237.エルフたちとの交流
私はエルフの魔法使いたちと一緒に魔術が施された建物に来ていました。
そこには多くの魔導書がずらりと並んでいて、見たことがない本ばかりです。
「ルマ様、魔法は何を使えるのですか?」
「スキルで【魔法師】を持っています。 これは【火魔法】、【水魔法】、【風魔法】、【土魔法】を内包しています。 それと【合成魔法】を使えます」
「おお、四元素の魔法をすべて使えるのですか。 我らでも多くて2~3が限界なのですが・・・あと、【合成魔法】の使い手は里でも私1人しかいないのです」
「そうなんですか?」
「ええ、私は【合成魔法】を使えるのですが【水魔法】と【風魔法】を掛け合わせて【氷魔法】を使えるのが限界ですから。 それを考えるとルマ様は優秀な魔法の使い手です」
「ありがとうございます」
私は【合成魔法】を使って四元素を組み合わせることで【氷魔法】や【木魔法】を始めとした9つの魔法を使える。
それに対してこの女性エルフは【合成魔法】を使えるが【水魔法】と【風魔法】を組み合わせた【氷魔法】しか使えない。
エルフたちならもっと先を行く者たちが多くいるものだと思いましたがそうではないようです。
「ルマ様は【氷魔法】はどのようなものを作れるのでしょうか?」
「そうですね・・・雹、氷弾、氷の壁、氷の塊です。 氷の壁以外は主に戦闘用に特化しています」
「なるほど、恥ずかしながら私は夏場に氷の塊を生成して納涼するだけしか使い道がないと思っていました。 参考にさせていただきます」
すると先ほど【木魔法】を使った女性のエルフが話しかけてきました。
「私はスキル【木術師】を持っています。 その中に【木魔法】がありました。 それには剣・槍の柄や矢みたいな武器を生成するモノだけだと認識していましたが、今日ルマ様の木を育てるという新たな発想を得ることができました」
「私も枝から矢を作成できるとは想像できませんでした。 これを機会に色々と試してみたいと思います」
話を聞く限りだとエルフたちは応用することにはあまり関心がないようです。
「ルマ様は柔軟な発想をお持ちなのですね」
「そうでしょうか? 私はご主人様の役に立ちたいがために頑張っているだけなのですが・・・」
「もしかするとそれが多くの発想を生み出しているのでしょう」
「・・・そうだといいですけどね」
その後も私と魔法使いのエルフたちはお互いの魔法について色々と話し合い、有意義な時間を過ごしたのでした。
ベルは今エルフの厨房にお邪魔している。
そこではベルが見たことがない食材を使って料理をしていた。
「この乾いたのは何?」
「これは干し茸です。 茸を天日干しにして乾燥させたものです」
「美味しいの?」
「そのまま食べるには向いていませんが、スープに使うととても美味しい出汁が出るのです。 あとは水で戻せば普通に食材としても使えるので保存食としても重宝します」
そういってエルフのコックが出汁を取ったスープを味見皿に入れる。
ベルは味見皿を受け取ってスープを飲む。
「美味しい」
普段ベルが肉や野菜から取る出汁とは違い、とても深い味わいだ。
「ベルがいつも作っているのとは違ってとても奥深い味」
「ベル様はお料理ができるのですか?」
「スキルで【料理】を持っている。 レベルは4」
「「「「「「「「「「おおー」」」」」」」」」」
ご主人様から【料理】を教えてもらってから常に料理をするようになった。
その間にとんとん拍子にレベルが上がったけど、5になるまでが途方もなく長い。
「よろしければ何か作ってはもらえないでしょうか?」
「肉とか卵とか牛乳とか使うけどいい?」
「ええ、構いませんよ。 この区域では主に新鮮な野菜や果物が手に入りやすいのであって、肉や魚や卵や乳がダメという訳ではないのです」
「そうなんだ」
ベジタリアンかと思ったけどエルフもベルたちと同じ普通なんだ。
「それならお菓子を作る・・・プリンでも作ろうかな」
ベルは言うが早いかマジックバックから卵、牛乳、砂糖を取り出すと調理にかかった。
鍋に牛乳を入れてから火にかけて泡が出るまで温めるとそこに卵黄と砂糖を加えてよく混ぜる。
混ぜ終えた物を耐熱カップに入れると今度はお湯を張った鍋にカップを入れて10分ほど蒸し焼きにする。
容器を動かして固まったのを確認するとルマと一緒に作った特製の冷蔵箱にいれて30分して完成する。
「できた」
箱からプリンの入ったカップを取り出す。
エルフたちは不思議そうにカップを見る。
「これはなんという食べ物ですか?」
「プリン。 甘くて美味しい」
「そうなんですか? それではいただきます」
エルフたちは口に入れるとそのまま固まった。
「?」
ベルが不思議そうに見ているとエルフたちは突然叫びだした。
「美味い!」
「美味しい!」
「こんなの食べたことがない!」
エルフたちは興奮していた。
「ベル様、よろしければ作り方を伝授してもらえませんか?」
「わかった」
ベルはエルフたちに色々な料理を教えていった。
わたしとフェイは弓を習うためにエルフの練習場に来ていた。
「ローザ様、フェイ様、まずはあなたたちの腕を見せてもらってもよろしいですか?」
「構わないよ」
「ぼくも」
「こちらをどうぞ」
エルフたちは弓矢を持ってきて、わたしとフェイに渡す。
エルフのリーダーが離れた位置にある的を指さした。
「まずはこの位置からあの的を狙って撃ってみてください」
「心得た」
「任せてよ~♪」
的はわたしたちからおよそ10メートル離れている。
わたしは精神を集中すると弓を引き、的に狙いをつけてから矢を放つ。
ヒュッ!! ドスッ!!
わたしが射た矢は的のど真ん中へ見事に命中する。
「ふぅ・・・」
わたしのスキル【武器術】が自然と発動していた。
これくらいなら問題なく当てることができる。
一方フェイはというと・・・
ヒュッ!! ドスッ!!
当たるには当たったがぎりぎり的の内側だ。
「あ~、中央に当たらなかったか・・・」
中央に当たらなかったことに悔しがる。
「お二人ともお見事です。 とくにローザ様はこの距離からど真ん中を射抜けるとはさすがです」
「いや、そんなことはないだろ?」
「いえいえ、私たちでもこの距離から正確に的を射ることができるのは容易ではありません」
そういうとエルフたちはわたしたちと同じように弓を引くと的に向けて放つが、矢はフェイよりも内側に刺さるがど真ん中に当たったのは2~3人だけだ。
「見ての通りです。 私たちエルフも長年の鍛錬により身に着けたものです。 最初から上手い者など神が与えた能力以外ではありえません」
その言葉を聞いてわたしは【武器術】が如何に優れたスキルかを悟った。
「さて、もう少し距離を離れてみますか」
わたしたちは今度は20メートルの距離から同じく矢を射る。
ヒュッ!! ドスッ!!
わたしの矢はまたもど真ん中を命中する。
一方フェイの矢は威力が足りなかったのか的に当たる前に地面に落ちた。
「ローザ様、お見事です。 この距離でもど真ん中を射抜けるのですか・・・」
「わたしのスキルが適した位置を見抜いているだけです」
「それでもこの距離でもど真ん中はすごいよ、ローザちゃん」
ほかのエルフたちも矢を放つが、フェイと同じように地面に落ちるものや的には当たるが中央には当たらない。
「そういえば、あなたの腕前を見ていなかったな」
「私ですか? お見せしましょう」
エルフのリーダーが矢を放つとローザと同じくど真ん中に的中した。
(なるほど、彼もスキルの恩恵を受けたものか)
それからわたしとエルフのリーダーによる飛距離対決が始まった。
わたくしは今エルフの医師や薬師とともに薬学研究をしている部屋に来ています。
ふと、わたくしの目に一冊の本が留まりました。
「これは・・・」
「ああ、それは私が趣味で読んでいる本です」
「中を見てもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
わたくしは本を開いてパラパラとページを捲るとあるページの項目で手が止まった。
『エリクサー』
ご主人様が持つフルポーションをも凌ぐ伝説の蘇生薬。
この本にはその作り方が細かく掲載されている。
「・・・」
わたくしは3ヵ月前の戦いを思い出す。
ご主人様とライサンダーとの戦いで、逃げ場のない雷がご主人様を襲ったことを。
ご主人様の強さはわたくしたち5人が誰もが知っている。
しかし、もし・・・そう、もしあの雷に耐えられなかったらご主人様が死んでしまうと。
結果としては武器防具どころか衣服も粉々に破壊されてはいたがご主人様は生きていた。
あの時ほど生きていてほしいと願ったことはない。
いくらわたくしの【治癒術】が優秀でも死者を蘇えらせる力はないのだから。
だけどこのエリクサーさえあれば万が一誰かが死んでも生き返らせることができるはず。
(【治癒術】がダメでもわたくしにはまだ【薬学】があるのだから)
わたくしがそのページをじっと見ていると横から話しかけられました。
「エリクサーですか? 伝説の蘇生薬ですが実在するのかわからない代物です」
「え、ええ、もしこれが本物ならすごい発見ですわ」
「たしかにそうですが無理です。 材料を見てください」
女性エルフが言うので材料を見る。
霊薬、世界樹の根、ドラゴンの心臓、・・・そして、賢者の石。
(なんですのこれえええええぇーーーーーっ?!)
どれもこの世界では希少な素材ばかりじゃないですか! 極めつけは賢者の石ってこれはこの世界に存在するかもわからない物じゃないですか!
「えっと・・・失礼ですがこの本に書いてあることは本当ですか?」
「エリクサーについてはわかりませんが、ほかの薬に関しては紛れもなく本物です」
ほかのページに書かれているポーションやマナポーションを始めとした薬を見ていくと、どれも作り方や効能はわたくしが知っているモノと一致していることから本当のことが書いてあります。
(ならばこれも本物なの?)
わたくしが考えていると女性エルフが気遣ってくれます。
「よろしければその部分の写しを渡しましょうか?」
「よろしいのですか?」
「ええ、私たちでもまだ解明していないのです。 できればユール様にも協力していただければと・・・」
「それならば喜んで」
女性エルフからエリクサーに関する部分の写しをもらう。
(もし、ご主人様に・・・みなさんに何かあったらわたくしが絶対に助けてみせますわ)
わたくしはエリクサーの写しを見て決意しました。




