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25.Vsゴブリン大軍団 〔無双劇2〕〔※残酷描写有り〕

翌日、シフトたちは冒険者ギルドに向かうと建物前に巨大な看板があり、そこには巨大な紙で依頼が書かれていた。

『緊急依頼 ゴブリン討伐 ランク:無制限 参加者はミルバークの西門外に集合 ※本日の依頼はこれのみ』

「随分と派手な依頼ですね」

「ゴブリンたくさんいるの?」

「町の一大事だからな」

「腕が鳴るね」

「大事にならなければいいのですが」

「とりあえず西門へ行こうか」

シフトたちは西門へ移動するとそこには多くの冒険者がすでに集まっていた。

「人がたくさんいるね」

「これだけの討伐依頼は初めて見たな」

感心していると後ろから声を掛けられる。

「よお、坊主。 お前も討伐依頼に参加するのか?」

振り向くといつもの気の良い衛兵アルフレッドがそこにいた。

「あ、おはようございます。 ええ、僕たちも参加します。 もしかして・・・」

「あははははは・・・俺は参加しないよ。 俺たち衛兵は町を守るのが任務だ。 なのでここで防衛準備だ。 たまたま坊主を見かけたんでな」

「そうなんですか、防衛頑張って下さい」

「ああ、それより坊主こそ手柄欲しさで無茶するんじゃないぞ。 ましてこんな別嬪さんたちを置いて死ぬなよ」

じゃあなと言ってアルフレッドは仕事に戻っていった。

しばらくルマたちと雑談しているとギルバートとサリアが現れた。

「諸君、本日はゴブリン討伐依頼に参加して頂いたこと感謝する!!」

「これより討伐の説明を・・・」

サリアが説明を開始する前に一人の冒険者が森を指して大声で叫んだ。

「おい、なんだあれは!!!」

釣られてほかの冒険者たちも森を見る。

すると大量のゴブリンが森から町に向かって走ってくるのだ。

「な、ゴブリン?!」

「それもあんなに大量に!!」

冒険者たちが慌てふためいているとサリアは自分の掌を叩いて注意を向けさせる。

「手短に話します!! A~Bランク冒険者は森に侵入し主体となるゴブリンの殲滅!! Cランク冒険者は森と平原の境界線でゴブリンの殲滅!! D~Eランク冒険者はCランク冒険者が倒しそびれたゴブリンを平原にて殲滅!! 以上!!!」

「それでは今から討伐開始!!!!!」

A~Bランク冒険者たちはすぐに行動し、ゴブリンを薙ぎ払いながら森へと特攻する。

Cランク冒険者たちもA~Bランク冒険者についていき、森の一歩手前で陣取りゴブリンと交戦を開始する。

D~Eランク冒険者は同士討ちしないよう間隔をあけてゴブリンたちを迎撃する構えだ。

シフトたちもD~Eランク冒険者に混じって防衛戦に備えているとギルバートから声をかけられた。

「やあ、シフト君、おはよう」

「ギルドマスター、おはようございます」

「ここで防衛戦かい? あまり無理はしないようにね。 僕はこれから森に入って上位種ゴブリンを討伐してくるよ」

「そうですか、気を付けてください」

ギルバートは真剣な顔でシフトを見る。

「本来なら君を連れて行きたいところだけど・・・」

「ルマたちを置いていけません」

「そうだろうね。 おっと僕はそろそろ行くよ」

言うが早いかギルバートは森の方に走っていった。

シフトは状況を確認する

A~Bランク冒険者たちはすでに森の中、Cランク冒険者は森と平原の境界線で交戦中である。

打ち漏らしたゴブリンたちが平原に現れ始めた。

ルマたちに指示を出す。

「みんなよく聞いてくれ。 これから個別に指示を出す。 ローザは槍か斧で攻撃、今回は手加減なしで倒して構わない」

「畏まりました」

ローザは槍と斧で迷ったが今回は斧を使うことを決めた。

「ベルはローザの懐に入りそうな敵を相手にしてくれ」

「うん、わかった」

ベルは両手を前に出すと握り拳をつくった。

「フェイはベルとローザをサポートしてほしい」

「ご主人様、お願いがあります。 【暗殺術】のレベルを上げたいので【闇魔法】と弓矢の使用許可をいただきたいのですが?」

「【闇魔法】は許可する。 同士討ちになりかねないので弓矢は却下だ。 代わりにナイフを使え」

「は~い、わかりました」

フェイは昨日覚えた【闇魔法】を生かした戦い方を早速実践するようだ。

「ルマとユールは基本はみんなの回復を優先。 それと僕が手加減してダメージを与えたゴブリンにナイフで止めを刺してくれ」

「ご主人様、それは危険では・・・」

「そうですよ。 なにかありましたら・・・」

ルマとユールは昨日のことを思い出したのか心配そうにシフトを見る。

「大丈夫だ。 それにルマもそうだがユールのレベルを上げて、パーティー全体の力を底上げしたい」

「「わかりました、ご主人様」」

ゴブリンの群れがCランク冒険者の間を抜けてやってくる。

中には通常のゴブリンよりちょっと強い下位種であるゴブリンウォーリア、ゴブリンヒーラー、ゴブリンマージ、ゴブリンアーチャーも数十体ほど混じっていた。

「どうやらここまで攻めてきたようだな。 みんな気を引き締めていこう」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちもほかの冒険者と同じく討伐を開始するのであった。






一方、森の奥を攻略中のギルバートは───

「はあ!!!!!」

目の前のゴブリンを瞬殺するギルバート。

「強えええええぇ・・・」

「流石ギルマスだぜ」

「無駄な体力と魔力を使わずに助かりますわ」

A~Bランク冒険者たちを引き連れて森の奥を攻略中であった。

途中、中位種であるゴブリンナイト、ゴブリンモンク、ゴブリンソーサラー、ゴブリンガンナーを何体も相手にするもギルバートの無駄のない攻撃と命令でほとんど怪我もなく進んでいる。

「かなり進んだな。 そろそろ上位種が出てきてもおかしくないのだが・・・」

「今、内のパーティーの斥候が辺りを調査中です」

「そうか、それは助かる」

しばらくすると八時の方向から斥候が姿を現した。

「ギルマス、西南西にゴブリンの上位種がいるもようです」

その報告を聞いたギルバートは思案すると冒険者たちに指示する。

「よし、一休みしたらゴブリンの首魁を打ちに行く。 準備を整えてくれ」

10分後、ギルバートたちは西南西に進み、森の開けた場所があるので入るとそこにはローブを着たゴブリン『ゴブリンセージ』とゴブリンキングと同じくらいの巨大なゴブリン『ゴブリンチャンピオン』がいた。

それとどこからともなく現れたゴブリンの群れがギルバートたちを包囲していた。

「どうやら我々は罠に嵌ったらしいな」

「ギルマス、どうしますか?」

「Bランク冒険者たちは退路の確保! 僕とAランク冒険者たちは特殊個体である2体のゴブリンの討伐をする!」

ギルバートは包囲しているゴブリンの中に上位種であるゴブリンジェネラル、ゴブリンプリースト、ゴブリンウィザード、ゴブリンアーティラリーが複数いるのを確認する。

(下手をすれば何人かは死ぬかもしれないな・・・)

「みんな!! 自分の命を最優先に行動しろ!! これは命令だ!!!」

ギルバートが叫ぶと同時にゴブリンセージが空に向けて炎を打ち上げ・・・上空で爆発した。

バアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

それを皮切りにゴブリンたちがギルバートたちに攻撃を仕掛ける。

ギルバートはこの場を支配しているゴブリンチャンピオンとゴブリンセージを先に潰すことを決めると迫りくるゴブリンたちを倒しつつ彼らに近づいた。

それに気付いたゴブリンチャンピオンは顔をニヤニヤさせながらが前に出てギルバートと対峙する。

攻撃をしかけようと一歩踏み出したとき何者かに左右から挟撃されるもギルバートはバックステップで避ける。

襲ってきたモンスターを見るとゴブリンチャンピオンと同じくらいの体格で腐敗した姿のゴブリンゾンビと骨だけしか残ってないゴブリンスケルトンだ。

ギルバートは素早く戦況を判断する。

Bランク冒険者たちは退路の確保中、Aランク冒険者たちもゴブリンの群れと交戦中である。

ゴブリンセージはというと魔法を行使し同族を次々と召喚していたのだ。

(あれは厄介だな・・・先に倒すのは魔法使い型ゴブリンだが・・・目の前のゴブリンたちを放置はできないか)

「手が空いたものは魔法使い型ゴブリンを最優先に攻撃してくれ」

(こんなことならシフト君を無理にでも連れてくればよかったな)

ゴブリンチャンピオンたち3体を相手にしつつ、後悔するギルバートだった。






3時間後───

シフトたちは順調にゴブリンたちを討伐していた。

ほかの冒険者たちも問題なく捌いている。

(この調子なら問題なさそうだな)

安堵した次の瞬間、森の上空で何かが爆発した。

バアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

その場にいた冒険者たちが何事かと上空を見上げると同時に森から地響きが聞こえてくる。

ズドドドドドドドーーー!!!!!!!

「・・・森の空気が変わった・・・」

「? ご主人様?」

「みんな気を付けて! 僕たちが今戦った者よりも上位種がくると思うから・・・」

森の中からは先ほど襲ってきたゴブリンの約5倍の数のゴブリンが攻めてきた。

下位種だけでなく中位種であるゴブリンナイト、ゴブリンモンク、ゴブリンソーサラー、ゴブリンガンナーだけでなく、さらに上位種であるゴブリンジェネラル、ゴブリンプリースト、ゴブリンウィザード、ゴブリンアーティラリーまで姿を見せた。

一番最初に被害を受けたのは森と平原の境界線で交戦中のCランク冒険者だ。

ゴブリンの強さを甘く見ていた冒険者たちが次々と倒されていくのだ。

それを見た多くのD~Eランク冒険者たちは恐慌状態となった。

無謀にもゴブリンの群れに突撃する者、その場で蹲りする者、町に逃走する者もいた。

その牙はシフトたちにも襲い掛かる。

シフトは難なく対応したが、ベル、ローザ、フェイはゴブリンの強さが一段階上がったことに驚愕した。

「「「!!」」」

ベル、ローザ、フェイは苦戦しつつもなんとかゴブリンを倒すことに成功する。

シフトからしたら差異はないが、ベル、ローザ、フェイはゴブリンの強さが異常であることを口々にする。

「さっきまでとは違う」

「急に強くなったね」

「ああ、先ほどまではこんなんじゃなかった」

相手の強さを肌で感じるのも実践では必要であるが・・・

(どうやら実戦経験を積むどころの話ではなくなったな・・・)

「みんな!! 僕の後ろに移動しろ!! ここからは僕がみんなを守る!!!」

「ご主人様!! 危ないです!! 私たちも退避すべきです!!!」

「ルマのいう通りです!! ここは撤退をしましょう!!!」

「いや、逆に逃げるのは危険だ。 背中からやられる」

「では、どうすれば・・・」

「僕が全力でみんなを守るのが最善だろう。 大丈夫、僕を信じて」

ルマたちは顔を見合わせると代表してルマが答える。

「・・・わかりました、ご主人様」

「それではルマ、【土魔法】を使って前方以外に壁を作ってくれ」

「畏まりました」

ルマは前方以外の3方向に高さ3メートルの土の壁を作った。

「僕が敵を無力化するからルマたちは止めを刺してね」

襲ってくるゴブリンの大群を相手にシフトはナイフを構えた。


シフトが本気で防衛に専念してから1時間後───

そこはシフトの独壇場だった。

シフトはその驚異的な力でルマたちに物理・魔法とも1回も通さなかった。

戦士系ゴブリンの攻撃を【五感操作】で回避、死なない程度に攻撃してからルマたちがいる後方に突き飛ばす。

魔法使い系ゴブリンと遠距離攻撃系ゴブリンは【念動力】でそこら辺にある戦士系ゴブリンの死体をぶつけて吹き飛ばした。

シフトが襲ってくるゴブリンを瀕死→ルマたちが止めを刺す→ルマたちのレベルがアップするの図がいつの間にか完成していた。

それでも襲ってくるゴブリンの数は減らないがシフトは疲労もなく息一つ乱れることなく捌いていくのだ。

「すごい」

「ご主人様強い」

「これはまいったな」

「ここまで圧倒的だとはねぇ」

「相手にすらなってませんわね」

「昔倒した熊や狼に比べれば大したことはないよ」

自分たちの主人であるシフトの戦い方を見たルマたちは只々驚くしかなかった。

誰もがシフトの無双劇で終わると思っていたがそうは問屋が卸さない。

人間たちの町どころか今いる冒険者すら全滅させられないことに痺れを切らした親玉たちがついに動いた。

一匹は自分と仲間にバフを、敵対者にはデバフを自動的にかける能力を持つゴブリンエンペラー。

そしてもう一匹は驚異的な身体能力と魔力を持ち、生物を喰らうことでその能力を我が物とするゴブリンナイトメア。

その二匹が戦場に降り立ったのだ。

シフトはそのゴブリンたちが普通ではないことを直に感じた。

(嫌な予感がする・・・)

ゴブリンナイトメアは上位種ゴブリンジェネラル、ゴブリンプリースト、ゴブリンウィザード、ゴブリンアーティラリーを次々に殺しその血肉を喰らった。

「ちょ?! 何してるのあのゴブリン?!」

「仲間を殺して食べたのか?!」

ゴブリンナイトメアはターゲットをシフトに合わせると【火魔法】を放ちつつ接近戦を仕掛けてきたのだ。

「な?!」

「同時攻撃?!」

【念動力】でそこら辺にあるゴブリンの死体をゴブリンナイトメアに当てるも吹き飛ばされず、そのまま突っ込んでくる。

ユールをちらっと見たあと、シフトは覚悟を決める。

(炎は食らうが攻撃を受け止めてカウンターを放つ!!)

シフトが構えた瞬間ルマの【水魔法】とフェイの【風魔法】が【火魔法】を相殺した。

ゴブリンナイトメアの攻撃を【五感操作】で回避、ナイフで心臓を一突きしたのち蹴りをいれて前方に吹っ飛ばした。

「やった!!」

「勝ちました!!」

だがゴブリンナイトメアは胸を押さえながらのろのろと立ち上がる。

「?!」

驚異的なスピードで行ったのかこうなることを予想していたのかしらないが自分自身に【治癒魔法】をかけていたのだ。

ゴブリンナイトメアは愉快そうに笑うと先ほど負わせた傷が完全に塞がり再び戦闘態勢をとった。

(あのゴブリンを倒すには脳や心臓は潰しても再生するから×。 殺るなら首を刎ねるのが正しいな)

「ローザ、斧貸してくれないか?」

「はい、ご主人様」

ローザから斧を借りると再びゴブリンナイトメアに対峙する。

もう一匹のゴブリンエンペラーをちらっと見るとほかのゴブリンを従えつつ冒険者たちとミルバークの衛兵たちと二正面作戦を展開していたのだ。

(これはさっさとこのゴブリンを倒してもう一匹のゴブリンを止めに行かないと町が大変なことになる)

シフトはゴブリンナイトメアが知覚できないほどのスピードで移動しそのまま斧で首を攻撃した。

しかし、ゴブリンナイトメアの首の半分ほどで斧が止まってしまった。

本来ならゴブリンナイトメアの首と胴が泣き別れになるはずだが、2つの理由で首を刎ねられずに済んだ。

1つ目は斧の攻撃力が足りていなかったこと、2つ目は複数の能力が同時発動していたことである。

ゴブリンジェネラルの肉体強化と防御力、ゴブリンプリーストの防御魔法、そして極めつけはゴブリンエンペラーの強力なバフとデバフである。

これによりゴブリンナイトメアは生き延びたのである。

シフトは斧をそのままにゴブリンナイトメアから離れる。

ゴブリンナイトメアは首に残ったままの斧を掴んで引き抜くと適当にそこら辺に捨てた。

(仕方ない。 気が進まないがこうなったら根気勝負といきますか・・・)

ゴブリンナイトメアが攻撃をしかけようと駆け出した瞬間、シフトは近くに駆け寄ると足を引っかけ転ばせたのだ。

あまりの勢いに頭から地面に突っ込んでいた。

その隙にシフトは背中に乗るとナイフを取り出し、脳と心臓を重点的に滅多刺しにしたのだ。

しかし、ゴブリンナイトメアは攻撃を受けたと同時に【治癒魔法】をかけ続けている。

シフトがやっていることは普通なら無駄なのであるがそれでもナイフで刺す、刺す、刺す・・・ひたすら刺し続けた。


10分後───

いくら驚異的な魔力があってもそれにも限界がある。

ついにそのときがきてしまった。

ゴブリンナイトメアは先ほどまでの笑いが一変苦痛を伴う顔をした。

「?!」

そして尚も刺し続けるとジタバタと手足をバタつかせる。

シフトが考えた作戦は魔力が底を尽きるまで攻撃することだった。

散々ナイフで刺されて最早抵抗する気力もなくなっていた。

シフトは最後に地面に投げ捨てられた斧を拾うとゴブリンナイトメアの首めがけて振り落とした。

抵抗もなく首を刎ねたのである。

「ふぅ、やっと倒れた」

「ご主人様、凄く残虐な殺害方法だな」

「ぼく、見ていてちょっと引いちゃった」

「う、仕方ないだろ。 このゴブリンの生命力と魔力が桁外れに高かったんだから」

やりすぎたのはわかるが今はそれどころではない。

「それよりも冒険者たちとミルバークの衛兵たちが心配だ」

「冒険者も衛兵も下手に攻め込まずに防衛主体にしているな」

「あの中心にいるゴブリンだけど今ご主人様が倒したゴブリンや昨日のゴブリンキングと同等の強さだよね」

とりあえず攻めてみるか。

「僕があのゴブリンに攻撃を仕掛けてみるよ」

「ご主人様、危険では?」

「深追いすると危ないですわよ?」

「問題ないよ、無理な攻撃をするつもりはないから」

あのゴブリンのところまで行こうとすると急に自分の移動速度が落ちたのだ。

いや、移動速度だけじゃない、腕力も落ちている。

進めば進むほどそれを実感する。

試しに後退すると腕力も移動速度も元に戻りつつある。

「あのゴブリンの能力も相当厄介だな」

シフトは何もせずにルマたちのところまで戻った。

「ご主人様、どうしたんですか?」

「なにかあったの?」

「ああ、近づけば近づくほど身体能力が封じられる」

下手に近づくといくら膨大な力を持つシフトでも殺られることはないが苦戦すると判断した。

「え? なにそれ?」

「迂闊に近づけないと?」

「おそらく接近したら武器もろくに扱えないだろう」

「それではあのゴブリンを倒すには遠距離武器が必要なのですね」

「ああ、ただ普通の弓矢や魔法では倒せない」

「どういう意味?」

シフトはゴブリンエンペラーの周りにいるゴブリンたちを指さす。

「周りをよく見てみろ。 (ゴブリン)がたくさんあるだろ? 攻撃が届く前に防がれる」

「弱点がわかれば攻められますのに」

「あとは(ゴブリン)ごと破壊する攻撃くらいかな」

(ゴブリン)ごとってそんな攻撃あるの?」

猛威を振るっているゴブリンエンペラーを一瞬で無力化する方法か・・・んんん・・・あったかな・・・んんん、ん? あ! あったあった。

ダンジョン出る前に試した【次元干渉】+【念動力】、あれ使った瞬間岩が壁に激突してたよなぁ・・・

「まぁ、1つだけあるかな・・・」

「あるんですか?!」

「あるなら試してみればどうですか?」

「結構精神力使うし正直やりたくないんだけどね」

「そんなに大変なんですか?」

「あまり気は乗らないが・・・ふぅ、試してみますか」

【次元干渉】を併用しつつ【念動力】を使った瞬間、ゴブリンエンペラーにゴブリンの死体が当たっていた。

ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!!

気づいた時には凄まじい勢いで吹っ飛ばされていた。

ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ダアアアアアァァァァァーーーン!!!!! ・・・

水切りのように途中何回も地面にバウンドしているのにそれでも勢いを殺しきれず最後には大木にぶつかってようやく止まった。

・・・ああぁ、あれ? これどこかで見たようなぁ・・・

んんん・・・、あ、思い出した。

最初にダーク・ベアーに【念動力】を使った時だ。

あのときもダーク・ベアーが2~3回か地面に叩きつけてたっけ?

今回のはあのときよりも更に凄いなぁ・・・

「「「「「・・・」」」」」

ルマたちは何が起きたのか反応できず只々呆けていた。

ゴブリンキング並みの生命力ならまだ生きているだろうから油断しないように見ている。

1分が経ち、2分が経ち、3分経っても動く気配がない。

シフトたちは警戒していたがゴブリンエンペラーはすでに息絶えていた。

「・・・あれ? 倒したのかな?」

「わかりません。 とりあえず今は残りのゴブリンを討伐すべきでは?」

ゴブリンエンペラーがいなくなったことで形成が逆転し冒険者たちとミルバークの衛兵たちがゴブリンを取り囲んで一網打尽にしていた。

「それもそうだな。 みんな、これから残りのゴブリンも倒すよ」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトたちもゴブリンの残党狩りに参加するのだった。


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