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316.傲慢さが命取り 〔無双劇65〕

上空には円から少し欠けた月が空の闇に浮かんでいる。

シフトたちを乗せてプラルタはドラゴンが住む霊峰山に到着した。

『着きました。 ここがわたしが住んでいる霊峰山です』

「ここがドラゴンが住む場所」

「たくさんいる」

「ははは・・・これはすごいな」

「うわ、どれも強そう」

「こちらを見てますわ」

プラルタが霊峰山に着陸するとシフトたちはその背中から降りる。

そこに白銀の鱗を持ったドラゴンがやってきた。

『プラルタ、その者たちは何者だ?』

『長、この者たちはわたしの命の恩人です』

白銀のドラゴンはシフトたちを見る。

『ほう・・・たしか人間族だったかな』

「初めまして、人間族のシフトです」

「ルマです」

「ベルです」

「ローザです」

「フェイです」

「ユールです」

『これはご丁寧に、我はこの霊峰山に住むドラゴンを束ねる長でエルドだ。 この度はプラルタが世話になった。 礼を言う』

エルドはシフトたちに礼をする。

『プラルタのことだ、どうせ人間族に迷惑をかけたのだろう』

「あ、いえ、その・・・」

『長! 酷いです!!』

『お前は昔からポンコツだからな、想像に容易い』

『はぅっ!!』

エルドはまるでプラルタがやったことを実際に見たような言い草をする。

『客人よ、歓迎する。 とはいえ、急な来客に何も持て成せなくて申し訳ない』

「いえ、気にしないでください。 僕は人間族の代表・・・というかプラルタさんの代弁者として参りました」

『プラルタの代弁者?』

「はい、実は・・・」

そこに深紅の鱗を持ったドラゴンが会話に割り込んできた。

『長よ、神聖な領域にそんな矮小な存在を入れるとは・・・』

『黙れ! この者たちはプラルタの命の恩人。 我らの同族を救ってくれたのだぞ。 それを・・・』

『はん! こいつがプラルタを救っただ? そんなに強そうには見えないな』

深紅のドラゴンがシフトをバカにする。

「なら試してみるか?」

『あん?』

「試してみるかと聞いている」

『あはははははっ・・・俺に勝てるとでも思っているのか?』

「それは試してみないとわからないだろ?」

『はん! いいだろう! 受けて立ってやるぜ!!』

シフトの挑発に乗る深紅のドラゴン。

エルドが溜息を吐く。

『双方同意の上での決闘として受理する。 審判は公平を期すため我が行おう』

「ルマたちは下がってろ」

「ご主人様! しかし・・・」

説得しようとするとフェイがルマに声をかける。

「ルマちゃん、邪魔しちゃダメだよ。 ぼくたちがいたらご主人様が全力で戦えない」

「フェイ・・・わかりました」

ルマたちはプラルタとともに後ろに下がる。

『生意気なガキだ! 捻り潰してやる!!』

「図体だけの木偶の坊が僕に勝てると思うなよ」

深紅のドラゴンの挑発にシフトも挑発で返す。

『双方準備はいいか・・・はじめ!!』

先に仕掛けたのは深紅のドラゴンだ。

大きな口を開けてノーモーションから燃え盛る火炎を吐いた。

シフトはすぐに【次元遮断】を発動して自分の周囲を外界から隔離する。

炎は結界を覆うように包むが、その燃やそうとする威力も蒸発させようとする熱もシフトに届くことはなかった。

やがて炎の勢いが収まり、そこには無傷のシフトがいることにドラゴンは目を見開いて驚く。

ルマたちを見ると皆目に涙を溜めていたが、シフトが無事であったことにホッとすると涙を拭う。

結界を解くとドラゴンが驚愕な声で叫んでいた。

『・・・な! なぜあれほどの炎を受けて生きているんだ!!』

その言葉からは殺意をありありと感じる。

(こいつ、最初から僕を殺す気で攻撃しやがった!!)

さすがのシフトも気に入らないとはいえ、初見でここまで敵意や殺気を向けられたのはライサンダーたち以来だ。

何よりルマたちを悲しませるようなことをした。

シフトは誰にも聞こえないくらい小さな声で呟く。

「本来なら穏便に済ますつもりだったが気が変わった・・・全力で殺す」

シフトは【即死】を有効にしてから発動する。

ありったけの死をイメージすると全身に纏わせた。

『これならどうだ!!』

深紅のドラゴンが右前足を高く上げると押し潰すように振り下ろす。

「まずはその足からだ」

シフトは全力でその足を殴った。

お互いが繰り出す必殺の一撃!! それに勝利をしたのは・・・

『ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!』

「もうその足は使い物にならない」

勝利したのはシフトだ。

シフトの一撃は深紅のドラゴンの右前足を壊死させた。

これで歩くことすらままならないだろう。

『ふ・・・ふざけるなあああああぁーーっ!!』

深紅のドラゴンは尻尾による横薙ぎでシフトを吹っ飛ばそうとするが、シフトもそれに合わせて回し蹴りを入れる。

『があああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!』

今まで感じたことがない激痛が深紅のドラゴンを襲う。

痛みに呻いている隙をついて左翼を攻撃する。

『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!』

新たなる痛みで深紅のドラゴンがのたうち回る。

左翼を失った深紅のドラゴンは二度と空を飛ぶことができない。

壊死されたことにより右前足も尻尾も左翼も自分の意志で動かせず、壊死した所より手前部分から切断して【欠損部位治癒魔法】で回復しない限り元には戻らないのだ。

深紅のドラゴンは自分に歩いてくるシフトを見る。

───死神。

今更ながらにちょっかいを出したことを後悔した。

高が矮小な存在(人間族)が偉大なるドラゴンの前にいるのがそもそも不愉快だ。

思い知らせるために動いた・・・はずだった。

しかし、蓋を開けてみれば結果は真逆で、足を失い、尻尾を失い、そして・・・翼を失う。

シフトは真紅のドラゴンにだけ聞こえるほどの声で囁く。

「さて、覚悟はいいか?」

『や、やめろっ! やめてくれっ!! こうさ・・・』

「死ね」

真紅のドラゴンの言葉を最後まで聞かずにシフトは接近するとドラゴンの頭部を思い切り殴った。

その威力は想像以上で、あのドラゴンを壁まで吹っ飛ばしたのだ。

真紅のドラゴンは立ち上がろうとするが、それよりも早く即死効果が発動する。

死ぬまでの数瞬、自分の言動を悔いた。

長のように礼を弁えていれば、ほかのドラゴンのように静観していれば苦しまずに済んだのだと。

だが、それももうすぐ終わる。

シフトが与えた死により、その痛みや苦しみから解放されるのだから。

真紅のドラゴンはそのまま白目になると二度と立ち上がることも意識が戻ることもなかった。

その戦いを見ていたドラゴンたちがシフトを危険視する。

同族をいとも簡単に倒すほどの強さに尋常ではない力を感じたのだろう。

エルドも危険であればすぐにでも止めようとした。

だけど、止められなかった。

真紅のドラゴンの素行は悪く、仲間内でもあまり良い評判ではない。

エルドは何度も注意するも聞く耳もたずで正直困っていたのだ。

今回ので己の愚かさを知ってもらえればと戦いを許可したが、まさかこんな結果になるとは夢にも思わなかった。

プラルタはプラルタでシフトの圧倒的な強さに驚いている。

王国での戦いでシフトの強さは知っていたが、ここまで強いとは予想外だ。

あまりの出来事に唖然とするしかなかった。

そして、誰よりも驚いていたのはルマたちである。

今まで数々の強敵を屠ってきたシフトを見てきたが、まさかドラゴンを目の前で倒すとは想像していなかった。

皆が唖然としている中、シフトはドラゴンたちに話しかける。

「それで僕と戦いたい(ドラゴン)はまだいるか?」

沈黙、それがドラゴンたちの回答である。

下手にシフトを刺激すれば真紅のドラゴンみたいに死は免れないだろう。

誰も候補者がいないことを確認すると、シフトは【即死】を無効に戻した。

「えっと・・・エルドさん、あのドラゴンなんですけど・・・」

『・・・あれは自業自得だ。 汝が気にする必要はない。 それとあれは好きにするがいい』

「・・・わかりました」

真紅のドラゴンのところに行くとシフトは【空間収納】を発動してその死体を空間に入れてから閉じた。

シフトは改めてエルドに向き直る。

「エルドさん、プラルタさんの案内で今日ここ(霊峰山)に来たのは僕が住む王国で起きた出来事を話すために来ました」

『プラルタの代弁者としてきたと言っていたな?』

「はい」

『話を聞こう』

それからシフトはエルドに王国での出来事を話し始めた。


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