないが、あんな中途半端な人化をするのなら最初からドラゴンの姿でここにいたほうがまだましだ」

『そんなぁ・・・』

エルドの言葉にプラルタはいじけてしまう。

とりあえずシフトたちは王城へと戻っていった。

グラントとエルドは別室にて早速話を再開する。

マーリィアはベルと一緒にいたかったが、侍女に捕まり公務をするために部屋へと戻っていった。

ルマは王都復興への木材が足りないので大量の木を育てるために王都の外に向かう。

ベルはリーンをベッドに寝かせて、傍に付き添っていた。

ローザはリーンのために龍鱗の槍を作るといって部屋で作業に没頭する。

フェイとギルバートは王都内の見回りに出かけた。

そして、シフトとユールは部屋でエリクサーを小分けにしている。

「ご主人様、エリクサーを小瓶に入れました」

「ユール、ありがとう」

2人の目の前には小瓶に入れたエリクサーが15個ある。

水差しの中のエリクサーはなくなり空だ。

「さて、このエリクサーだけどユールたちに2個ずつ持たせて残りは僕が管理するというのでいいかな?」

「それがいいと思いますわ。 誰かがやられた場合のことを想定するならご主人様の考えが一番妥当ですわ。 ただ、数はわたくしたちは1人1個で十分かと愚考しますわ」

「そうか? ユールがそういうならそれでいこう」

シフトは【空間収納】を発動するとエリクサー10個、賢者の石、ドラゴンの心臓、ついでに空になった水差しをしまうと空間を閉じた。

ユールもシフトからエリクサー1個を受け取るとマジックバックに入れる。

シフトはルマたちの分をマジックバックに入れるとあとで手渡すことにした。

「ルマたちにはあとで配るとして・・・ユール、エリクサーの作成に感謝する」

「リーンさんが亡くなった時も申したのですが、わたくしたちに・・・ご主人様に何かあった時のための『保険』として用意するはずでした」

「結果としてはリーンさんの命を救えた(蘇生させた)んだから良かったことだよ」

「そうですわね。 努力が報われてホッとしていますわ」

ユールは緊張が解けたのか倒れそうになる。

シフトはすぐにユールを支えるように身体を受け止めた。

「ユールも疲れているだろ? 今日はゆっくり休んでくれ」

「それならわたくしからのリクエストですわ。 この前のルマさんみたいに抱きしめてほしいですわ」

「ユールが望むなら」

シフトはユールのリクエスト通り、その身体を抱きしめるのであった。


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