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297.嵐

国際会議開催まであと7日。

その日は朝から空はどんよりとしていた。

いつものように朝市に来ていたが、シフトは朝から嫌な予感がしている。

「何か嫌な雲行きだな」

「本当ですね」

シフトのつぶやきにルマが頷く。

その時ベルが身震いする。

「寒気を感じた」

「大変! ベル! 早く王城に戻りましょう!!」

マーリィアがベルを心配して近づく。

タイミューもいつもなら落ち着いているが今日は尻尾を逆立てている。

「ナニカシラナイケド、シッポガサカダチマス」

「大丈夫? 女王陛下(タイミューちゃん)?」

フェイがタイミューを落ち着かせる。

シフトだけでなくこの場にいるルマたちやマーリィア、タイミューも不安を拭いきれない。

「みんな、とりあえず王城へ戻ろうか?」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

「私も賛成です」

「ワタシモデス」

ルマたちだけでなくマーリィアもタイミューも賛同する。

平民街と貴族街の境目に到着した時、それは唐突に起こった。

東門、西門、北門からそれぞれ豪華な馬車が何台もやってくる。

シフトとマーリィアが馬車の旗を見る。

「あれはナンゴー辺境伯、モター辺境伯、ギューベ辺境伯、それに・・・リーン名誉伯爵!!」

「あっちの旗は帝国、皇国、公国、ドワーフの国、それとあれは何だっけ?」

「ご主人様、多分ですがエルフの里かと」

シフトたちが馬車を見ているとどの馬車もその場で止まり扉が開かれる。

ギルバートにサリア、ナンゴーにアルデーツ、モターにメーズサン、ギューベにクーリア、リーン、帝国の皇子エアディズ、皇国の皇子チーロー、公国の王子、エルフの女長老エレンミィア、ドワーフの鍛冶王ラッグズ、そしてイーウィム。

公国の王子を除けばシフトが関わったことがある人物たちが勢揃いである。

ギルバートとサリアが挨拶してきた。

「やぁ、シフト君」

「お久しぶりです、シフト様」

ナンゴーとアルデーツも気楽に声をかける。

「よう、シフト」

「久しぶりだな、シフト」

モターとメーズサンも挨拶する。

「シフト、久しいな」

「シフト、久しぶりだ」

ギューベとクーリアも礼儀正しく挨拶した。

「シフト殿、久しぶりです。 ギューベです」

「シフト殿、久しぶりです。 クーリアです」

リーンはベルのところにやってくると抱き着いた。

「ベルウウウウウゥーーーーーッ!! 久しぶり!!!」

「くっつくな、離れろ」

エアディズがシフトの前に来る。

彼は以前帝国の城でシフトに戦いを挑んだことがあった。

「お久しぶりです。 今回は皇帝陛下の命で代理としてやってきました」

チーローも負けじとシフトの前に来る。

「久しいな、シフト殿。 今回も天皇陛下の命でやってきた」

公国の王子はシフトに対して頭を下げる。

「初めまして、ネクトンと申します。 父王よりあなたのことは聞いています」

ラッグズは堂々とした態度でシフトに話しかける。

「2ヵ月ぶりだな、元気そうで何よりだ」

エレンミィアも余裕な態度でシフトに話しかけた。

「シフト様、息災で何よりです」

イーウィムも少し緊張した面持ちでシフトに挨拶する。

「シフト殿、久しぶりだな。 翼人族を代表して今回参加することになった」

王国の重鎮や各国の要人が勢揃いである。

普通ならこんなところで不用心だが、ここにはギルバートをはじめアルデーツ、メーズサン、クーリアといったハイレベルの護衛たちも控えていた。

こんなところに攻め込んでくるのは『この手に自由を(フリーダム)』みたいな連中でもない限りそうはいないだろう。

ベルを見るとすでにマーリィアとリーンが激突していた。

「リーン名誉伯爵、ベルが迷惑をしています。 離れてはいかがですか?」

「マーリィア王女殿下、失礼ですがベルは私の妹です。 これは姉妹のスキンシップです」

「その割にはベルが嫌がっていますわ」

「殿下の目は節穴ですか? (ベル)が私のことを嫌うわけないじゃないですか」

ベル越しにマーリィアとリーンの間に火花が散っていた。

シフトも他人事ではない。

タイミューが最大の警戒心でイーウィムを見ていた。

イーウィムもタイミューが只者ではないと察する。

「そちらの獣の恰好のお嬢さん、私に警戒しなくてもいいんじゃないかな?」

「トテモキケンナニオイヲカンジル」

タイミューとイーウィムはそれぞれ牙を隠すこともなくひけらかす。

エアディズ、チーロー、ネクトンが直接シフトに話しかける。

「シフト殿、どうだ? 朕と一緒に王城まで行かないか?」

「皇国の皇子、悪いがシフト殿は帝国が相手をするから引っ込んでいてくれないか?」

「シフト殿は公国が責任を持ってエスコートします」

ラッグズとエレンミィアも負けじと参戦する。

「シフト殿、そやつらは放っておいてわしと一緒に行こう」

「何を言うのですか? シフト様は私と一緒に行くんですよ」

そんなやり取りを見てナンゴー、モター、ギューベが話し合う。

「あー羨ましいよなー、なんでみんなシフトにお熱なんだよ」

「ナンゴー、お前と違ってシフトは役立つ人材だからだ」

「そうですね。 私も部下に欲しい逸材です。 ナンゴーは参戦しないのですか?」

「俺だって欲しいに決まっているだろが!!」

主たちがヒートアップしているが止めようとしないアルデーツ、メーズサン、クーリア。

「実際にシフトが来てくれればパーナップももう少し真面になるのだがな」

「たしかにデューゼレルに来てほしいな」

「モオウォークの治安が良くなります」

そして、完全に蚊帳の外なギルバート、サリア。

「シフト君、人気者だね」

「そうですね、このままだと誰かに取られそうですね」

「アピールしても最後に決めるのはシフト君だ」

「結果、どこに行くのかは本人しか知らないと」

「そういうこと」

結局この混沌(カオス)な状態を収集する人物はおらず、グラントが来るまで続いた。


王城の会議室。

そこに今回の問題になった面々が集められた。

当事者であるシフトたちももちろんその場にいる。

グラントが話を切り出した。

「それであのような場所で何を騒いでいたんだ?」

マーリィアとリーンがすぐに答える。

「私とベルの時間をリーン名誉伯爵が邪魔をしたのです」

「私と(ベル)の再会をマーリィア王女殿下が邪魔をしたのです」

マーリィアとリーンがお互いを睨み合う。

「リーン名誉伯爵、あなたの発言は間違っています」

「マーリィア王女殿下、失礼ですが横槍を入れたのはあなたではないですか?」

マーリィアもリーンも一歩も引かない。

まさに一触即発な状態だ。

見兼ねたグラントが2人に声をかける。

「2人とも、ベル嬢が困っているじゃないか。 マーリィアもここ数日はベル嬢を独占できたのだ、少しはリーン名誉伯爵に譲ることをしてもいいのではないか?」

「す、数日?! 数日もマーリィア王女殿下はベルと一緒だったの?!」

「そ、そうですわね。 ベルの手料理を堪能できたし、少しくらいは譲ってもよろしくてよ」

マーリィアの発言を聞いたリーンはあまりの衝撃に膝から崩れ落ち四つん這いになる。

「ベ、ベルの手料理を堪能・・・」

マーリィアはさらに追い打ちをかける。

「ええ、とても美味しかったですわ」

リーンは幽鬼のように立ち上がるとベルにお願いする。

「・・・ベル、私もベルの料理を食べたい!」

「ダメですわ! 今ベルはお父様の来客として王城に泊まっているのですから連れて行くことはできませんわ」

それを聞いたリーンがグラントに願い出る。

「国王陛下、私もここ(王城)に滞在することを許可願いたいのですが?」

「許可しよう」

グラントはリーンにあっさりと許可を出した。

本来なら貴族街にヴァルファール家の館があるので、リーンはそこに滞在するのが普通だ。

だが、グラントはリーンを王城に滞在させることで懐が広い部分をシフトに見せた。

つまりシフトへの心証を良くするための点数稼ぎにリーンは利用されたのだ。

そうとは気付かないリーンは喜びベルに抱き着き、マーリィアはよよよと泣き崩れる。

これでベルの問題に関しては一応終わった。

そして、次は大本命であるシフトの番である。

名乗りを上げた人物はナンゴー、モター、ギューベ、各国の要人、それに参加はしてないがグラントとギルバートもだ。

すでに敵対心を露わにしているのは各国の要人たち。

先手を打ったのはナンゴーだ。

「シフト、俺のところにくればパーナップは安泰だ。 黙って俺のところに来い」

ナンゴーの発言にモターとギューベが突っ込む。

「ナンゴーのところに行ったら使い潰されるぞ。 デューゼレルに来て私を手伝ってくれないか?」

「そうですね、ナンゴーはシフト殿も知っての通り最悪な性格です。 モオウォークに来て私と一緒に働きませんか?」

「お前ら! 何好き勝手なことを抜かしているんだ!!」

「「事実でしょ?」」

「うぐぅ!!」

モターとギューベの突っ込みにナンゴーは精神的ダメージを受ける。

そこにエアディズ、チーロー、ネクトンも参戦してきた。

「貴族の一配下ではシフト殿があまりにも可哀想だ。 帝国が責任をもってシフト殿に良いポストを与えるぞ」

「皇国では天皇陛下より大臣のポストを用意している」

「大臣のポストを用意してるのは貴国だけではないぞ。 公国もだ」

さらにタイミュー、イーウィム、ラッグズ、エレンミィアが加わる。

「大臣のポストならわしならすぐに手配できるぞ」

「わ、私とけ、け、結婚すれば大臣と同じ立ち位置にある将軍の座を得られるぞ」

「ワタシトケッコンスレバオウサマニナレマス」

「あら? なら私と結婚すれば長になれますわ」

各国の要人たちは搦め手でシフトを落とそうとする。

特にタイミュー、イーウィム、エレンミィアは女の武器を使ってきた。

酷くなってきたのでシフトが止める。

「皆さんの好意はありがたいけど、僕は今のところは誰の下にも就く予定はない。 それに嫁ならすでにルマたちがいるから」

それを聞いたグラントを始めとした王国内の重鎮たちは予想通りであるとあまり気落ちはしなかったが、各国の要人たちはかなり凹んで落ち込んだ。

そんな中、何人かのお腹が鳴る音が聞こえた。

グラントはその場の全員に提案する。

「とりあえずここらで話は一旦終わりにしよう。 朝食がまだなのでよければ貴公らも一緒に食事をしないか?」

その場にいる全員が頷く。

「うむ。 ベル嬢、申し訳ないがこの場にいる全員分の朝食を用意できないか?」

「わかった」

ベルが快諾するとマーリィアとリーンが目を輝かせる。

シフトたちは食堂へと移動して待っていると、1時間ほどして調理を終えたベルが料理を持ってやってきた。

このあとシフトたちはベルの作った朝食に舌鼓を打つ。

因みにベルの料理を食べた要人たちはシフトだけでなくベル獲得にも動いた。


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