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227.モウス

太陽が西の地平線に触れるころ。

シフトたちは『猫の憩い亭』の前にある食事処でギルバートとサリア、それに衛兵アルフレッドを待っている。

店前でルマたちと話していると先にアルフレッドがやってきた。

「よう坊主、待たせたかな?」

「いえ、大丈夫ですよ。 実はギルドマスターとサリアさんもこのあと来るのですが問題ありませんか?」

「ギルマスとサリア様が? 全然問題ないよ」

アルフレッドはシフトに向かって笑顔で答えた。

そこにギルバートとサリアがやってくる。

「やあ、シフト君」

「遅くなりました」

「全員揃ったし、中に入りましょう」

シフトたちは店内に入り、大きいテーブル席に座ると各々好きな物を注文する。

しばらくすると店員がやってきてテーブルの上に次々と料理を置いていく。

アルフレッドがグラスを片手に音頭をとる。

「それじゃ、久しぶりの再会に乾杯!」

「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」

シフトは目の前にある料理を食べているとアルフレッドが話しかけてくる。

「そういえば坊主は今度はどこ行ってたんだ?」

「えっと帝国とドワーフの国と公国と皇国です」

「おお、王国の東のほうを巡ってたんだな。 何か面白いことはあったのか?」

アルフレッドの質問にシフトは考えながら答える。

「そうですね・・・帝国では皇帝の銃戦闘を拝見しました」

「そういえば銃弾がそろそろ心許無いから買いに行きたいよ」

フェイはこの前の大軍との戦闘で弾数も考えずに二丁拳銃で撃っていることで残り僅かだと嘆いていた。

「ドワーフの国では王自らが鍛冶の手本を見せてくれました」

(いただき)を知るにはもう1度見たいな」

ローザはドワーフの鍛冶王ラッグズが見せた技術をもう1度見たいと切望する。

「公国では人魚を見ました」

「アクアル、今頃何しているかな」

ベルは巨人の島にいる海人族である人魚のアクアルが気になるようだ。

「皇国では翼人族との和平に立ち会いましたね」

「皇国と翼人族は仲良くやっているかしら」

ユールは皇国と翼人族お互い国交が上手くいっているか不安になっている。

「一応こんなところですね」

「ん? エルフの里には行かなかったのか?」

「そういえばエルフの里には行ってませんね」

「帝国かエルフの里かで迷ってましたからね」

ルマがライサンダーたちの行方を晦ましたときのことを思い出す。

「一応目的も果たしたので、旅行がてら行ってみようと思います」

「また旅に出るんだな。 ここからだと徒歩で行くなら2ヵ月はかかるだろう」

「それに基本エルフは警戒心が強くて余所者には容赦ないから気を付けたほうがいい」

「エルフにお知り合いがいらっしゃるなら話は別でしょう」

3人はシフトたちにエルフや里について警告する。

「知合いですか? うーん・・・たしか5ヵ月前の国際会議で国王陛下(グラント)を通じてエルフの女長老様とは面識があるはず・・・」

「「え゛?」」

シフトの言葉にギルバートとサリアは驚いた。

「おいおい坊主、エルフの長老もそうだが国王陛下とも面識があったのか?」

「え? ええ、まぁ・・・」

「はっはっは、坊主は見かけによらず大物なんだな」

アルフレッドは感心するとエールを一気に飲んでお代わりを注文する。

シフトも果実水をお代わりしてアルフレッドに付き合って楽しく飲み明かす。

そのあとは他愛ない会話が続いたがシフトたちはその場の雰囲気を楽しんだ。

宴も終わり、店を出るとアルフレッドが声をかける。

「それじゃあな、坊主」

「ええ、また飲みましょう」

「おう」

アルフレッドは楽しそうに帰っていく。

「それじゃ、シフト君。 明日、冒険者ギルド前で」

「はい、それではまた明日」

ギルバートとサリアが帰るとシフトたちも宿に戻った。


翌日───

東の空に太陽が見え始めたころ、冒険者ギルド前に行くとすでにギルバートとサリアが待っていた。

「遅くなりました」

「いや、僕たちも少し前に来たところだ」

「それでは早速ギューベ様とクーリア殿がいる首都モウスに行きましょう」

ギルバートがシフトに尋ねる。

「因みに移動手段は? ここからだと首都モウスに早馬でも半日以上はかかるけど」

「魔動車を使います。 その距離なら2~3時間あれば着きます」

魔動車と聞いてギルバートとサリアは顔を赤らめる。

「えっと、またこの前みたいにするのかい?」

「前回は店員オーバーだったので苦肉の策でしたけど、今回は普通に座っていけますよ」

「そうか・・・それは良かった」

ギルバートとサリアはホッとした顔をする。

「お二人が良ければ前回と同じでも構いませんけど?」

「いや、遠慮する」

「遠慮しますわ」

シフトの提案をギルバートとサリアは即座に断った。

「そうですか? お二人ともお似合いのカップルなのに勿体無い」

「ほ、ほら、さっさとモウスに行こう」

ギルバートはシフトの肩を掴むと東門へと歩いて行く。

シフトたちは門を出ると魔動車を取り出して一路首都モウスへと走らせた。


2時間後───

シフトたちはモオウォーク辺境伯領の首都モウスへと辿り着いた。

「へぇ、ここが首都モウスか・・・」

「王都には劣るけど都市だけあって大きい」

ベルとフェイは物珍しそうにモウスの街並みを見ていた。

「2人とも観光は後、今は領主であるギューベ様とクーリア殿がいる館に行くんだから」

「わかった」

「はーい」

「ギルドマスター、案内をお願いします」

「こっちだ」

ギルバートの案内でシフトたちはギューベがいる館へと足を運んだ。

歩いていると大きな館があり入口まで来ると門兵が両脇に1名ずつ立っている。

「すまない、ギューベ様はいらっしゃいますか?」

「こ、これはギルバート様! ギューベ様は中にいらっしゃいますが急用でございますか?」

「急用という訳ではないが、報告をしにここを訪れた」

「少々お待ちください」

門兵の1人が門を潜って館へと走っていった。

しばらくすると先ほどの門兵が戻ってくる。

「お待たせしました。 ギューベ様より許可が下りました。 どうぞ中へ」

「ありがとう」

ギルバートは礼を言うと先に入り、それにサリア、シフトたちと続く。

館の入り口前ではクーリアが立っていた。

「ギルバート様、サリア様、そしてシフト殿たち、遠路はるばるご足労ありがとうございます。 ギューベ様のところへ案内します。 私についてきてください」

クーリアが一礼すると館に入りシフトたちを先導する。

やがて1つの部屋に辿り着くと立ち止まり扉をノックした。

コンコンコン・・・

「ギューベ様、ギルバート様、サリア様、シフト殿たちをお連れしました」

『入ってくれ』

扉が内側から開けられる。

「失礼します」

ギルバートを先頭にサリア、シフトたち、最後にクーリアが入ると扉を開けた執事が静かに扉を閉める。

「ギューベ様、報告があり参上しました」

「ギルバート、堅苦しい挨拶は抜きにして、座って話をしよう」

ギューベの対面にギルバートが座り、話が始まるのかと思いきやなぜかシフトを見る。

「シフト君、今回の件は君から報告するべきだ」

「そうだな、私もクーリアから状況を把握しているが戦場にいたシフト殿から聞くのが筋だろう」

「わかりました」

シフトはグラントに話した内容と同じことをギューベとクーリアに話す。

さらにグラントから得た情報と『この手に自由を(フリーダム)』についてもギューベに伝える。

話を聞き終えるとギューベがしばし考えてから口を開く。

「話はわかりました。 まずは王国の危機を救っていただき感謝します」

ギューベとクーリアが頭を下げる。

「続いて戦後の場の確認を怠ったことについては謝罪します。 まさか第三者が遺体や魂を使って何かするなど想像できませんでした」

これについては本来ギューベたちには責任はないが、見落としたことは事実だ。

「それと国王陛下が懸念している『この手に自由を(フリーダム)』という組織については私のほうでも対処します」

「早急に部下たちに調べさせて取り押さえます」

ギューベとクーリアが早速対処を検討する。

「ギルドマスターにも伝えましたが『この手に自由を(フリーダム)』は右手に奇妙な紋様があります。 それと彼らは過激で手練れも多く、自分の目的のためなら平気で他人を犠牲にするので注意してください」

「右手に奇妙な紋様?」

「過激で手練れが多い・・・」

シフトの言葉にギューベとクーリアは頭を悩ませる。

「報告ありがとうございます。 シフト殿がいてくれて助かりました」

ギューベは目配せすると執事が頷いて静かに扉を開けて部屋を出ていく。

「食事を用意させますので召し上がっていってください」

「わかりました。 ご相伴にあずかります」

ギルバートが承諾するとシフトたちも頷くのであった。


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