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21.ベルと鑑定

シフトは普段着に着替えると今日やるべきことを考える。

今日の行動は以下の通りである。


1.武器屋で武器を購入する

2.雑貨屋で衣類を購入する

3.防具屋で防具を購入する

4.冒険者ギルドで冒険者登録と簡単な依頼を受ける

5.今日の宿をとる


さて、行動する前にベルに命令しておかないと・・・

「ベル」

「ご主人様、なんでしょう?」

「ベルは【鑑定】のスキルを持っているよね?」

「・・・はい」

「それを常時発動してほしい」

ベルはなぜか苦い顔をした。

「・・・そ、それは・・・」

「ダメか?」

「・・・ダメ・・・ではないです」

「? 嫌なら嫌ではっきり言ってくれても構わない」

ベルは自分の過去を話し始めた。

「・・・ベルは【鑑定】のスキルで光を失いました」

「どういうことだ?」

「・・・ベルの実家はヴァルファールという中級貴族でした。 5歳のときスキル授与されたのが【鑑定】で・・・」

「ヴァルファールといえば、たしか伯爵家だな」

シフトの解釈にベルは肯定する。

「・・・ベルの家にはすで[鑑定石]がありました。 だから【鑑定】と知った父親はベルの目を斬ったのです」

「な?!」

「そんな?!」

「ひどい?!」

「実の家族に対して?!」

ベルの父親の行いにルマたちから悲痛な声が飛ぶ。

(なるほど・・・ベルが嫌がる訳だ・・・さて、どうしたものかな・・・)

「ヴァルファールの家系図から抹消され、そのあとすぐに奴隷商人に売り払われました。 あとはこの5年間奴隷商で生きてきました」

「酷い父親です!!」

「ああ、許せない!!」

「スキルに罪はないのに!!」

「親が子にする行いではありませんわ!!」

話を聞き終えたルマたちは憤慨した。

(これは無理強いさせない方がいいな)

「ベル、先ほどの命令は撤回する」

「ご主人様?!」

「辛い思いまでしてスキルを使わせたくはない。 ほかの方法を考えるから・・・」

「待ってください! 捨てないでください! ご主人様!!」

ベルは必死にシフトにしがみついた。

「ちょっ?! ベル!!」

「お願いします! 見捨てないで! ご主人様!!」

「ベル!! 落ち着け!! 僕は君を捨てない!!! だから落ち着いて!!!」

「・・・あ、ご、ごめんなさい、ご主人様・・・」

ベルのパニックが落ち着くとルマがシフトに質問した。

「ご主人様、ベルに【鑑定】を使わせて何をしたかったのか教えていただいてもよろしいでしょうか?」

「・・・ベルは【鑑定】との相性が良い3つのコモンスキルを持っているんだ」

「コモンスキルを3つ?」

「コモンスキルとはなんですか?」

シフトの言葉にルマたちはみんな不思議そうにしていた。

「これは僕の見解だがスキル授与されたスキルをユニークスキル、努力して手に入れたスキルをコモンスキルと呼称している」

「なるほど、ベルの場合はユニークスキルは【鑑定】で。 努力して手に入るコモンスキルが優秀だというわけですね?」

ルマの解釈にシフトは頷いた。

「その通りだ。 そしてベルが持っているコモンスキルが【錬金術】と【錬成術】と【料理】だ」

「な?!、【錬金術】ですか?!」

「【錬金術師】以外では使える人が滅多にいないレアスキルですよ?!」

そう、この世界ではマジックバックを始めとした魔法アイテムはすべて【錬金術】から作られているのだ。

「その通りだよ。 だけど個人的には【錬金術】や【錬成術】よりも【料理】に期待しているんだけどね」

「なぜ【料理】に期待しているんですか?」

シフトはお道化て見せてから答える。

「人間、食べなければ死んでしまうからね。 だからこそスキル【料理】を持つベルはどうしても欲しかった」

「町では凝った料理が食べられるが、旅の途中では保存食とか狩りで得た肉を簡単な味付けでしか食べられないからね」

「たまに毒が入ったハズレ食材もあるから」

「その通りだ。 食材や料理工程を【鑑定】すればより美味しい料理ができると思ったからだ」

シフトの回答にベルは下を向いて考えていた。

「・・・」

「ベル、さっきも言ったけど辛く苦しい思いまでしてスキルを使わなくていいんだ。 それに僕は君を捨てない。 約束する」

「ご主人様、ベルは・・・ベルはご主人様の役に立ちたい! だから【鑑定】を使います!! 過去を乗り越えます!!!」

ベルは顔を上げると何かを吹っ切ったようにシフトを見つめてきた。

「・・・ベル」

「【鑑定】発動・・・って、ご主人様、わかっている情報がたくさん出てきてます」

「例えば?」

「はい、ご主人様を鑑定すると『人間』としか鑑定されません」

「に、人間?」

鑑定結果に何とも言えない表情をするルマたち。

ベルが可哀そうなのでシフトは咄嗟にフォローする。

「いや、問題ない。 スキルレベルが上がらないことには詳細鑑定が出来ないんだ。 魔力が続く限りスキルを使い続けてくれないか?」

「が、頑張ります」

「ところで気になることがあるんだけど・・・」

「なに?」

フェイが疑問に思ったことを口にする。

「どうしてベルちゃんにコモンスキル【錬金術】と【錬成術】と【料理】があるってわかったの?」

「・・・ちょっと特殊な[鑑定石]を持っていてね。 みんなを購入する際にこっそり使って確認させてもらったよ」

するとフェイは冗談交じりで自分の胸を両手で隠した。

「や~ん♪ ご主人様のエッチ~♪」

その冗談を真に受けたルマとユールも自分の胸を両手で隠して背中を向いた。

「ご主人様、さすがにそれはどうかと・・・」

「うううぅ、ご主人様のエッチ・・・」

「もう~♪ 二人とも、冗談よ♪ じょ♪・う♪・だ♪・ん♪ そこまで測れるわけないでしょう~?」

(面白そうだ。 フェイの冗談が本当かどうか試してみるか・・・)

すると・・・


名前 :フェイ

体系 :胸 78

    腰 56

    尻 82


「ぶうううううううぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーっ!!!!!!!」

フェイの身体の3サイズが表示されたことに息を噴き出してしまった。

「え? ご主人様? もしかして本当に胸の大きさとか表示され・・・た?」

「あ、いや、えっと、その・・・」

シフトの反応を見てフェイの顔色が真っ赤に染まっていく。

「ほ、本当に表示されるの? それは流石に恥ずかしいんだけど・・・」

「ま、まさか表示されるとは思わなくって・・・は、ははは・・・」

「ご主人様」

ルマが極上の笑顔を見せてくるが目は完全に笑ってない。

「どうした? ルマ?」

「その[鑑定石]は私が預かります。 今すぐ渡してください」

「断るっと言ったら」

ルマからギルバートを凌駕するほどの威圧感と凄まじい殺気を感じた。

「乙女の秘密を守るために死力を尽くして奪います」

シフトはどうしたものか考える。

(悪用されると大問題だからな・・・)

「ルマ、悪いけど今は渡せない。 理由はみんなが弱いのとこれが第三者にわたると・・・」

「ご主人様、察してください。 乙女には見られたくないモノが・・・」

「ルマ、止めろ」

尚も食い下がるルマをローザが止めた。

「ローザ、止めないでこれには乙女の尊厳が・・・」

「ご主人様の言葉を聞いてなかったのか?」

「だって・・・」

「先ほどの言葉を聞いていなかったのか? ご主人様はわたしたちの安否を気にしているんだ。 迷惑をかけてどうする?」

「・・・」

「ご主人様、1つ質問がある」

ローザが深刻な顔でシフトに問いかける。

「なんだい? ローザ」

「その[鑑定石]が出回るとどうなるのかな?」

「間違いなく戦争になる」

意外な言葉にローザだけでなくルマ、フェイ、ユールも眉を顰める。

「戦争? そこまでの一品か?」

「フェイ、君は【風魔法】を使えるよね? ユールは【光魔法】を使えるはずだ」

「たしかにわたくしは【光魔法】を使えますけど・・・」

「ぼくも【風魔法】を使えるけど・・・あ?!」

フェイはそこまで言うと自分の発言にハッとする。

「フェイ、どうした?」

「思い出した!! ぼくのステータスだけど最初はスキル授与で授かった【武闘術】しか表示されなかった!!!」

「!! わたくしも【治癒術】だけでしたわ!! 【治癒術】と【光魔法】は密接な関係だと勝手に思っていましたわ!!!」

「・・・つまり見えてないコモンスキルが見えると?」

「ベルのコモンスキルを話しただろう? 本来は自分が持っている力は何かしないと発現できない。 だけどこの[鑑定石]があれば・・・」

「赤子の時から強力なコモンスキル持ちを見つけて育てれば立派な戦略兵器の完成?」

ローザは自分が語るにつれて顔が青ざめていくのがわかる。

ルマもフェイもユールもここにきて事の重大さを知ることになる。

「その通りだ、ローザ。 だから今の弱いルマには渡せないってことだ」

「ご主人様、もう1つ質問がある。 その[鑑定石]は世界に1つだけか?」

シフトは首を横に振りながら答える。

「僕が知っているのはこの[鑑定石]はとある地下ダンジョンのあるフロアに大量に落ちている・・・それだけだ」

「なるほど。 因みにそのダンジョンに挑みたいと言ったら?」

「自殺行為しに行くようなものだから絶対止める」

「はぁ・・・今のでどこのダンジョンか大体わかったよ。 その[鑑定石]を手に入れるには死に物狂いで強くならないとダメだってことが・・・」

ローザはお道化た仕草でシフトに返事をした。

あの様子だとこの[鑑定石]の出所が大陸最大のダンジョン『デスホール』と感ずかれたな・・・

「そういうことだから・・・ルマ、この[鑑定石]は君に渡せない。 理解してくれたかな?」

「・・・わかりました・・・」

ルマも大事になると分かったので渋々引き下がった。

それと、今後は[鑑定石]を悪用しないよう戒めよう。


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