表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/394

213.5戦目:ベルVsシルファザード <再戦>

ベルはシルファザードと対峙する。

「お前を殺す。 そして、私は再びマーリィア王女殿下直属騎士団の団長に返り咲くのだ。 あははははは・・・」

「狂ってる」

シルファザードの思考はすでにおかしいとしかいいようがない。

「見ててください、マーリィア王女殿下。 この世界で1番あなた様を愛しているのはこの私だということを・・・」

ベルは両手にナイフを1本ずつ構える。

シルファザードも鞘から剣を抜く。

「あははははは・・・死ねっ!!」

「っ!!」

上段からの一振り。

ガキイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

金属と金属が激突する音が鳴り響く。

シルファザードの剣を両手のナイフで受け止める。

王都で戦った時よりも速く鋭くそして重い一撃だ。

「なぁ・・・私のためにさっさと死んでくれないか?」

「断る。 なぜベルが死なないといけない?」

「お前がいるとなぁ・・・マーリィア王女殿下が私を見ないからだよっ!!」

シルファザードは引くどころか力任せに押し込んできた。

ベルのほうへと刃が少しずつ近づいてくる。

本来なら危険と感じるのだろうが、今のベルはむしろ冷静だ。

ベルはシルファザードの力の軌道を変える。

「なっ?!」

シルファザードはベルの横を崩れるようにして倒れそうになった。

倒れまいと踏鞴を踏んで持ちこたえる。

振り向いたシルファザードは怒りの形相でベルを見た。

狂気に満ちた目がベルを捉える。

「殺す」

「・・・」

シルファザードは剣を両手でしっかりと掴むと少し右側に構える。

ベルもどのような攻撃が来ても対応できるようにナイフを構えた。

お互い黙って相手の動きをみる。

先に均衡を打ち破ったのはシルファザードだ。

全速力で突進してくると切り上げるような形の横薙ぎがベルに襲い掛かってきた。

キイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

ベルはそれを2本のナイフで受け止めるが、勢いを殺せずに吹き飛ばされる。

「!!」

後方に弾かれるも転倒せずに着地する。

それを皮切りにシルファザードの猛攻撃が始まった。

1撃1撃が重く、体重の軽いベルではその攻撃の威力を殺しきれずに後ろへと押される。

「なぁ、早く死ねよ。 マーリィア王女殿下を迎えに行けないだろ?」

冷静な言葉とは裏腹にあまりにも乱暴な攻撃が続く。

しかし、その攻撃も長くは続かなかった。

バキイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

あまりにも雑に扱ったためにシルファザードの剣が折れたのだ。

折れた剣がシルファザードの頬を斬りながら後方へと飛んでいき地面に刃先が刺さる。

頬には刃の切り傷が見られ、そこから血が滴るように流れてきた。

シルファザードの剣の材質は鋼鉄、それに対してベルの二振りのナイフの材質はミスリル。

丁寧に使っていれば材質で劣ってたとしても折れることはなかっただろう。

だが、今のシルファザードには剣への心遣いさえない。

その結果、剣が折れた。

シルファザードは素早くベルから離れて自分の折れた剣を見る。

「・・・」

「今のお前にベルが負ける要素はない」

「これだけは使いたくなかったんだけどな」

シルファザードは折れた剣を投げ捨てると、腰に差してあるもう1本の剣に手をやる。

「お前が悪いんだ。 お前が素直に私に殺されていればこれを使うことはなかった」

シルファザードはベルを殺すために躊躇いもなくその剣を抜いた。

剣身は黒く禍々しいオーラを放っている。

ベルは危険を察知してシルファザードの剣を鑑定した。


魔剣インサニティ

品質:Aランク。

効果:抜刀中は使用者の腕力、走力、器用、耐久力を基の二倍に上昇させるが、生命力、魔力、体力を消費し、思考を狂す。


「!!」

魔剣?! 聖剣と対となる武器。

数多ある聖剣と同じくらい魔剣も存在する。

あれはその一振り。

ベルは魔剣の危険性に逸早く気づく。

あれ(魔剣)は人をダメにする)

ベルはシルファザードを見る。

「力が・・・力が漲ってくるぞ・・・ははははは・・・これなら勝てる・・・どんな奴にだって勝てるぞ! マーリィア王女殿下! ()()あなたを今すぐ()()に行きますからねっ!!」

現にシルファザードの中で何かが少しずつ壊れていく。

あれ程()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っているのだ。

もはや真面な思考が残っていない。

「マーリィアを殺させない」

「まずはお前だ! ()()()()()! ()()()()()()! 今すぐ私の手で殺してやるからな!! ははははは・・・」

シルファザードの言葉はもう滅茶苦茶だ。

支離滅裂なことをいうシルファザードにベルは気持ち悪さを感じた。

「ベルの安寧のためにもさっさと止める」

シルファザードが1歩踏み込む。

いつの間にかベルの近くまで来て無造作に魔剣を振り下ろす。

ベルの頭の中で警鐘が鳴り響く。

受け止めるな! 回避しろ!

ベルはその警鐘を信じてシルファザードの攻撃を避ける。

ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!

シルファザードの一振りが大地を抉った。

「!!」

「ははははは・・・いいぞ! もっと! もっとだ! もっと私を楽しませろ!!」

尋常ではない攻撃にベルは恐れ戦く。

ベルはシルファザードを鑑定する。

するとシルファザードの生命力、魔力、体力が魔剣を持っているだけでガンガン減っていく。

このままでは魔剣にすべてを吸い取られて間違いなく死ぬだろう。

シルファザードが再び横薙ぎで攻撃してくる。

ベルはバックステップしながらその攻撃を回避するが、魔剣の攻撃は尚もベルに届こうとした。

2本のナイフで受け止めようと魔剣が触れた瞬間その威力に耐えられずにナイフの剣身が砕け散る。

「?!」

ナイフのおかげでベルは辛うじて魔剣の直撃を避けられた。

しかし、もうベルを守ってくれる接近戦用の武器がない。

ベルはシルファザードから距離をとる。

「ベル! 大丈夫か?」

そこにローザがやってきた。

「ローザ、大丈夫」

ローザは剣身が砕け散った2本のナイフを見て叫ぶ。

「大丈夫なわけないだろ?! わたしがあれの相手をする!」

ローザがオリハルコンの剣を抜く。

ベルはその剣を見てローザに声をかける。

「ローザ、その剣(オリハルコンの剣)を貸して」

「ベル?」

「あれはベルが止めないといけない。 だから・・・」

ローザはベルを見るとその眼には強い意志を感じたのだろう。

ベルの決意にローザがオリハルコンの剣を差し出す。

「ベルはこういう時は頑固だからな。 必ず勝てよ」

「うん」

ベルはオリハルコンの剣を受け取るとシルファザードと対峙する。

「愛している! 愛しているぞおおおおおぉーーーーーーっ!!」

長期戦は不利だし、放っておいたらシルファザードは間違いなく死ぬ。

なら、この一撃に賭ける!!

ベルはローザの剣技をその場で真似た。

いつも一緒だからこそ真似できると信じて。

(ローザならこの一撃で必ず止めるはず)

ベルはシルファザードと交差するように剣を振り下ろした。

キイイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーン!!!!!!!

一振りの剣が宙を舞う。

地上では剣を失い呆けたシルファザードがいた。

「・・・また負けた・・・」

それだけいうとシルファザードはその場に倒れる。

それと同時に魔剣がシルファザードの近くに落ちてきて地面に刺さった。

「ベル、やるじゃないか」

「ローザのおかげ。 これ(オリハルコンの剣)がなければ負け・・・死んでいた」

「あれは死んだのか?」

ローザがシルファザードを指さす。

シルファザードを鑑定すると辛うじて生命力が残っていた。

生命力を限界まで消費したのか今は気絶している。

ベルはローザに対して首を横に振った。

「生きている。 だけど虫の息」

「ベルにしては珍しいな、生かしておくなんて」

「悲しむ人がいるから・・・かな」

シルファザードが死んだらきっとマーリィアは悲しむだろう。

ベルはローザに剣を返す。

「ローザ、ごめんなさい」

「何がだ?」

ベルは地面を見る。

そこには剣身が砕けた二振りのナイフがあった。

「ナイフ壊された」

「仕方ないさ、いくら素材が良くてもいつか壊れるんだ。 それにまたわたしが作ってやるさ。 あ! だけど材料はご主人様から貰わないといけないな」

「新しいのができたら今度こそ大事に使う」

「わたしも今度こそ壊れない武器を作って見せるさ」

ベルとローザはお互いを見ると笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ