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336.晴れ時々金属の雨霰

シフトたちの前に何人かの兵士が現れた。

「誰かと思えば公国の国王か」

「ふっ、偵察に来てみればやはりシフト殿だったか」

兵士に変装している公国の国王レクントだった。

「それで何か用か?」

「わしの部下がドラゴンを見つけてな、もしかすると今公国を襲っている連中の仲間か『この手に自由を(フリーダム)』かと危惧していたのだ」

レクントはドラゴンを見ながらここに来た理由を答える。

「なるほど。 このドラゴンだが僕が今友好関係をしている国から借りている」

「なっ?!」

シフトの言葉にレクントはもちろん兵士たちが驚き、シフトとドラゴンを交互に見る。

「シ、シフト殿、一体何をすればドラゴンを借りられるのだ?」

「ああ・・・それについてだけど先日王国で行われた国際会議で問題があって・・・」

「それについては王国にいる(スパイ)から聞いている」

さすがはレクント、こんな遠方にいるのに相変わらず情報収集能力が高い。

「なら話は早い。 そのとき王国を襲ったドラゴンがこれです」

シフトはプラルタを指さす。

「シフト殿がドラゴンとともに東に向かったというのが最後の連絡だったが・・・」

「その通りです。 東のドラゴンの国でそこの長に『この手に自由を(フリーダム)』について説明してきたんです。 そのついでに友好関係になっただけです」

「相変わらず想像の斜め上をいっているな。 普通はドラゴンと友好関係を結ぶなんて考えもつかないぞ」

シフトの言葉にレクントは呆れていた。

実際に提案したのはフェイだが最終的に決定したのはシフトだ。

「国王に聞きたいのだが、今ほかの国の情勢はどうなっている?」

「どうとは?」

「王国で起きた騒動から何か動きがあったのか聞きたい」

「ああ、そういうことか。 それならあったな。 シフト殿が旅立ったあと、わしの息子(公国の王子)を含めて各国の要人が急いで戻ったらしい。 その際には今回新参者である翼人の国の将軍がワイバーンを貸したと聞く」

「イーウィム将軍閣下がそんなことを・・・」

王国での出来事は由々しき事態だったのだろう。

イーウィムが自分の部下を使い、各国の要人をワイバーンに乗せて帰国させたのだろう。

「情報では獣王国にはタイミュー女王陛下とイーウィム将軍が、ドワーフの国にはドワーフ王と帝国の皇子が、皇国の皇子とわしの息子(公国の王子)はそれぞれ別々に帰国・移動したそうだ」

「獣王国とドワーフの国にはなんで要人2人で移動しているんだ?」

「おそらくだが戦力的な問題だろう。 公国、王国、帝国、皇国の人間族は十分な戦力があるが獣王国とドワーフの国は王を除くと戦力としては厳しいからな。 因みにエルフの隠れ里は森を焼かない限りは鉄壁の防衛システムがあるから問題ないだろう」

「なるほど」

わしの息子(公国の王子)も帝国の皇帝に説明してからここ(公国)に戻ってくると連絡してきたからな」

レクントもそうだが帝国の皇帝グランディズも皇国の天皇テンローもそれぞれ各国にSを放ってすでに情報は手に入れているだろうが、それでも生の声は重要度が高いだろう。

「それでシフト殿はこれからどうするのだ?」

「僕は王国に戻る予定です」

「そうか・・・戻る前に聞きたいのだがここら辺一帯を荒らしていた者を知らないか?」

「さっき僕たちにちょっかい出してきた者・・・魔族なら逃げられたよ」

それを聞いたレクントが驚いている。

「シフト殿から逃げおおせたのか? すごいな・・・」

「厳密にいえば倒したのはここ(公国)にやってきた分身体で本体はここにいない」

「そうか・・・それにしてもわしの息子(公国の王子)から聞いてはいたが、魔族という種族か・・・厄介な連中だな」

「一応言っておくけど魔族といっても僕たち人間族と同じ善悪が存在する。 実際魔族の国に行ってきたけど僕たちとさほど変わらなかったな」

シフトの言葉にレクントは考え込む。

「うむ、そこはわしらと同じ・・・いやどの人種でも同じことか」

「因みにこの大陸にやってきた魔族は世界を手に入れようと画策しています」

「『この手に自由を(フリーダム)』と同じ考えか・・・」

正確に言えば『この手に自由を(フリーダム)』は個々人が自由に振舞っているのだが、シフトはそれを指摘しなかった。

(やっていることは同じようなものだからなぁ・・・)

今まで会った『この手に自由を(フリーダム)』の構成員たちを思い出すとレクントが言ったことはあながち間違っていない。

「それじゃ、そろそろ僕は王国に戻るよ」

「引き留めて悪かったな」

シフトたちはプラルタに乗ると西を目指して再び移動を開始する。

帝国と公国の中間まで来ると太陽も西の地平線に沈んだので、着陸してその日は野宿することになった。

霊峰山を出発して3日目、本来であればすぐに王国に向けて出発するつもりであったが、シフトは昨日の魔族の行動が引っかかっている。

「ご主人様、どうされましたの?」

「昨日の魔族についてちょっとね」

「公国で暴れたということは今度はほかの国でも暴れていると?」

「ああ、それも数ヵ所同時に襲撃されている可能性がある」

シフトは公国だけでなく王国や帝国なども襲われている可能性を推測する。

「それならほかの国も見て回るのがよろしいのでは?」

「たしかに1つ1つ問題を解決していったほうがいいな」

「そうだな。 王国に急いで戻る必要はないからまずはほかの国を確認しに行こう」

シフトたちは話し合ってそれぞれの国を確認しに行くことにした。

「それでどこから行くの? 帝国? 皇国? それともドワーフの国?」

「まずはドワーフの国だな。 そこから北上して帝国、皇国の順番に確認していこう」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトは方針が決まるとプラルタに行先の変更を伝える。

「プラルタさん、悪いけど行き先を南西にあるドワーフの国に変更したい」

『わかりました』

プラルタに乗ると南西にあるドワーフの国を目指して出発する。

2時間ほど飛んでいると目の前からプラルタに対して何か光ったものが飛んできた。

プラルタは魔力障壁で防御しようとするが、シフトがそれを見て叫んだ。

「プラルタさんっ! 避けろっ!!」

『え?』

シフトの言葉の意味がわからないプラルタは避けずにその場で止まってしまった。

その光る何かがプラルタに迫ってくる。

シフトは【空間収納】を発動して飛んできた何かを空間に吸収させた。

すぐにアイテムを確認するとプラルタに飛んできた物・・・それは巨大な金属の槍だ。

すると遠方から巨大な金属の槍が次々とプラルタ目がけて飛んできた。

『ひいいいいいぃ・・・』

プラルタは避けようとするが逃げ場がないほど前面から槍が飛んでくる。

「プラルタさん! 絶対に動かないで!!」

シフトの言葉にプラルタは大人しく従う。

飛んできた槍はすべてシフトの空間に吸収されて、プラルタにはただの1撃も通さない。

しばらくすると収まりこれで終わった・・・かに見えた。

突然シフトたちのところが暗くなる。

上空を見るとそこには巨大な金属の斧が振り下ろすように襲ってきた。

シフトはすぐに斧を空間に吸収したことで、事なきを得る。

『な、なんなんですか? さっきから何か光った物が襲ってくるんですけど!!』

「プラルタさん! 地上に降りろ! そしたらすぐに人化しろ!!」

『え? え?』

「いいから早くしろ! このままだとずっと狙われるぞ!!」

『は、はい!!』

プラルタはシフトの言う通り急いで地上に避難する。

シフトたちが降りるとプラルタはすぐに人化した。

素っ裸なプラルタだが、ルマたちも今の状況を理解しているのかそれを咎めている場合ではない。

「相手が次の一手を打ってくる前にここから離れて・・・」

上空を見るとそこから今度は光る何かが降ってくる。

それは金属でできた矢だ。

シフトはすぐに【次元遮断】を発動するとシフトたちの周りを外界から隔離する。

その直後に無数の金属でできた矢が雨霰のように降ってきたが、すべてシフトの張った結界により遮られた。

「みんな、大丈夫か?」

「はい。 ご主人様のおかげです」

「た、助かりました」

人化したプラルタが安堵の声を上げる。

「それにしても何なんですの? この攻撃は?」

「地面に落ちているのを見ると全部金属だよ」

「銅、鉄、鋼、それにミスリルに銀や金・・・あらゆる金属があるな」

ローザの言葉にシフトたちは驚いた。

何に驚いたのかというと矢そのものだ。

普通なら鏃以外は木や羽を使うのだが、降ってきた矢はすべて金属でできていた。

しばらくすると金属の矢が尽きたのか止んだ。

シフトたちは全方向を確認するがこれ以上攻撃はこなかった。

シフトは結界を解除すると一旦空間を閉じて再度開ける。

そして、この場にある大量の金属でできた矢を空間にしまうと再び閉じた。

「それにしてもこの金属でできた大量の武器はいったい・・・」

「それは俺が作り出したのさ」

シフトたちは声がするをほうを見る。

そこには1人のフード被った者がいた。


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