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307.助太刀? 〔※残酷描写有り〕

シフトがドラゴンを鎮静化させるとそこに休息を終えたイーウィムが飛んでやってきた。

「シフト殿! もしかしてこれは・・・?」

「はい、ドラゴンです」

「ドラゴン・・・すごく大きいな・・・」

イーウィムは興味深くドラゴンを見る。

「イーウィム将軍閣下、お願いしたいことがあるのですが北門に行ってユールを王都内中心まで来るように伝言をお願いできませんか?」

「ユール殿をか? 別に構わないが、彼女が抜けたら北門の戦力が落ちるのではないか?」

イーウィムは軍のトップだけのことはあり、戦況をよく理解していた。

どの戦場でもまだ化け物たちが暴れている。

ユールクラスの実力者が抜ければその分戦力が大幅にダウンするからだ。

「イーウィム将軍閣下には申し訳ないがユールの代わりに北門をお願いしたいのですが・・・」

「わかった。 引き受けよう。 すぐにユール殿をここに来るように知らせてくる」

イーウィムはそれだけ言うと北門へと飛んで行った。

しばらくするとユールが走ってやってくる。

「ご主人様、お待たせしましたわ・・・って、これってまさか・・・」

「ああ、ドラゴンだ」

「遠くから大きい図体が見えて予想はしていましたが、本当にドラゴンですわね」

「話は後だ。 ユール、ドラゴンを【治癒術】で治してくれないか?」

シフトの発言を聞いたユールは驚いてドラゴンを見た。

「ご主人様、正気ですか? もし、このドラゴンが暴れでもしたら・・・」

「その時は僕が倒す。 今はこのドラゴンを治してくれ」

「・・・わかりましたわ。 お任せくださいまし」

ユールは【治癒術】を発動するとドラゴンの傷を治し始めた。

開いた傷口が塞がり、傷跡一つないくらい綺麗に治していく。

『はぁはぁはぁ・・・ん・・・ん・・・』

苦しそうな息遣いも今では穏やかになる。

ユールは万が一のことを考えて龍鱗は治さなかった。

シフトもユールの考えを察して言及はしない。

一通りの治療が終わりユールが息を吐く。

「ふぅ・・・ご主人様、終わりましたわ」

「ご苦労、ユールは引き続き北門を頼む」

「畏まりました、ご主人様」

ユールが北門へと走り去り、しばらくするとドラゴンが意識を取り戻した。

『・・・う、ううん・・・こ、ここは・・・』

ドラゴンが普通に言葉を喋ったことにシフトは驚いた。

「しゃ、喋った・・・」

『・・・あなたは・・・たしか・・・』

ドラゴンは気絶する前のことを思い出す。

『・・・身体が軽い・・・嫌悪感がない・・・あなたが助けてくれたの?』

「え? ああ、まぁ僕と仲間(ユール)で助けたけど・・・」

どうやらこのドラゴンは人間族である僕の言葉がわかるらしい。

「混乱しているところ悪いが、あなたは敵か? それとも・・・」

『わたしはあなたと敵対する意思はない』

「そうか・・・それなら大人しく帰ってくれれば助かるのだが」

ドラゴンは周りを見る。

そこかしこで人間たちと化け物たちが戦いを繰り広げている。

『ここは戦場ですか?』

「ここは今あの化け物たちが襲ってきてそれを迎撃しているところだ」

『そうですか』

ドラゴンは首を伸ばして王都を見渡す。

そして、ドラゴンの視線がある1ヵ所で止まる。

『あいつは!!』

先ほどまでの穏やかさから一変怒りを露わにする。

「どうした?」

『あいつはわたしの身体に異物(黒い球)を取り付けたの! 絶対に許さない!!』

ドラゴンが立ち上がりその方角に歩き出そうとする。

シフトは慌てて止めた。

「待て! 何をするつもりだ?!」

『決まっている! あいつをこの世から消し去る!!』

シフトは近くにある家の屋根まで素早く上るとドラゴンの視線の先を見る。

そこではベルとリーン、皇国の皇子チーローと対峙している悪魔がいた。

悪魔はその素顔を露わにしている。

「もしかするとベル・・・紫の髪の女の子と対峙している青黒い肌を持つ男か?」

『そうです! あいつ(悪魔)です!!』

「悪いがあの(悪魔)を殺させるわけにはいかない」

ドラゴンはシフトに対して警戒する。

『・・・あなたはあいつ(悪魔)の仲間か?』

「違う。 あの(悪魔)はこの戦いを仕掛けてきた者の1人だ。 できれば生け捕りにして情報を得たい」

シフトはドラゴンに本音を明かす。

『・・・わかった。 あなたに助けられた命だ、ここはあなたにあれ(悪魔)を譲るわ』

ドラゴンを宥めるのに成功したシフト。

だが、そこに化け物が現れてドラゴンに襲い掛かってきた。

シフトはドラゴンのところに戻ると龍鱗のナイフを構え、化け物の攻撃を躱して懐に入りそのまま首を刎ねると塵となって消滅する。

「大丈夫か?」

『問題ない。 今の化け物は?』

「元は人間かもしれない。 あなたみたいに黒い球を埋め込まれて、抵抗力がないために化け物になってしまったんだ。 助ける手段は今のところはわからない」

『なるほど、そういう意味ではわたしは運が良かったのですね・・・』

ドラゴンは自分も一歩間違えればああなるかも知れないという恐怖で身震いした。

そこに化け物たちが次々と現れる。

「あの(悪魔)を早く捕まえたいのにまた邪魔が入ったか」

『なら、わたしも手伝うわ』

言うが早いかドラゴンは右前足を空高く上げると1匹の化け物に向けて振り下ろした。

ダアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

王都中にドラゴンが踏みつけた音が鳴り響く。

ドラゴンが右前足を退けると化け物がぺちゃんこになり、そのまま塵になって消えていった。

「・・・」

『脆いですね』

襲い掛かろうとした化け物たちが『あれには勝てない』という本能で動きを止めてしまう。

その隙をついたわけではないが、ドラゴンは今度は左前足を空高く上げると横薙ぎに振るった。

化け物たちはドラゴンの鋭い爪で4分割になり次々と塵になって消滅していく。

今度は口を開けて火炎を吐こうとした。

シフトは慌ててドラゴンを止める。

「ストップ! ストオォーーーーーップゥッ!!」

『どうしたのですか?』

「炎はダメ! 王都が燃えるだろ!!」

取り付けた首でさえ王都の舗装された道を融解するほど火の威力が強かったのに、本家本元の火炎の息を吐こうものなら下手をしたら王都は火の海だ。

『・・・仕方ないですね』

ドラゴンは尻尾を横薙ぎに払う。

化け物たちに当たると血を吐き骨を折りながら吹っ飛ぶ。

あまりのダメージに化け物たちはよろめきながら立ち上がるが、そこで力尽きたのか倒れて消滅した。

ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!

そこで終われば良かったのだが、尻尾の範囲が広すぎたのか貴族街と平民街を隔てる壁にぶつかり粉々にする。

「・・・」

『・・・こ、ここでは少し狭くて尻尾を思うように振るえませんね』

ドラゴンは自ら破壊した壁を見なかったことにして今度は翼を広げる。

「ちょっ! やめろおぉーーーーーっ!!」

シフトの制止が間に合わずドラゴンは翼を羽搏かせる。

あまりの風力にシフトはその場で顔を覆うようにして自力で耐えたが、化け物はもちろんその近くで戦っていた者や家などが宙に舞う。

「まずい!」

風が収まるとシフトはすぐに【限界突破】を発動して自身の視力と身体能力を極限まで上げた。

それから【空間転移】を発動して空に舞い上がった人のところに転移すると捕まえては地上に再度転移する。

尋常じゃない早さで【空間転移】を繰り返し、上空に放り出された人たちをほとんど助けることができたが、それでも間に合わずに地面に激突したものが何名かいた。

シフトはすぐに【空間収納】からエクスポーションやハイポーションを大量に取り出すと地面に叩きつけられた人のところへ向かう。

辛うじて生きている者にはエクスポーションを、重傷者にはハイポーションを無理矢理飲ませてなんとか生命力を回復させる。

それでも数名は間に合わずにそのまま息を引き取った。

ドラゴンのところに戻ったシフトは【限界突破】を解除すると反動でその場に倒れて身体に激痛が走り動けない。

そのうえ、盲目で目が見えない状態だ。

『・・・えっとぉ・・・だ、大丈夫ですか?』

「・・・僕はなんとかね・・・だけど、何人かは命を落とした」

『・・・す、すみません』

シュンとするドラゴン。

そのあと化け物たちが襲ってくるかと思いきや誰もシフトとドラゴンのところには襲ってこなかった。

多分、ドラゴンの脅威を知った人も化け物も本能であそこには近づこうとはしない。

触らぬ神に祟りなし。

このドラゴンがまさにそうだ。

だけど、【限界突破】の反動が切れるまでの間、誰も襲ってこないのはシフトにとっては不幸中の幸いである。

おかげで視力も触覚も回復してなんとか立ち上がった。

「ふぅ・・・危なかった」

『あのぉ・・・無理はしないほうが・・・』

「いや、そうも言ってられないから」

シフトは龍鱗のナイフを拾うと自分の周りや空間を閉じていることを確認してからドラゴンに話しかける。

「僕はベルの加勢をしに行くから。 できれば、ここに来る化け物を相手にしてくれないか? もちろん()()()で」

『え、ええ、わかったわ・・・』

「それじゃ、頼んだよ」

ドラゴンに念を押したうえでこの場をお願いするとシフトはベルたちのところへ走り出す。

シフトは走りながら先ほどのドラゴンのことを考える。

(悪いドラゴンではない・・・ないのだがちょっとねぇ・・・)

悪気はない、だけど悪意と捉えられてもおかしくない行動が多すぎてシフトを悩ませる。

シフトは首を横に振ると気持ちを切り替えてベルとリーン、チーローがいるところに急いで向かった。


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