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267.待ち伏せ 〔無双劇56〕

エルフたちが無事出港したことを確認したシフトたち。

「とりあえずは無事に進んだようだな」

「そうですね」

「大丈夫?」

「さすがに無理はしないだろう」

「何かあればすぐに戻ってくるよ」

「目的地に辿り着けることを祈ってますわ」

今のエルフたちは以前の猪突猛進ではない。

ちゃんと理解した上で行動しているので問題はないはずだ。

あのエルフたちなら無事風の精霊がいる島へ辿り着ける、そう信じることにした。

「さて、僕たちも行くとしよう。 あの公国の王が納める都市にでも行ってみるか」

シフトは用事も済んだので改めて公国を見て回ることをルマたちに提案する。

「でもご主人様、たしか公国は多くの貴族が我こそは国の王と言って乱立するところでしたよね?」

ルマの質問にシフトはハッとする。

「あ、そういえばそうだった・・・一応以前馬車に掲げていた国旗は見たから覚えているけど、どこにその国旗を掲げた都市があるのかわからないな・・・」

王国、帝国、皇国は王族が掲げる旗は王族旗、貴族が掲げる旗は貴族旗だが、公国は自分たちこそがこの国の王と言わんばかりに旗も王族旗と遜色ない物を作って大々的にアピールしているらしい。

余談だが公国の旗が変わる度に王国を始めとした国々は迷惑を受けている。

シフトとしては頑張って統一してほしいとは願ったが、たった7ヵ月ではさすがに国家統一は無理だろう。

こういうのは10年20年単位で行われるものだ。

よっぽどの運と実力が良くないとさすがにこの短期間では成果は見いだせない。

とはいえ手ぶらでこの国を出るのももったいないので、公国の王が納める都市を目指して移動を開始する。

まずは場所の確認からだ。

上空には都合よく雲があるのでシフトは【空間転移】を発動して上空の雲に転移する。

シフトは素早くナイフを抜くと今度は【念動力】を発動してナイフをその場に固定した。

これで落下をしながら確認せずに済む。

問題はどこにあの公国の王の都市があるかだ。

以前、城の頂上を破壊したので旗が掲げられているかと各方面にある城を見るとこの数か月で見事に復興している。

それぞれが掲げる旗を見ると西のほうに見覚えのある旗があった。

よく見ると遠方の北西から北北西にかけて同じ旗が3つある。

どうやらシフトたちが通った道にある都市も公国の王が支配している場所の1つらしい。

ほかの城の旗も確認すると【念動力】でゆっくりと降りてくる。

地表近くまでくると解除して地面に降りた。

「ご主人様、どうでしたか?」

「僕たちがここまで来る時に立ち寄った都市が公国の王が支配する都市の1つだ」

「ああ、あの治安が悪かったところですか・・・」

ルマたちは都市を出て襲われた連中を思い出す。

「支配したばかりなのか元々治安が悪いのかはわからないがな」

「では戻って都市巡りをするのですか?」

「前回は買い物だけだった」

「まぁ必要最低限しか留まっていなかったしな」

「たしかに名物巡りはしていなかったね」

「そこで一息ついてから考えてもよろしいのでは?」

ルマたちの意見を聞いてシフトは考える。

「そうだな・・・慌てることもないし、戻って都市巡りをする」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

そうと決まればここにもう用はない。

シフトは【空間収納】を発動すると魔動車を取り出して空間を閉じる。

魔動車に乗り込むとシフトたちは来た道を戻り始めた。


シフトたちは来た道を戻って4日が経過した。

食料の補給で訪れた都市へ再び戻ってくる。

都市の入り口には4日前の男たちはいなかった。

教会に運ばれたか、どこかに連れていかれたか、それとも死亡したかは知らないが、また顔を合わせることがないことを祈るばかりだ。

入都すると前回来た時と同じ人が大勢いた。

「さて、まずは今日の宿をとってから都市内を見て回ろう」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちは大通りのそこそこ立派な宿屋に今日の宿をとると都市を見て回る前に食事をとることにした。

宿で食事をしてもよかったが、どうせなら都市にある人気のある飲食店に行く。

人気店だけあり多くの客でごった返していた。

シフトたちは店員から人気のある料理を聞くとそれを一通り頼む。

しばらくするとシフトたちのテーブルに豪華な料理が並ぶのでみんなでシェアしながら食べることにした。

料理も食べ終わり、お茶とデザートまで堪能すると支払いを済ませて店を出る。

「うーん、料理も食べたし観光を始めるか」

「「はーい」」

ベルとフェイがシフトの言葉に反応して返事をしながら手を上げた。

「どこか行きたいところはあるか?」

「ベルちゃん、行きたいところある?」

「微妙。 フェイは?」

「ベルちゃんと同じだよ」

普通ならここでベルとフェイがすぐに行きたい場所を言うが、今回は珍しくまだ決まっていないらしい。

悩んでいると1人の美しい女性が声をかけてきた。

「旅の方、失礼します。 わたしはここで観光業を営んでいる者です。 よろしければこの都市の観光名所をご案内します」

シフトは女性の提案を受けてルマたちに聞いてみる。

「うーん、どうする?」

「そうですね・・・ここで悪戯に時間を浪費するよりも地元民の方に案内を任せたほうが良いのでは?」

ルマの意見にベルたちも首を縦に振って賛同する。

「わかった。 すまないが観光案内を頼むよ」

「畏まりました。 案内料は銀貨1枚です」

シフトは懐から銀貨1枚を取り出すと女性に渡した。

「たしかに。 それでは案内をさせていただきます」

女性が背を向けて歩き出す。

シフトはあることに気付くとフェイに目をやる。

シフトの視線を感じたフェイは頷く。

女性は都市の名所や有名な露店など様々な場所を案内する。

シフトたちは案内されるまま色々と見ていく。

やがて人が少なくなっていき、大きな橋の下で女性が動きを止めた。

「ここが最後の名所になります。 名を死の橋といいます」

それだけいうとシフトたちを囲うように周りから男たちが現れた。

「へっへっへ、よう兄さんよ、持ってる物を・・・?!」

1人の男が途中で言葉を止めると固まった。

周りの男たちもシフトたちを見ると顔が蒼褪める。

「ん? よう、お前たち生きていたのか?」

「お、お、お、お前はあの時の?!」

「? おい、何してるんだい! さっさと殺りな!」

女性が命令するが誰1人として動こうとしない。

それもそのはず、4日前にシフトたちが半殺しにした連中だ。

おそらくだが死にかけた男たちを目の前の女性かその仲間が助けたのだろう。

男たちの頭には4日前に味わった恐怖が鮮明に蘇る。

額からは物凄い量の汗が流れていた。

シフトが男たちに声をかける。

「それで4日前のリベンジでもするか?」

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

シフトの言葉に男たちは後退りする。

男たちの反応に女性も気付いた。

「まさか・・・あんたたちがこいつらを締め上げたっていう奴らか? あんたたちこんなガキどもにやられたのかい!」

「し、しかし、姉御。 こいつの訳がわからない力で俺たち全員動けなくなったんですぜ」

「それに目が見えなくなった」

「喋ることもだ」

男たちは自分が体験したことを次々と口にする。

「情けないねぇ! あたいが見本を見せてやるよ!!」

女性はそれだけ言うと隠し持っていた鞭を取り出し鞭を振り下ろす。

ヒュッ!! バシイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

ボディが地面に叩きつけられた音が鳴り響く。

「みんな、女性は僕が取り押さえるから男たちは任せる」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトはルマたちに命令すると女性のほうへと歩き出す。

「へぇ・・・坊やが相手になってくれるのかい?」

「僕の相手が務まるといいね、お姉さん」

「生意気な口を利くんじゃないよぉ!!」

女性が鞭を振り下ろすがシフトには当たらなかった。

「?!」

「どうした? 期待通りにならなくて驚いているのか?」

「・・・今のはわざと外したんだよ。 今度は当てる!!」

女性は連続して鞭を振るがシフトに掠ることすらできなかった。

「バカな! ありえない! どうして・・・」

女性にとってはありえないことでもシフトにとってはいつものこと。

【五感操作】を発動して女性の距離感と平衡感覚を狂わせているだけだ。

女性は尚も鞭を振るうがシフトは迫りくる鞭のボディを掴むと手前に引っ張った。

「きゃあぁっ!!」

突然の出来事に女性は踏ん張れず、悲鳴を上げながらシフトのほうに前のめりに倒れる。

ダアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーン!!!!!!!

「う、ぐぅ・・・」

地面に叩きつけられた衝撃で女性は呻き声をあげる。

立ち上がろうとするところにシフトがやってくる。

「あんたに勝ち目はない。 降参しろ」

「ふっ! 甘いよ! 坊や!!」

女性は隠し持っていたナイフで刺すが、そこにはシフトはいなかった。

「?! なぜっ?! どうしてっ?! こんな近距離で当たらないのっ?!」

女性はまるで肉体を持たない幽霊を相手にしている気分だ。

だが、シフトに腕を掴まれたことで生者だと認識する。

「あんたじゃ逆立ちしても勝てないよ」

それだけいうとシフトは【五感操作】で女性の触覚を剥奪した。

「なっ?! 身体が動かないっ?! くっ、何をしたのか知らないけれどこんなの卑怯よっ!!」

「おいおい、罠に嵌めて大勢の男たちに始末させるほうがよっぽど卑怯だろ?」

女性の悪態にシフトは呆れてしまう。

「うっ!」

女性は自分の行動を指摘されて思わず呻いてしまう。

「さて、それでお前たちはどうする? 戦う? それともこの女性を連れて逃げる?」

「にっ、逃げろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」

戦いを傍観していた男たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

「あ、あんたたちっ!!」

「ああ・・・あんたを置いて逃げちゃったか・・・」

女性は観念したのかシフトに話しかける。

「あたいの負けだ。 殺すなり犯すなり好きにしろ」

シフトは女性を殺すつもりはない。

そして、犯そうものならルマたちの顰蹙を買うだろう。

現に女性の言葉でルマたちから今までに感じたことのない殺気ともいえる冷たい視線を感じる。

この女性と関係になるよりも自分たちを先に女にしろと言わんばかりの無言の圧力を受けていた。

「とりあえず教会にでも放っておくか」

シフトはローザとフェイを見る。

すると無言で頷いて女性の両脇を持ち上げた。

「な、何をする?」

「今言っただろ? 教会に放るって。 あとは神父かシスターにでも治してもらえ」

シフトたちはそのあと宣言通りに女性を教会に放って去ったのだった。


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