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29.【鑑定】と【料理】

ミルバークの町に来てから1ヵ月後───

シフトたちは冒険者ギルドの依頼を受けたり、南西の草原でルマたちの修行と露天風呂を堪能(?)したりといろいろな出来事があった。

今日も南西の草原に出かけていると突然ベルが声を荒げる。

「あ、ご主人様!!」

「どうした? ベル?」

「【鑑定】のレベルが久しぶりに上がった」

ベルは笑顔で報告するとシフトやルマたちも素直に喜ぶ。

「ベル、おめでとうございます」

「ベル、よく頑張ったな」

「ベルちゃん、やったね」

「ベルさん、おめでとうですわ」

「ベル、おめでとう。 これでレベル3だよね? 今度は何がわかるようになった?」

シフトたちから祝福を受けるとベルが珍しく照れながらも鑑定を確認する。

「え・・・っと、物体(?)のステータスと簡単な説明かな?」

「試しに僕を【鑑定】してみて」

「え・・・っと、名前シフト 年上 レベルそこそこ・・・」

ベルはシフトのステータスをすらすらと話していく。

「なるほど、曖昧な部分はまだあるが調べられる範囲が広がったね」

シフトが考えているとフェイがトマトをベルに渡す。

「ベルちゃん、ベルちゃん、この野菜を【鑑定】してみて」

「うん、わかった。 えっと・・・名前トマト 植物ナス科 鮮度普通 栄養普通 甘味少し 塩味なし 酸味少し 苦味少し うま味普通 刺激なし 無毒」

その鑑定結果を聞いたフェイやルマたちが驚き、そして喜んだ。

「ベルちゃん、凄い! ベルちゃんの【鑑定】があれば食材の状態や食中毒にならなくてすむよ!!」

「これなら料理にも役立ちますよ、ベル」

「ベルがいれば素材の鮮度もわかるしな」

「ベルさん、買い物の時も役立ちますわ!」

ルマたちの誉め言葉にベルの顔は紅く染まった。

「・・・なんだか恥ずかしい・・・」

「誇って良いことだよ、ベル」

「ご主人様・・・ありがとう」

ベルはシフトに、ルマたちに笑顔を見せて感謝する。

「ねえ、ベルちゃん!! 今から料理作ってよ!!!」

「ご主人様・・・」

フェイの強引なやり取りに主人であるシフトに助けを求めるベル。

「フェイ、落ち着け。 料理を作るならまずはいつもの場所まで行ってからだ」

「は~い、じゃあ、行こう! ベルちゃん!!」

「! うん!!」

フェイはベルの手を掴むと走り出した。

その姿はシフトだけでなくルマたちの心も癒されていく。

「最初はどうなることかとおもったけどな」

「結果的には良かったと思います」

「ああ、才能が開花して役に立てているのだからな」

「頼られて凄く嬉しそうですわ」

「お~い、ご主人様! みんな! 早く早く!!」

フェイに急かされるとシフトたちは後を追うように歩き出した。


いつもの平原まで来るとベルは早速料理を開始する。

料理を始めた当初はシフトやユールが教えていたが、今では1人で最初から最後まで出来るようになった。

シフトたちから褒められるうちにベルも料理が好きになり、いつしか率先してやるようになった。

「今日は何を作るんだい?」

「肉つみれと豆とジャガイモのスープを作る」

「皮むきとか手伝おうか?」

「大丈夫、1人でできる」

ベルは【鑑定】を使い食材を次々と捌いていく。

危なっかしさが嘘のようである。

「えっと、これをこうして・・・」

「ベルさん、手際が良すぎますね」

「ああ、最初のころと比べると慣れた感じだな」

ユールと話しているとベルの料理はほぼ完成していた。


30分後───

「ご主人様、みんな、スープできた」

ベルがスープを分けていった。

「みんな、行き届いたか? それじゃ、いただきます」

ご主人様はスープを口にすると一言、

「うん、美味い!! ベル、これ美味しいよ!!!」

ルマ、ローザ、フェイ、ユールも口に入れてそれぞれ感想を述べる。

「うん、今回も美味しいです。 ベル」

「具材の味、スープの味、どれも良い感じだ」

「ベルちゃん、ますます腕を上げたね」

「うううぅ・・・あまりにも美味しいので食べ過ぎてしまいそうですわ」

ベルも一口食べてニッコリする。

「美味しい」

突然ベルの頭の中に声が響いた。

≪確認しました。 スキル【料理】レベル3解放 上級を取得しました≫

≪確認しました。 スキル【錬金術】レベル2解放 中級を取得しました≫

(あ、【料理】と【錬金術】のスキルレベルが上がった)

ベルはご主人様の服を引っ張る。

「ご主人様」

「どうした? ベル?」

「【料理】と【錬金術】のスキルレベルが上がった」

「ベル、おめでとう!!」

シフトがベルを褒めているとフェイとローザが暗い顔をする。

「ねえ、スキルレベルって上げるのに結構苦労するんだけど・・・」

「ああ、わたしも【火魔法】を何度も使用しているがなかなか上がらなくてな・・・」

「こればかりは才能だからあまり気にしないほうがいいよ」

そう、ベルの【鑑定】と【料理】は相性抜群なのだ。


食事を終えるといつものようにルマたちとの模擬戦と露天風呂を堪能したあと、ミルバークの町に戻る。

「よう坊主、今日は収穫あったかい?」

「ええ、今日はベルのスキルレベルが上がったんです」

「ほぉ、頑張ったな、嬢ちゃん」

「うん~♪」

シフトの発言と衛兵アルフレッドの労いにベルは照れていた。

「町や森の様子はどうですか?」

「問題ないさ。 いつも通りだ」

「良かったです。 それでは僕たちは宿に戻るので」

「おう、ゆっくり休みな」

アルフレッドに挨拶すると『猫の憩い亭』を目指して歩き始めた。

いつも通り道を歩いていると本屋が目に入った。

(ベルの【錬金術】のレベルが上がったし、【錬金術】関連の本を買ってみるか・・・)

「どうかされたんですの? ご主人様?」

考えているとユールが声をかけてきた。

「ちょっとそこの本屋に寄りたいんだけどいいかな?」

「ええ、いいですわよ。 ねぇ、みなさん」

ユールが答えるとルマたちも問題ないのか首を縦に振った。

「なら、ちょっと寄ってこう」

本屋に入ると店は薄暗く、奥では以前のように茶を啜っている老人がいた。

「おお、久しいのう。 ゆっくり見てってくれ」

シフトは錬金術書の棚を[鑑定石]で本を調べると・・・


初心者向け錬金術の本

品質:Dランク。

効果:必要最低限の錬金術に関する知識を身に付けられる。


まずはこの錬金術の本と、次は薬学書の棚を調べる。


初心者向けポーションの本

品質:Dランク。

効果:必要最低限のポーションに関する知識を身に付けられる。


この本も錬金術として使えそうだから購入しよう。

最後に鍛冶書の棚を調べる。


初心者向け鍛冶の本

品質:Dランク。

効果:必要最低限の鍛冶技術と武器の手入れに関する知識を身に付けられる。


これはローザに渡して【鍛冶】を覚えてもらおう。

店主のいるところに向かおうと料理棚を見ると、


中級者向け料理の本

品質:Dランク。

効果:手の込んだ料理レシピに関する知識を身に付けられる。


上級者向け料理の本

品質:Dランク。

効果:王宮料理人厳選、美味で手の込んだ料理レシピに関する知識を身に付けられる。


お菓子の本

品質:Dランク。

効果:焼菓子、蒸菓子、冷菓子、氷菓子などたくさんのお菓子に関する知識を身に付けられる。


この本たちはベルの料理に役立ちそうだな。

これもついでに買っていくか。

「おじいさん、この6冊いくら?」

「これかい? 錬金術の本は1冊金貨1枚、ほかの本は銀貨70枚だけどまとめて買うなら金貨4枚に値引きするよ」

「じゃあ、この6冊買うよ」

金貨4枚を支払って6冊の本を購入すると店を後にした。


『猫の憩い亭』のシフトたちがとっていた部屋に戻るとベルとローザを呼んだ。

「ベル、ローザ、ちょっといいか?」

「ご主人様、なに?」

「どうしたんだい?」

先ほど購入した錬金術とポーションと料理の本をベルに、鍛冶の本をローザに渡す。

「2人のスキルに合わせた本を購入したので渡しておくよ」

「錬金術とポーション? それと・・・料理!!」

「鍛冶? わたしに出来るのかな・・・」

「前にも話したけどローザにはコモンスキル【鍛冶】があるからね。 覚えておいて損はないと思うけど」

「しかし、鍛冶って工房でもないと覚えようがないと思うんだけどな」

「錬金術も」

シフトは2人の意見を聞いてその通りだなとおもう。

「なら明日冒険者ギルトに行って、この町で鍛冶や錬金術ができる環境や場所がないか確認してみよう」

「「畏まりました。 ご主人様」」

とりあえず明日ギルバートにでも聞いてみることにしよう。


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