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199.夜半過ぎの来訪者

「え、()()()()()の町?」

「はい、()()()()()の町ですけど?」

「あ、ああ、そっか、ここは東門だからか」

ここ(ミルバーク)にいた頃はいつも西門のほうを利用していたので東門から入るのは初めてだった。

「身分証か冒険者登録証はありますか?」

「はい、こちらに」

シフトたちはそれぞれ冒険者登録証を見せる。

「たしかに、どうぞお通りください」

「ありがとう」

シフトたちは町に入ると早速宿を取りに行くが、この町の宿なら慣れ親しんだ『猫の憩い亭』が一番だろう。

「みんな、『猫の憩い亭』でいいかな?」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

ルマたちにとってはとても大切な思い出の場所だ。

シフトたちは『猫の憩い亭』を見つけると迷わず入っていく。

「いらっしゃいませ、猫の憩い亭へようこそ。 6人様ですか?」

シフトは懐から金貨3枚をカウンターに置く。

「はい、最上階の部屋を借りたい。 空いてるか?」

「最上階ですか? ええ、空いてます。 3日分ですね? ありがとうございます。 それでは案内させますね」

受付嬢は鈴を鳴らすと一人の少女がシフトのところにやってくる。

「お呼びでしょうか?」

「こちらの方たちを最上階の部屋に案内して頂戴」

「承知いたしました。 お客様方、荷物は?」

「自分たちで持っていくよ」

「畏まりました。 それではお部屋にご案内いたします」

少女の後についていき最上階の部屋に通される。

「こちらがお客様方の部屋です。 何か御用がありましたらこちらの呼鈴を鳴らしてください。 あと、こちらはこの部屋の鍵となります」

少女から部屋の鍵を受け取る。

「ありがとう。 今日の夕食は外でとる。 また何かあれば呼ぶよ」

「畏まりました。 それでは失礼いたします」

少女が出ていくとシフトはルマたちに声をかける。

「僕はこれからギルドマスターに会いに冒険者ギルドに行ってくる。 ルマたちは自由に行動していて構わない」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトはそれだけいうと部屋から出て行った。

冒険者ギルドへ行くと中はいつも通り賑わっている。

カウンターに行くと受付嬢が笑顔で挨拶してきた。

「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ。 今日は何の御用でしょう?」

「ギルドマスターはいますか?」

「ギルマスですか? すみません、アポなしの来客はお断りしておりまして」

受付嬢がやんわりと断る。

「緊急の要件なんですけど直接本人に報告したいことがありまして・・・」

「そうなんですか? 申し訳ございません、ギルマスは外出しておりましてお戻りは3日後となっております」

ギルバートがいないのは珍しい。

「ギルドマスターがいないならサリアさんに取り次いでもらえますか?」

「サリア様ですか? サリア様はギルマスと一緒に行動していまして・・・」

どうやら、サリアも不在のようだ。

「それなら、伝言だけでもお願いしてもいいかな?」

「はい、少々お待ちください」

受付嬢がペンとメモ用紙を取り出す。

「どうぞ」

シフトは少し考えてからバカ正直に話して混乱させるのを避けるため、町にいることだけ伝えることにした。

「シフトが会いに来た。 3日間は『猫の憩い亭』に宿泊しているから戻ってきたら会いたい」

「えっと、シフトが会いに・・・3日間は『猫の憩い亭』に宿泊っと・・・承りました」

「それでは失礼します」

「はい、ご利用ありがとうございました」

シフトは冒険者ギルドを出るとルマたちのところに戻る。

「ただいま」

「あ、ご主人様、お帰りなさい」

最初に気付いたフェイが声をかけるとルマたちもそれに続く。

「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」

「ギルドマスターに会いに行ったんだけど不在で伝言だけしてきた。 ルマたちは何かあったか?」

「特には問題ありません」

「用件も済んだしこれから全員で食事に行こうか?」

「「「「「はい、ご主人様!!」」」」」

シフトはルマたちを引き連れて外に出た。

ルマたちが何を食べるかで悩んでいると後ろから声をかけられる。

「よう坊主。 久しぶりだな。 いつこの町に戻ったんだ? あれ? 門で見かけなかったよな?」

それはいつも西門にいる衛兵アルフレッドだ。

「あ、お久しぶりです。 実は東門から入町したんです。 閉門前だったのでとにかく町に入りたくて・・・すみません」

「あっはっはっはっはっは・・・別に責めてはいないさ。 閉門すると町の関係者以外は翌朝まで待つ羽目になるからな」

「理解していただけて助かります」

「それよりこんな場所でどうしたんだ?」

「実は夕食に何を食べようか迷っていたんです。 今日はルマたちが食べたい物にしようと今選んでいる最中でして・・・」

「そうなのかい? それなら邪魔しちゃ悪いかな?」

アルフレッドはすまなさそうに頭を下げる。

「いえ、邪魔だなんてとんでもない。 もしよろしければ・・・」

「いや、今日はやめておこうかな。 また時間ができたときにでも声をかけてくれ。 それじゃあな」

アルフレッドはそれだけいうとあっさりと帰路についた。

「ご主人様、あの・・・」

「気にすることはないよ。 アルフレッドさんも僕たちに気を使ってくれたんだ。 今日は僕たちだけで楽しもう」

「「「「「はい!!」」」」」

そのあとはルマたちが決めた店で夕食をとり、『猫の憩い亭』で1夜を過ごすのであった。


深夜───

シフトたちがベッドの中で寝静まっていた。

コンコンコン・・・

いきなり扉を叩く音が聞こえた。

音を感知したシフトとフェイが素早く目を覚ます。

『ご主人様』

『フェイか。 扉の向こうに何人いる?』

『3・・・いや4人です』

シフトとフェイが小声でひそひそと話す。

コンコンコン・・・

もう1度、扉を叩く音が聞こえる。

夜襲ならば扉を蹴破るか、窓を破壊して入ってくるかだが、扉の向こうにいる者たちは対話を求めているらしい。

『ご主人様、どうします?』

『フェイは全員を起こしてくれ。 僕は扉の向こう側の人と話してみる』

『了解』

フェイがルマたちを起こしに行っている間にシフトは扉まで近づき声をかける。

「どちら様ですか?」

『その声はシフト君か?』

その声に聞き覚えがある。

「ギルドマスター?」

『ああ、やっぱりシフト君か。 実は話が合って首都モウスから急いで戻ってきたんだ』

「ちょっと待ってください」

シフトはフェイを見るとルマたちは眠い目を擦りながらも起きている。

着替えるようにジェスチャーするとフェイは手で了承を返す。

5分後、ルマたちが着替え終わると部屋の明かりをつけて扉を開ける。

そこにはギルバートとサリア、それと見知らぬ男女が2人いた。

2人とも美しい容姿をしていて、美男と美女といっても過言ではない。

「お待たせしました」

「やぁ、シフト君。 久しぶり、夜半過ぎにすまないね」

「お久しぶりです、シフト様」

「ギルドマスター、サリアさん、それにそちらの御二方も立ち話もなんですから部屋に入ってください」

シフトはギルバートたち4人を部屋に招いた。

「どうぞ、座ってください」

「ありがとう」

椅子を勧めるとギルバートと美男が椅子に座る。

サリアともう1人の美女は後ろに控えた。

シフトが椅子に座るとルマたちが後ろに控える。

「それでギルドマスター、こんな深夜遅くに要件とは?」

「その前に自己紹介をしておくよ。 こちらはモオウォーク辺境伯領を統治するギューベ辺境伯だ」

「ギューベです。 君のことはギルバートから聞いている」

「シフトです」

ギューベは手を差し出すとシフトもそれに応えて握手をする。

5秒ほどしてからお互い手を放す。

「後ろに控えているのは私の筆頭護衛でクーリアです」

「クーリアです」

クーリアがシフトたちに一礼をする。

「僕の後ろに控えているのはルマ、ベル、ローザ、フェイ、ユールです」

「ルマです」

「ベルです」

「ローザです」

「フェイです」

「ユールです」

ルマたちはギューベとクーリアに一礼する。

「それで改めて聞きますけど、こんな深夜遅くに要件とは?」

「シフト君、君・・・いや君たち空を飛んできたよね?」

「えっとそれは・・・」

「実は首都モウスで上空に黒い鉄の塊が凄い勢いで西に向かったという情報が多数目撃されてね、これは間違いなくシフト君たちだろう」

ギルバートは確信を持ってシフトに話しかける。

「はぁ・・・ギルドマスター、サリアさん、それとギューベ様とクーリア殿。 ここだけの話でお願いします」

「するとやっぱり」

「まぁ、想像通りです」

ギルバートとサリアは額に手を当てて溜息をつき、ギューベとクーリアは驚愕な目でシフトを見た。

「本当ですか?」

「信じる信じないはギューベ様自身でご一考ください」

「その黒い塊を見ないことには信じられないのだがな」

ギューベとしても実物(魔動車)を見ないことには信じられないのだろう。

「ギルドマスター、用件はそれだけですか?」

「いや、もう1つ」

ギルバートはシフトの目を見て口にする。

「目立つ行動をとってでもここに来たということは何かあったのだろう」

「その通りです。 ここについて急いでギルドマスターに報告しに行ったのですが、受付で門前払いを食らいました」

「はぁ・・・」

「受付嬢が失礼をしました」

ギルバートは大きく溜息をつき、サリアはシフトに対して頭を下げた。

「いえ、ギルドとしては正しい対応ではないでしょうか? 僕のほうがアポなしで訪れたのですから」

「今後はシフト君からの伝言はすべてにおいて最優先に報告させるようにするよ」

「ギルド全体に周知させておきます」

ギルバートとサリアはシフトに頭を下げる。

「いえ、そこまでしてもらわなくても・・・」

「それは僕たちの仕事のことだから気にしないで。 それよりもその緊急の件のほうが気になる、話してくれるか?」

「はい、実はここから遥か北に武装した大量の人間と魔物と魔獣が王都スターリインに向けて現在進行中です」

「なんだって?!」

ギルバートたちはその内容を聞いて驚いた。


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