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303.スターリイン王都外戦 北門・南の断崖 〔※残酷描写有り〕

エルフの女長老が国王陛下に質問します。

「グラント国王、王都内はすでに化け物たちが暴れていますがどうやって各門へ移動すればよろしいですか?」

「城壁の通路を使うがいい。 そこなら無駄な体力を使わずに各門へ行けるだろう」

陛下が近くにいた側近の衛兵に目をやります。

「皆様、こちらです」

衛兵はわたくしたちを連れて建物から出ます。

上空を見上げるとご主人様とイーウィム将軍閣下がすでに空中の敵と衝突していました。

ご主人様は化け物たちの動きを封じて地面に墜落させて、イーウィム将軍閣下は【風魔法】で化け物たちを撃墜しています。

特にイーウィム将軍閣下の【風魔法】が広範囲の化け物たちを一掃しているのが目立っていました。

「随分と派手に戦っているな」

「ムウ・・・ヤリマスネ」

わたくしたちは一度見ているので然程驚きませんが、タイミュー女王陛下が危機感を覚え、ほかの要人たちは感心して見ています。

「皆様、そろそろよろしいでしょうか?」

衛兵の言葉に我に返るとわたくしたちは建物の南に移動します。

そこに城壁があり、扉が1つありました。

「この扉の向こうには城壁の上に行く階段があります。 そこを通っていけば北門・東門・西門に辿り着けます」

衛兵が扉を開けると先ほどの言葉通りに上り階段が設置されていました。

わたくしたちは階段を上ると城壁の上に到着します。

眼下には化け物たちと対峙しているモターさんとメーズサンさんが率いる部隊が展開されていました。

「それでは私はモター辺境伯とメーズサンさんのところに行きます」

「わしも行ってくるぞ」

それだけいうとルマさんとドワーフ王が城壁から飛び降ります。

ルマさんは途中【風魔法】を発動して落下速度をぎりぎりまで落とすことで2人とも無事に地面に着地しました。

「それじゃぼくも行くよ」

「ヤヲトドケニイキマス」

「それでは失礼します」

フェイさんと大量の矢筒を持ったタイミューさん、それに公国の王子が西門側に走っていきます。

そちらを見ると地上からものすごい数の矢が上空へと放たれると空飛ぶ化け物たちや西側の化け物たちに降り注いでいました。

敵だけ射貫いて味方には当てないとは・・・アルデーツさんの腕が如何にすごいかがよくわかります。

「私たちも行きましょう」

「「「はい」」」

わたくしはローザさんとエルフの女長老と帝国の皇子と共にまずは東門を目指します。

程なくして東門に到着するとそこではギューベ辺境伯とクーリアさんが率いる部隊が化け物たちと応戦していました。

「加勢しに行くぞ」

「ええ、行きましょう」

ローザさんとエルフの女長老が城壁から飛び降りて地面に着地するとすぐに加勢しました。


残ったわたくしと帝国の皇子が北門を目指して移動しています。

しばらくすると北門が見えてきてそこではギルバートさんとサリアさんが率いる部隊が化け物たちとすでに戦いを始めていました。

わたくしたちは城壁から飛び降りると地面に着地します。

「ギルドマスター、サリアさん、援軍に来ましたわ」

「ユール君、それに帝国の皇子殿下」

「助かりますわ」

「助太刀する」

ギルバートさんとサリアさんは険しい顔をしています。

「あの化け物だけど想像以上にタフで斬られても再生する」

「倒せば塵になるから助かります」

あの化け物・・・たしかドワーフの国で盗掘団の面々が化け物化した姿と同じです。

「あの化け物ですがドワーフの国で戦ったことがありますわ。 首と胴を刎ねれば塵になって消滅しますわ」

「ユール君、それは本当かい?」

「間違いありませんわ。 ほかにも高火力の攻撃を何度も叩けば同じように倒せましたわ」

わたくしは思い出す、フェイさんが【風魔法】を腕に纏った攻撃を何度も与えて、塵になって消えた憐れな化け物を・・・

「高火力か・・・試してみるか」

すると帝国の皇子は国王陛下から借りた槍を地面に置くと腰にある魔法銃を取り出します。

「殿下、それは魔法銃ですね?」

「そうだ、ユール殿は物知りだな」

「わたくしも帝国で殿下の父上であらせられる皇帝陛下御愛用の店で銃を購入しましたから」

「なら知っていて当たり前か」

皇子はマジックバックから魔法銃用の弾丸を取り出すと【火魔法】を発動します。

火はすべて弾丸に吸収されると真っ赤になりました。

その弾丸を魔法銃にセットすると遠方に密集している化け物に向けて発砲します。

パアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

弾丸は化け物に着弾すると身体の中から燃え始めました。

ゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーッ!!!!!!!

化け物は火達磨になり近くにいた化け物たちに炎が引火していきます。

効いていると判断した皇子は弾丸に【火魔法】を籠めてはその都度発砲しました。

化け物に着弾すると燃え広がりすべてを燃やし尽くす・・・

皇子の中ではそうなる予定だったのでしょう。

しかし、炎が消えるとそこには酷い火傷を負って尚生きている化け物がいました。

更に時間が経つごとに身体の傷や火傷がみるみる回復していきます。

「銃が効かない?」

「いえ、効いていますわ。 ただ火力不足なだけですわ」

「火力不足か・・・それではこれは使い物にならないな」

皇子が銃をホルダーに戻そうとします。

「殿下、お待ちください。 その弾丸をわたくしに貸していただけませんか?」

「? ああ、わかった」

わたくしは皇子より弾丸を受け取ると【光魔法】を発動して浄化を弾丸に籠めます。

「この弾丸でもう1度お願いします」

「わかった」

皇子は弾丸を受け取ると魔法銃にセットすると化け物に向けて発砲します。

パアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

弾丸は化け物に着弾すると身体の中から光が溢れ出します。

そして、化け物は耐え切れずにそのまま塵になり消滅しました。

「「「!!」」」

「殿下! やりましたわ!」

塵となって消えていく化け物を見ながらギルバートさんとサリアさんはわたくしに質問します。

「ユール君、あれは一体・・・」

「ユール様、今のは何をしたのでしょうか?」

「あれは【光魔法】で浄化をイメージしたのですわ」

「「「浄化?!」」」

獣王国での川の浄化できたからもしかしてと試してみましたが、どうやら有効のようです。

「これならわたくしも役に立てそうですわ」

「いや、十分に役に立っているから」

このあとわたくしは弾丸に浄化を付与したり、龍鱗のナイフで攻撃したり、怪我人を治療したりと忙しくも活躍をしました。






私はご主人様の命令で南の断崖で応戦中のモター辺境伯とメーズサンさんのところに援軍として向かいます。

同行者はドワーフ王です。

本来なら東門か西門を経由して南の断崖に行くのが普通ですが、接敵してすでに戦いが始まっている状況では少しの時間のロスが戦況を大きく変えるでしょう。

敵である化け物を見ると先日ドワーフの国で戦った者と同じです。

「それでは私はモター辺境伯とメーズサンさんのところに行きます」

「わしも行ってくるぞ」

ローザたちにそれだけいうと私とドワーフ王は躊躇なく城壁から飛び降りました。

私は落下中に【風魔法】を発動して2人の落下速度をぎりぎりまで落とすことで無傷で地面に降り立ちます。

「モター辺境伯、メーズサンさん、加勢に来ました」

「わしも戦うぞ」

突然上空から降りてきて現れた私たちに驚くモター辺境伯とメーズサンさん。

「ルマ殿! ドワーフ王!!」

「なるほど! わかりました!!」

モター辺境伯はまだ驚いていたが、メーズサンさんはこれから起こる未来を視て納得したのだろう。

私は【氷魔法】を発動すると化け物たちの足元から氷らせていく。

ドワーフ王は腰にあるオリハルコンの剣を抜くと身動きできなくなった化け物の首を刎ねる。

斬首された部分から血が勢いよく流れた。

「皆、聞け! その化け物たちは首を切断すれば倒すことができる! 胴体の攻撃ではなく首を狙え!!」

ドワーフ王の言葉にモター辺境伯とメーズサンさんを始めとした多くの兵が氷りついて動けない化け物の首を狙って攻撃を仕掛ける。

だが、ドワーフ王のように一撃で仕留めることはできないでいた。

それはモター辺境伯、メーズサンさんを始めとした者たちが持つ武器の性能が違うからだ。

全員が全員オリハルコンの武器を持っていればこの戦は楽勝なのだが、材料が限られていて加工にとんでもない技術が必要なので量産は不可能だろう。

私は【氷魔法】で化け物たちの足元を次々と氷らせて、隙ができたところにモター辺境伯やメーズサンさんたちが首を刎ねる。

ドワーフ王は必ず1対1で化け物と戦い、確実に倒していった。

しばらく戦っていると急にメーズサンさんの動きが悪くなる。

危険を感じた私はすぐにメーズサンさんのところまで走った。

「メーズサンさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。 未来視を使いすぎただけですから」

よく見るとメーズサンさんの顔色は頗る悪い。

「この症状・・・もしかして魔力切れ? ちょっと待ってください」

私はマジックバックからマナミドルポーションを取り出すとメーズサンさんに渡した。

「これはマナミドルポーション? こんな高価な物は・・・」

突き返そうとするが私は受け取りを拒否する。

「今はこの王国の危機を救うのが先です」

葛藤したのちメーズサンさんはマナミドルポーションを飲んだ。

顔色が良くなり未来視も問題なく発動させられたのだろう。

「ルマ殿、ありがとう。 これでまた戦える」

「ダメです。 あともう3本飲んでください」

「え゛?」

敵はまだまだ大量に襲ってくる。

こちらが有利になるまでは1人でも多くの味方が生き残っていてもらわねば困るのだ。

特にメーズサンさんの未来視は戦況を大きく左右する能力といっても過言ではない。

「し、しかし・・・」

「この中では未来が視えるメーズサンさんは大変貴重です。 場合によってはこの場にいる誰よりも必要な能力です。 あなたがこの部隊の生命線なのですから」

「ルマ殿の言う通りだな、メーズサン」

私の言葉にモター辺境伯が同意する。

「モター様・・・」

「金なら心配するな、私が払う。 それよりも今はメーズサンの能力が使えなくなるほうが大損害だ」

「・・・わかりました」

メーズサンさんはマナミドルポーション3本を一気に飲んだ。

これで魔力がほぼ全回復しただろう。

「モター様、ルマ殿、必ずやこの戦勝利に導いて見せます」

「その言葉頼もしいぞ」

「はい、必ず勝ちましょう」

私たちは勝利を約束して再び戦場で化け物たちと戦うのであった。


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