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225.マジックバック

「「「「「・・・」」」」」

「えっと・・・ちょっと刺激が強すぎたかな?」

良かれと思ってルマたちにマジックバックをプレゼントをしたはいいけど、金額を聞いて気を失いその場で倒れこむとは思ってもみなかった。

「とりあえず、みんなをベッドに運ぶか」

シフトはルマたちを1人1人順番にベッドに運ぶ。


2時間後───

空がすっかり暗くなり星が輝いている頃、ルマたちの意識が戻ってきた。

「・・・ぅ、ぅん・・・」

「気が付いたか?」

「ぁれ? 私は・・・」

「・・・くらい?」

「・・・いつの間にか寝てた?」

「・・・ぅぅ・・・頭が痛い・・・」

「・・・ぅ、悪い夢を見たような・・・」

ルマたちは頭を横に振りながらも現状を理解しようと頭を働かせている。

机の上に置いてあるマジックバックを見て、気を失う前の状況を思い出した。

「・・・! 思い出しました。 ご主人様からのプレゼントで驚きすぎて・・・」

「ああ、みんな済まない。 まさか、こんなことになるなんて・・・」

「ご主人様のせいじゃない」

「そうだな、全部フェイのせいだな」

「そうですわ、金額を聞いたからこんなことになったんですわ」

ルマたちはフェイを睨む。

「ええー、ぼくのせい?」

フェイはまさか自分が()()されるとは思ってもみなかったのだろう。

珍しく委縮している。

「まぁまぁ、みんな落ち着いて、フェイを責めないでくれ。 原因を作った僕にも責任があるんだから」

「ご主人様」

フェイの目がキラキラと輝いていた。

「ご主人様がそういうなら」

「むー」

「命拾いしたな、フェイ」

「反省してくださいね」

「もう、わかったよ」

そういうとルマたちは笑い出した。

一頻りと各々自分の色のマジックバックを手に取る。

「これはすごいですね」

「ベル1人じゃ作れない」

「空間系の魔法が使えるのがいないとダメだからな」

「スキルじゃダメなの?」

「空間系のスキルを持っている人なんてそうそう・・・」

ユールがシフトを見る。

「いましたわね」

ルマたちもシフトを見た。

「あ、そうかご主人様のスキル!」

「空間使ってる」

「まぁ、たしかに使っているけど・・・」

シフトは考える。

スキル(【ずらす】)の中のスキル(【空間】)だけど大丈夫かな?)

こればかりはやってみないとわからない。

「試してみればいい」

ベルはやる気だ。

シフトは普通のバックの中を空にすると机の上に置く。

「ご主人様、ベルの合図でこのバックの中に空間を作るイメージをする」

「わかった」

ベルはバックの中に手を置くと【錬成術】を発動する。

しばらくすると手が薄く光った。

「ご主人様、今!!」

「よし!!」

シフトはバックに触れると【空間収納】を発動して何もない新しい空間をイメージする。

バックにスキルがどんどん吸い込まれていき・・・

ボッ!!

火がついてメラメラとバックが燃え始めた。

「「!!」」

シフトとベルは危険を察知して【錬成術】を中断するとバックの中から手を離す。

「なっ?!」

「燃えたぞ!」

シフトは慌てて【念動力】を発動させると燃えているバックを宙に浮かせた。

「ルマさん、【水魔法】・・・いや【氷魔法】で凍らせて!」

「わかったわ!」

ルマは【氷魔法】を発動させるとバックを包むように凍らせる。

空中にあるバックは見事に凍りついた。

「机は?」

「えっと・・・大丈夫! 燃えてない! 焦げもないよ!」

「あとは床と天井だけど」

「そっちも大丈夫のようだね」

ローザとフェイは机や床、天井に火がないことを念入りに確認している。

傍らではユールがシフトとベルに話しかけてきた。

「ご主人様、ベルさん。 怪我や火傷はありませんか?」

シフトとベルは自分の腕を見る。

特に怪我や火傷は見当たらない。

「僕は大丈夫だ」

「ベルも」

「そうですか・・・怪我がなくてよかった」

ユールはホッと息をつく。

シフトは周りを確認すると火の気もなければ、空間の歪みもない。

問題ないことを確認すると、シフトは【空間収納】を発動して凍ったバックをしまうと空間を閉じた。

「それにしても失敗するとはね」

「多分、ベルの【錬成術】のレベルが低かったため、スキルの付与に失敗したんだと思う」

ベルは自分の【錬成術】を正確に分析した。

ベルの【錬成術】のレベルは3、限界がCなのでこれ以上上がることはない。

もう1つの原因はシフトの【空間】だ。

普通の【空間魔法】はレベルに応じて空間の大きさや時間の流れが異なる。

使い手によっては物量を可能な限り増やすか、時間の流れを限りなく遅らせるかに傾く者が多いだろう。

しかし、シフトの【空間】はそこらの【空間魔法】とは明らかに違っていた。

【空間収納】は物量は無限で、空間内の時間は完全に止まっている。

【空間魔法】のレベルを遥かに超えているのだ。

シフトはいつもの感覚で新しい空間を作ろうと想像してしまった。

バックは耐えきれなくなり、結果燃えたのだ。

これがある程度物量を抑え込み、時間の流れも少し遅いくらいだったら、もしかすると成功していただろう。

何はともあれ失敗は失敗である。

今後マジックバック作りをするのであれば、空間の絞り込みに気付けるかが最大のポイントになるだろう。

もっともシフトたちがそれに気付ければの話だが・・・

シフトは今日買ってきたマジックバックを見る。

これを作成した【錬成術師】の使い手が最大のレベルである5で、【空間魔法】の使い手も同じくレベルが5なのだろう。

ぴったりと息があっていないと最高品質の仕上がりにはならない。

今のシフトとベルのように錬成で失敗すれば目も当てられないからだ。

バックのクオリティ、【錬成術師】と【空間魔法】のレベル、空間の大きさや時間の流れ、どれも高い。

これだけの物なら1つ白金貨1枚するのも頷ける。

落ち着いたところでローザが質問してきた。

「ご主人様、1つ聞きたいのだがどうしてショルダーバックとウエストポーチをそれぞれ1つずつわたしたちにくれるんだい?」

「最初はルマとユールにはショルダーバック、ベルとローザとフェイにはウエストポーチの予定だったが、もしかすると逆が良いとか言われるかもしれないと考えた。 それでどちらを選んでもいいように両方買ったんだ」

「両方持っていれば自分の好きなほうを使えますわね」

「手直しすればどちらでも使えるのもポイントが高い」

「ご主人様、すみません。 こんな貴重な物を2つもプレゼントしていただきありがとうございます」

ルマたちは改めてシフトに礼を言う。

「先ほども言ったけど日頃僕に尽くしてくれているお礼だから」

シフトがそれに応えるとフェイが手を上げて質問してくる。

「はーい、ご主人様はどちらを使うの?」

「もう決めている。 戦闘のことを考えて普段はウエストポーチ、買い物のときはショルダーバックを使う」

せっかく両方買ったのだから使わないと損である。

「そうだな、戦闘のことを考えるとウエストポーチだな」

「ベルも」

「ぼくもそうだね」

ベル、ローザ、フェイはウエストポーチを選ぶ。

「私はショルダーバックかしら」

「わたくしもショルダーバックを使いますわ」

ルマとユールはショルダーバックを選んだ。

シフトの予想通りの展開である。

1つは早速身に着けたあとにルマがシフトに声をかけた。

「ご主人様、もう1つのマジックバックはご主人様が預かってもらえませんか?」

「ルマ、自分のマジックバックに入れておけばいいんじゃないか?」

「それだとマジックバックをなくしたり、壊れたりしたら困るじゃないですか」

「たしかにそうだが・・・わかった」

それはシフトが死んでも同じことが言えるのだが、あえて言葉にはしなかった。

シフトは【空間収納】を発動するとルマたちが使わないほうのマジックバックを入れて空間を閉じる。

「さて、遅くなったけど食事に行こうか」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちは食事をしに夜の王都へと繰り出すのであった。


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