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272.公爵の城、炎上する

「騒がしいと思えばお前たちがこの騒動の原因か」

男の右腕にはあの奇妙な紋様が刻まれていた。

『フェイ、あいつか?』

『はい、ご主人様。 もう1人いるので気を付けてください』

『わかった』

シフトとフェイが小声で会話しているとベルが支配人の書いた請求書の写しの予備を見せる。

こうなるだろうと予測したシフトたちは請求書の予備を何通も支配人に書かせた。

「カジノで支払えない分の金額を受け取りに来た」

「それを聞いて『はい、そうですか』と渡すと思うか?」

公爵の言葉にベルは首を横に振る。

「わかってるじゃないか」

「それなら力尽くで貰っていく」

シフトたちは罠と知りつつも部屋の中央まで歩いていく。

公爵が【火魔法】を発動してシフトたちに火球を放つ。

シフトは胸当てに埋め込まれた魔石に魔力を流して氷の壁を展開した。

火球は氷の壁に触れると炎上したのちに焼失する。

「ほう、やるではないか」

『ならばこれならどうかな?』

突然公爵とは別の声が聞こえると突然空間が歪みそこから火球が放たれた。

それも1つや2つではなくいくつもの火球が全方向から時間差でシフトたちを襲う。

シフトは咄嗟に【次元遮断】を発動してシフトとルマたちを守るように外界から隔離した。

その直後に火球がシフトの張った結界に触れて炎上する。

結界の外では何十もの火球が未だにシフトたち目掛けて放たれていた。

「うわぁっ・・・何この火球の数・・・殺す気満々じゃん」

「お金を渡したくないのがわかる」

ベルとフェイが相手の殺意にドン引きする。

「とりあえず火球が止むまで待つか・・・みんな、いつでも戦闘できる準備はしておいて」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

それからしばらくすると結界の外の様子が見えた。

結界の境目は炎で絨毯が燃え尽きている。

視界が戻ったことで公爵がこちらを見て驚愕していた。

『───! ───!! (貴様ら! なぜ生きている!!)』

何かを叫んでいるようだが、【次元遮断】によって完全に遮音しているので、何を言っているのかわからない。

結界を解こうとした瞬間に再度同じ攻撃が飛んできたのでそのままにする。

今度の攻撃は先ほどよりもさらに激しい。

だが、シフトの【次元遮断】による結界を破壊する威力は全く無かった。

相手の無駄な攻撃が終わると公爵が激怒している。

『───?! ───!! (なぜだっ?! なぜ生きているんだあああああぁーーーーーっ!!)』

公爵が地団太を踏んでいるとフェイがあることに気付いた。

「ねぇ、ご主人様」

「なんだ、フェイ?」

「あれってまずくない?」

フェイが部屋のある一部を指さす。

シフトたちは釣られてみるとそこには先ほどの炎が調度品を燃やし始めた。

「あれはまずいな」

「早く鎮火しないと・・・」

しかし、結界の外はまたも火球による炎に包まれる。

この状態では結界を解いて炎を消すことはできない。

「仕方ない・・・炎が消えるまで待つか」

シフトたちはしばらく炎が消えるまで結界の内側で待つことに決めた。

そうしている間に公爵の城に火の手が回る。

その炎は扉を壁を天井を床を燃やしていく。

そこでようやく公爵が今の状態を理解する。

急いでそこから逃げようとするが天井とかが崩れてきて逃げ道がどんどん失われていく。

シフトたちの上にも耐えられなくなった天井が落ちてくるが、結界により崩落した天井のほうが粉々に砕けて消えた。

頭上には空が見える。

「あ」

ベルが声を上げると同時に公爵の上に天井が落ちてきた。

公爵は逃げようと横っ飛びするが、運悪く足に崩落した天井がのしかかる。

『───!! ───! ───!! (ぎゃあああああぁーーーーーっ!! 足がっ! 足がっ!!)』

公爵の足はどうでもいいが、『この手に自由を(フリーダム)』の情報源を手に入れるチャンスをむざむざ手放すつもりはない。

火球が止むとシフトはルマとフェイに命令する。

「ルマ、フェイ、今から結界を解くからルマは【水魔法】で、フェイは【風魔法】で竜巻のように螺旋状に展開しろ。 その間に僕はあの公爵を捕まえる」

「「畏まりました、ご主人様」」

「それじゃ結界を解くよ、3、2、1、・・・」

シフトが結界を解いたと同時にルマは【水魔法】をフェイは【風魔法】を発動させてそれぞれ水と風を螺旋状に展開する。

これにより内部にいるシフトたちには熱波と熱風は襲ってこなかった。

シフトは倒れている公爵に素早く近づくと襟を掴み、腕力で無理矢理引っ張る。

当然足に痛みを感じる公爵は激痛で叫ぶ。

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」

「黙れ」

「ぐはぁっ!! ・・・」

シフトは公爵の顎を拳で軽く叩くと脳震盪を起こしてそのまま気絶した。

すぐにルマたちのところに戻るとルマとフェイはそれぞれ【水魔法】と【風魔法】を止める。

シフトも再び【次元遮断】を発動して外界から隔離した。

「ルマ、フェイ、ご苦労」

「「ありがとうございます、ご主人様」」

シフトは【空間収納】を発動して、ベルとフェイが作った魔力を封じる首枷と普通のロープを取り出して空間を閉じる。

魔力封じの首枷を公爵の首に着けてからロープで手足を拘束した。

念のため手足の腱を切って、猿轡をしておく。

「それでご主人様、これからどうやってここを脱出するんだい?」

ローザが脱出についてシフトに聞いてくる。

「そうだなぁ・・・はっきりいえば外に脱出しようとせずにこのまま結界の中にいるのが一番安全なんだがな・・・」

「ですけどここは3階ですわよ?」

「「「「「・・・」」」」」

ユールの指摘にシフトたち全員が固まる。

「落下したらまずいじゃん!!」

「逃げる!」

「待て! 逃げるといってもご主人様の力で守られているこの場所からどうやって逃げるんだ?」

「それはご主人様が結界を解いてその隙に逃げるしかありませんわ!」

「この炎と崩落の中をですか? 正気の沙汰じゃありません!」

ルマたちはパニックを起こしている。

シフトはなんとか脱出方法を考えていると無情にも今シフトたちがいる階の床が崩落した。






わしが5人の兵と共に公爵の城へと到着すると、門の前には兵隊長を含めた6人の兵が公爵の衛兵たちを見張っている。

「こっ・・・おっほん! 無事合流できたようだな」

兵隊長は危うくわしのことを国王というところであった。

今は敵の居城前なので妄りにわしのことをいわないよう気を使ったのだろう。

「お疲れ様です、兵士長。 こちらは兵士長が行ったのでありますか?」

「いや、私たちが来た時にはすでに終わっていた」

それはシフト殿たちがここにいる衛兵たちを全員無力化したことを意味する。

(味方にするとこれほど頼もしいとはな・・・敵にするともっとも危険でもあるのだが・・・)

「小官たちは何をすればよろしいでしょうか?」

「それなんだが・・・」

兵隊長が何かをいう前に城の上層階が突然燃え始めた。

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

そこは真っ赤な炎で燃えていた。

「火事だ!!」

あの火の回り方はまずい。

下手をすれば城が全焼する。

わしは兵隊長を見ると頷いた。

「これより城にいる一般人を救助する! そこの3人はここに待機! あとはついてこい!!」

兵隊長はわしと2人の兵を残して城へと入っていく。

が、すぐに兵たちが身動きできない警備兵たちを運んでくる。

中にはすでに息絶えている者もいた。

兵隊長たちが何度も往復して警備兵たちを運んでいると、それとは別にこの城で働いている執事やメイドたちが城から飛び出してくる。

彼ら彼女ら使用人たちも城の上層階を見上げると驚きを隠しきれていなかった。

「城が?!」

「燃えている?!」

そんな中、兵隊長たちが戻ってくる。

「可能な限り救出したが・・・」

周りを見てみるがシフト殿たちがいない。

「だ、旦那様っ!!」

「こ、公爵様っ! どこですかっ!!」

執事やメイドたちが公爵がいないことに気付いて大声を上げる。

ズドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!

その時、城の上層階が大きな音とともに崩落した。

「なっ?! あれはっ?!」

崩落した城の上層を見て、わしは目を見開いた。






「「「「「「?!」」」」」」

シフトたちはそのまま床と共に階下に落とされ・・・はしなかった。

なんと、シフトが張った結界部分が宙に浮いていた。

【次元遮断】は外界から隔離する。

それは即ち外界の影響を受けず、その領域をそのまま固定しているのと同じことだ。

【次元遮断】を発動している限りはこの状態を維持できる。

「うわあああああぁ・・・宙に浮いてるよ」

「本当」

ベルとフェイが眼下を眺める。

そこには下層階が燃えていた。

「これはさすがに驚いたな」

シフトは【次元遮断】が座標軸を切り取って固定していることに驚いている。

だが、喜んでもいられない。

結界を解いた瞬間、元の座標軸に戻るのだ。

そして、今はそれを支える場所がないので落下するのが必定である。

そうならないために段取りを考えた。

まずは結界を解く。

次に【念動力】を発動して足場を固定する。

最後に燃えていないところに移動してゆっくり降りていく。

この手順で地上に戻ることにする。

「みんな、今から地上に戻るけど、結界を解くとこの足場が落下する。 すぐに僕のスキルで足場を固定するけどパニックにはならないでね」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

「それじゃ、行くよ」

シフトは結界を解くと予想通りに足場が落下し始めた。

すぐに【念動力】を発動して足場を固定し、ゆっくりと移動を開始する。

「ご主人様、そのまま真っ直ぐ・・・」

「下に誰もいない」

ベルとフェイのナビゲートによりシフトたちは誰もいないところにゆっくりと降りて行った。


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