18.目的
湯浴みと食事が終わりルマたちは部屋で各々リラックスしている。
(頃合いか・・・)
「みんな、こちらに集まってくれ。 聞いてほしいことがある」
ルマたちが集まるとシフトは【次元遮断】で自分の周囲を外界から隔離する。
これで外部に情報は漏れないだろう。
シフトが深刻な顔をしていたのでルマが代表して質問する。
「ご主人様、話とはなんでしょう」
「僕の目的・・・『復讐』だ」
「「「「「?!」」」」」
ルマたちは驚いた。
それはそうだろう、何しろシフトの口から『復讐』という単語が出てくるとは思わなかった。
「ただ、目的を話す前にみんなに聞いておきたい。 僕の『復讐』に手を貸すか貸さないか」
「「「「「・・・」」」」」
ルマたちはお互いに顔を見合わせたあと、代表してルマが問いかけた。
「ご主人様、確認したいことがあります」
「なんだ?」
「なぜ私たちを買ったのですか?」
「一般人もだが傭兵や冒険者、闇ギルドなどと組んでも金が絡めばいくらでも裏切られるからね。 その点奴隷は契約を違えない限りは裏切らないからだ」
「私たちはあなたの道具ですか?」
ルマの質問にシフトは渋い顔をする。
「・・・ずいぶん意地悪な質問をするな・・・道具であり、道具ではない」
「・・・」
「先に言っておくが手を貸さないなら奴隷契約を解除する。 多少の金を渡すからどこへでも好きなところに行くがいい」
「「「「「?!」」」」」
「考える時間がほしいか? なら5分待つ。 それまでに各々で考えて答えてほしい」
シフトはルマたちに少し時間を与えるつもりだったが、すぐにそれを遮ったものがいた。
「必要ありません」
「「「「ルマ(ちゃん・さん)」」」」
「私個人は決まっております。 ご主人様、あなた様にどこまでもついてきます」
「いいのか?」
「かまいません。 私はご主人様に救われた命。 命令とあらばどんな汚いことでも手に染めましょう」
「わかった。 ルマ、俺の『復讐』を手伝ってくれ」
「はい、喜んで」
ルマがとびきりの笑顔で答える。
フェイがそこで呆れたような声を出した。
「あーあ、かっこいいこと先に言われちゃった」
「フェイ?」
「ぼくもルマちゃんと同じなんだ。 ただ、ご主人様の目的が『復讐』って言ったからビックリしちゃった」
「・・・」
フェイはお道化てたが、次には真剣な顔で話した。
「ぼくもご主人様の力になりたい。 あのまま腐っていくぼくを助けてくれたことへの恩返しがしたい」
「2人ともずるいな。 ご主人様、嫌がってもついていくよ」
「ベルも救ってくれた恩がある。 どこまでもついていく」
「ベル、ローザ、フェイ」
ベル、ローザ、フェイはシフトの前に跪く。
「ぼくの右足にかけて」
「わたしの右腕にかけて」
「暗闇から救ってくれた恩にかけて」
シフトはルマたちの決断を受け入れる。
「3人ともよろしく頼む」
「「「はい」」」
これでユール以外の4人はシフトについていくことになった。
ルマがユールに問いかける。
「それでユールはどうするの?」
「わたくしもあなたたちと同じくすでに答えは出ていますわ」
ユールはシフトの前まで歩く。
「これがわたくしの答えですわ」
そこからのユールの動きは速かった。
素早く両手で頬を押さえるとシフトの唇を奪ったのだ。
「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!!!」」」」
時間にして1分に満たないがそれでもあまりの出来事にユール以外は動けずにいた。
「ユ、ユ、ユ、ユール!! い、いったい何を・・・」
ルマの問いかけに勝ち誇ったようにユールは答える。
「知らなかったの? 『眠り姫を起こすのは王子様のキス』なのよ」
「い、一度ならず二度も?!」
「油断した・・・」
「ベルもご主人様とキスする!!」
「ユール、それは反則だぞ!!」
「これで一歩・・・いえ二歩はリードですわね」
ユールは右手で自分の唇を触るとルマたちに勝ち誇った顔をする。
シフトはどうしたものかとユールに問いかけた。
「・・・あー、ユール・・・君は僕を恨んでいるんじゃないのか?」
「それは過去の出来事です。 今のわたくしは彼女たちと同じご主人様にお仕えしたいのです」
ユールもまたルマたちと同じくシフトを支えたいと思っている。
だからこそユールは茶目っ気を出したのだ。
シフトは5人の女の子から好意を感じていた。
(結局みんな僕に付き合ってくれるのか・・・ありがたいことだ)
「わかった。 それじゃ、みんなよろしく頼む」
「「「「「はい、ご主人様!!!!!」」」」」
シフトが内心感謝しているとルマが聞いてきた。
「ところでご主人様の『復讐』する相手とは?」
「今はまだ言えない。 みんな弱いからだ。 時期がきたら話すよ」
「畏まりました」
シフトはルマを見て先ほどの湯浴みの件を思い出す。
これからルマたちの弱みに付け込んだ卑怯で不誠実で優柔不断なことを言うだろう。
だけど、ここでシフトの本心をルマたちに話しておきたい。
「それとこれも先に言っておく。 『復讐』が終わったらみんな僕と結婚してくれ」
「「「「「!!!!!!!」」」」」
あまりの爆弾発言にルマたちが固まった。
そしてその言葉の意味を理解するとルマたちの目に涙が溢れ零れていた。
「本当に私・・・いえ、私たちで宜しいのですか?」
「みんなの好意に応えたい」
ルマたちは歓喜を言葉にできずおもわずシフトに抱きついていた。
それがルマたちがシフトのプロポーズに対する答えである。
因みにこの世界は一夫多妻あるいは多夫一妻を認めている。
王侯貴族は子孫繁栄に複数娶るのが基本らしく、ほかは財力のある一部の商人や富豪、冒険者くらいで、一般人は財力の関係上一夫一妻がほとんどである。
シフトには大陸最大のダンジョン『デスホール』で大量に手に入れたフルポーションをはじめとした各種ポーションとドラゴンの死体がある。
いざとなればギルバートに売って財を成せばいいのだ。




