130.私利私欲にまみれた貴族たちの末路 〔無双劇20〕〔※残酷描写有り〕
アクアルが海に帰りこれで皇国にいるかもしれないライサンダーたちを探しに行ける。
「みんなこれから皇国へ向かう」
「ご主人様、あれを見てください」
ルマが指さすほうから先ほどのとは違う貴族が武装した兵を連れてここへやってきた。
「ここか・・・ん、なんだあれは? おい、あれも持って帰るぞ」
「はっ! 畏まりました!!」
貴族のボンボンがいったあれとはシフトたちが移動で愛用している魔動車だ。
兵たちはシフトたちに向かって歩き出す。
「おい、そこの小僧。 おとなしくそのへんな鉄の塊を我々に差し出せ。 そうすれば命だけは取らないでおいてやろう」
「おいおい、よく見たら女もいるのかよ。 ついでに荷物と女も全部置いていけ」
「ああ、俺たちでたっぷり可愛がってやる」
その言葉にシフトがキレた。
「おい、てめぇらにやるものなど1つもない。 ケガしないうちに帰れ」
「あん? 随分と生意気な口を利くじゃねぇか?」
「おい、このガキを殺して奪っちまおうぜ」
「そのほうが手っ取り早いだろ」
兵たちの下卑た考えに我慢ならないのかシフトは早々に【五感操作】を発動した。
対象は今現れた貴族とその兵たち全員で、効果はもちろん触覚剥奪だ。
突然身体が動かなくなったことに貴族や兵たちが皆驚き喚きだした。
「なんだ?! どうして身体が動かない?!」
「ガキ!! てめぇ何しやがった!!」
「さっさと元に戻しやがれ!!」
「はぁ、てめぇら今自分の状況が解っているのか? 生殺与奪の件は僕にあるんだぞ?」
その言葉に理解が早いものから顔を蒼褪めさせていく。
シフトは【空間収納】を発動すると魔動車と箱と台車を空間にしまい、代わりにルマ特性の10メートルクラスの氷の塊を出して空間を閉じた。
「おい、なんだあの大きな氷は!!」
「どこから取り出しやがった!!」
「そんなもの何をするつもりだ?」
「決まっている、こうするんだよ」
シフトは【念動力】で氷の塊を貴族たちに向けて飛ばした。
その圧倒的な破壊力を持った氷の塊にぶつかり吹っ飛ばされる兵たち。
飛ばした氷の塊を【念動力】でコントロールして次々と兵たちを攻撃する。
轢かれ弾かれそして潰されていく。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!!!!」
「くるなあああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
身体を動かせず的になった兵たちは叫ぶことしかできない。
そして氷の塊により多くの命が奪われていく。
30分後、シフトを敵に回した貴族以外の兵たちは全滅した。
「ひいいいいいぃーーーーーっ!!」
「さて、残るはお前だけだな」
馬から引き摺り下ろすと貴族のボンボンが命乞いを始める。
「た、助けてくれ! お、俺はこの公国で1番偉いんだ! 命だけは取らないでくれ!!」
「はぁ? てめぇから仕掛けてきておいて、いざ負けるとなると手のひらを返すとかありえないんだけど」
「わ、悪かった! もう金輪際手は出さない! だから頼む! 命だけは!!」
「生かしておいて後ろから刺されるのも嫌なのでここできっちり殺しておくよ」
それだけ言うとシフトは貴族のボンボンを海人が拡張して作った海に放り込んだ。
「うげ! やっ、た、助けてくれ!!」
「何を嫌がる? てめぇがここまで来て欲しがったモノだろ?」
「あうぐぅっ! そ、そうだが、ごぼっ! お、俺が欲しいのは、ぶぐぅっ! こ、ここの領地だ!!」
貴族は溺れながらもなんとか答える。
本来であればこの程度の海など問題ないのだが、今は触覚を剥奪されて動けないうえに5キロもある甲冑まで着こんでいた。
これで溺れないとかはありえない。
「あぐぅっ! や、やだぁっ! し、死にたく、うげほっ! 死にたくない!!」
「欲張った罰だ」
貴族のボンボンはその浅瀬の海に沈み藻掻き苦しみそのまま帰らぬ人となった。
これで一件落着かと思えばまた別の場所から貴族が兵を連れてやっきたのだ。
ここを収めていた公国の伯爵は周りに大小合わせて6つの貴族たちが囲んでいる。
今ここに来ている貴族たちは3つ。
今現れたのが4つ目である。
出遅れたと急いでここまで来たのだろう。
行軍に乱れが生じている。
そして残り2つもここに到着した。
しかし息に乱れがない。
急いできたのではなく共倒れを狙い漁夫の利を掻っ攫おうとわざと遅れてきたのだろう。
ここに来て残りの面子を見ると舌打ちをしている風に見える。
このまま三つ巴の戦いを勝手にやればいいが運が悪いことにその主戦場になりそうなのが今シフトたちがいる場所だ。
もし戦いが始まればここを中心になるのは間違いない。
「ほう、1つの貴族を滅ぼしてくれたかそれは僥倖だ。 そのままあの領地も俺が管理してやろう」
「何をほざく。 ここも滅んだ貴族の領地も私のモノだ」
「はんっ! お前らのモノじゃない! ここもあの地もそしてお前たちの地もすべて俺様のモノだ!」
3人の貴族がシフトたちを中心に睨み合う。
シフトは溜息をつく。
バカの権力者に巻き込まれるのは御免だと。
「みんな巻き込まれないうちにここから退散しよう」
「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」
シフトたちが中央から離れようとすると1人の貴族が声を荒げる。
「おい! そこの小僧!」
続く言葉はどうせ『邪魔だ!』だろうと思ったが・・・
「女と荷物を置いてここから立ち去れ! そうすれば命だけは助けてやろうじゃないか」
「ほう、よく見たら中々良い女たちではないか」
「ふんっ! なら女たちも手土産に持って帰るとしよう」
違った。
シフトは公国の強欲貴族たちを見て激怒した。
(この国はこんなバカばかりなのか? あいつの手を握らなくてよかった)
正直公国がここまでバカな国だとは思ってもみなかった。
もし王国で公国の国王の手を握っていたら、今頃は公国統一という名の戦略シミュレーションゲームをやらされていただろう。
そんなモノは誰もが知るあの有名な戦国武将だけで十分だ。
「はぁ、てめぇら全員まとめて相手になってやる」
「ん? おい、こいつ今面白いこと言ったぞ」
「私たちを全員相手にするだと? バカも休み休み言え」
「そうだぜ。 俺様の力も知らない奴が図に乗るな」
シフトは3人の貴族と兵たちを相手に【五感操作】で触覚を剥奪した。
「くそっ! 身体が動かないだと?!」
「己! 姑息な手を! この卑怯者が!!」
「正々堂々と戦いやがれ!!」
「姑息? 卑怯? 大軍引き連れて多勢に無勢な行為によくそんなことが言えるな」
シフトは呆れた口調で貴族たちに声をかける。
「ご主人様、私たちもお手伝いします」
ルマたちもこの国の貴族たちに嫌気が差したのだろう。
さっさと終わらせてここから立ち去りたいという態度である。
「ここは僕1人で十分だ。 みんなには先ほど眠らせた貴族たちの処分を頼む。 ルマとローザは北、ベルとフェイとユールは南だ」
「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」
ルマたちは行動を開始した。
シフトは先ほど倒した兵たちのところを見る。
そこには血塗れの氷の塊が無造作に転がっていたので、【念動力】を使って再び兵たちに向けて攻撃を開始した。
そして、その場に再び悲鳴が響き渡る。
2時間後、シフトをバカにした貴族を筆頭に彼らの兵たちすべてを殲滅させた。
途中命乞いの類をいくつも聞くがそれらをすべて無視する。
ルマたちに手を出そうとする者にシフトは容赦しないのだ。
シフトが終わる前にルマたちも早々に処理を終えて戻ってきていた。
元々シフトの能力で触覚を剥奪しているから楽に終わったそうだ。
「そうだ、最後にこんなバカなことをしないように釘を刺しておかないとな」
シフトはルマにお願いして【氷魔法】で人が4~5人乗れるくらいの大きくて頑丈な氷を作ってもらった。
できた氷の上に乗るとシフトは【念動力】で氷を浮かべて上空に移動する。
ある程度の高さで固定化すると周りを見渡す。
そこには目の前の城同様に6つのいやそれ以上の城が見ることができる。
どの城も立派だが1つだけ共通する特徴があった。
それは城の頂上がどれも尖って立派なのだ。
シフトは【念動力】で遥か彼方にある城の頂上を動かせるか試してみた。
結果は動かすことに成功した。
シフトは見える範囲の城の頂上を片っ端から動かしていく。
これにより公国にある城のおよそ8割弱が被害に遭い、何人かが怪我をしたらしい。
おおよそ城の頂上を動かし終えたシフトは地上へと戻る。
王国で公国を滅ぼすと言ったことがあったが、まさか実演するときがくるとは当時発言したシフトですら想像できなかっただろう。
「ご主人様、どうでしたか?」
「うん、うまくいったよ。 これでこの国のバカな貴族が調子に乗らなければいいけどね。 それじゃ、改めて皇国に行こう」
「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」
シフトは【空間収納】を発動して魔動車を取り出して空間を閉じると、乗り込んでその場を後にするのであった。




