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343.魔族の動向

夜、月が頂点の近くで輝いている頃、シフトと荷車に乗った王国の使者たちは獣王国に到着した。

「皆さん、獣王国に到着しました」

「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」

王国から獣王国までの距離にしたらたった数時間で来れる場所ではない。

使者たちはあまりの出来事に言葉を失っていた。

とりあえず王都アンニマームの近くにプラルタがいるのでそこに降り立つ。

『あ! シフトさん、戻ってきたのですね』

「プラルタさん、ただいま戻りました。 ルマたちは・・・」

シフトが口にするよりも早くルマたちが姿を現した。

「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様!!」」」」」

「みんな、ただいま。 僕の留守中に何かあった?」

「いえ、特には何もありません」

「そうか、それは良かった」

ルマたちが無事であることを確認するとシフトはホッとする。

「ところでそちらの方々が獣王国に来られた臨時の連絡要員ですか?」

「ああ、本来ならこのままタイミュー女王陛下に会いに行きたいが、さすがにこんな夜分遅くでは失礼だし明日の朝に会いに行くとしよう」

「そうですね。 それがよろしいかと」

「それでは皆さん、今日はここで野営して明日タイミュー女王陛下に会いに行きましょう」

「あ、ああ、わかった」

シフトの提案に使者たちの代表として王宮魔導師団の魔導師が承諾する。

「それじゃ、長旅で疲れているだろうし軽く食事にして今日は休みましょう。 ベル、頼んでいいか?」

「任せる」

シフトはマジックバックからブロックサイズに切ってあるサンドワームの肉を取り出す。

その肉の塊を見た使者たちから喜びの声が聞こえてくる。

ベルに渡すと人数分に切り分けて時間をかけずにシンプルに塩焼きにした。

かなりのボリュームがあったが、皆の胃袋の中に納まったことは言うまでもない

それからシフトたちは夜が明けるまで横になり休むことにした。


翌日───

太陽が東の空に昇った頃、シフトはルマたちと使者たちを連れてタイミューのいる王城へと足を運んだ。

謁見の間ではすでにタイミューとイーウィムが待っていた。

シフトが中央まで来るとタイミューに話しかける。

「タイミュー女王陛下、イーウィム将軍閣下、王国からの使者と聖教会の関連者を連れて参りました」

「シフトサン、ゴクロウサマデス。 ミナサンモヨクキテクレマシタ。 ココロヨリカンシャシマス」

使者たちはその場で膝を突くと一礼した。

「タイミュー女王陛下、この度はグラント国王陛下より連絡要員として貴国へ派遣されて参りました。 騒動が収まるまでの間ですがよろしくお願いいたします」

「ミナサン、アリガトウゴザイマス。 タイザイチュウハコノシロノヘヤヲオツカイクダサイ」

「お心遣い感謝いたします」

使者たちはタイミューに深く頭を下げる。

「さて、お互いの挨拶も済んだことなので僕はこれから王国に戻ります」

「シフトサン、アリガトウゴザイマス」

「何かあればここにいる方たちに連絡するように言ってください。 すぐに王国から飛んできますので」

「ワカリマシタ」

シフトは使者たちのほうを見て頭を下げる。

「皆さん、獣王国のことよろしくお願いします」

「任せてほしい」

「何かあればすぐに連絡する」

「駆け付けるまでの間は私たちが時間を稼いで見せます」

使者たちからの返事にはやる気が十分伝わってきた。

これなら獣王国は安心だろうとシフトは考える。

「本当はプラルタさんもここに残していきたかったのですが、本人が嫌がるので・・・」

「タシカアノドラゴンデスヨネ?」

「戦力として考えれば申し分ないが一体どうして?」

「食料問題でちょっと・・・」

シフトは王城に行く前のプラルタとのやりとりを思い出す。

獣王国に残ってもらうようお願いしたのだが、帰ってきた答えはノーだった。

『シフトさんがいなくなったらサンドワームの肉はどうなるんですか!!』

「いやここに置いていくから大丈夫だよ」

『ダメです! あの量は1回じゃ食べきれないし、誰かに盗られるかもしれないし、それに日にちが過ぎたら腐るかもしれないじゃないですか! 絶対にダメです!!』

プラルタは幼子みたいに泣き叫び駄々を捏ね続けたことで、押し負けて結局獣王国の滞在を見送った。

恐るべしプラルタの食欲。

「ま、まぁ、食料もそうですが本人の性格に難があるので今回は見送ることにしました」

タイミューとイーウィムが不思議そうな顔をするが、女性の勘というモノか問題が起きそうなので突っ込むのはやめたようだ。

「それでは僕は王国に戻ります」

「シフトサン、ホントウニアリガトウゴザイマス」

「何かあれば頼らせてもらう」

「はい」

それだけいうとシフトは謁見の間から退室して王都外にいるプラルタのところまで戻っていく。

『シフトさん、お帰りなさい』

「プラルタさん、これから王国に行きます」

『わかりました。 皆さん、わたしの背中に乗ってください』

シフトたちはプラルタの背中に乗ると王国の王都を目指して飛んで行った。






時はシフトたちが王国に戻るよりも少し前に遡る。

ガイアール王国 地方にある山の一角───

館の中で1人の魔族が目を覚ます。

「ああ・・・やられた・・・本来の力があればあんな奴簡単にやっつけられるのによう・・・」

「その様子だと派手にやられたようだな」

声がしたほうを見るとレザクが扉によりかかって同族(魔族)を見ていた。

「よう、レザク。 お前が言っていたオレンジの髪で額に大きな傷を持つガキと戦ったけど、あいつ強すぎないか?」

「お前()そう思うか・・・」

「お前()?」

レザクの言葉に含みがある。

「その言い方だとまるでほかの奴らも同じ意見のようだな」

「実際にそうだからな」

レザクはその魔族についてこいとジェスチャーする。

魔族は大人しくレザクのあとについていった。

レザクがある部屋に入るとそこには4人の同族(魔族)たちが椅子に座っている。

「ようお前も目を覚ましたということは例のオレンジ髪にやられたみたいだな」

「やられたというよりもあの玩具(屍肉人形)では俺の能力を十全に生かせなかっただけだ」

「ああ・・・それは俺も思ったぜ。 俺の【重力魔法】も最大限に生かせなかったもんな」

「それなら俺の【空間魔法】もだ」

「「・・・」」

いつもなら威勢のいい2人も会話に混ざってくるがなぜか沈黙している。

それもそのはず、1人はフライハイトだけでなく見下した人間族に火力で負け、1人は敵に自分の【金属魔法】(十八番)を奪われたのだ。

それなりにショックが大きいだろう。

「レザク、あの玩具(屍肉人形)だけどもっと精度を上げることはできないのかよ?」

「無理だな。 あの肉体(屍肉人形)を作るのに1万もの人間族の死体を使っているのだぞ? それを調達(作成)するのにどれだけ時間がかかるかわかるか?」

「へっ、わからねぇな」

「だけど、あの玩具(屍肉人形)では自分の本来の力がでないのも事実だ」

身体(屍肉人形)が耐え切れないのが難点だな」

魔族たちはレザクが作った玩具(屍肉人形)に不満をぶつける。

しかし、レザクは屍肉人形を壊されても苦情を聞いても揺るぐことはなかった。

「今回は『この手に自由を(フリーダム)』が人間の魂や死体(物資)を提供してくれたから作れたが普通は作れないからな」

「まぁ、あんな玩具(屍肉人形)がなくても俺なら余裕でこの大陸の奴らを皆殺しにできるけどよ」

その言葉を聞いて、今まで沈黙していた2人が叫びだす。

「ああ! そうだ! あんなの(屍肉人形)に頼らなくても俺は強いんだよ!!」

「そうだぜ! 俺を虚仮にしたことを後悔させてやる!!」

怒りを露わにした2人を見てほかの魔族たちは驚きを隠せない。

魔族たちは決して仲が良いわけではないが、少なくともお互いが認めるほどの実力者ばかりだ。

2人は立ち上がると扉に向かって歩き出す。

「レザク! お前の玩具(屍肉人形)など要らん! 直接俺の手で嬲り殺しにしてやる!!」

「俺も同じだ! 俺の力で今度は圧倒して見せる!!」

「好きにするがいいさ」

2人は扉に寄りかかっていたレザクに一瞥せずに前を通り抜けて扉を通り抜けて部屋を出て行った。

「なら俺たちも好きにやろうぜ」

「そうだな」

椅子に座っていた残りの2人もレザクの前を通り抜けて部屋を出て行った。

「あいつらは感情に任せて短絡的すぎるな」

「いいのか? 出遅れるぞ?」

「別に構わないさ。 どうせ最後には俺の前にあのオレンジ髪が立ち塞がるだろうからな」

そういうと最後に残った魔族もレザクの前を通り過ぎて部屋から出る。

部屋に1人残されたレザク。

「やれやれ・・・俺もそろそろ動こうかな・・・」

レザクは不敵な笑みを見せて部屋から出て行った。


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