28.露天風呂
食事が終わりさて何をするかと考えているとローザとフェイが話しかけてきた。
「ご主人様、模擬戦をしないか?」
「昨日のゴブリン討伐で如何に身体が鈍っていたか思い知らされたよ」
「そうだな・・・」
シフトは周りを見渡す。
「いいよ、ここなら誰にも見られてないし相手をしよう」
「それじゃ・・・」
「僕対ローザたち5人かな」
それを聞いた5人は怪訝そうにシフトを見る。
「ご主人様の強さは昨日拝見させていただきましたが・・・」
「人数で勝ってる」
「さすがに5人相手では・・・」
「ぼくたちを甘く見すぎだよ」
「気が引けますわ」
「なら、僕に勝ったら僕ができる範囲で1人1つずつ願いを叶えよう」
その言葉を聞いてルマたちの瞳の色が変わった。
「皆さん、ご主人様を完膚なきまでに叩きますよ」
「絶対勝つ」
「やる気が出てきたよ」
「今度こそぼくのアプローチを受けてもらうんだから」
「その言葉後悔させてあげますわ」
(みんな殺る気・・・もといやる気満々だね?)
みんなで荷物を端の方に移動させてから広場の中央に集まる。
「さて、では始めるとするか」
シフト対ルマたち5人の壮絶(?)な模擬戦が始まった。
前衛をローザとフェイ、中衛にベル、後衛にルマとユールの陣営だ。
(自然に役割分担がわかっているようだな)
先制攻撃はルマの【風魔法】での風の刃だが当たると痛いので横に避ける。
避けた先にローザとフェイが同時攻撃を仕掛けるもバックステップで後ろに下がる。
ユールの【光魔法】による目暗ましと同時にベルもナイフを持って懐に入って攻撃してくるがこれも横に避ける。
(見事な連携だ。 これなら上位種ゴブリンは厳しいけど中位種ゴブリンなら対応できそうだな)
その後もルマたちの激しい攻撃は続くがシフトは回避したり、受け流したりした。
1時間後───
5人とも体力と魔力の限界でその場に倒れていた。
「・・・はぁはぁはぁ・・・」
「・・・もう無理・・・」
「・・・強すぎる・・・」
「・・・あれだけ攻撃したのに捉えることができないなんて・・・」
「・・・これ以上はもう・・・」
「みんな現時点では良い連携だったよ。 だけどこの程度ではとても僕を倒すのは無理だね」
そもそもシフトとルマたちの実力差がありすぎるので勝てないのは仕方ないだろう。
「敗北を認めるしかありませんね」
「負けた」
「足元にも及ばないか」
「くーやーしーいー」
「降参ですわ」
「さて落ち着いたら町に戻ろうか」
ベルの【料理】やみんなの強さもわかったし今回は悪いことばかりではない。
「ご主人様、少しよろしいですか?」
「どうした、ルマ?」
「汗をかいたのでここで即席のお風呂を作って入りたいと・・・」
「わたくしも入りたいですわ」
ルマの一言にユールが飛びつき、ベルたちも首を縦に振る。
「構わないが魔力は足りるかい? 念のためマナローポーションかマナミドルポーションを使うか?」
「魔力は若干余裕がありますので問題ありません」
「なら好きにするがいいさ」
「ありがとうございます。 ユールも手伝ってくれますか?」
「お任せですわ」
ルマは【土魔法】で土を掘り起こしたあと、凹んだ部分の土を固めて5~6人は入れる浴槽を完成させた。
次に【水魔法】を発動して、水を浴槽に注いだが6割ほどしか満たせていなかった。
「ふぅ・・・魔力が空でさすがに限界です」
続いてユールが【光魔法】を発動して水を温め始めたが、水からはわずかに湯気が立ち昇ったくらいだ。
「もう魔力がありません・・・疲れましたわ」
こうして露天風呂(?)は完成した。
「それじゃ、僕は向こうに・・・」
「一緒に入ろう」
いつの間にかベルがシフトの服を掴んで離さない。
「いやさすがにそれは・・・」
「ダメ?」
今にも泣きそうな顔でベルが訴える。
「・・・わ、わかったよ・・・」
「流石ですわ。 ベルさん」
「ご主人様とお風呂~♪」
「さぁ、みんな風呂に入る準備をしようじゃないか」
ルマたちは躊躇いもなくその場で服を脱いで全裸になる。
「ほら、ご主人様も・・・」
「・・・仕方ないな・・・」
ルマたちに急かされてシフトも全裸になるとみんなで即席の露天風呂に入った。
「6人だとちょっと・・・」
「狭い」
「お湯がちょっと温いかな?」
「まぁ、我慢すれば・・・」
「この大きさでは仕方ないですわ・・・」
文句を言いつつもみんななぜか幸せそうな顔をしていた。
(まぁ、僕はどちらかというと落ち着かないかな・・・)
そして見てはいけないと解っていてもついルマたちの身体(特に胸)に目がいってしまう。
ルマたちも気付いてはいるがあえて指摘しないということは本人お墨付きと解釈しよう。
なら改めて堂々と見るか。
ルマは出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでるナイスバディな身体しているな。
ベルはルマとは逆に幼児体系で・・・とりあえず将来に期待しよう。
ローザは胸もそこそこにスレンダーな体型をしている。
フェイは残念ながらこの中で一番中途半端な身体をしているな。
ユールは胸はルマに劣るものの身体つきはルマに勝るとも劣らない感じだ。
胸の大きさの順番はルマ>ユール>ローザ>フェイ>ベルの順番だな。
「・・・(赤面)」
「?」
「おやおや」
「く、ぼくだっていつかは・・・」
「うううぅ・・・」
ベルとローザ以外は顔を真っ赤にしている。
流石に堂々としすぎたかな・・・
「じゃぁ、僕はそろそろ出るよ」
風呂から出ようとすると、
「もう少し入ろう」
ベルが何気にシフトの腕を掴んだ。
本来ならベルの腕力ではシフトをどうすることもできないがなぜか身体が引っ張られてバランスを崩してうつ伏せに倒れた。
バシャン!!
勢いあまってお湯が跳ねる。
「うう・・・痛てて・・・」
むにゅ・・・
(あれ? この感触って・・・まさか?!)
「きゃぁ!!」
「ひゃぁ!!」
ローザとフェイが可愛い悲鳴を上げた。
目を開けるとそこにはベルの身体があった。
手はそれぞれローザの胸とフェイのお尻を掴んでいた。
(やばい! 早く退かないと!!)
「?」
「え・・・っと、ご主人様・・・できれば手を放してほしいんだが・・・」
「さ、さすがのぼくも恥ずかしいかな・・・」
「す、すまん・・・今退くから・・・」
慌てて起き上がろうとするが、ベルは自分の胸に(結果として)飛び込んできたシフトの頭を嬉しそうに両手で抱いた。
「ご主人様♪」
「ちょっ?! ベル!! 頼むから離して!!!」
「ベル、離しなさい!!」
「ベルさんにはまだ早いですわよ!!」
そのあと、ルマとユールの助けを受けて何とか風呂から出ることができたシフトであった。




