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120.活火山の終息

「とりあえず活火山の噴火も止んで、地揺れも収まり、火山灰と溶岩流もほぼ対処完了と・・・気温が高いからもう少し水を撒いておくか」

シフトは竹筒を構えると結界めがけて大量の水をなんどか放出する。

周りの気温が少しずつ低下していく。

ある程度水を撒くと少し熱いがこれなら問題ないだろうと結界を解いた。

国内からはドワーフたちの声が聞こえてくる。

『地揺れが収まったぞ』

『助かった・・・だけど・・・』

『なんか蒸し暑くないか?』

ドワーフたちが騒いでいるが、シフトはすべて無視してルマたちのところへ戻る。

大通りを歩いているとルマたちとドワーフの鍛冶王ラッグズと案内をしてくれている女の子ドゥルータがいた。

「ただいま」

「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」」

「シフト殿、よくぞ戻られた」

「お兄ちゃん、お帰り」

「ドワーフ王、活火山の噴火は止んだがいつ再噴火するのかはわからない。 地揺れも同じだ。 火山灰と溶岩流は国に影響が出ないようにほぼ対処完了といったところか」

ラッグズはシフトの報告に満足すると頭を下げる。

「ありがとう、一時はどうなるかと思ったぞ」

「頭を上げてください。 あと、これはお借りした魔道具です」

シフトは借りた魔道具をラッグズに返した。

ラッグズは頭を上げると魔道具を受け取り、シフトに話しかける。

「シフト殿、詳細について聞きたいのだが・・・」

「ここでは誰が聞いているかわからないので別の場所でお話ししたいのですが」

「聞かれたくない内容も含まれるか? よかろう、わしについてこい」

「あ・・・」

ラッグズが歩き出そうとするとドゥルータがつい声を出してしまう。

声をかけたのはあくまでもシフトたちであり、その中にドゥルータは入っていないのだ。

ドゥルータはどうしようという顔をするとシフトが声をかける。

「誰にも言わないならついてきてもいいよ」

「あ! うん!!」

ドゥルータは笑顔になり頷いた。

「ドワーフ王、この娘も一緒で問題ないかな?」

「わしは問題ないぞ」

シフトたちはラッグズに連れられて王宮へと足を運んだ。

ラッグズ自らの案内で王宮を歩いていると1つの部屋の前で止まると部屋を開ける。

「この部屋で話そう。 さぁ、入ってくれ」

シフトたちが部屋に入るとそこは小会議室みたいなところだった。

「適当に座ってくれ」

「遠慮なく、みんなも座ろう」

シフトが座るとルマたちやドゥルータも椅子に座る。

ラッグズも椅子に座ると早速本題に入った。

「それであの場では言えなかったことを聞こうか」

「右手に奇妙な紋様を持った者に襲われた」

「「「「「!!」」」」」

「それは真か?!」

「?」

ルマたちやラッグズは驚き、ドゥルータはなにそれという顔をしていた。

「ああ、今回このドワーフの国で活火山を爆発させたのも奴らだ」

「ふむ・・・王国での国際会議で帝国の皇子がやらかしたようにここでも同じことをされるとは・・・」

「首謀者を捕まえようとしたが目の前で自害された。 すまない」

「これ以上ここで悪さできないだけでも良しとするか・・・」

ラッグズは自分の国をかき乱す者たちに頭を悩ませる。

シフトたちにしても『この手に自由を(フリーダム)』やフライハイトに関する情報が入手できなかったのは正直痛かった。

1人残されたドゥルータが質問する。

「ねぇ、奇妙な紋様ってなに?」

「右手に変な落書きをしている人なんだけど見たことあるかい?」

「ううん、ないよ」

ドゥルータは首を横に振る。

「いいかい、もし見かけても好奇心で追いかけちゃダメだよ。 彼らは平気で人を殺せるから」

「そうだな、見かけたらわしのところまで報告に来てほしい」

「わ、わかった」

シフトやラッグズの言葉にドゥルータは首を縦に振った。

「シフト殿に聞きたいことがあるのだが、火山灰や溶岩流からこの国を守ってくれた結界みたいなもの、あれはなんだ?」

「ああ・・・あれは僕がダンジョンから持ち帰った特殊な魔道具で指定した範囲を外界と遮断する物です」

「なるほど、だから夜にも関わらず昼のような明るさと温かさを保っていたのか。 そんな魔道具があるとは・・・」

「ええ、ただこの魔道具は燃費が非常に悪くて魔力が少ない者には使えないのです」

「使用するには莫大な魔力が必要と・・・わしらドワーフたちは魔法が得意な者がほとんどおらんからな。 その魔道具があっても役に立ちそうにないな」

燃費が良ければ譲ってほしいと思ったのだろう。

シフトとしてもいつもの偽情報なので求められても困るのだ。

「エルフの隠れ里も結界で里を守っているので、もし火山灰と溶岩流だけを守る結界ならば是非欲しいと思ったくらいだ」

ラッグズはこの国を守れる魔道具があればと悔やんでいる。

「残念ながら僕は魔道具職人ではないので・・・」

たしかにシフトは魔道具職人ではないが、閃きとルマたちの協力で魔法武器や魔動車を作り出していた。

「無い物強請りをしても意味がない。 わしも今後同じようなことが起きた場合の対策を考えておく」

「それがいいだろう。 僕のほうでの最重要な事案は以上だ」

「うむ、ご苦労だったな。 国内のほうは地揺れで建物には影響あったが人的被害はなかったぞ」

「それはよかったです。 内部より結界外のほうが酷い地揺れだったので・・・」

「そうであったか・・・もしシフト殿がいなければ今頃は噴火と地揺れでドワーフの国は地図から消滅していただろう。 改めて礼を言う」

「ありがとう、お兄ちゃん」

ラッグズが頭を下げるとドゥルータも真似して頭を下げる。

「どういたしまして、僕としてもここに来た意味がなくなってしまうところでしたから」

ラッグズは頭を上げるとシフトに尋ねた。

「何かここに用があってきたのか?」

シフトはローザを見ると頷いて立ち上がる。

「実は彼女は【鍛冶】のスキルを持っているのですが、先日の戦いで自ら鍛えた愛用の剣を折られてしまったんです。 それで鍛冶で名高いこのドワーフの国で先達の技術を身に付けられればと思いまして・・・」

「ふむ、なるほど・・・名は何という? 【鍛冶】のレベルは?」

「ローザと申します。 【鍛冶】のレベルは3です」

「ほう、その若さでレベルが3と・・・将来有望ではないか。 ローザ殿、わしの国で鍛冶師としてやっていく気はないか?」

「陛下、申し訳ございません。 わたしは常にご主人様の隣を歩いていたいのです」

ラッグズの質問にローザは首を横に振ると丁重に断った。

「そうか、それは残念だ。 もし気が変わればいつでもわしのところに来るがいい」

ローザは無言で一礼すると席に座る。

「話を戻しますが彼女に熟練の鍛冶仕事を見せていただけるような高名な鍛冶師を探しにここドワーフの国を訪れたのです」

「うむ、ならばわしが見せてやろう」

「! ドワーフ王自らがですか?」

「わしはこの国の王の前に1人の鍛冶師だ。 レベルも最大の5だ。 先達を除けばこの国でわしを超える者はいない。 ローザ殿、ここにいる間わしのところで修行をしてみる気はあるか?」

ラッグズの発言にローザは驚きシフトを見る。

「よろしいのですか?」

「国を救った英雄の願い事を断るほど狭量ではない。 それで返答や如何に?」

ローザはラッグズに頭を下げる。

「お願いします、ドワーフ王」

「うむ、今日はこれから被害報告を受けて各所に対応するから明日この王宮に来るがいい。 部下たちにはわしから伝えておく」

「よかったな、ローザ」

「はい、ご主人様」

ローザは嬉しい顔でシフトを見る。

ラッグズは席を立つとシフトたちも同じく席を立つ。

王宮の外まで案内した。

「それではまた明日会おう」

「ええ、また明日」

それだけ言うとラッグズは王宮の奥へと戻っていった。

「それじゃ僕たちも戻ろうか、今日も1泊お願いしてもいいかな?」

シフトがドゥルータに宿泊のお願いをすると嬉しそうな顔をして頷いた。

「はい! こちらですよ!!」

シフトたちはドゥルータの先導についていくのであった。


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