212.3戦目:ルマVs『賢者』リーゼ <再戦> 4戦目:ユールVs『聖女』ルース <再戦> 〔※残酷描写有り〕
私はリーゼと対峙する。
「ルマ! あたしを虚仮にしただけじゃなく傷まで負わせたことを後悔させてやる!!」
「リーゼ、いくら私に挑んでもあなたでは勝てないわ」
「ほざけ!!」
リーゼは初手から【反復】を発動させると【火魔法】の火球による自動攻撃を開始した。
対して私は【氷魔法】で氷壁を作成しつつ、その裏で【土魔法】で土壁を作成して二重に防御壁を展開します。
リーゼの火球が氷壁を溶かしていく。
私は頃合いを見て【風魔法】を発動して移動速度を上げると、壁から横に飛び出すと同時に土壁が破壊された。
「これならどうだ!!」
リーゼは【風魔法】を発動すると風の刃を私に向けて放ってきた。
多くの火球と風の刃が私に襲い掛かります。
だけど、次の瞬間私は【雷魔法】を発動して身体能力を上げるとその驚異的な移動力と跳躍力、反応速度を利用して遥か上空へと飛んで避難した。
そこで足元に【氷魔法】で氷塊を作成します。
リーゼからしてみれば私の姿は忽然と消えたように見えるでしょう。
地表ではリーゼが私を探してます。
落下中の私は【氷魔法】で足元に氷塊を作成するとそれに乗って落下していく。
下を確認していると先ほどまでの火球が突然消えたので、私はこの隙に地上へと降ります。
リーゼが見える範囲を確認していると火球は上空に向けて攻撃していた。
「どこ?! どこへいったの?!」
「ここよ!!」
上空から降りてくる私にリーゼが攻撃を仕掛けようと構えた。
それと同時にリーゼの周りには大きな影が突如現れます。
リーゼが上空を見上げると大きな氷が落下してきた。
「ふ、ふざけるんじゃないわよっ!!」
リーゼは【風魔法】を発動すると移動速度を上げてその場を素早く移動した。
ドゴオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
リーゼが影から抜け出したのと氷が上空から地面に激突したのはほぼ同時でした。
間一髪で脱出したリーゼだけど、地面に這いつくばるように倒れる。
私が地上に降り立つとリーゼもなんとか立ち上がろうと動き出す。
そこに追撃するように私は【爆裂魔法】を発動してリーゼもろとも吹き飛ばそうと爆炎を放つ。
しかし、逸早く気付いたリーゼが【風魔法】で身を守る。
ドオオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーン!!!!!!!
爆風に耐えられずリーゼは吹っ飛ばされた。
【風魔法】で身を守ったのが幸いしたのか軽傷で済んでいるようです。
リーゼがよろめきながらも立ち上がる。
「くっ! よくもやってくれたわねっ!!」
リーゼは今の状態からさらに【反復】を発動させると【風魔法】の風の刃による自動攻撃も追加してきた。
その直後にリーゼはポーチから何かを取り出すと一気に飲む。
リーゼの身体が紫色に輝く。
どうやらマナポーションを服用したらしい。
小瓶を投げ捨てるとリーゼが吠える。
「ルマ! 魔力切れを期待しているなら無駄よ! あんたを倒すためだけにマナポーションをたくさん持ってきたんだから!!」
リーゼの魔力量も一般の魔法使いと比べると遥かに多いが、総魔力量ではルマに軍配が上がる。
それを補うためにリーゼはマナポーションを用いてルマを倒そうと躍起になっていた。
しかし、リーゼはしらない。
今のルマは前回戦った時よりも遥かに強くなっていることを。
魔力量が桁違いに上がっていることを。
そして、魔法の扱える数や魔力の使い方にバリエーションが増えたことを。
最初に使用した【反復】が終了するとあたしは再び【反復】を発動させて【火魔法】の火球による自動攻撃を開始した。
ルマは迫りくる火球と風の刃を氷壁と土壁で凌ぎ続ける。
「ルマ! 今回は油断しない! これで止めよ!!」
あたしは【火魔法】を発動すると極大の火球を作り出す。
「死ねっ! 肉片1つ骨1つ残らず燃え尽きろっ!!」
そういうとあたしは目の前の氷壁目掛けて火球を放つ。
氷壁と土壁は一瞬にして融解するとそのまま一直線に飛んでいった。
「はぁはぁはぁ・・・ははは、やったぁ・・・いや、まだよ」
あたしは一瞬緩んだ頬を叩く。
なぜなら火球と風の刃が地面を自動攻撃していたからだ。
ルマは地中に穴を掘って潜ることで先ほどの攻撃を回避した。
「前回を思い出せ、あたし。 その油断でやられたのよ。 同じ轍は踏まない」
あたしはポーチからマナポーションを取り出して飲む。
魔力が一定量回復する。
あたしは油断なくルマがいる場所を見ていると不意に身体に重さを感じた。
「なんだ? 何が起きている?」
自分の身体を確認するとそこには砂が纏わりついていた。
「なっ?! いつの間に?!」
砂から抜け出すがすぐに纏わりつき拘束される。
リーゼに纏わりついている砂は私が【砂魔法】を発動して拘束に特化した砂だ。
「ルマ! 卑怯よ! これがあんたの戦い方なの!!」
「卑怯? どの口が言うんですか? 戦略と言ってほしいですね」
「ふざけるなっ!!」
リーゼが必死になって砂から這い出る度に纏わりつく。
そうこうしているうちにリーゼの【反復】が終了する。
私は音が掻き消えたことを確認すると穴から出てきた。
「くっ! ルマアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーっ!!!!!!!」
「終わりよ、リーゼ」
私は【氷魔法】を発動させると首から下を氷漬けにした。
「さ、寒い・・・」
リーゼはあまりの寒さに【火魔法】を発動させるだけの集中力がなかった。
「殺しはしないわ。 あなたに恨みがあるのは何も私だけじゃないから」
私は遠方で勇者と戦っているご主人様の背中を見て呟いた。
わたくしとルースが対峙している。
「ユール! その醜い顔と髪を切り刻んでさらに醜くしてから殺してやるわ!!」
「ルース、あなたの心はどれだけ醜いんですの? 今度は顔や髪だけでは済まなくてよ?」
「気に入らないわね! 大口を叩いたことを後悔するがいいわ!!」
ルースは杖を構えると【聖魔法】を発動させて聖なる槍を生成するとわたくしに向かって放ってきました。
わたくしは【光魔法】を発動させると光の槍を生成して槍を叩き落します。
「・・・」
「どうしました? もしかすると今の一撃でわたくしを倒せるとでも思っていたのかしら?」
「まさか・・・それはほんの挨拶代わりよ」
今の一撃が挨拶代わり? 高魔力で圧縮した聖なる槍を受ければ当たり所によっては即死ですよ。
ルースが如何にわたくしを恨んでいるのかが今ので理解できましたわ。
ルースは【聖魔法】で何本いや何十本もの聖なる槍を生成すると時間差をつけて放ってきました。
わたしも透かさず【光魔法】で光の矢を同じ数だけ生成するとそれぞれの槍にぶつけていきます。
お互い数が減れば増やし相手にぶつけていくので魔力の消耗も激しい。
ルースは隙を見て懐から何かを取り出すと口に含んだ。
身体が紫色に輝いたことからマナポーションで自分の魔力を回復したようね。
一方のわたくしの魔力ですが最小の力で相手の攻撃を捌いているので十分に魔力があります。
しばらくするとルースの攻撃が雑になってきました。
普段からやり慣れないことをしたのでしょう、精神の限界なのかルースの聖なる槍による攻撃が止まります。
そこにわたくしの光の矢がルースに刺さりました。
「ぐっ!!」
矢が刺さったところからは出血して、しばらくすると光の矢が消滅します。
「ユール! よくも私に傷を負わせたわね!!」
「何を言っているの? 先に仕掛けたのはあなたでしょう?」
「許さないっ! たとえ神が許しても私が許さないっ! 死をもって懺悔しなさいっ!!」
ルースは杖を捨てると【聖魔法】を発動させて聖なる槍を生成してわたくしに突進してきました。
(今更肉弾戦? 絶対に何かあるわね)
わたくしは光の槍を構えるとルースの攻撃に備える。
「死になさいっ!!」
ルースの槍がわたくしの額を目掛けて突き刺そうとするが、見え見えの攻撃なので避けるのは容易でした。
その後もルースは槍で突いていきますが、わたくしはそれを難なく避けていきます。
ルースは自ら距離をとりますが、息が上がってました。
「はぁはぁはぁ・・・」
「どうしました? もう終わりですか?」
「う、五月蠅いっ!!」
顔を顰めてなんとか体調を保とうと深呼吸を繰り返しています。
実力の差は明白。
わたくしはルースみたいに弱者をいたぶる趣味はないのでここらで終わりにします。
「ルース、これで終わりよ」
わたくしが接近して槍で攻撃します。
その瞬間ルースの顔が邪悪に歪みました。
わたくしが突き出した槍をルースは自分の槍で弾いたのです。
「?!」
「あははははは・・・これを受けなさい」
ルースがわたくしの左手首を掴むとなんと【回復魔法】を発動させたのです。
光り輝くその腕は治すのではなく痛みを与えてきました。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
「あははははは・・・良い声で鳴くじゃない、ユール。 どう? これが私のスキル【反転】よ」
「は、【反転】?」
「そう、これはね私が発動した魔法の本来の効果とは真逆にしてしまうの。 それが【反転】」
ルースは楽しそうに自分のスキルについて説明を開始する。
【反転】
かつてシフトがルースの【治癒魔法】によりダメージを受けた。
その正体こそがルースのユニークスキル【反転】だ。
これによりルースの回復系魔法は攻撃系魔法へと反転する。
回復系魔法だけに留まらず、ルースが使える魔法やスキルならすべて反転させることができる。
「効果は対象に触れたモノにしか影響が及ぼせないのよ。 それが一番の弱点で残念なところね」
ルースは勝ち誇ったように自分のスキルをぺらぺらと話し始めました。
「ぐぅ・・・」
「うふふふふふ・・・いい気味だわ。 やっぱり人を壊すのは最高ね」
「ま、まだ勝負はついていない」
「あら、その腕で勝負するつもり?」
わたくしが左手首を見るとそこはどす黒くなっていました。
「こ、これは?!」
「そうよぉ・・・ユール、あなたの左手首を『破壊』したの」
ルースは【回復魔法】によりわたくしの左手首を『破壊』した。
「すぐに殺したいところだけどやっぱり甚振って甚振って甚振りつくさないとねぇ」
ルースはわたくしに対して残虐な笑顔を見せる。
これがルースが隠していた本来の素顔でしょう。
ルースは魔法で生み出した槍を捨てると右手でわたくしの右腕をつかみました。
「まずは右腕を『破壊』して、次に右脚を『破壊』、さらに左脚を『破壊』、散々虐めた後に頭を『破壊』してやるわ」
「や・・・やめてえええええぇーーーーーっ!!」
「うふふふふふ・・・ダ~メ」
ルースは【回復魔法】を発動させました。
するとわたくしの右腕が光り輝いて・・・
「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
痛い! 私の右手が!!
「そ、そんな?! 私の手が?! なんで?!」
私の右手が『破壊』された。
混乱しているとユールが気迫な声を上げる。
「はあっ!!」
それと同時に私の左腕に何かが当たる。
そして、私の左腕が切り落とされた。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
よく見るとユールの手にはナイフが握られていた。
私は一瞬にして両手を失う。
それだけでなく私を転ばせると両足に痛みが走る。
「う・・・あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
更なる痛みに耐えられず私は絶叫した。
これでは何もできない達磨も同然。
「な、なぜ? なぜ魔法が私に?!」
「魔法反射を使っただけですわ」
「魔法・・・反射? はっ!」
「気付いたようですわね」
そう、ルースが【回復魔法】を発動する前、左手首を『破壊』されている間にわたくしは【光魔法】を発動すると右腕全体に魔法反射をかけていたのです。
「じゃ、じゃぁあれは?!」
「全部演技ですわ」
それを知ったルースの顔が鬼の形相になって吠える。
「ユ、ユールウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーっ!!!!!!!」
「だから、やめてって言ったのですわ」
わたくしは念のためルースの右腕を切り落とします。
これでルースは【回復魔法】も【反転】も使えません。
「これでわたくしの出番は終わりですわ。 あとはご主人様に任せますわ」
そのあと、駆けつけてくれたフェイさんに左腕を切断してもらったわたくしは、【欠損部位治癒魔法】を発動させると失った左腕を完治させて元通りなりました。
追伸、とても痛かったですわ。(涙)




