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259.イーウィム奪還 〔無双劇53〕

シフトたちが慌てて城にやってくるとそこにはイーウィムの部下たちである翼人族たちが眠らされていた。

「これは一体・・・」

シフトたちは1人1人見て回るが目立った外傷がない。

よく見るとイーウィムの姿が見当たらなかった。

「ご主人様、イーウィム将軍閣下がいません」

「ここにいないということは捕まった可能性が高いな」

城の門を見ると開いており門兵はいなかった。

「誘われているようだな」

「どうされますか?」

「罠と知りつつも行くしかないだろうな。 イーウィムさんを助けるぞ」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトたちは城の中に入っていった。

城内は人1人おらず静寂が支配している。

不意に風が流れてくるが微かに甘い香りが混じっていた。

それを吸い込んだシフトたちは急に眠気が襲ってくる。

「こ、これはまさか・・・」

シフトたちは突然のことに対応できずその場に倒れてしまった。

しばらくすると眠っているシフトたちに何かがやってくる。

「くっくっく・・・まさかこんなにも簡単に上手くいくとはな」

「ああ、まったくだ」

「こいつは力はあるが知恵はなかったようだな」

彼らはイーウィムを不快に感じる翼人族の上層部の者たちだ。

翼人族たちは眠っているシフトを蹴飛ばす。

「ふん! ふん! この・・・」

「おい、止めとけ。 そいつが起きたらどうするつもりだ」

「わしらでは対処できないぞ」

「す、すまない・・・」

翼人族たちはシフトを蹴とばすのを止めるとルマたちを見た。

「ほう、人間族にも可愛らしい女がいるもんだな」

「同族の女には敵わないが中々よいではないか」

「どれ味見といこうか」

翼人族たちがルマたちに手を出そうとしたその時、不意に声が聞こえてきた。

「おい、なに人の嫁に手を出そうとしているんだ? 殺すぞ」

翼人族たちがシフトを見るとすでに目の前に立っていた。

「なっ?!」

「お前眠っていたんじゃ・・・」

「残念だけど僕に状態異常は効かないよ」

眠気に襲われたシフトは素早く【次元干渉】を発動して干渉を拒絶する。

そのあとは恰も眠っているように見せかけた。

「くっ! 全員でかかれっ!!」

全員がシフトに釘付けになった瞬間、翼人族たちの後方にいる者たちから悲鳴が上がる。

「ぐあああああぁーーーーーっ!!」

何事かとそちらを見るとルマたちが翼人族たちを不意打ちで倒していた。

「なぜだっ! お前たちまで寝ていないだとっ?!」

「こっちにはユールちゃんがいるからね。 それにあの程度じゃ眠れないよ」

「眠らせるならもっと強力な催眠剤を使用するべきでしたわね」

ルマたちもユールの【状態異常回復魔法】で睡眠を解除してやり過ごしていた。

こうして翼人族たちは罠に嵌めたつもりが逆に嵌められた形になったのだ。

シフトたちはその場にいた翼人族たちを死なない程度に攻撃する。

上層部の者たちは他者を見下し痛めつけるのは好きでも、逆はやられたことがないらしい。

ほとんどの者が命乞いをしてきた。

そんな中、1人だけシフトたちに楯突く者がいる。

「こ、こんなことをしてタダで済むと思っているのか?」

「残念だけど僕たちにはそういうやり取りは無駄だよ」

「ご主人様、どうしましょうか?」

「1人残して皆殺しにする」

それを聞いた翼人族たちが一斉に顔を蒼褪めさせた。

「しょ、正気かっ?!」

「もちろんだ。 お前たちを生かしておいても僕たちに得はないからな。 イーウィム将軍閣下の居場所を教える気がある者を1人残して、あとは全員あの世に行ってもらう」

シフトは楯突いてきた翼人族の肩をナイフで刺す。

「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」

ナイフを引き抜くとシフトはその翼人族に謝る。

「おっとすまない、間違って肩を刺してしまった。 今度はちゃんと心臓を刺すから許してほしい」

「ま、待ってくれっ! イーウィム将軍のところに案内するっ!!」

「いや、俺が案内しますっ!!」

「案内するのは俺だっ!」

翼人族たちは自分が助かりたいがために、全員が自ら立候補してくる。

「そうだな・・・お前にしよう」

それは先ほど肩にナイフを刺した翼人族だ。

シフトはもう片方の肩もナイフで刺す。

「ぐあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」

「みんな、あとの連中の処理を頼む」

「任せてよ!」

シフトは怪我を負わせた翼人族を遠ざけた。

その間にフェイが【闇魔法】を発動して翼人族たちに毒、麻痺、盲目、沈黙、睡眠、緊縛、呪縛のバッドステータスをこれでもかと与える。

ルマたちはさらに逃げられないように1人1人の手足をロープで雁字搦めにした。

「ご主人様、終わりました」

「ご苦労。 さて、案内してもらおうか?」

「は、はいっ!」

「言っておくが、もしお前がイーウィム将軍閣下のところへ連れて行かなかったら・・・わかるだろ?」

シフトの言葉に翼人族は顔を青から白に変えていた。

どうやら理解はしてくれたらしい。

翼人族の案内によりやってきたのはそこそこ大きい部屋だ。

扉を開くと室内には多くの翼人族の年寄りが朗報を待っていた。

「ん? 戻ってきたようだな。 順調に・・・」

シフトたちの姿を見たところで室内にいるもっとも年老いた翼人族の声が途切れる。

「ふんっ! どうやら失敗に終わったようだな・・・」

「イーウィム将軍閣下の身柄を返してもらおうか」

「この小娘のことか?」

そこには意識を失ったイーウィムが床に寝かされていた。

どうやら外傷はないらしい。

「話が通じるうちにもう1度だけ言う。 イーウィム将軍閣下の身柄を返せ」

「ほっほっほ、それはできない相談だな」

よぼよぼの年寄りたちは2人以上で眠っているイーウィムの腕を掴んで立たせる。

シフトの言葉を拒否した老翼人族がイーウィムの衣服を掴むと勢いよく剥ぎ取った。

ビリビリビリ・・・

衣服が破け、イーウィムの胸が晒される。

「どうだ、小僧? わしたちと組まないか? そうすればイーウィム将軍を好きにできるぞ? お前もこの豊満な身体が欲しいだろ?」

老翼人族はさらにイーウィムの晒け出された身体を触ろうとした。

「おい、それ以上その薄汚い手で触るな」

シフトは我慢できず【五感操作】を発動して目の前にいる翼人族たち全員の触覚を剥奪する。

イーウィムも対象に入ってしまったが、あとで触覚を付与すれば問題ない。

「なんじゃっ?! か、身体が・・・」

「う、動かないっ?!」

「どうなっとるんじゃっ!!」

老翼人族たちは自分の身体が自由に動かなくなったことに驚き抗う。

「ベル、フェイ、イーウィム将軍閣下をお願い」

「「畏まりました、ご主人様」」

ベルとフェイはすぐにイーウィムのところまで行くと、イーウィムを支えている老翼人族たちの腕の拘束を解いてシフトたちのところに戻ってきた。

シフトは【五感操作】でイーウィムに触覚を付与し、ルマはマジックバックから大き目の服を取り出すとすぐに着せる。

本来ならルマから小言の一つでも飛んできそうだが、今の緊迫した状況で言うようなことはしない。

「さて、お前たちには聞きたいことがある。 素直に話せばこれ以上のことはしないと約束しよう」

シフトの言葉に老翼人族が噛みつく。

「誰が貴様の言葉など聞くものかっ!!」

「そうか・・・」

シフトは【五感操作】を発動すると今度は視覚を剥奪する。

「うわあああああぁーーーーーっ!!」

「目がぁっ! 目があああああぁーーーーーっ!!」

「何も見えぬっ!!」

五感のうち視覚と触覚を奪われた老翼人族たちは叫ぶことしかできなかった。

「改めて聞きたいことがあるけど、まだ素直になれないかな?」

「だ、誰が貴様の言葉などっ!!」

「まだ抵抗するのか?」

シフトは【五感操作】を発動すると今度は嗅覚を剥奪する。

「ふ、ふん、こ、今度は何をしたのか知らないが何も起きないではないか」

「そう思うのなら鼻で呼吸してみろよ」

「鼻で?」

老翼人族たちは鼻呼吸を試す。

今までできていた匂いを嗅いだり、鼻での呼吸ができなくなっている。

「匂いがわからないっ?!」

「鼻で呼吸ができないっ?!」

「く、苦しいぃ・・・」

老翼人族たちは匂いを感じないことと息苦しさを訴える。

「さて、聞こえているうちに話しておくけど、今お前たちは僕の力で五感のうち、視覚、嗅覚、触覚を剥奪した。 残りは味覚と聴覚だ。 次も断るなら聴覚を剥奪する。 さらに1分後に最後に残された味覚も剥奪する。 話すか断るかよく考えるんだな」

それを聞いた老翼人族たちはパニックを起こした。

「ふ、ふざけるなっ!!」

「元に戻せっ!!」

「老人を虐めるなっ!!」

五月蠅く抗議する老翼人族たちをシフトは自分の掌を叩いて黙らせた。

「僕は別に虐めるつもりはなかったんだけど、お前たちが予想以上に抵抗するからだろ? 自分たちの自業自得なのに文句を言うな!」

「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」

「それでは聞こえているうちの最後の言葉になるだろうが、聞きたいことがある。 素直に話す気はあるか?」

シフトの問いかけに老翼人族たちはだんまりしてしまった。

これ以上抵抗すればただ命がある人形に成り果ててしまう。

「今から1分以内に答えがない場合は宣言通りに聴覚、味覚の順番に五感を剥奪するから。 それじゃ数えるぞ。 60、59、58、・・・」

シフトはそれだけ言うとカウントダウンを始める。

老翼人族たちは焦った。

このままでは自分たちは死んでしまうと・・・

そうこうしているうちに30を切る。

老翼人族たちに残された選択肢はただ1つだけ。

だが、その自尊心故にその選択を選べない。

シフトのカウントダウンもいよいよ残り1桁へと突入した。

「9、8、7、6、5、4、3、2、・・・」

「話すっ! 話すからやめてくれっ!!」

「1・・・やっとその気になったか」

シフトがカウントダウンを止めると老翼人族たちから安堵の声が聞こえてくる。

「さて、では聞くがなぜイーウィム将軍閣下を狙った? その目的は?」

「それは・・・」

「それは?」

そこで老翼人族の言葉が止まる。

「おい、だんまりするなら・・・」

シフトが言葉を話すよりも早く老翼人族が話す。

「やれやれ・・・俺が力を貸してやったというのに情けない」

老翼人族からは老人とは思えない声が聞こえてくる。

その声色は老人というよりもまるで若人だ。

シフトたちは驚いた顔で謎の声を発した老翼人族を見ている。

すると謎の声を発する老翼人族の目が血のような真っ赤な瞳へと変わった。

それと同時にシフトが奪った五感を取り戻す。

「うむ、この老人の身体では使い物にならんな・・・作り変えるか」

謎の声を発する老翼人族はそれだけいうと周りにいる老翼人族たちや、シフトたちをここまで案内した翼人族が引っ張られ吸収し形を変えていく。

しばらくするとそこにはどす黒い色の肌をした青年が1人立っている。

「くっくっく、こいつらのどす黒い感情・・・気に入ったぞ」

「お前は一体何者だ?」

「俺か? 俺の名は悪魔スリプズだ。 こいつらの欲望に力を少し貸してやった者さ」

そういうとスリプズと名乗った悪魔は口角を上げた。


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