表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/394

175.魔獣の暴走 〔※残酷描写有り〕

シフトたちは山に着くと魔獣が召喚される場所を分散して探すことにした。

チーム分けとしてはシフトとローザ、ルマとベル、フェイとユールだ。

それぞれ探索力と戦闘力を考慮して分けている。

いざ、探索を開始しようとするとラムラがシフトの服を掴む。

「らーもいく」

「こら、邪魔したらダメだろう」

「やー!」

ラムラは抵抗してギュッと掴む。

「娘よ、あまり我儘を言うなら集落に連れて戻るぞ」

「やぁ・・・」

ラムラは目を瞑って絶対についていくという意思表示を見せる。

そこにシフトが声をかけた。

「落ち着いてください。 僕たちは魔獣の討伐をしに行くのではなく魔獣が減少したことについての調査なんです。 もし、危険が迫ったら僕たちが守りますから」

「う、うむ・・・」

「そ、それなら僕も一緒に行きたい」

ラムラの兄ヨヨソはなぜかルマとベルのところに行く。

どちらかが気になるのだろう。

「はぁ・・・仕方ない。 それなら魔獣が出ても絶対に少年たちの邪魔をしないと約束できるか?」

「うん!」

「はい!」

「すまない、少年たちよ。 息子と娘を頼みたい」

「わかりました。 もし、邪魔したらすぐに集落に帰します」

それを聞いて2人(兄妹)は喜んだ。

シフトたちは3手に別れて探索を開始する。

シフトたちがサイクロプス(1つ目族)側、ルマたちがサイクロプス(1つ目族)巨人族(2つ目族)の境目、フェイたちが巨人族(2つ目族)側をそれぞれ探索することになった。

先ほどのサイクロプス(1つ目族)たちに見つからないように気を付けながらシフトとローザ、ラムラの3人は山の外周を見て回るが洞穴や洞窟は見つからない。

近くの森も探索するがそれらしい魔獣が召喚されるような魔法陣などは見つからなかった。

溝の反対側は海になっていて斜面を可能な限り調べたが魔獣の痕跡はない。

「こちらには何もありませんね」

「むー、つまらない」

「ないものは仕方ないさ、みんなのところに戻ろう」

シフトたちは予め決めていた待ち合わせ場所に向かう。

そこにはすでにルマたちが集まっていた。

「みんな、お疲れ。 そっちはどうだった?」

「あ、ご主人様、収穫あった」

「ベルの鑑定のおかげで見つかりました」

「ぼくたちは全然ダメだったね」

「ええ、魔獣の痕跡は見つかりませんでしたわ」

収穫があったルマたちとなかったフェイたちで落差が激しい。

「ルマ、ベル、案内を頼む。 それとここからは僕たちだけで行くので巨人たち(ラムラたち)はここで待機してくれ」

「やー!」

「僕も行きたい!」

「こら! 我儘を言うな!!」

ラムラの父である巨人ロローの言葉に2人(兄妹)は不満な口にするがこれに関してはシフトも同意するところだ。

「ダメだ! これは遊びじゃないんだぞ! 怪我で済むならいいが最悪命を落としたら残された家族たちはどうするつもりだ?」

「そ、それは・・・」

「ううぅ・・・」

シフトの言葉に2人(兄妹)は不満な顔になるがここで甘やかしてはいけないと強くいった。

「そんな顔をしてもダメだ」

「ぅうぅ・・・ぅ・・・ぅ───」

ラムラが泣き出しそうになったので慌ててヨヨソが手で口を塞ぐ。

「ラムラ! ここで泣かないで!」

「ぅ───ぅ───」

拘束されたのか今度は暴れ始めたが、すぐに取り押さえられる。

さっきの(サイクロプス)がこっちに来ちゃうから!」

その言葉を聞いて先ほどのを思い出したのかラムラは暴れるのを止めて首を縦に振った。

落ち着くとラムラの拘束を解いて離れる。

「ごめんなさい」

「我慢できるよね?」

「・・・うん」

シフトの問いかけにラムラは渋々頷きながら答える。

「聞き分けのいい子だ」

シフトは改めてルマとベルに向き直る。

「それじゃ、出発しよう。 ルマ、ベル、案内してくれ」

「「畏まりました、ご主人様」」

「気を付けて行ってきてくれ」

「ああ、それじゃ行ってくる」

ルマとベルの案内でシフトたちは調査した場所へと案内された。

シフトたちが歩いていると前のほうに地下に続く大きな洞穴が見えてくる。

大きさにしてだいたい5~6メートルくらいだ。

シフトたちなら問題なく通れるが大人の巨人たちではこの洞穴は通れない。

ヨヨソくらいなら通れるだろうが、まだ子供で戦闘訓練を受けていないのでは倒すどころか怪我をするだけだろう。

中が暗いのでユールが【光魔法】で発光玉を生成するとシフトたちは洞穴を入っていく。

しばらく進むとフェイが何かに気付いたのかシフトたちを止める。

フェイは音を立てずにゆっくりと歩き出す。

シフトたちもそれに倣って歩くと奥のほうから僅かな光と声が聞こえてくる。

「おい、そっちはどうだ?」

「へへぇ、楽勝だぜ!」

「俺たちだってやればできるんだよ!」

声からしてどうやら若い男・・・子供たちが先にいるようだ。

シフトはユールを見るとそれを察したのか発光玉を解除した。

これによりシフトたちの周りは暗くなり、こちらに気付きにくくなっただろう。

「それにしても大人たちは情けないよな。 こんな魔獣1匹も倒せないんだからよ」

「ああ、それに比べて俺たちを見てみろよ。 魔獣を狩り放題だぜ?」

「おいおい、それじゃ大人がかわいそうだろ? あの巨体じゃここに入れないんだからよぉ」

シフトたちが広間に続く場所から様子を窺いながら見るとそこには高笑いをしている3人のサイクロプス(1つ目族)がいた。

背の高さ的にはヨヨソと同じくらいだ。

言動から人間の年齢にすると7~8歳といったところだろう。

子供(サイクロプス)たちは足元に倒れている5匹の魔獣を見て意気揚々としている。

魔獣の大きさはシフトたちと同じくらいだ。

シフトは部屋を見てみると奥に扉がある。

だが、扉は半分だけしか開いていない。

その扉の奥からは多くの獣の鳴き声が常に聞こえてくる。

本来なら扉の隙間から出てきて洞穴の外に出ていくのだろうが、あの扉が邪魔で大きな魔獣は出ることができないようだ。

『どうやらあれが原因らしいですね』

『ああ、そうだな』

フェイが小声で話しかけてきたのでシフトもそれに同意する。

「それにしても苦労したよな」

「あの扉だろ? 片方だけ閉めて開けられないように杭を打ったんだからな」

「最初はヤバいと思ったけど、成功したら雑魚魔獣しか襲ってこないようになったからな」

どうやら原因を作ったのはあの3人の子供(サイクロプス)たちのようだ。

ガン! ガン! ガン! ・・・

魔獣たちはストレスからか扉に向かって体当たりをしている。

「うるせぇよ! 出てこれない奴(魔獣)はそこで大人しくしてろ!!」

そういうと子供(サイクロプス)の1人が扉まで行くと蹴りを入れた。

ガン!

それを見た残り2人の子供(サイクロプス)が止める。

「おい! 止めろよ! もし扉が壊れたらどうするんだよ!!」

「そうだぜ! そんなことしたら俺たちが危ないだろうが!!」

もう1発蹴りを入れようとしたがそこで止まる。

「そうだな・・・悪ぃ・・・ふん! 命拾いしたな!!」

子供(サイクロプス)は2人のほうへと向きを変えると魔獣たちはより激しく扉に体当たりをする。

ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン! ガン!・・・

子供(サイクロプス)は肩越しに扉を見て口にする。

「無駄無駄! そんなことしても扉は開かねぇよ! はっはっはっはっはっはっはっ・・・」

それだけ言うと正面を向いて歩き出そうとしたその時、奇妙な音が聞こえてきた。

バキッ!!

それはまるで木が折れる音だった。

これにより扉が少し動いたのだ。

「「え?」」

2人の子供(サイクロプス)が扉の動きを見て目を見開く。

その驚きようを見て子供(サイクロプス)は立ち止まる。

「あん?」

子供(サイクロプス)がもう一度扉のほうを肩越しに見ると扉が一気に開いたのだ。

「「「「「「「「「「ガアァーーーーーッ!!!!!」」」」」」」」」」

魔獣たちは一斉に咆哮する。

「!!」

子供(サイクロプス)が驚いていると扉から彼らを超える大きさの魔獣たちが一気に解き放たれた。

手前にいた魔獣たちは子供(サイクロプス)たちに一斉に襲い掛かる。

シフトはそれを見て静観をしている場合ではないとルマたちに声をかけた。

「あれはまずい! みんな、魔獣をやっつけるよ」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトたちは慌てて広間へと走っていく。

一方、子供(サイクロプス)たちはパニックを起こしていた。

「う、うわあああああぁーーーーーっ!!」

「に、逃げろおおおおおぉーーーーーっ!!」

「く、来るなあああああぁーーーーーっ!!」

逃げようとする子供(サイクロプス)たち。

しかし、足の速さでは魔獣に軍配が上がる。

魔獣たちは子供(サイクロプス)の腕や足に噛みついたのだ。

「いてえええええぇーーーーーっ!!」

「やめろおおおおおぉーーーーーっ!!」

「こ、このぉっ! 雑魚の分際でっ!!」

子供(サイクロプス)たちは必死に抵抗するが速さだけでなく力でも負けていた。

今まで自分たちよりも格下で弱い魔獣に粋がっていた付けが回ってきたのだ。

「だ、誰かあああああぁーーーーーっ!!」

「助けてくれえええええぇーーーーーっ!!」

「し、死にたくない・・・死にたくないぃっ!! 俺がこんなところで死んでいいはずがないんだあああああぁーーーーーっ!!」

子供(サイクロプス)たちは魔獣たちに皮膚を喰われ、皮膚の下の筋膜だけでなく骨も少し見えており、そこから夥しい量の血が流れ出る。

その血に釣られて多くの魔獣たちが子供(サイクロプス)たちを食べようとやってきた。

「悪いが、そこまでだ」

シフトたちはそれぞれ武器を抜いて構えると魔獣たちと相対した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ