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242.闘技場 〔※残酷描写有り〕

帝都のとある場所。

その地下には大きな部屋があり、そこでは多くの魔物や魔獣が牢や檻の中で飼育されていた。

ある程度調教されると週に1回外に出て好きに暴れられるようになる。

今日も今日とて調教師によるいつもの日常が行われる・・・はずだった。

その日も調教師たちは魔物や魔獣たちがいる部屋にやってくる。

「おい、今日もさっさと調教して仕事を終わらすぞ」

「ああ、早く終わらせて別嬪の姉ちゃんがいる店に行こうぜ」

「で、気に入った奴をお持ち帰りってか?」

調教師たちは他愛ない会話で盛り上がっていた。

1人の調教師が早速調教するべく牢から魔獣を外に出す。

グルアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!!!!!!

魔獣が吠えると調教師は鞭で叩く。

ビシィッ!!

「うるせぇ! 静かにしろ!!」

本来は今ので大人しくなるはずだった。

しかし、今日の魔獣はいつもと様子が違うことを調教師たちはまだ知らない。

ガアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!!!!!!!

魔獣は先ほどよりも大きく咆哮する。

「うるせぇっていってんだろ!!」

調教師は再度鞭で叩いて魔獣を黙らせようとする。

ビシィッ!! ビシィッ!! ビシィッ!!

「まったく世話が・・・」

ガブッ!!

「・・・え?」

調教師は何が起きたのかわからず自分の右腕を見る。

そこにはあるはずの右腕が肘より先がなくなっていた。

「・・・う、あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」

調教師はようやく自分の右腕を失ったことを理解する。

「お、おい! こいつ(魔獣)を早く殺処分に・・・」

同僚の調教師に声をかけようとしてそこで止まる。

見るとそこには物言わぬ躯たちがあった。

ある者は魔獣に上半身を咥えられた状態で血を流して動かず、またある者は下半身を喰われて虚ろな目で伸ばした手がだらりと垂れていたり、またある者は半身を噛み砕かれていたりした。

「な?! バカな?! なんであいつらが死んだことすら気づかなかったんだ?!」

驚いていると左腕に激痛が走る。

恐る恐る左腕を見ると右腕同様魔獣に噛み千切られていた。

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」

調教師は地上への入り口に向かって走ろうとしてこけた。

「あぐぅ・・・はっ!!」

調教師が魔獣たちを見ると皆涎を垂らして自分を見ている。

魔獣たちは一斉に調教師へと噛みついた。

「や、やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」

調教師は身体中を噛み千切られて絶命する。

あとには見るも無残な姿がそこにあるだけだ。

「ふふふ・・・研究の成果は思った以上だな」

部屋にはいつの間にか1人のフードを被った男がおり、想像以上の結果に思わず声が出ていた。

魔獣たちはその場に跪くように姿勢を低くする。

男は近くにいる1匹の魔獣の毛並みを優しく撫でた。

「どうやら上手く適合できたみたいだな。 さて、今度やってくる宴が楽しみだ」

男は調教師たちの死体を見ながら満足気に笑った。






帝都2日目───

シフトたちは帝都の露店を見て回る。

どの店もシフトを見ると明らかに嫌な顔をしていた。

過去に帝都で暴れたことが響いているのだろう。

さらに現皇帝グランディズを倒したのがまずかったかもしれない。

あとはルマたちを侍らかせているのも1つの原因だろう。

特に男たちの嫉妬するような視線が多い。

本来であれば喧嘩の1つや2つ吹っ掛けられてもおかしくないが、すでにシフトの実力を知っている者たちがほとんどなので、そんなバカなことをする輩はいなかった。

シフトたちは周りの視線を気にせず路上を歩く。

ベルとフェイは相変わらず屋台に目がなく、色々な食べ物を見ては買っている。

ルマは魔法関連の本や道具が気になって見ていた。

ユールは未処理の薬草を購入している。

シフトとローザは特に見るものはなくルマたちの買い物についていった。

そうして帝都を歩いていると帝城と同じくらい立派な建物が見えてくる。

「ご主人様、ここはなんだろう?」

「うーん、なんだろ? 何かの建物なのかな?」

シフトたちは近くまで行くと看板が見えてそこには大きな文字で『コロシアム』と書かれていた。

「コロシアム? 何のお店かな?」

「お店という雰囲気じゃない」

入り口と思われる扉はしっかりと閉められていてとても中に入れそうにない。

シフトたちが不思議そうにしていると後ろから声を掛けられる。

「そこはコロシアムと言って闘技場だよ」

シフトたちは後ろを振り向くとそこには1人の恰幅の良い女性が小さい女の子を引き連れていた。

「闘技場?」

「ああ、週に1度ここで催しが行われるんだよ。 戦士、武闘家、魔法使い、そのほかいろんな戦闘職の人間同士が戦ったり、魔物や魔獣と戦うんだよ」

「へぇ~、面白そうだね。 ぼく戦ってみたいよ」

「ベルも」

女性が説明するとベルとフェイが戦いたいと言い出した。

「あははははは・・・気の強いお嬢ちゃんたちだね。 残念だけどそれを決めるのは興行主だよ」

それを聞いてベルとフェイが残念がる。

「今度の開催は明日だよ。 良い席で見たいなら朝早くに来るといいさ」

「情報ありがとうございます」

シフトはマジックバックから飴を取り出すと女性と女の子に渡す。

「ありがとう、お兄ちゃん」

「あら、すまないね。 ありがたく貰っておくよ」

それだけ言うと2人は仲良く去っていった。

「明日か・・・ご主人様、明日ここに来ようよ」

「ベルも戦いを見たい」

「こら、2人とも。 それを決めるのはご主人様だぞ」

ベルとフェイはいつもの好奇心から見に行きたいというがローザがそれを窘める。

「まぁまぁ、落ち着いて。 滞在期間を考えると明日しか見れないんだ。 せっかくだからみんなで見に行かないか?」

「「賛成!!」」

「わたしも賛成だ」

「1日くらいなら」

「そうですわね」

ベルとフェイは即答で、ローザもなんだかんだ言って観戦したいのだろう、ルマとユールはせっかく帝都に来た記念ということで明日見に行くことになった。


帝都3日目───

コロシアムに着くとそこにはすでに長蛇の列ができていた。

「うわぁ・・・出遅れた!!」

「ご主人様! 早く並ぼう!!」

ベルとフェイはシフトの腕を掴むと列の最後尾に歩いていく。

その後ろをルマ、ローザ、ユールがついていった。

最後尾に並ぶとベルとフェイがお互いに文句を言う。

「フェイがなかなか起きないから出遅れた」

「ベルちゃんだって用意が遅かったじゃないか」

なぜ仲の良い2人が喧嘩しているのか、それは昨日興奮して眠れなかったからだ。

ベルとフェイはコロシアムでどんな戦いが見れるのか考えると興奮し過ぎて寝るのが遅くなった。

シフトたちが起こすことでようやく目を覚ますと時間を聞いて2人は急いで準備する。

そして、朝食も食べずにシフトたちの背中を押してやってきたのだ。

当然何も食べてないのでベルとフェイの機嫌は悪くなっていく一方であった。

「2人とも、喧嘩するなら今日の観戦はなしだ」

シフトの言葉にベルとフェイはピタッと止まる。

そのあと2人はどちらからとも謝りだした。

「フェイ、ごめんなさい」

「ベルちゃん、ぼくも大人げなかった」

「2人とも、仲直りしたところでこれでも食べて落ち着こう」

シフトはマジックバックから串焼きを2本出してベルとフェイに1本ずつ渡した。

「ご主人様、ありがとう」

「お腹ペコペコだったんだよ」

ベルとフェイは早速串焼きを頬張る。

「美味しい」

「うん、塩味が効いて美味い」

「ゆっくり食べなよ」

ベルとフェイは首を縦に振って頷いた。

2人が軽食を終えてからしばらくするとシフトたちのコロシアムへの入場順番になる。

入場料は1人銀貨1枚。

シフトはルマたちの分も含めて銀貨6枚支払うとコロシアムの中に通される。

すると目の前には売店があり、軽食と飲み物が買えるようだ。

その隣では賭け事専用のカウンターがあり、今日の対戦カードとオッズが書かれた看板が設置されている。

多くの人が購入していた。

人数分の果実水だけ買うとシフトたちはコロシアムの座席がある場所へと移動する。

そこには円形のリングがあり、中央では芸人がパフォーマンスをしていた。

どうやらまだ戦いは行われていないようだ。

「どうやら間に合ったようだね」

「ほっ」

「よかった」

シフトの言葉にベルとフェイが安堵する。

前列の良い席から埋まっていっているので自然と後列の席になった。

「ああ、もうちょっと早く来れれば目の前で戦いが見れたのになぁ」

「残念」

「仕方ないさ。 次があればその時は早く朝起きて来よう」

「「は~い」」

ベルとフェイが納得するとリングの上では芸人のパフォーマンスが終了した。

芸人が下がると今度は1人の男性が小さい棒みたいな物を手に持って現れる。

「皆様大変お待たせしました! これより試合を始めます!」

男性が棒に話しかけるとその言葉が拡大されてコロシアムに響き渡る。

それに応じて観客から大歓声が湧く。

「へぇ~、あの棒に話しかけると声が大きくなるんだ」

「不思議」

「あれは拡声機という機械だ。 このコロシアムでは声を後方まで届かせるために使われている」

シフトたちの後ろから声が聞こえたので振り向くとフードを被って顔を隠した男が座っている。

フードの中を覗いてみるとグランディズだった。

「久しぶりだな。 元気にしてたか?」

「皇帝陛下?!」

「しっ! バカ! 声が大きい!!」

グランディズは指を口に当てると周りを見た。

皆リングに向けて手を突き出して今か今かと待ちわびている。

どうやらシフトたちのほうには気付いていないようだ。

「ほっ・・・バレてないようだな」

「・・・なぜ、あんたがここに?」

「余にとっては1週間に1度の楽しみだからな。 それに其方たちがここ(帝国)に入都したという情報があったからな、挨拶しに来たのさ」

グランディズはシフトたちを見て口角を上げる。

「お忍びで息抜きに来たって感じだな」

「そういうことだ。 お、そろそろ始まるぞ」

グランディズがリングに目をやるとシフトもそれに釣られて自然とリングを見る。

シフトたちが見守る中、リングの中央では今日の1試合目が始まった。


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