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146.将軍

シフトは空を見上げる。

本来であれば素晴らしい青空が広がっているはずなのだが、今はそれに足して翼人たちが乱れ舞っていた。

そして、それを引き起こしているのは地上にいる翼人たちの上司であるイーウィムだ。

「貴様らの根性を叩き直してやる!!」

イーウィムは怒りに任せて【風魔法】を乱発している。

翼人たちも【風魔法】で対抗するが、イーウィム1人の魔法を抑えるほどの威力がない。

威力に負けたものから1人また1人と暴風の餌食になっていく。

シフトは冷静にイーウィムの【風魔法】を分析する。

(ルマやフェイ・・・いや、執事長と互角だな。 であればあの若さでレベル5:究極まで研鑽したのか)

かつて世話になった執事長の【風魔法】をその身に受けたことがあるシフトだからこそ、イーウィムの【風魔法】が如何に凄いかを理解している。

上空にいる翼人たち全員がイーウィムの作り出した暴風の渦の中心をぐるぐる回っていた。

イーウィムは魔法を解くと翼人たちは次々と地面や海へと落下していく。

普通なら死んでいてもおかしくないが、イーウィムの部下だけあって鍛え上げた身体により一命を取り留めている。

しばらくするとズタボロな状態の翼人たちはイーウィムのところまで来て最敬礼をした。

「「「「「「「「「「イーウィム将軍閣下! ご帰還お喜び申し上げます!!」」」」」」」」」」

「ご苦労。 あとで全員私の手で1から鍛え直してやるから覚悟しろ」

「「「「「「「「「「・・・」」」」」」」」」」

その言葉を聞いた翼人たちは地獄の特訓を思い出すと皆一様に蒼褪めた。

「丁度いい、本国に戻ってワイバーンを6匹こちらに回してくれ。 それと女性操縦者を5人に用意しろ」

「ワイバーンをですか?」

「ああ、ここにいるシフト殿たちを本国に連れていく」

イーウィムの発言に翼人たちはざわついていた。

「将軍閣下! 正気ですか?! 人間族を我ら翼人の国に入れるなど・・・」

「もちろん正気だ。 王や重鎮たちについては私が説得する」

翼人たちは困った顔でイーウィムを見ている。

「将軍閣下がそう仰るのであれば・・・」

「なら、さっさと行動しろ」

「はっ!!」

翼人たちは断崖絶壁のほうへと飛んでいく。

同行者の女翼人も戻ろうとするが、それをシフトが止めた。

「あ、ちょっと待って。 これ水と簡単な軽食だけど持ってって食べてよ」

「ありがとうございます」

女翼人はシフトから水と保存食を受け取ると一礼して今度こそ翼を羽ばたかせて飛んでいった。

イーウィムはシフトに向き直ると頭を下げる。

「シフト殿、部下が迷惑をかけた」

「イーウィムさん、僕は気にしていませんよ。 それよりも僕たちの入国を許可していいのですか?」

「人間族との国交をするには誰かしら招かなければならない。 シフト殿みたいに力が強い者でなければナメられてしまうからな」

イーウィムの語った内容は何も翼人族だけでなく、人間族を始めとした異種族にも該当することだろう。

「さて、部下がここにワイバーンを連れて戻ってくるまでに約1時間といったところだな」

「それなら待っている間に軽めだけど食事でもしよう」

シフトは先ほど空間から出した水と保存食をルマたちに渡していく。

「ありがたい、実はお腹が空いていたところなんだ。 遠慮なくいただくとするよ」

ここまで手探りで8時間30分かけてここまで着たのだ。

シフトたちがお腹を空かすのも無理はない。

それぞれが軽めの食事を済ますとワイバーンが来るまでその場で待っている。

イーウィムの言う通り1時間後、ワイバーン6匹とその操縦者6名がシフトたちのところに到着した。

「将軍閣下、お待たせしました」

「ご苦労、シフト殿はそちらの男性操縦者のワイバーンに、ルマ殿たちは女性操縦者のワイバーンに騎乗してくれ」

「わかった」

シフトが男性操縦者がいるワイバーンに騎乗するとルマたちもそれぞれのワイバーンに騎乗した。

「それでは翼人の国へ案内する。 こっちだ」

イーウィムは自らの翼を羽ばたかせて先頭を飛ぶとワイバーンたちがそれに続いて次々と飛んでいく。

断崖絶壁に近づくとそこには崖を刳り貫いてできた都市があった。

その都市は人間族の都市とさして変わらない感じがする。

イーウィムが都市の一角に降り立つとワイバーンたちもその場所に次々と降りていく。

シフトたちがワイバーンから降りるとイーウィムが声をかける。

「ようこそ翼人の国へ。 まずは私の家に案内する。 ついてきてくれ」

イーウィムが歩き出したのでシフトたちもそれについていく。

「イーウィムさん、ここは翼人の国のどこら辺だ?」

「ここは都市の北側だな。 中央までは時間がかかるし、今日はもう遅いから明日案内する」

しばらく歩いていくと立派なお屋敷が見えてきた。

豪華な装飾を施された門の前で止まるとイーウィムはシフトたちのほうへと振り向く。

「着いたぞ、ここだ」

「「「「「「・・・」」」」」」

シフトたちはあまりにも立派な門構えに只々驚いていた。

すると門兵がイーウィムに気付く。

「イーウィムお嬢様?! いつこちらにお戻りになられたのですか?!」

「つい先ほどだ。 今日は客人を連れてきている。 さっさと開けろ」

「はっ! ただいま!!」

ギギギギギ・・・

門兵が門を開けるとその先には屋敷までの長い通路が見える。

イーウィムが先頭を歩いて館に入るとシフトたちも後に続く。

通路の両脇には綺麗に咲き誇った薔薇が咲き乱れている。

屋敷の入り口まで来ると門兵同様、衛兵がイーウィムの帰還に驚くがすぐに気を取り直して屋敷の扉を開けた。

そこには老執事と若いメイドたちがすでにイーウィムの到着に合わせて足並みを揃えて待っている。

「お帰りなさいませ、イーウィムお嬢様」

「「「「「「「「「「お帰りなさいませ」」」」」」」」」」

老執事が一言いった後にメイドたちがそれに続く。

「父上は?」

「旦那様はお仕事で中央に出張しております」

「わかった。 爺、こちらの客人を客間へと案内してくれ。 それとあとで中央に連絡を頼む」

「畏まりました、お嬢様」

老執事が恭しく一礼するとシフトのほうへと歩み寄る。

「お客様、どうぞこちらに」

老執事はそれだけ言うと先を歩き出し、シフトたちもそれに続いて歩き出す。

豪華な内装を見ながら歩いていると老執事がある部屋の前で止まる。

「こちらがお客様のお部屋になります。 お嬢様方の部屋は・・・」

「あ、みんな僕の嫁なので同室でお願いします」

「左様でございましたか。 これは失礼を、それでしたらこちらです」

老執事は2部屋先まで歩くと立ち止まり扉を開けると中へと(いざな)う。

その部屋は豪華なテーブルに椅子、ベッドなどが絶妙な場所に置かれている。

「これはすごいな」

「王宮にも負けない部屋ですね」

「豪華」

「ははは・・・下手に調度品を触れないな」

「ローザちゃん、そういうこと言わないでよ。 危うく触るところだったじゃないか」

「フェイさん、好奇心でそこら中を触れないでくださいね」

「うぐぅっ! ユールちゃんまでそういうこと言う・・・」

シフトたちが部屋の感想を述べていると老執事が声をかけてくる。

「すぐにお食事を用意しますのでそれまではごゆっくりお寛ぎください」

老執事は一礼すると部屋を出て扉を閉める。

シフトたちが部屋で寛いでいると扉をノックしたあとに老執事の声が聞こえてきた。

『失礼します。 お食事の準備ができましたので案内いたします』

扉を開けると廊下には老執事が頭を下げてシフトたちを待っていた。

「お待たせしました」

「それでは食堂へ案内いたします」

老執事の案内で食堂へと足を運ぶと上座にはイーウィムが着替えもせずに不機嫌な顔で座っていた。

現在この館の主が不在のため代理であるイーウィムが上座に座るのは問題ないが、なぜ不機嫌なのかがわからない。

「どうぞこちらに」

シフトたちは老執事やメイドに椅子を引かれたので各々が座るとイーウィムに話しかける。

「イーウィムさん、どうしたんですか?」

「聞いてくれ、シフト殿。 メイドたちが私に意地悪をするのだ」

「意地悪?」

「そうだ、服を着替えようとしたらそのままのほうが喜ぶからと言って応じないのだ」

シフトはちらりとメイドたちを見るとポーカーフェースではあるが口角が少しだけ上がっている。

意地悪というか楽しんでいる部分もあるが、本音は(シフト)を連れ込んだからここで頑張って虜にしろってことだろうな・・・

イーウィムはその意図を汲み取れていないのか意地悪されていると勘違いしているのである。

メイドたちの努力も虚しく、イーウィムが不機嫌なまま食事が行われたのであった。


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