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240.エルフの里を離れる

シフトたちが世界樹に見とれていると里にいるエルフたちがやってくる。

「長老、これは・・・」

「シフト様たちが近づいたら突然光を放って花が咲き乱れたのです」

「「「「「「「「「「おおぉーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

エルフの女長老エレンミィアの言葉にほかのエルフたちが歓声を上げた。

「これは見事じゃのぅ」

「あたしゃ長年この里で暮らしておったが世界樹が花を咲かすのは初めて見たよ」

「今は寒い季節なのにここだけは優しい温かさを感じるわぃ」

「ありがたいことじゃ」

世界樹の元までやってきた元老院の年老いたエルフたちも目の前の光景に驚きを隠せない。

「皆の者、宴だ! 今日世界樹に花を咲かせたシフト様たちの奇跡に感謝を込めて」

「「「「「「「「「「おおぉーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

エルフたちは一旦家に帰ると皆飲食物を持って戻ってくる。

世界樹の下でエルフたちの宴が始まった。

世界樹に咲き乱れる花を見ながらエルフたちは大いに喜びを噛み締める。

シフトたちも世界樹を見ていると心が和む。

しばらく眺めていると白衣を着た女性エルフがユールに声をかけてきた。

「ユール様、その手にあるのはもしかして・・・」

「ええ、多分これが世界樹の根ですわ。 ベルさん、鑑定をお願いしてもいいかしら」

「わかった」

ベルが【鑑定】を発動してユールの持っている木の根っこを鑑定した。

「ユールがいった世界樹の根で間違いない」

「どうやら本物のようですわね」

「これが伝説の世界樹の根ですか・・・」

そこにはユールと親しくなったエルフたちが世界樹の根を見て驚きを隠せなかった。

シフトはユールに質問してみる。

「すまない。 その根っこはいったい何なのかわからないのだが・・・」

「これは世界樹の根といって錬金術や薬剤に使われるらしいですわ」

「ああ、なるほど錬金術や薬剤にね。 だけど根っこがほしいなら世界樹から分けてもらえばいいのに・・・」

シフトは当たり前のことを口にするがエルフたちが皆首を横に振る。

「そんな恐れ多いことはできませんぞ」

「遥か昔に世界樹から無理矢理取ろうとしたエルフがおったが、世界樹の怒りを買い命を落として以降世界樹を傷つけることは禁止になったんじゃ」

「もっともそれを聞かずに世界樹から素材を採取しようとしたバカ者たちが跡を絶たないがのぅ」

「つい最近だとたしか50年以上前だったか? 世界樹から素材を手に入れようとした若きエルフが世界樹の怒りを受けて絶命したばかりですからなぁ」

質問に答えたのは元老院の年老いたエルフたちだ。

それを聞いてシフトは額に汗を浮かべる。

「な、なるほど、無理矢理手に入れようとすれば罰せられるのですか・・・」

「左様、故に錬金術や薬学の本に記された世界樹を使ったレシピなど作れない・・・先ほどまではそう思い込んでおりました」

「しかし、ユール様の手にはあの世界樹の根があります。 これがあれば不可能と言われていた物が作れるかもしれません」

「へぇ、そんなにすごいんだ」

そういうとフェイが世界樹の根を手で触る。

「うーん、ぼくからしたら普通の根っこなんだけどなぁ」

フェイが触っても問題なかったのかルマ、ベル、ローザも手で触ったが、特に問題なく触れる。

それに心惹かれた1人のエルフが世界樹の根に手を触れる。

バチイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

「痛いっ!!」

その瞬間すさまじい光を放たれたのですぐに手を離す。

よく見るとエルフの掌が焦げて、そこから焦げた臭いが広がり煙が立ち上っていた。

それは世界樹の根に意思があり、明らかに拒絶したことを意味する。

「大丈夫ですか?!」

「今手当を・・・」

周りのエルフがすぐに治療にあたる。

「やはりですか・・・世界樹の祝福を受けていない者には手を触れることすらできないのですね」

「シフト様たちは世界樹の祝福を受けているから問題ないのでしょう」

シフトは自分が持っている花を見る。

多分これも同じなのだろう。

「ねぇ、ローザちゃん、これで何か作れないかな?」

フェイがローザに世界樹の小さい花を見せて聞いてみる。

「そうだな・・・指輪や腕輪、イヤリングでは大きすぎるな。 ネックレスかペンダント、あとはブローチなら作れそうだがな」

「うーん、それじゃペンダントで」

「あら、それならわたくしもお願いしますわ」

「ベルも」

「それなら私も同じのを作ってくれないかしら」

「僕も同じのをお願いするよ」

「あははははは・・・、了解だ。 あとで作るから今は自分たちで持っていてくれ」

シフトたちは世界樹の花をマジックバックに入れておく。

ユールは世界樹の根も一緒に入れていた。

「さて、世界樹の謎はこれぐらいにして今はこの美しい光景を楽しもう」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちは世界樹を眺めながらエルフたちの宴に参加するのであった。


翌日───

シフトたちは里の入り口にいる。

そこには里にいるエルフたち全員が集まっていた。

エレンミィアが代表してシフトたちに挨拶する。

「シフト様、皆様、今回はエルフの里にお越しいただきありがとうございました」

「いえ、僕たちこそ突然の訪問で失礼しました」

シフトもエルフたちに頭を下げる。

「いつでもお越しください。 我々エルフ族一同をもっておもてなしいたします」

「そんなに畏まらなくても普通でいいですよ、普通で」

「そうですか? シフト様がそう望むのであれば・・・」

「あ、これはこの里でお世話になったお礼です」

シフトはマジックバックから布の袋を取り出すとエレンミィアに渡した。

中身を確認すると人間族の金貨10枚が入っている。

「シフト様、これは受け取れ・・・」

「いいから受け取ってください。 今度人間の国に行った時にでも何か買えばいいのですから」

「ありがとうございます」

エレンミィアがシフトに一礼する。

「時間ができましたらまた遊びに来ます」

「楽しみに待っております」

シフトの挨拶が終わると旅支度したエルフたち10人の男女がエレンミィアに頭を下げる。

初日に世話になったエルフのリーダーが代表してエレンミィアに声をかけた。

「長老、これより我々は風神様がおられるという島へ旅立ちます」

「気を引き締めて行きなさい。 あとくれぐれも風神様に粗相のないように」

「「「「「「「「「「ははっ!!」」」」」」」」」」

シフトたちは頭を下げると10人のエルフたちとともにエルフの里をあとにした。


シフトは上空を見上げる。

朝もまだ早い時間なので太陽はそこまで昇ってはいない。

シフトたちは太陽の位置を確認するとエルフたちに声をかける、

「それではまずは東に行きましょう」

「シフト様、東には我々だけで問題なくいけます」

「僕たちも帝国に用があるので途中まで一緒です。 そこからは目的が違うので別れることになりますが」

「そうでしたか。 それではお願いいたします」

シフトたちは10人のエルフたちとともに東を目指すことにした。


2週間後───

シフトたちはエルフたちと協力して森を抜ける。

彼らの中にレンジャーの職業持ちがいたので魔物や魔獣との戦闘を極力避けた結果1ヵ月はかかる道程をわずか2週間で突破した。

森を抜けた先には洞窟が見える。

そこはかつてライサンダーたちと戦った洞窟だ。

偶然にも帝国の近くまで来ることができた。

「ここから南東に1日ほどで帝国か・・・」

「それではここでお別れですね」

エルフのリーダーがシフトたちとの別れを言った。

「そうなりますね。 因みにここから東へはどのように行く予定ですか?」

「基本は歩きですね」

エルフのリーダーの言葉にシフトは聞き返す。

「え? 歩き?」

「はい、歩きです」

危険を感じたシフトはもう1つ質問する。

「海とかはどうするの?」

「海というのは?」

ガイアール王国でも海を知る人などほとんどいないのにエルフに聞いても知らなくて当然だ。

「えっと湖をとても大きくしたものと考えてくれ」

「湖ですか? それなら泳げばいいことです」

「ちょっと待った!!」

「どうされました?」

シフトは移動手段について聞いてみる。

「何か乗り物とかはないのか? 例えば馬とか召喚獣とか?」

「馬はありませんが【召喚師】や【召喚士】のスキルを使える者が合わせて4名います」

「すまない、今すぐそれをここで見せてくれ」

「はい、ご要望を言ってください」

「まずは馬みたいな地上を走るタイプをお願い」

「わかりました」

4名のエルフの召喚士たちは一斉に召喚すると馬みたいな召喚獣が4体現れた。

どれも巨体で馬力がある獣たちばかりだ。

「召喚に応じてくれる時間は大体どのくらいだ?」

「1日は問題ありません」

「わかった。 次は亀みたいな水上を泳げるタイプをお願い」

「わかりました」

4名のエルフの召喚士たちは一斉に召喚すると亀みたいな召喚獣が4体現れた。

これも巨体で甲羅の上に乗れる獣たちばかりだ。

シフトは少し安堵する。

「海はこれで問題ないとして、問題は陸だな」

「陸ですか?」

「ああ、移動していれば盗賊や野盗に襲われる可能性があるからな」

「それならばすべて蹴散らせばいいのです」

おいおい・・・

シフトは呆れつつもエルフたちを窘める。

「人間族と交流しつつ東を目指すならともかく人間の国に立ち寄る気はないのだろ? それなら移動手段は確保すべきだ。 帝国から先公国までは草原が続いていて食料を確保するのは難しくなるぞ?」

「なんとそうでしたか・・・てっきり森が続くとばかり考えておりました」

普段エルフたちは森から出ないのだからほかの国など知らなくて当然だろう。

「召喚獣に乗って進むにしても1頭に3~4人は無理だろ? それなら荷車を取り付けて進むのが妥当だろう」

「なるほど、それなら荷車を作りましょう」

「一応聞くけど荷車は作ったことは?」

「大丈夫です。 里ではなんでも自分たちで作っていたので」

「それなら安心だな」

シフトはエルフたちの言葉に安堵する。

「まずはここで荷車を作って、それから東を目指します」

「わかった。 それならここでお別れだな」

「シフト様、それに皆様、色々ありがとうございました」

「無事に風の精霊に会えることを祈るよ」

シフトたちはエルフたちに別れの挨拶をすると南東にある帝国を目指して歩き始めた。


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