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168.謎の塔 中層攻略 〔無双劇32〕〔※残酷描写有り〕

塔に入って2日目。

昨日は18階への階段の手前まで到着するも太陽はすでに西に沈み、これ以上は身体に悪いと判断したシフトは【次元遮断】で外界から隔離した。

念のため、塔内の異変や魔物や魔獣を警戒しつつ3交代で休息をとる。

見張りの順番はルマとベル、フェイとユール、シフトとローザで行った。

今は塔のどの位置まで進んだかわからないがそこそこ上ったことだろう。

シフトとローザが見張りについて2時間が経過すると塔の外から太陽の光が差し込んできた。

どうやら無事に朝を迎えたらしい。

ローザにルマたちを起こしてもらっている間にシフトは【空間収納】を発動すると人数分の水袋と保存食を取り出してから空間を閉じた。

ルマたちに渡してそれぞれ食事を済ませると結界を解いて18階への階段を上っていく。


18階───

道が複数に分かれているところからまたも迷路になっている。

「また迷路」

「ふふん、もう迷路は通じないよ」

ベルが【鑑定】を使って天井、壁、床を調べようとするが発動しない。

「?」

「ベルちゃん、どうしたの?」

「鑑定が発動しない」

「えぇ・・・」

試しにフェイは【斥候】を使うが発動せず、【風魔法】を使うが風が発生しなかった。

「本当だ。 魔法もスキルも発動しない」

それを見ていたシフトたちも魔法とスキルが使えないことに気付く。

「どうやらこの階は特殊な力で魔法とスキルを封じているようですね」

「原理はわからないがこれで魔物や魔獣が現れたら苦戦は必至だな」

シフトたちは慎重に進んでいたが、先頭のフェイが歩いていると何もない空間に頭をぶつける。

「痛い!」

「フェイ、大丈夫か?」

「うん、頭をぶつけただけ・・・それにしてもこんなところに透明な壁があるなんて・・・」

フェイは手で頭を押さえながら、もう片方の手で透明な壁を触る。

「少し休むか?」

「そうしようかな・・・」

フェイは近くにある壁に背を預けるように寄りかかろうとして・・・すり抜けた。

「え?」

フェイはそのまま壁のほうへと消える。

ドシイイイイイィーーーーーン!!

地面に激突する音がして、すぐにフェイの声が聞こえてきた。

「いったあああああぁーーーーーいいいいいぃっ!!」

フェイが寄りかかろうとした壁に手を触れると、手が壁にめり込んだようにすり抜けたのだ。

シフトたちはその壁を進むと足元でフェイが頭を押さえて芋虫のように転がっていた。

「フェイ! 大丈夫か?!」

「ううぅ・・・痛いよぉ・・・頭を打ったよぉ」

「【治癒魔法】ってここでは発動しないんでしたわね」

「もおぉっ! なんだよ! この壁!!」

フェイは文句を言いながら壁を睨む。

「おそらくこの階はわたしたちの魔法やスキルを封じて、幻覚で迷わせているのだろう」

「ぐぬぬぅ・・・おのれ」

「フェイ、落ち着け。 怒りに任せれば思う壺だぞ」

「ううぅ・・・だって・・・」

「ここは確実に進むしかないだろうな。 ほれ」

ローザは自分の腰にある剣をフェイに渡す。

「ローザちゃん、これは?」

「杖代わりだ。 それで壁かどうか調べながら進もう」

「ありがとう」

そのあとは通路と壁を確認しつつ時間をかけて上り階段まで辿り着いたのであった。


23階───

階段を上り終えたシフトたちが最初に感じたのは異臭というか悪臭である。

「何これ?」

「鼻が曲がる」

ベルとフェイは鼻を押さえていた。

そして、目の前には死んだ魔物や魔獣の成れの果てであるゾンビやスケルトンといったアンデッドが大量に発生していた。

「どうやらこの階は屍霊系(アンデッド)の魔物や魔獣の住処のようだな」

「フェイ、【風魔法】で臭いを吹き飛ばすことはできないか?」

「やってみるよ」

フェイは【風魔法】を発動すると前方へ風を吹かせた。

前方からの臭いは消えたが、他方向から臭いが襲ってくる。

「ご主人様、1方向だけでは意味がないよ。 ぼくたちの周りに竜巻を発生させれば防げるだろうけど」

「フェイ、それはやめろ。 全員死ぬ」

いくら臭いがきついからといって周囲に竜巻など発生させたら、今度は酸素不足によりシフトたち全員が酸欠死するだろう。

それなら多少我慢してでもこの状態でアンデッドたちと戦うしかない。

「ルマは【火魔法】をユールは【光魔法】で屍霊系(アンデッド)を攻撃、ベル、ローザ、フェイは魔法武器に火を付与して攻撃するぞ」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

ルマとユールを主体にシフトたちは大量のアンデッドに立ち向かった。

シフトの【五感操作】は生者に絶大な効果を発揮するも死者には効果がないことは獣王国のときに立証済みだ。

距離があるうちに試しに触覚を剥奪してみたがアンデッドたちにはまるで効果がなくこちらに歩いてくる。

ついでに【念動力】も試したがアンデッドは仮初の命が宿っているためか対象にはできなかった。

接近するゾンビをシフトは炎を纏ったナイフで斬りつける。

ゾンビに引火すると次々と皮膚を燃やしていく。

「ガアアアアアァーーーーーッ!!」

ゾンビは狂ったようにシフトを攻撃しようとするがそれよりも早く前方へと蹴り飛ばした。

吹っ飛ばされたゾンビの先には多くのアンデッドがいて飛び火して燃え移っていく。

続いて襲ってきたスケルトンの攻撃を躱すと頭蓋骨を思いきり殴った。

頭蓋骨は首の骨から外れて遥か前方へと飛んでいく。

しばらくすると頭蓋骨を失ったスケルトンは身体の支えを維持できなくなり、その場に崩れ落ちた。

頭蓋骨を元に戻せば復活するだろうが時間を稼ぐだけならこれで十分だろう。

ベルはなるべくゾンビを中心に火を纏わせたナイフで攻撃する。

ローザは剣に火を纏わせるとスケルトンなら普通に攻撃し、ゾンビなら斬首していた。

フェイはシフトと同じ戦い方でゾンビやスケルトンを圧倒する。

隙ができたところにルマの【火魔法】による火球の多段攻撃とユールの【光魔法】による広範囲の浄化でアンデッドを次々倒していく。

30分後、すべてのアンデッドを倒すと臭いを我慢できないシフトたちはさっさと次の階へと上っていった。


30階───

そこはほかのフロアと違い、薄暗く松明が灯されていた。

「暗い」

「うわぁ、先が見通せない」

「ベル、フェイ、魔法やスキルは使えるか?」

「ちょっと待って・・・問題ない」

「ぼくも【斥候】と【風魔法】の両方使えるよ」

「それならこのフロアは透明と幻覚の壁で惑わすことはなさそうだな」

シフトはしばらく考えたあとにベルとフェイに声をかける。

「ベルは【鑑定】を、フェイは【斥候】と【風魔法】を使って通路に怪しいところがないか確認してくれ」

「「はい、ご主人様」」

フェイを先頭に通路の1つを歩くと通路の先に上り階段が見えた。

あまりにも呆気なく見つかったので階段を上るとそこは薄暗く松明が灯されている。

「次の階?」

「うーん、何か違うような気がする。 ご主人様、提案ですけど下りてみませんか?」

「フェイ?」

「嫌な予感がするよ」

「・・・わかった。 一旦、この階段を下りよう」

シフトたちは今上ってきた階段を下りる。

するとそこは先ほどの薄暗いフロアからは一変、部屋は太陽の光が差し込み、魔獣の群れと適度な迷路、そしてほどほどの罠があるフロア・・・29階だった。

「「「「「「!!」」」」」」

しばらくそのフロアを呆然と見ていた。

「ここはさっき上った階段・・・だよな?」

シフトは自信なげに口にする。

「え、ええ、多分そうですわね」

それに答えたのはルマではなくユールだった。

シフト、ルマ、ローザ、ユールが未だに狐につままれる状態だが、ベルとフェイだけはすぐに状況を理解した。

「ああ、これってあれか・・・」

()()()()()?」

「さすがベルちゃん、その通り」

「フェイ、その()()()()()ってなんだ?」

ベルとフェイの会話を聞いてシフトたちはフェイに質問する。

「この場合は正解の手順で進まない限り、永遠に進めない鬼畜なトラップだよ」

それを聞いたシフトたちは苦い顔をする。

「でも、大丈夫。 道順さえしっかり覚えれば突破できるよ」

「海底神殿だと同じ通路を何度も歩かされた」

ベルの言葉にシフトたちは辟易とした。

「ま、ここは総当たりで行くよ」

30階に戻るとシフトたちは総当たりで攻略を開始する。

新しい場所にある上り階段を上るとそこは31階ではなく30階に戻っていた。

つまり、このフロアは海底神殿と違って階段までも偽階段(ダミー)という鬼畜使用だ。

道がランダムに変わらなかったことだけは不幸中の幸いであるが・・・

本物の上り階段を上ったのは総当たりを開始してから1時間後のことだった。


32階───

シフトたちがその階に到着するとそこには多くの人形や石像が転がっていた。

「うわぁ、これまたえらく散乱しているねぇ」

「あ、あのお人形可愛い」

ベルがその人形のところまで行くと突然、人形が動いてベルを襲う。

しかし、ベルは素早く腰から2本のナイフを抜くと人形を斬り裂いた。

()()()()()()()()()

ベルのナイフで倒れたかに見えたが人形はピンピンしている。

「これならどう?」

ベルはナイフの魔石に魔力を流して火を纏わせて斬るが、それでも人形は火に包まれながらも攻撃してくる。

「むぅ」

ベルは人形の首を刎ねるとしばらくしてそのまま動かなくなった。

「倒した」

「ベルちゃん、無理しないでよ」

「そうですわよ。 ベルさんに何かあってからでは遅いですわ」

「ごめんなさい」

「まぁまぁ・・・っと、話している場合ではないな」

シフトは構えるとそこら中にいる人形と石像が動き出した。

「くるぞ!! 石像は倒せないなら放置しろ! 僕が破壊する!!」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトは【五感操作】と【念動力】を試すがこの人形と石像はアンデッドと同じ扱いで対象にできなかった。

(面倒だな・・・)

シフトは迫ってくる人形と石像たちに攻撃した。

人形を拳で殴るがベルの時と同じで頭と身体が無事なので立って再び襲ってくる。

「そうか、痛覚がないからアンデッドと同じか・・・」

シフトは人形の首を手刀で切断、あるいは拳を大金槌のように上から下へ振り下ろして頭を破壊する。

手足を破壊したところで痛痒しないだろうが、頭や身体を潰せばさすがに起き上がることはできないだろう。

石像のほうは単純でその腕力に物を言わせて、石像の頭と身体を拳の一撃のもとに粉砕する。

普通なら硬い石像を殴れば自分の拳を傷つけるだけだが、シフトの腕力はそこら辺の武闘家や力自慢を遥かに凌駕しているので手加減せずに殴れば石を粉々に破壊してもおかしくない。

現に頭や身体を破壊された石像は起き上がることなくその場に倒れているのだから。

シフトは素手で人形と石像を次々と破壊していく。

せめてもの救いは人形や石像が悲鳴を上げないことだ。

ベルは石像の破壊を早々に諦めて人形に絞って戦っている。

ローザはオリハルコンの剣で人形と石像を斬り刻んでいく。

フェイは【風魔法】を発動すると両の拳に風を纏わせて、シフトと同じように人形と石像を相手に普通に戦っている。

ルマは【風魔法】を発動させると風の刃で人形を斬り刻み、風圧で石像を吹っ飛ばす。

ユールは残念ながら人形や石像に対する決定打がないので、後方支援に徹している。

30分後、すべての人形と石像を倒すと次の階段を上っていった。


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