表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/394

33.ネルス村

3日後───

シフトたちはネルス村に到着したがルマたちに村から離れたところで待機を命じた。

シフトはネルス村に着くと自分が住んでいた家に足を運ぶ。

そこは朽ち果てて今にも倒れそうな家だった。

もちろん人が住んでいる気配はない。

この古びた家を見て昔を思い出すは愛情の一欠けらも与えられず金しか興味がない実の両親だ。

(・・・あれから7年か・・・)

感慨耽っていると中年の村人が声をかけてきた。

「あんた、何もんだ! ここに何をしに来た!!」

「ここはネルス村ですよね?」

「・・・そうだがあんたは?」

「この村の元村人です。 実は教えてほしいことがありまして」

「・・・何が聞きたい?」

シフトは実家を指し両親について尋ねてみた。

「この家に7年前に住んでいた男と女について聞きたい」

「ヤーグとヨーディのことか? あいつらなら出て行ったよ」

「どこにいったのかわかりますか?」

「そんなこと知るかよ」

村人は苛つきながらもシフトの両親について答えてくれた。

(ヤーグ・・・ヨーディ・・・名前だけでも大収穫だ)

「情報ありがとうございます。 僕の目的はあなたが仰ったヤーグとヨーディにありまして」

「あいつらに?」

「ええ、ですがここにいないのであればもう用はありません。 早々にここを出ていきます」

「ああ、そうしてくれ」

シフトは一礼して村を後にするのだった。


しばらくしてからシフトはルマたちのところに戻った。

「みんな、今戻ったよ」

「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」

「うん、まずは彼女たちに謝らないとな。 すまない、当てが外れた」

シフトは盗賊から助けた女性10人に向けて頭を下げた。

「なにをですか?」

「君たちをここの教会にでも頼もうかと思ったんだけど、この村閉鎖的でね・・・」

「ああ、なるほど」

本来ならネルス村でお別れする予定だったが余所者を忌み嫌うこの村では洞穴での生活と変わらないだろう。

リーダーの女性も閉鎖的という単語を聞いて納得してくれたようだ。

ルマが今後どうするのか尋ねる。

「ご主人様、これからどうするのですか?」

「仕方ない・・・首都ベルートを目指す。 君たちもついてくるか?」

「そうですね。 ここにいても明るい未来は得られないでしょうし・・・」

「なら決まりだな。 早速出発する。 この人数で歩きだと5~7日かかるからみんな頑張ってくれ」

「「「「「畏まりました。 ご主人様」」」」」

「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

「はぁ・・・ほら、みんな元気出していこう」

「「「「「「「「「・・・はーい・・・」」」」」」」」」

ルマたちは従順に返事をするが、彼女たちはここまでの旅の疲れからかあまり元気がなかった。

予定が少々狂ったが元々首都ベルートにいるであろうザール辺境伯に復讐をする予定だったのだ。

さて行くかと歩き出そうとしたとき、リーダーの女性が声をかけてきた。

「あ、ちょっと待ってください。 私たちにも武器を貸してもらえませんか?」

「君たちに? 武器を使ったことがあるの?」

「いえ、ありませんが・・・この3日間守られ続けてもらったのに何もできなくて・・・」

「仮に首都ベルートについても身内はいないし、手に職があれば良いのですが1人2人では10人分の稼ぎができないでしょうから・・・」

「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」

それを聞いた他の女性たちも首都で暮らせるだけの稼ぎができるかというと自信がなかった。

「それなら私たちでも簡単な魔物を倒せるくらいには強くなりたいです」

「・・・はぁ、わかった・・・ただし首都ベルートに着くまでは僕たちの指示に従ってもらう。 これが絶対条件だ」

「わかりました」

「「「「「「「「「・・・わかりました」」」」」」」」」

「それじゃちょっと待ってね」

シフトは隠し持っていた[鑑定石]で彼女らの能力を見ていく。

(あの娘とあの娘とあの娘は【剣術】、あの娘は【槍術】、あの娘は【弓術】、あの娘は【火魔法】、あの娘は【水魔法】と【土魔法】、あの娘は【風魔法】、あの娘は【治癒魔法】、あの娘は【薬学】が使えるな・・・)

スキルレベルもB~Dと使えないよりはマシなので適正である才能を開花させることにした。

「そこの君と君と君はこの片手剣を使って、そこの君は槍を、そこの君は弓矢を使ってね」

シフトは隠しスキルにあった武器を適正者に渡すが彼女たちは困惑している。

「私武器使ったことないんですけど・・・」

「「私も」」

「・・・どうやって使うの?」

「・・・弓なんて使ったことない・・・」

「ローザ、彼女たちに武器の使い方を教えてあげて。 ベルはローザの補助を頼む」

「「畏まりました」」

ローザは武器を持った娘たちに簡単なレクチャーをしていく。

「そこの君とあと君ちょっと来て・・・ユール、こちらの娘に薬学の知識を、もう1人の娘は【治癒魔法】を頼む」

「畏まりましたわ」

「「よ、よろしくお願いします」」

ユールなら【治癒術】と【薬学】があるから適任だ。

「それで残った君たちは魔法の才能がありそうだから・・・ルマ、フェイ、彼女たちに魔法を教えてあげて」

「畏まりました、ご主人様。 どの娘がどの才能をもっていますか?」

「左から【火魔法】、【水魔法】と【土魔法】、【風魔法】だ。 【風魔法】はフェイに、残りの2人は悪いけどルマにお願いしたい」

「「畏まりました」」

ルマとフェイなら魔法を実践でも使っているから問題ないだろう。

かくして彼女たちを鍛えながら首都ベルートを目指すのであった。


7日後───

ようやく首都ベルートに到着する。

ここまでくる間に彼女たちはスキルを開花させ、魔物を倒してレベルを上げた。

これで首都ベルートで冒険者としてやっていくことができるはずだ。

冒険者ギルドで彼女たちは無事に冒険者になれた。

あとは彼女たちの努力次第だろう。

「無事に冒険者になれたんだね。 おめでとう」

「え・・・っと、ありがとうございます」

「「「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」」」

「武器は君たちにあげるよ。 それとこれは当分の生活費と軍資金だ」

シフトはリーダーの女性に革袋を渡した。

中を覗くと金貨3枚が入っていた。

「え、こんなに貰っていいんですか?」

「女性が10人もいるんだ、生活の軌道に乗るまで大変だろう? そのお金を大事に使うも湯水のように使い切るも君たち次第だ」

「わかりました」

「僕たちができるのはここまでだ。 あとは君たちの成功を祈っているよ。 それじゃあ、僕たちは行くよ」

「「「「「「「「「「ありがとうございます」」」」」」」」」」

シフトたちは冒険者ギルドの前で女性たちと別れると遠くに建てられている領主の屋敷を睨む。

(僕は自分のスキルによって5年も苦しんだ・・・この恨み、お前に返すぞ。 覚悟しろ・・・ザール)

シフトの目には復讐の炎が宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ