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231.メデューサ 〔無双劇47〕〔※残酷描写有り〕

シフトたちに拘束された女の口からは血が少し滲み出ていた。

その血は少しずつ布に染み込んでいく。

シフトとギルバートは倉庫内を調べていて、まだそれに気付いていない。

「何も見つかりませんね」

「ここで何をしていたのか不明だけど、あとで彼らに尋問してみるよ」

女の口を塞いでいる布の血がある程度溜まっていき、やがて布から一滴の血が地面へと落ちる。

ポチャン・・・

その瞬間女を中心に黒い光りが輝いて魔法陣が展開された。

シフトとギルバートが何事かとそちらを振り返ると魔法陣が黒い光を放っている。

止めようにもすでに術式は完成されおり、今更何をしても無駄であった。

一瞬黒い光が場を埋め尽くすと収まり、女が黒い光に覆われている。

「「!!」」

シフトとギルバートは驚愕する。

女の姿が徐々に変化していった。

服は破け、拘束が解け、腕には鱗が生え、髪の毛が無数の蛇の頭に、足は蛇の尻尾に変わっていく。

女は化け物へと変化を遂げる。

「シフト君、気をつけろ」

「はい」

シフトとギルバートが身構えると女の化け物は目を見開いた。

その目は宝石のように光を放つ。

シフトとギルバートはその光をその身に受ける。

するとギルバートが石化した。

シフトも完全ではないが左腕の一部が石化していく。

シフトが完全に石化しなかったのは、その並外れた耐久力のおかげである。

(これは・・・まずい!!)

シフトは【次元干渉】を発動して石化を拒絶できるか試すと、その場で進行が止まる。

石化は解除できないが進行を止めることには成功したようだ。

頭の中に声が響く。

≪確認しました。 石化耐性解放 石化耐性(弱)を取得しました≫

耐性が手に入ったのは嬉しいが、今はこの状況を打破しないといけない。

「ほう・・・わらわの目を見て無事とはな」

「無事じゃないさ。 お前は今までで一番危険な存在だよ」

「ならばこれでどうじゃ?」

化け物はその髪の毛の蛇が何メートル、いや何十メートルも伸びて襲ってくる。

シフトはそれらをバックステップで躱すと化け物を睨む。

「うむ、今のを躱すか・・・それではこれならどうする?」

化け物は再び髪の毛の蛇で攻撃する。

しかし、対象はシフトではなく石化したギルバートだ。

「!!」

シフトはギルバートと蛇の間に割り込んだ。

蛇がシフトに咬みつく。

「っ!」

咬まれたところから毒を混入されるが、毒無効を持つシフトには効果はない。

「やはり庇ったか。 それではどんどんいくとしよう」

化け物は次々と蛇をシフトに向けて攻撃する。

「調子に乗るな」

シフトは右手のナイフで襲い掛かる蛇の胴を次々と斬り落とす。

本来であればそれで終わりだろうが、斬ったところから蛇が再生する。

地面に落ちた蛇たちも死なずにそのままシフトへと咬みつく。

「ほっほっほ、無駄無駄。 わらわの蛇は胴を斬られたところで生きているのだからな」

シフトは冷静になり1匹の蛇の頭をナイフで刺す。

すると蛇の動きが止まり、やがてその場で死んだ。

「なるほど・・・斬るのではなく突けば死ぬか」

シフトはその場にいる蛇たちの頭を次々と刺して殺していく。

「余所見とはずいぶん余裕じゃな」

化け物は再び髪の毛の蛇でギルバートを攻撃する。

だが、その攻撃が届くことはなかった。

今まで以上のスピードでシフトが斬り、そして地面に落ちる前に蛇たちの頭を刺したのだ。

「なにっ?!」

「何を驚いている? 僕の実力はこんなものじゃないぞ?」

シフトは化け物との間を詰めていく。

「ふん、お前が間を詰めれば隙ができるというのがわからないようだな」

化け物が再びギルバートへと攻撃を仕掛けるが、透明な壁に阻まれて攻撃が届かなかった。

「なっ?!」

「いつまでも防戦していると思ったか?」

間合いを詰めると同時に【次元遮断】を発動してシフトと化け物を外界から隔離したのだ。

これでギルバートへの攻撃を封じることに成功する。

「さて、反撃といきますか」

「調子に乗るでない!」

化け物は魔力で槍を作り出すと手に持って構える。

シフトに対して接近戦を挑んできた。

槍で突くもシフトの横を通り過ぎていく。

シフトは【五感操作】を発動させて化け物の距離感と平衡感覚を狂わせていた。

槍での攻撃は届かずも、髪の毛の蛇たちはシフトを的確に攻撃してくる。

なぜ蛇が正確に攻撃してくるかというと、視覚で見ているのではなく熱探知で捉えているからだ。

故に蛇たちはシフトに咬みつこうとする。

シフトは龍鱗のナイフで斬り落とすのではなく、柄頭で蛇たちの頭に衝撃を与えていく。

攻撃を受けた蛇たちはグロッキーな状態でその場に伸びる。

髪の毛の蛇たちが動かなくなったことに化け物は焦りを感じた。

「こうなれば」

化け物はシフトから距離をとると目を閉じる。

魔力を目に集中して十分溜まると目を開く。

シフトに再び石化の光が襲い掛かる・・・はずであった。

そこにシフトの姿は見当たらない。

「なっ?! どこにいったのじゃ?!」

「ここだよ」

化け物が振り向くのとシフトが龍鱗のナイフで首を刎ねるのは同時であった。

「ぐぅ・・・ばけ・・・も・・・の・・・め・・・」

それだけ言うと化け物は力尽きる。

「まさか化け物から化け物といわれるとはな」

シフトは化け物が死んだことを確認すると結界を解除する。

あとはシフトの左腕とギルバートの石化を解除すればすべて解決だ。

その時、倉庫の入り口からルマたちがやってきた。

「ご主人様、こちらは片付き・・・! ご主人様、その腕は!!」

ルマたちはシフトの腕を見て驚いている。

「僕の腕はあとでいい。 ユール、あそこにいるギルドマスターの石化を解除してくれ」

シフトが指さしたほうに石化したギルバートが置かれていた。

「大変ですわ! すぐに治しますわ!!」

ユールはシフトの言う通り、ギルバートのところに行くと【状態異常回復魔法】を発動して石化を解除し始めた。

「ご主人様、いったいここで何があったんですか?」

「蛇がいっぱい死んでる」

「そこら中、血塗れだな」

「うわっ! この化け物身体のほとんどが蛇だよ」

「その化け物の目から光が放たれて僕の左腕とギルドマスターが石化したんだ」

シフトが簡潔に言うとルマたちが化け物の目を見る。

「あの宝石みたいな目ですか?」

「キラキラして綺麗」

「なんというか対比がすごいな」

「これ売れるかな?」

「どうだろう? ベル、一応鑑定してみて」

「わかった」

ベルは化け物の目を鑑定する。

「ベルちゃん、どうかな?」

「普通に宝石として売れる。 ただ、魔力を流すと石化する」

「うわぁ・・・それは売ったらまずいね」

「出所がばれたら大変なことになるな」

「そうね、さすがに売るのはなしですね」

「ルマの言う通りだな。 これは僕が預かるよ」

シフトはマジックバックに化け物の首を入れる。

(あとで【空間収納】に入れ替えておかないとな)

シフトがそんなことを考えていると戸惑いの声が聞こえてくる。

「! あれ? 僕は? ユール君? これはいったい・・・」

どうやらギルバートの石化が解けて状況を把握できていないようだ。

「ふぅ、どうやら石化が解けたようですわね」

「石化? はっ! そうだ! あの化け物はっ?!」

「それなら僕が倒しましたよ。 ギルドマスター」

「シフト君! そうか、君が倒してくれたんだね!!」

「はい、そこに化け物の死体があります」

シフトの足元に首のない化け物の死体が転がっている。

「次はご主人様の石化した左腕を治しますわ」

ユールがシフトのところまで行くと【状態異常回復魔法】を発動して石化を解除し始める。

「シフト君! その腕は!」

「最初の石化攻撃でやられました。 ただ、ギルドマスターと違って左腕だけで済んだのは不幸中の幸いです」

「たしかに全身を石化させられるよりかはマシだけど・・・」

「無事化け物を倒せたので問題ないでしょう」

「・・・そうだね、この倉庫には情報もないことだし一旦ギルドに戻って話し合おう」

「はい」

ギルバートは部下たちの状態を確認するべく先に倉庫を出ていく。

そうこうしているとユールのおかげでシフトの左腕の石化も無事に解除された。

「ありがとう、ユール。 助かったよ」

「当然のことをしたまでですわ」

そういうとユールは満更でもない顔をしていた。

シフトは化け物の首なし死体をマジックバックに入れる。

「それじゃ、僕たちも行こうか」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトはルマたちを引き連れて倉庫をあとにした。


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