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125.新たな三択、迷う二択

シフトたちはベルの案内で裏路地の家屋に到着する。

先ほどベルがフェイと一緒に『この手に自由を(フリーダム)』を拘束したことをシフトに告げた。

「ここにいる」

「そうか、では入るか・・・と、その前に」

シフトは【偽装】を使ってある男に変装した。

「たしかこんな()()だったよね?」

シフトは()()を見せてルマたちに問いかける。

「ばっちり」

()()には『この手に自由を(フリーダム)』の一員である奇妙な()()が施されている。

それを直近で見たベルが太鼓判を押す。

満足したシフトは【空間収納】を発動してフード付きの全身覆い隠せるマントを1着取り出すと空間を閉じる。

そしてそのままマントを羽織り、フードで顔を隠した。

「それじゃ、中に入るけどその前にルマかユールはベルを拘束してくれるか?」

「ベルをですか?」

「ああ、演技で相手を信用させて情報を得たい」

「なるほど、ベル、いいかしら?」

「ご主人様の命令なら喜んで」

そういうとルマとユールはベルの両腕を掴んで拘束した。

「それじゃ、改めて中に入るよ」

シフトは家屋の扉を開けた。

そこにはフェイと拘束されて地面に這いつくばっている『この手に自由を(フリーダム)』の男たちがいる。

その近くには大きな箱が置かれていた。

「なっ?! ベルちゃん!!」

「お前か? 我が同志をこのようにしたのは?」

フェイはベルを見ると首を縦に振った。

それに気付いたのかフェイが大胆に演技を始める。

「そうだよ、ぼくとベルちゃんでこいつらを倒したんだよ。 悪いことは言わないからベルちゃんを放せ」

「断る。 彼女は我が下した。 お前も這いつくばるがいい」

「くっ! てやぁーーーーーっ!!」

フェイが走り出してシフトに拳を放つがそれを掌で包むように受け止めた。

シフトとフェイは小声で会話を始める。

『これでいいの? ご主人様?』

『ああ、よく演技ってわかったな?』

『当然でしょう♪ ぼくとご主人様の愛の成せる業だよ♡』

フェイはシフトに対してウィンクする。

するとそれを見ていたルマが黒いオーラを纏わせ始めた。

『ちょっと、ルマさん。 落ち着いて!』

『ルマ、落ち着く』

『そうだぞ、ご主人様の演技を台無しにするつもりか?』

『うぅ! くぅ!』

ベルたちの説得でルマはご主人様に迷惑をかけたくないと自分を戒めた。

『それじゃ、腹を殴るふりをするから倒れこんで』

『了解』

シフトはフェイの腹を軽く小突く感じで殴った。

するとフェイはそれに合わせて身体を少し宙に浮かせて、周りからは恰も大ダメージを受けたように見せる。

「がはぁ!!」

フェイはそのまま地面に倒れこむ。

「大したことはなかったようだな、おい」

「はっ!!」

ローザがフェイを羽交い絞めにする。

それも少し・・・いや、かなり強めに拘束した。

『ちょっ! ローザちゃん! 痛い! 痛い!!』

『このくらい我慢しろ』

実はローザもルマ同様怒っていたがそれを表に出さなかっただけで、良い機会だからフェイにお灸を据えている。

シフトは『この手に自由を(フリーダム)』のリーダーと思われる男の猿轡を解く。

その際に()()()()()を見せることを忘れない。

「大丈夫か?」

「助かった、我が同志よ。 ところであの娘たちはどうしたのだ?」

「フライハイト様の命により、我がこの首都で勧誘をしてきた者たちだ。 今はまだ紋様がないが後で施す予定だ」

シフトの説明に男は納得したようだ。

「なるほど、我らとは別に動いていたんだな。 そのおかげで助かった」

「ところでここで何をしていたんだ? 我が同志よ」

「実はこの箱に海人を収めていてな。 それを運んでいる最中だ」

「海人?」

聞きなれない単語にシフトは聞き返す。

「ああ、これで公国と海人たちによる戦争が始まる」

(戦争なんて考えていたのかこいつらは!)

シフトは内心毒突くが今は情報を引き出すことに専念する。

「そうか・・・ところでフライハイト様が今どこにいるかわかるか? 連絡をしたんだが繋がらなくて」

「フライハイト様との連絡が取れないだと? たしか数日前に北西にある皇国から連絡が来ていたな。 なんでも王国の勇者を一時匿うらしい」

(皇国か!!)

シフトはもっとも聞きたかった情報を入手することに成功する。

これによりシフトとしての行先は決まったが同時に発生している問題をどうするかだ。


1.皇国、ライサンダーがいるかもしれない

2.公国、海人との戦争の回避または終結させる

3.帝国またはドワーフの国、今捕まえている『この手に自由を(フリーダム)』を渡して更なる情報を吐き出す


1はこの機会を逃せば今度はいつ見つけることができるかわからない。

できれば今すぐにでも移動を開始したいくらいだ。

2は戦争の火種になる者が目の前にいる。

海人たちに身柄を渡せば戦争が回避か終結できるだろう。

3は1・2ほどの重要性がない。

情報は生物(なまもの)と同じで新鮮なモノほど有用である。

これらを考えると幹部クラスでもない限り3はありえない。

なので実質1か2の二択である。

情報がガセネタだったり古いことも考慮して慎重に選ばなければならない。

「貴重な情報ありがとう。 それではさらばだ」

シフトはナイフを抜くと男の胸に突き立てる。

「がはぁ!! な、なにをする?」

「もう、お前たちに用はない。 だから始末する」

それを皮切りにルマたちも残りの男たちの心臓や脳を狙ってナイフで刺殺した。

この手に自由を(フリーダム)』の男たちを全員殺すとシフトは【偽装】でいつもの姿に戻る。

「さて、これからどうするかだが・・・」

「ご主人様、お願いがあります。 アクアルちゃんを海人に帰してあげたいのですが」

「ベルからもお願い」

「ベル! フェイ! それを決めるのはご主人様です」

「それはわかってるけど」

「ルマの意地悪」

ルマとしても先ほどのやりとりでベルとフェイの2人と同じ気持ちなのだろう。

いや、ルマだけでなくローザとユールも同じはずだ。

シフトとしてもできれば囚われている海人を故郷に帰したい。

だけどせっかく手に入れたライサンダーたちの情報を無駄にしたくない。

そして出した結論は・・・

「そのアクアルという海人を故郷に帰す」

その言葉にベルとフェイは喜んでいた。

「よろしいのですか?」

「ああ、海人が公国だけでなくほかの国まで襲ってこられても困るからね」

シフトは未確定なライサンダーたちの行方よりも、確実な海人に帰すほうを選んだ。

「アクアルちゃん、ご主人様が海に連れてってくれるって」

「家に帰れる」

ベルとフェイは縦横高さがそれぞれ2メートルある箱に対して声をかける。

『フェイさん、ベルさん、それにどなたか存じませんがわたしを海に連れてってくれると言ったかた、ありがとうございます』

それを聞いてシフトたちは自分たちが名乗っていないことを忘れていた。

「これは失礼した、僕の名前はシフト。 ベルとフェイ、それにこれから紹介する仲間()たちの主だ。 よろしく」

「ルマです。 よろしくお願いします」

「ローザだ。 よろしくな」

「ユールですわ。 よろしくお願いしますね」

『あ、わたしはアクアルです。 よろしくお願いします』

箱を通してそれぞれが挨拶をする。

「ところでなんで箱越しに話しているんだ?」

『フェイさんとベルさんには話したんですが、わたしたち人魚の声は人間族からみたら特殊で面と向かって話すとその人の意識を刈り取ってしまうのです』

「なるほど・・・できれば君の顔を拝見してもいいかな?」

『? えっと、顔をですか?』

「ああ、海人に帰すにしても特徴を知っているか知らないかで変わってくると思うから」

『なるほど、わかりました』

シフトは近くの梯子を持ってきて上蓋を開けようと行動するが・・・

「ご主人様、ちょっと待って」

「フェイ? どうしたんだ?」

「ああ・・・実はアクアルちゃんは女の子でその・・・裸なんだよね」

それを聞いたルマがすぐさま声を上げる。

「それはダメですね。 ここは私たちにおまかせを」

「ルマ? 僕は顔だけ拝見したいだけだよ」

「ご主人様、女の子の裸を見るのはどうかと思いますよ?」

いつものことだがこういう時のルマの笑顔は目が笑ってない。

「はぁ・・・ルマ、普通ならルマの言う通り不謹慎だろう。 だが、今回の場合は海人にアクアルの無事を伝えないといけないんだ。 顔を知っておかないと伝えようがないだろ?」

「ですが・・・」

「ルマちゃん、ここはご主人様の言う通りにするのが一番だよ。 ご主人様の能力を使えばさっきのように話が通じるかもしれないんだから」

シフトの意見にフェイが賛成を示すとベルもローザも頷く。

「・・・わかりました」

ルマは必要なことだと割り切って渋々了解した。

「アクアルさん、これから蓋を開けるけど見られたくない部分は手で隠してね」

シフトはそれだけ言うと改めて蓋を開ける。

箱の中には女の子が恥ずかしそうに胸と足の付け根を手で隠していた。

「ごめんね。 顔だけこちらに見せて」

「・・・」

アクアルは顔をシフトのほうに向ける。

シフトはアクアルの顔の特徴を覚えるとすぐに梯子から降りた。

「ありがとう、君の顔の特徴は覚えたから」

その後、ルマたちもアクアルと顔を合わせる。

全員が確認を終えたら蓋を閉めた。

『あの・・・それでこれからわたしは海に帰れるのでしょうか?』

「ええ、僕たちでアクアルさんを海に帰すことを約束します」

『本当ですか? ありがとうございます』

「それじゃ、早速出発しようか。 みんないいかな?」

「「「「「はい、ご主人様」」」」」

シフトたちはアクアルを連れて東の海を目指すことになった。


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