15.女子会
シフトは部屋を出ると壁にもたれかかる。
(ユールはともかく、ベル、ルマ、ローザ、フェイの4人は喜んでたな・・・)
傷が癒えて喜ぶ4人と恥辱に震え怒る1人を思い出す。
(・・・あれは医療行為・・・そう医療行為だ)
心の中で正当性を求めていると部屋の中から女の子たちの声が聞こえてくる。
『それではお嬢様方、こちらに衣類を用意しました。 まずは下着から着てみてください』
部屋の中では着崩れする音が聞こえてくる。
『ルマちゃん胸おっきいね』
『ちょ?! どこ見てるんですか! フェイ!!』
『ルマちゃんの胸』
『見るのやめてください!!』
『ベル、どうしたんだ?』
『・・・ううぅ、ベルの胸ぺったんこ・・・』
『そのうち成長するから』
『ルマちゃんみたいな胸だったらご主人様を喜ばせてあげるのに・・・』
『・・・たしかにあの胸は反則ね』
『ユールも人のこと言えないでしょう?』
『えっと・・・』
『ローザよ。 いくら意識が飛んでいるとはいえ、口移しでポーションを飲ませてくれるんなんて羨ましいわ』
『!! く、口移しいぃっ!!!』
『口移しってどういうこと?』
『まぁ、ベルちゃんは目が見えなかったから仕方ないけど、ご主人様がユールちゃんに熱い口づけを・・・』
『わあああああぁっ!! やだ!! それ以上は言わないで!!!』
『恥ずかしがってユールちゃん可愛いっ♪』
『本当羨ましいわよね。 みんな・・・』
『ちょ、ちょっと、ルマ。 何怒っているのよ?』
『だってそうでしょう?! 私以外みんなお姫様抱っこでこの部屋に運んでもらったのよ!! ずるくない?!』
『お、お、お、お姫様抱っこおぉ?!?!?!?!?!』
『そうよ! 見えないベルと足がないフェイ、意識がないユールはともかく、鬱状態のローザですらお姫様抱っこしてもらったのに私だけないんですよ!! ずるいじゃないですかっ!!!』
『・・・え、えっとそれは・・・』
『・・・なんというか・・・』
『・・・』
『ルマ、申し訳ない』
『うううううぅ・・・』
ルマたちの会話を聞いていたシフトは言動を顧みる。
ルマに頼みっぱなしで労いの言葉はかけているがそれだけだ。
(ルマには悪いことしたな・・・今度彼女に何かしてあげようかな・・・)
部屋の中では次の段階へと進んだ。
『ほ、ほらお嬢様方。 服着ましょう、服』
『・・・この服かわいい・・・』
『ぼくは動きやすいのがいいかな。 ひらひらスカートはぼくには似合わないし・・・』
『・・・そうなの? スカート似合うと思う・・・』
『そうかなぁ・・・って、よく見たらパンツタイプが1着もない!!』
『え、えっーーーと、買いに行った古着屋がセールやってまして・・・可愛いワンピースやスカートが多かったのでつい・・・』
『そ、それでもパンツタイプはなかったの?』
『買い物を頼まれていた際は3人のお嬢様がいましたので・・・』
『たしかに私、ベル、ローザだけでしたからね。 後からフェイとユールが来るなんて想像できません』
『それでスカートタイプばかりを選んだと?』
『いえ、服を見ていたらあと何人か女の子が現れるって神のお告げというか脳が訴えるというか直感というか・・・なにしろそんな感じを受けました』
『・・・結果的には正しい・・・』
『無いものは仕方ない。 スカート選ぶとしますか』
『ねぇ、ローザ。 私の顔と背中に火傷ないのよね?』
『ああ、火傷どころか傷一つついてないぞ』
『そんなに気になるなら鏡で見てみればいいんじゃないですか?』
『見たけど未だに信じられなくて』
『ん・・・ならルマ。 この服なんかはどうだ?』
『ローザ、その服胸が強調されてるんですけど・・・』
『ならこれは?』
『足元のスリットがちょっと・・・』
『これなんかはどうだ?』
『背中空きすぎてませんか?』
『じゃあ・・・これ?』
『スカート丈が短いわ・・・』
『なら・・・これでどうだ?』
『二の腕が見えちゃう』
『えええ・・・じゃあこれ?』
『肩を出すのはちょっと・・・って先ほどから露出している服ばかりなんですけど』
『ははは、すまないルマ。 だけど今のルマはこの服を着ても恥ずかしくない姿をしていると言いたいんだ』
『ローザ・・・』
『ルマさん、これならあなたでも問題ないと思いますよ』
『・・・たしかにこの服ならいろいろと隠せますね』
ルマたちの会話を聞いていたシフトはルマたちがどんな服を着るのか想像してみた。
まずルマは火傷を気にするから長袖長丈のワンピースだろう。
同じような感じでユールはローブタイプの衣装だろう。
次にベルは見た目から考えるとゴシックロリータな衣装かな?
動きやすさ重視のフェイなら半袖のスリットが入った服かな?
最後にローザだけど・・・うーーーん、想像できない・・・
(しかしあの少女、いったい何の服を買ってきたんだ? 良さそうな服が合ったらみんなにお願いして着てもらおう)
部屋の中では最終段階へと進んだ。
『あとはサイズが合う靴を選んでおしまいですね』
『そうだ、ルマ』
『なに? ローザ』
『ルマはご主人様が好きなのか?』
『好きよ』
『即答か』
『さっきも言ったけど、ご主人様が・・・シフト様が身体も心も治してくれた。 この多大なる恩に報いたい』
『ベルも好き。 絶望を払拭させてくれたから』
『ぼくも気に入っているよ。 できればあの人の横を歩き続けたい』
『そういうローザは?』
『わたしもルマと同じだ。 この命救われた身としてはあのお方の剣でありたい』
『皆さま、ご主人様が好きなんですね』
『・・・わたくしは嫌いよ。 あの男・・・』
『ユールはご主人様との第一印象は最悪だからな。 仕方ない』
『やったあぁ。 ライバルが1人減った』
『・・・負けない』
『君たちには悪いがわたしも譲る気はない』
『振り向かせて見せる』
『・・・』
シフトはなぜ奴隷を買ったのかまだ説明していない。
ルマたち(ユールを除く)の好意を聞いてシフトは良心が痛む思いをした。
(彼女たちは僕のすべてを知ってそれでも僕についてきてくれるのだろうか・・・)
そんなことを考えていると部屋の扉が開く。
「お客様、お嬢様方の着替えが終わりました」
「ありがとう」
少女は一礼して部屋を退出した。