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205.大軍に向けて出発

王都スターリインで1夜を過ごしたシフトたちは魔動車で飛行して、4時間半後にモオウォークのミルバークの町近くまで戻ってきた。

草原に到着するとシフトたちは一旦魔動車から降りる。

「ありがとう、シフト君。 君のおかげで陛下に早めに報告できた」

「私とクーリアはこれから首都モウスに戻って万が一モオウォークを攻めてきた際の対策を練る」

ギルバートとギューベがそれぞれシフトに礼を言う。

「僕たちはここで食事をしたら、また王都に飛び立ちます。 グラントと話し合って明日か明後日に北東に出発しようと思います」

「王都に戻るのかい?」

「今なら太陽が沈む前には王都に辿り着けますからね。 入都できるかはわかりませんが・・・」

「陛下のことだからシフト君たちが行けば、時間外でも入都できるはずだよ」

「むしろ、これを機にまた質問攻めにあうかもしれませんね」

「そうだな、陛下の君に対する食いつきが異常すぎる」

「私も同感です」

ギルバート、サリア、ギューベ、クーリアがそれぞれ意見を述べる。

「とりあえずは向こうに着いてからだな」

シフトはクーリアを見る。

「クーリア殿、1日1回風の精霊で大軍を確認しておいてください。 それで大軍が王都とモオウォークのどちらを攻めてくるかわかるはずです」

「なるほど、迎撃の準備を進めるにしても状況を確認しておくべきですね。 クーリア、負担をかけることになるが頼めるか?」

「わかりました」

「それじゃ、僕たちはミルバークに戻るよ」

「シフト様、ありがとうございました」

「私もミルバークに行ったあと、早馬でモウスに戻るとするよ」

「大軍との決着がついたらまた会いましょう」

ギルバートたちはミルバークの町へ歩いて行った。

シフトは【空間収納】を発動して水袋とパン、干し肉、梨を人数分取り出すと空間を閉じた。

「さて、僕たちも食事にするか」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちは手短に食事を済ましてから、再び王都スターリインを目指して魔動車で移動する。

それから4時間後、王都の近くまでなんとか戻ってこれたが、あと数十キロほどのところで太陽が地平線に沈んだ。

夜間走行は危険と判断したシフトたちは見晴らしのいい場所で1夜を過ごすことになった。


翌日───

太陽がまだ昇らないうちに王都の近くまで魔動車を走らせる。

2キロほど離れたところで魔動車を空間にしまうと、徒歩で王都を目指した。

王都の東門に到着すると丁度入都を開始したので、シフトたちも列に並んで王都内に入る。

グラントに会う前に先に食事をしようと平民街を歩き始めたところで何人かの騎士と魔法士がやってきた。

先頭は昨日会った風の精霊を使役する魔導師の1人だ。

「お待ちしておりました、シフト殿。 陛下がお待ちです」

「え? 今から? グラントのところには食事をしてから行く予定だったんだけど・・・」

「そうなのですか? 私たちはシフト殿が王都に来たらすぐに連れて来いと言われたのですが」

「はぁ、少し待ってもらえないか? 胃の中に少しでも何か入れておきたい」

「それでしたら、あの屋台がお薦めですよ」

騎士の1人が指さした屋台は鶏の串焼きを売っている。

「ありがとう、少しだけ待ってください」

鶏の串焼きの店に行くと6本購入してルマたちに1本ずつ渡す。

隣には果実水を販売している店があるのでそれも6人分購入した。

シフトたちは近くの椅子に座って鶏の串焼きを食べる。

想像以上に美味かったのでもう1本ずつ購入して胃の腑に収めた。

果実水を飲み終わると落ち着いたので騎士たちに話しかける。

「すみません、お待たせしました」

「いえ、それでは参りましょうか」

シフトたちは王城へと案内された。

謁見の間に通されるとそこにはすでにグラントが座っている。

「おお、シフト! 戻ってきたか」

「すまない、待たせてしまった」

「今朝、こちらに来たという知らせを影から受けてな。 それで使いを出したのだ」

シフトは怪訝な顔をする。

「そんなに慌てて呼んだということは何か動きがあったのか?」

「いや、今はまだ動きはない。 が、いつ動いてもおかしくないと判断しておる」

「どういうことだ?」

「今朝、確認させたところ、もうすぐ村に大軍が接触するそうだ。 さすがの余も昨日の今日では出兵させても間に合わない」

グラントは悲痛な顔をして首を横に振る。

自分(グラント)は安全な場所で状況を知ることしかできない己の無力さを嘆いていた。

国を治めているとはいえ、王とて万能ではないのだ。

救える者と救えない者がある。

「グラント、今は悲観にくれている場合ではない。 1人でも多くの命を救う手立てを考えるべきだ」

「・・・そうだな、その通りだな。 それでシフトはこれからどうするつもりだ?」

「決まっている。 北東に出発する」

「すでに同行者は選抜しておる」

グラントが近くの衛兵を見ると一礼して謁見の間を出ていく。

しばらくすると戻ってきた衛兵とは別に男女7人の騎士たちと魔法士たちが謁見の間に姿を現す。

うち1人は先ほど会った風の精霊を使役する魔導師だ。

「陛下、お呼びでしょうか」

「昨日の会議で話したが、ここにいる者たちが同行者だ」

シフトたちを見て驚いていた。

「も、もしかすると4ヵ月前の悪夢を引き起こした張本人?!」

1人の騎士が大声で叫ぶ。

この騎士は皇子殿下が暴走したときのことを覚えているのだろう。

それを聞いた魔導師以外の5人がシフトを見て蒼褪める。

「ま、まぁ、そういうことだ。 シフト、彼らと共に向かってくれぬか?」

「わかった。 早速向かおう」

シフトたちはグラントに一礼すると謁見の間を退出する。

「それではこちらに来てください」

この中ではリーダー格の男騎士がシフトたちを誘導する。

城内の開けた場所に来るとそこには1台の馬車がすでに待機されていた。

「移動手段はこれ(馬車)を使います」

「わかった。 それでは早速出発しよう」

御者に女騎士が、シフトたちと残りの6人は馬車の荷台に乗る。

「それでは出発します」

馬車は城門を抜けるとそのまま貴族街を進み、平民街に着くと東門を目指して歩き出す。

王都の東門を抜けると北に向けて進んでいく。

1キロくらい進んだところでシフトが御者の女騎士に声をかける。

「すまない、馬車を止めてくれないか」

「はい」

そのあとすぐに馬車が止まる。

「どうしたんですか?」

「悪いがこのままのんびりと進んでいる時間が惜しい。 ルマ、フェイ」

「「はい、ご主人様」」

「ルマは3メートルくらいの氷塊を作ってくれ。 フェイは馬を眠らせてくれ」

「「畏まりました」」

ルマとフェイは馬車を降りるとルマは【氷魔法】を発動させてシフトの注文通りの氷塊を作り、フェイは【闇魔法】を発動させると馬を眠らせた。

「ルマ、フェイ、ありがとう。 馬車の中に戻って」

「「はい」」

「あの・・・馬を眠らせてどうするのですか? それにその氷の塊は?」

御者をしている女騎士がおろおろしながら尋ねる。

「これはこうします」

シフトは【念動力】を発動させると氷塊を北東に向けてすごい勢いで移動させた。

「ええぇーーーーーっ!!」

荷台の中からも驚きの声が聞こえてくる。

シフトは自分が見える範囲のぎりぎりまで氷塊を移動させるとそこで地面に下ろす。

「さて、いきますか」

シフトは片手にダミーの魔法具である魔石を、もう片手を荷台に触れる。

魔石に魔力を流すと魔石から光が放たれると同時にシフトは【空間転移】を発動して氷塊があるところまで転移した。

「きゃっ!!」

突然目の前に氷塊が現れてびっくりする女騎士。

「こ、これ・・・さっきの氷の塊?!」

「時間が勿体無いのでどんどん行きますよ」

シフトは再度【念動力】を発動させると氷塊を北東に向けて移動させる。

そして、ある程度氷塊を移動させてから転移した。

あとはこれの繰り返しである。

これにより本来ではありえない速度で移動していた。

馬車の時速はせいぜい6~7キロ、急いだところで倍の12~14キロくらいだろう。

しかし、シフトはこの方法で1時間で約50キロを移動していた。

それは馬車の1日の移動速度を遥かに超えている。

このペースで平原をどんどん先に進む。

途中森に遮られることがあり、そこは馬たちに頑張ってもらった。

こうして北東に進むこと7日後、ついに射程内に捉える距離までやってくる。

距離にして約5キロ先に大軍が見えた。

「あれだ! 間違いない!」

風の精霊を使役する魔法師が叫ぶ。

「そうか、あの中に『勇者』がいるのか・・・」

シフトは遥か遠方の大軍を見る。

(やっと見つけたぞ! ライサンダー!!)

シフトは今度こそ宿願を果たすべく行動を開始した。


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