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116.ドワーフの国

盗賊を退治してから4日後───

シフトたちは魔動車でドワーフの国を目指して南下していた。

あれから邪魔もなく旅は順調である。

遠方には山があり、山肌には無数の建物が見えていた。

離れたところで魔動車を停車させるとシフトたちは降りる。

魔動車を空間にしまってここからは歩きで山に見える建物を目指すが、太陽も傾きもうすぐ地平線へと姿を消そうとしていた。

「今日はここで野宿にして、明日あの山の建物に行くことにする」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

シフトたちは野営の準備をしていると大地から揺れを感じた。

グラグラグラ・・・

倒れてもおかしくないくらいな揺れである。

「「「「「きゃあっ!!」」」」」

ルマたちはいきなりの揺れに驚き声を上げる。

しばらくすると揺れは収まっていく。

「ビックリしました」

「ベルも」

「大地が揺れるなんて誰か魔法でも使ったのか?」

「それらしいのはいないね」

「驚きましたわ」

ルマたちは揺れについて騒いでいる。

シフトは今の揺れが魔法によるモノかそれとも近くにある山によるモノか判断できないでいた。

「ご主人様?」

「ん? ああ、すまない。 今の揺れについてちょっと考えていた。 魔法か自然かどちらだろうって」

「そういうことですか・・・どちらかというと自然なモノではないでしょうか?」

「僕もそう思っている。 万が一だが魔法である可能性もあるな・・・みんな念のため警戒しておいて」

「「「「「畏まりました、ご主人様」」」」」

その後、警戒するも特に不審な人物がいるわけもなく、時間だけが経っていく。

翌日、シフトたちは出発の準備をしているとまたも大きな揺れを感じた。

グラグラグラ・・・

昨日よりも小さいが揺れている。

「昨日よりかは小さい揺れだな」

「そうですね」

「もしかすると山があるからここら辺では当たり前なのかもしれない」

「山だとすると厄介ですね。 自然に発生しているので予兆をとらえるのが難しいです」

「僕たちに影響が出なければそれでいいかな」

そんなやり取りをしながら準備ができたのでシフトたちは山の建物目指して出発した。

日中は天候も良く、襲ってくるモンスターもこの前みたいな盗賊もいない。

シフトたちはゆっくりした歩調で歩き、太陽が傾き地平線に触れる直前には山にある町に辿り着いた。

そこには普通の成人男性と比べると背丈が半分くらいの大きさの体格がずっしりした人たちが多い。

シフトは地元民と思われる人に声をかけてみる。

「すみません、ここはドワーフの国で間違いないですか?」

「ん? あんたら見ない顔だな。 まぁ、ここはドワーフたちが住む国で間違いないが・・・」

「観光目的でここに来たのですが到着がつい先ほどになってしまったんです。 お薦めの宿屋はありますか?」

「それなら、ほらそこらに赤い屋根の家があるだろ? あれは全部宿屋だ」

指さしたほうにはいくつか赤い屋根がある建物が存在した。

「ありがとうございます。 これは情報を提供してくれたお礼の酒代です」

シフトは革袋から銀貨1枚を取り出し渡した。

「おお、これはすまないな。 それではお互い良い酒を飲めることを祈っているよ」

ドワーフは銀貨を受け取ると嬉しそうに酒場へと足を運んでいった。

「それじゃ僕たちも宿を取りに行こうか」

シフトたちは赤い屋根の建物を巡り始めることにした。

いくつか宿を巡ったが残念ながらどこも満室だ。

どうしたものかと考えていると1人の幼いドワーフがシフトたちの前にやってくる。

「お客さん、もしかして宿をお探しですか?」

声の質から女性のドワーフだろう。

どうやら客引きらしい。

「その通りだが、どこか良い宿があるのかな?」

「うん、こっちだよ」

女の子はシフトの手を掴むと案内し始めた。

しばらく歩くと一軒の小さい家に辿り着く。

シフトもルマたちも少し怪しいと一応警戒することにした。

女の子は家を開けると元気な声で挨拶する。

「ただいま! お客さん連れてきたよ!!」

そこには女の子を少し大きくした女性がいた。

「あら、ドゥルータ、お帰り。 また客引きしてきたのかい? 夜に客引きは危ないからダメだといったでしょう」

「お母さん、だって・・・」

叱っている女性はどうやらこの娘(ドゥルータ)の母親らしい。

「えっと・・・ごめんなさいね。 この娘(ドゥルータ)が強引にあなたたちを連れてきたんでしょう?」

「いえ、僕たちも宿屋を探していたのは事実ですから。 もし泊めていただけるなら助かります」

「礼儀正しいのね。 狭いですが泊っていってください」

母親はシフトに礼をするとドゥルータも同じく礼をした。

「わかりました。 1晩頼みます」

シフトは革袋から金貨1枚を取り出し渡した。

「え? これはさすがに貰いすぎです」

「僕たちまだここについたばかりで食事がまだなんです。 夕飯と明日の朝食の分、あとは頑張ったこの娘への駄賃も含まれています」

「・・・ありがとうございます。 私はここを切り盛りしているマァリーザといいます。 何かあれば私かドゥルータに声をかけてください」

ドゥルータの母親マァリーザは深々と頭を下げる。

「お兄ちゃん、ありがとう」

ドゥルータは嬉しそうに声を上げる。

「それでは部屋の案内お願いね。 母さんは急いでこの人たちの食事を作るから」

「任せてよ♪」

マァリーザからの頼まれ事にドゥルータは少し仰け反り自分の胸を軽く叩く。

「それじゃ、こっちだよ」

ドゥルータはシフトたちが泊まる部屋に案内する。

「ここだよ♪」

1つの部屋に案内されると扉を開けた。

そこは質素で豪華とは言えないが、生活感があってシフトは好ましく思う。

ルマたちも部屋の雰囲気が良いのか落ち着いていた。

「それじゃ、ご飯ができたら呼ぶから待っててね♪」

ドゥルータは手を振ると扉を閉めてマァリーザのところに戻った。

「案外良いところだな」

「ご主人様、いくらなんでもあの娘に手を出すのはダメですよ」

「ルマ、さすがに範囲外だ」

シフトの言葉を受けてルマはベルを見る。

「ベルが範囲内なので気になりまして」

「いや、いくらなんでも節操なさすぎだろう」

「どうだか」

シフトがドゥルータに手を握られていたことにルマはご立腹だ。

ルマ自身も理性では解っているつもりでも、どうしても感情的になってしまう。

シフトはルマに近寄ると抱きしめた。

「ルマ、あまり僕を困らせないでくれ」

「あ・・・はい♡」

ルマはシフトに抱きしめられて嬉しい顔をするが、今度はベルたちが不満の声を上げる。

「ベルもギュっとして」

「わたしも抱きしめてほしいものだな」

「ルマちゃんだけじゃないよね?」

「わたくしもお願いしますわ」

「ははは・・・わかったよ」

シフトが離れようとするとルマが逃がすまいと手を後ろに回した。

「ルマ」

「いいじゃないですか・・・もう少しだけ」

「ルマ、この前も同じことした」

「そうだな、その後5分もハグされていたな」

「ルマちゃん、そろそろ離れようね」

「ルマさん、早くその拘束を解きなさい」

ベルたちの非難の声を聴いてルマは泣く泣く離れることにした。

その後、ベルたちとも1人1人ハグしていく。

最後にユールをハグしていると突然扉が開いて元気のいい声が室内に響き渡る。

「お客さん、ご飯ができましたよ・・・って、はわわ・・・ごめんなさい」

ドゥルータは抱きしめられているところを見て顔を赤らめて扉を閉める。

「ああ・・・ちょっと刺激が強かったかな?」

シフトがユールから離れると不満の声が聞こえてくる。

「え? もう終わりですか?」

ルマたちよりも少ない時間にユールは抗議するような顔をした。

「ごめんね。 待たせると悪いからあとでまたハグしてあげるから」

「もう・・・約束ですわよ」

ユールは頬を膨らませながらも少し喜んでいる。

食卓に着くとそこには人数分の食事が用意されていた。

「お待たせしてごめんなさいね」

「いえ、こちらこそ食事を用意していただいて感謝します」

シフトたちは席に着くと食事を始めた。

楽しい食事と言いたいところだが視線を感じる。

そう、ドゥルータが顔を赤らめながらシフトをじっと見ているのだ。

重い空気が漂う中、ドゥルータは意を決して問いかけた。

「あ、あのお、お二人は付き合っているのですか?」

「ん? ルマたちのことかい? 全員僕の嫁だよ」

「えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!!!!!」

ドゥルータは事実を知るとあまりのことに大声をあげてしまった。

「あらあら」

対してマァリーザは面白そうにシフトたちを見る。

「僕にとってはルマたちはかけがえのない存在だからね。 君もいつかそんな人と出会えるといいね」

「え、あ、は、はい」

ドゥルータはとりあえず曖昧な返事をした。

フリーズしたドゥルータに代わりマァリーザはシフトに話しかける。

「それにしても可愛いお嫁さんですね」

「ええ、自慢の嫁たちです」

「うふふ、そうですか」

それを聞いたルマたちも嬉しい顔をしている。

ドゥルータは放心状態なので放置して食事を再開した。

食事を終え部屋に戻るとシフトたちは早めに就寝することにした。

翌日、食事を終えたシフトたちにドゥルータが声をかけてくる。

「お客さん、今日はどうするのですか?」

「そうだね・・・観光と鍛冶職人を見て回ろうかな・・・」

ドゥルータは少し寂しそうな顔をする。

どうしたのかと尋ねるよりも早くマァリーザが答えた。

「この娘の父親、私の夫ですが昔王宮で鍛冶をしてたんです。 ですが流行り病で・・・」

「そうでしたか・・・ごめんね、嫌なことを思い出させて」

「大丈夫です。 もう昔のことなので」

ドゥルータは明るい顔で応える。

「よし、それなら君に観光をお願いしようかな」

「はい、喜んで引き受けます」

こうしてドゥルータの案内でドワーフの国を観光することになった。


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