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268.公国の王の依頼

一番最後にトラブルはあったもののシフトたちはある程度観光をした。

「ふぅ・・・最後に問題はあったけど1日で観光地をある程度見れたから良しとするか・・・」

「そうですね。 最後に気分が全部吹き飛んだのが残念ですが」

シフトの言葉にルマたちも同意する。

太陽も沈みかけていたので宿に戻る前に食事をすることにした。

人混みが多い大通りで賑やかな食事処があったのでそこに入る。

店内はそこそこ混んでいたが8人席が空いていたのでそこに座った。

するとそこに不愛想なウェイトレスがやってくる。

「・・・いらっしゃい、これメニューね」

シフトにメニューを1つだけ渡すとほかの客の対応に行ってしまった。

「とりあえずメニューを見てみるか・・・」

シフトたちはメニューを開いて見る。

そこには肉料理、魚料理、サラダ、スープ、パスタ、パン、デザート、飲み物が各3点ずつ紹介されていた。

メニューが少ない分、味に自信があるのだろう。

「とりあえず僕は肉料理とサラダにパン、それと果実水かな」

「私も同じで」

「ベルも」

「わたしもご主人様と同じメニューで」

「ぼくもそれでいい」

「わたくしも同じ物を食べますわ」

「なら、注文するか・・・すみません」

シフトの声に先ほどの店員がやってくるので注文すると気怠そうに返事をして厨房に戻っていく。

「なんかあの店員やる気なさそう」

「ベルもそう思う」

そんな話をしながら歩いていると1人の老人が杖を突きながらこちらに歩いてくる。

「もし、そこの方々。 相席しても構わないかのぅ?」

シフトは素早く店内を見回す。

いつの間にか店内は満席になっていた。

「別に構いませんよ」

「おぉ、ありがとう、若いの」

老人はシフトの隣に座る。

「すみません、メニューをお願いします」

「はーい」

シフトは別に動いているウェイトレスに声をかけると先ほどの店員とは真逆で元気よくやってきてメニューを置いて行った。

「メニューです。 どうぞ」

「ありがとう」

老人はメニューをのんびり見ていた。

「どれにしようか迷ってしまうのぅ」

「そうですか。 ゆっくり選んでくださいね、公国の国王」

すると老人がビクッとした。

「若いの、何を言うかと思えばわしはここら辺に住んでいるただの老人じゃよ」

「嘘をつかなくても気配でわかっていたから」

「後ろからぼくたちをずっとつけてたもんね」

シフトとフェイが口にするとルマたちも老人を疑ってみる。

老人は溜息を吐くと首を横に振った。

「・・・ふぅ、やれやれ、わしがせっかく苦労して変装したのにこうも簡単に見破られるとはな・・・」

変装こそ解いていないが、そこには老人然とした姿はなく、一国の王の風格が漂っていた。

「仮にも僕たちは冒険者だよ。 誰かしら気配に敏感でなければ行先で不意打ちを食らうだろ」

「その割には先ほどの連中には囲まれていたように見えるが」

「ああ、あれは観光目的だったけど、途中からきな臭いと感じてはいたよ」

「どこかで何かしら仕掛けてくるだろうとは予想していたからね」

シフトの言葉にフェイが頷く。

「はっはっは、罠とわかっていながらついていくとは面白いことをするな」

「僕としては王が護衛もつけずにわざわざ1人でここに来るほうがおかしい」

「心配いらん。 護衛なら常に周りにいるのでな」

「なるほどね~。 道理で妙な気配が複数ある訳だよ」

公国の国王レクントの言葉にフェイが納得する。

「ほう、気付いていたのか?」

「これでもぼくは【斥候】のスキルを持っているんだよ? 【隠密】のスキルで消さない限りはさすがに気付くよ」

フェイはレクントに対してドヤ顔を見せる。

「シフト殿だけではなく、その仲間である彼女たちも優秀とはな・・・どうだ、わしがいる公国に永住するつもりはないか?」

「前にも話したけど、お断りするよ」

「そうか、残念だ」

そんなことを話しているとウェイトレスが3人が料理を運んできた。

1回では持ってこれず3回に分けて持ってくる。

料理を運び終わると気怠そうなウェイトレスだけその場に残った。

「・・・じゃ、ゆっくり・・・」

「ちょっと待ってくれんかのぅ、わしも注文したい」

レクントが老人の振りして注文を頼むとウェイトレスは明らかに嫌な顔をして対応する。

「・・・はぁ・・・で? おじいちゃんは何頼むのよ?」

「この者たちと同じ物を頼むかのぅ」

「・・・はいよ・・・まったく注文なら一気にしてほしいものだ」

ウェイトレスは客の目の前で堂々と文句を言いながら注文を受け付けると厨房へと歩いて行った。

あまりの不愛想ぶりにレクントもドン引きしている。

「・・・なんかすごいウェイトレスだな。 わしも色んな人間を観察してきたが始めてみるパターンだ。 面白いのでレパートリーに入れておこう」

「国王、悪いけど先にいただくよ」

「構わないさ、温かいうちに食べるがいい」

「それじゃ、みんな食べようか」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちは運ばれてきた料理を1口食べる。

普通に美味い。

突出している訳ではないが、どれも一定以上の旨味がある。

あのウェイトレスを見てこの店大丈夫かと疑ったが料理は真面で良かった。

シフトたちが料理に話しながら半ばまで食べていると不愛想で気怠そうなウェイトレスがレクントの分の料理をもってやってくる。

目の前にパパッと置くと先ほどのように気怠く挨拶した。

「・・・じゃ、ゆっくりしてってくれ」

それだけいうと別の客の呼びかけにウェイトレスはそちらへと歩いて行った。

「さて、わしも食べるかのぅ」

言うが早いかレクントも食事を始める。

「うむ、美味いな。 贅沢を極めた料理も嫌いではないが、こういう庶民が愛するありふれた料理も捨て難い」

そういいながらレクントはパクパクと食べていく。

「それでわざわざ僕に接触してきた理由はなんだ?」

「ん? おお、そうだった。 実はシフト殿に頼みがあってな」

「頼み? 国盗りの手助けならしないぞ」

シフトは面倒になる前に釘を刺しておく。

「シフト殿にも関係あることだ」

「僕に関係があること?」

「『この手に自由を(フリーダム)』についてだ」

レクントの一言にシフトは雰囲気を変え聞く体勢をとった。

「それで『この手に自由を(フリーダム)』がここにいるのか?」

「実はつい先ほどわしの部下から連絡があった。 ここより少し南にある公爵の位を持つ貴族がいてな、そこの貴族と『この手に自由を(フリーダム)』が繋がっているかもしれないという情報を入手した」

「確定情報ではないのか?」

「残念ながら裏は取れていない。 彼奴らは恐ろしく警戒心が強いからな。 下手に部下を動かして死にましたでは洒落にならない。 現にそのうちの1人が行方不明だ」

この手に自由を(フリーダム)』の構成員以外で彼らの狡猾さを誰よりも知っているのはシフトたちだ。

グラントを始めとした各国の王たちも警戒はしているが、その網を上手いこと潜り抜けて今まで煮え湯を飲まされている。

「落ち着いて。 まだ死んだと確定したわけでは・・・」

「わかっている・・・わかっているさ! でも・・・」

レクントは行方不明になった者はもうこの世にいないと考えている。

優秀な部下を失ったことに『この手に自由を(フリーダム)』に対する憤りを感じているのだ。

言葉に苛立ちが溢れ出る。

「それで頼みというのは?」

「公爵の領地に行って『この手に自由を(フリーダム)』を炙り出してはくれないか?」

シフトとしても『この手に自由を(フリーダム)』の最新情報が聞けるなら願ったり叶ったりだ。

「みんな、僕はこの依頼受けようと思うけど、みんなの意見を聞きたい」

「私たちはご主人様の決定に従います」

ルマが代表して言うとベルたちは何も言わずに首を縦に振った。

「国王、僕たちにも関係がありそうだから今回は手を貸すよ」

「助かる。 場所はここから南に馬で丸1日だ。 報酬は白金貨1枚」

この手に自由を(フリーダム)』だけなら破格の報酬ではあるが、仮に国が絡んでくるとこれでは安すぎる。

とはいえ、今回は炙り出すだけの簡単な仕事のはず・・・

「わかった。 それではこの依頼引き受けよう。 出発はいつだ?」

「明日の朝、わしと数名の部下が先行して行き、後から一個大隊を送る予定だ」

「それなら国王と一緒に行ったほうがいいな」

「うむ、ならわしは明朝部下たちとともに南門で待っている」

「ああ、僕たちも遅れないように向かうよ」

それからシフトたちは残りの料理を食べると会計を済ませて宿に戻るのであった。


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