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323.魔族の国へ

ドラゴンに引き留められて2日後───

シフトたちはドラゴンにサンドワームの肉を1匹ずつ渡すと残りは100を大幅に切っていた。

「皆さん、僕が所持している肉は全員に行き渡るほど残っていません。 今回のが最後です。 できれば味わって食べてください」

それを聞いたドラゴンたちからは悲しい声が続出する。

『こら! お前たち! 貰っておきながら文句を言うな!』

『長、だって・・・』

『もうこれが食べられないんですよ?』

『悲しくないですか?』

もう2度と食べられないかもしれないと考えるとドラゴンたちの言い分もわからなくない。

だが、シフトの【空間収納】にドラゴンたちを満足させるほどの在庫(サンドワーム)がないのもまた事実だ。

「サンドワームについては王国に戻ったら国王陛下(グラント)に相談してみます」

『上手く交渉できればまた食べられるかもしれないんだから我慢しろ』

エルドも我儘なドラゴンたちを高圧的に押さえつける。

ドラゴンたちもさすがに勝てない相手に喧嘩を売るほどバカではない。

シフトからもらったサンドワームを大人しく食べることにした。

食事を終えるとエルドが話しかけてくる。

『シフト殿、今日までありがとうございます』

「いえ、僕たちとしても助かりました。 それで今日魔族の国に旅立つんですけど、プラルタさん以外でもう1匹一緒についてきてほしいのですが・・・」

『それなら俺が一緒に行く!』

『私のほうが役に立つわ!』

『僕に任せてほしい!』

シフトの言葉にドラゴンたちが次々と名乗りを上げる。

ここでアピールしてシフトから好感を得る作戦だろう。

厳選の結果、プラルタと同じく雌のドラゴンが選ばれた。

プラルタよりも聡明で力や能力も格段に上であり、何より常識を知っている。

露骨なアピールをしてこなかったのもポイントが高い。

何より魔族の国に何度か行ったことがあるとか。

プラルタが頼りなくてもこの雌ドラゴンがいれば問題ないだろう。

『本来なら我がついていきたいが、ここを離れるわけにはいかないのでな』

エルドはドラゴンたちを束ねる長であり、現在は霊峰山を攻略中だ。

話を聞くと探知系・干渉系を持つドラゴンの個々の能力(レベル5:究極まで上げた状態)でも難しいとか。

エルドが持つスキルで一時的にスキルのレベルを一段階超えることでようやく『夢幻の空間』を視認し、看破することに成功したそうだ。

だが、最後の自分自身との戦いでは打ち克つことができずに試練に失敗したらしい。

一昨日、昨日と挑戦したが結果は同じだった。

これではいけないとエルドたちは一から心身を鍛え直すことを決意する。

今日からほかのドラゴンと一緒に訓練を開始して、頃合いを見て再度試練に挑むそうだ。

シフトとしてはスキルの上限であるレベル5の先があることがわかったのは大きな収穫である。

1年以上前に行われた国際会議でスキル(【ずらす】)が限界を超えてないといったのもエルドにより真実であることが証明された。

先があることを教えてくれたエルドには感謝である。

「エルドさん、頑張ってください」

『わかっている。 無理をせず1歩ずつ前に進むさ』

それを聞いたシフトは頷く。

「それでは僕たちはそろそろ行くよ」

『長、必ずシフトさんを魔族の国に連れて行きます』

『2匹とも頼んだぞ』

『『はい』』

シフトたちはプラルタの背中に乗る。

『それでは行ってきます』

『気を付けて行ってこい』

プラルタと雌ドラゴンは翼を広げると上空へと羽搏いた。

雌ドラゴンが先導して飛行する。

シフトたちを乗せたプラルタが追う。

休憩をはさみながら南に飛ぶこと11時間。

太陽はすっかり西の地平線に沈んで夜空には月が出ている頃に1つの大陸が見えてきた。

『皆さん、魔族の国が見えてきました』

先頭を行く雌ドラゴンが報告する。

そこには明かりが無数に灯っている大陸が見えた。

「あれが魔族の国」

「ドラゴンの国からかなりありましたわね」

「プラルタちゃん、この距離はちょっとどころじゃないよ?」

『あれ? こんなに遠かったでしたっけ? わたしの場合はすぐに着いたのですが・・・』

フェイの疑問にプラルタは首を捻る。

「魔族の国に突然入国して問題ないのか?」

『警戒はされるでしょうが、武装集団が接してきました』

「え? それ大丈夫なんですか?」

『迷惑さえかけなければ大丈夫です』

ドラゴンたちは魔族の国を普通の国と言っていたが、シフトの考えでは魔族たちはドラゴンから国を守るために必死にご機嫌取りをしたのだろうと推測する。

「こんな夜中に訪れたら間違いなく問題になりそうだな」

『えええええぇーーーーーっ!! あの大陸で休みましょうよ!!』

『ダメです。 まず近くの人気のない島に降りてそこで1晩過ごしてから改めて訪れましょう』

プラルタの言葉を雌ドラゴンが却下する。

魔族たちに余計な不安を与えるが、夜やってくるよりも朝、いや昼に大陸に入って説明したほうが良いだろう。

雌ドラゴンが手頃な島を見つけると着陸したのでプラルタも同じく着陸する。

大陸からは大体200キロくらい離れたところだ。

シフトは【次元遮断】を発動すると半径100メートルを外界から隔離する。

これで急に攻めてきても結界で入ってこれないだろう。

(そういえば自分自身との戦いでは【次元遮断】を【次元干渉】で無力化していたな)

あの戦いで【次元遮断】の結界も同等の力であれば破壊が可能というのがわかった。

出発前に聞いたエルドのスキルで一時的に干渉系スキルのレベルを一段階超えれば、【次元遮断】の結界を破壊できる可能性があるかもしれない。

シフトは【次元遮断】の結界は破壊可能と認識しておくことにした。

心得があるのとないのでは雲泥の差が生じるからだ。

「ご主人様、どうしました?」

「いや、なんでもない。 それより今日はここで1泊して明日魔族の国に行くから」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

『わたしたちも今日は休みます』

『何かあれば呼んでください』

プラルタと雌ドラゴンはシフトたちから離れると早々に横になる。

シフトたちも簡易的な食事をしたあと、明日に備えて眠りについた。


翌日───

朝食を終えたシフトたちはプラルタに乗って早速魔族のいる大陸へとやってきた。

大陸の中で一番大きな都市の前に着陸する2匹のドラゴン。

シフトたちはプラルタから降りる。

それを見て都市内部からは武装した青白い肌の人間・・・魔族が大勢現れた。

「熱烈な歓迎だね」

「どちらかといえば招かれざる客かな」

ローザとフェイが話していると魔族が警戒してこちらを窺っていた。

「お前たちは何者だ? ここに何しに来た?」

「僕たちはここより遥か西から来た人間族です。 ここには・・・人を探しにきました」

シフトは2つの目的を言おうとしたが、下手に口にしてこれ以上余計な警戒されても困るので1つだけ言うことにした。

「人探し? 他種族であるお前たちが我らの同族である魔族を?」

「はい。 レザクという名の魔族をご存じでしょうか?」

レザクの名を聞いて魔族たちがざわざわ騒ぎ出す。

「おい、レザクって・・・」

「あのレザクか?」

「なんであいつがレザクの名を?」

どうやらレザクは魔族の間では有名人らしい。

「すまないがお前とレザクとはどういう関係だ?」

「関係という間柄ではないが、僕が住んでいる王国という人間族の国で先日大量の化け物が襲ってきた。 玩具といって化け物(ヒュドラ)を送り付けたのがレザクという名の魔族だ。 そいつのおかげで対処に苦労したよ。 迷惑をかけられたことを考えると今のところは敵だな」

シフトはうんざりしながら王国で起きた化け物襲撃を口にする。

それを聞いた魔族たちは苦い顔をした。

「今の話、もっと詳しく教えてもらえませんか?」

魔族たちの後ろから凛とした女性の声が聞こえてきた。


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