表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/394

103.暴言

シフトは【偽装】を解いてライサンダーたちのほうへと歩き出した。

怒りの表情を隠すことなく殺気を叩きつける。

ライサンダーたちは通路から感じる気配に気付いたのかそちらを見るとシフトが悠然と向かってくる。

シフトはある程度進むと立ち止まりライサンダーたちを見た。

そこには()()いる。

最初に声を上げたのは『鉄壁』ヴォーガスだ。

「あん? 誰だ? てめぇは?!」

「ちょっとこんなところに子供がいるわよ」

「可哀想に今すぐ楽にしてあげますからね」

『賢者』リーゼがからかい、『聖女』ルースが慈悲をかけるような声を口にする。

「ふ、誰だか知らないがこんなところまで来るとは運が悪い」

「・・・」

『勇者』ライサンダーがシフトを憐れんでいると『剣聖』アーガスが突如シフトに対して接近し抜刀した。

アーガスの剣はシフトには届いていない。

いつものように【五感操作】を使ってアーガスの距離感や平衡感覚を狂わせているのだから。

「!!」

「ちょっと! アーガス!! なに人が見つけた玩具を壊そうとしているのよ」

「そうですよ。 彼は私の手でこ・・・んん、神のもとへと(いざな)うんですから」

「はぁ?! あれはあたしが目でマーキングしたんだからね!! 勝手に取らないでよ、ルース!!!」

「あなたこそ寝言は寝て言いなさい。 彼の顔を絶望に染めれば神もお喜びになりますわ」

アーガスの行動に批判しつつ、どちらがシフトを殺すか言い争うルースとリーゼ。

あまりのバカらしさにシフトは笑ってしまった。

「あははははは・・・ああ、おかしい。 折角僕がお前たちに復讐しに来たのに呑気な連中だな」

「・・・てか誰?」

「あなたなんて知らないですわよ」

示し合わせたように言葉を口にするルースとリーゼ。

「もう2年以上前だものな、忘れていて当然だろう。 僕の名前はシフトだ」

「シフト? ・・・シフト・・・シフト・・・」

「聞いたことがある名前ですわね」

ルースとリーゼはまるで知らない素振りを見せる。

そんなやりとりの最中でもアーガスは何度か攻撃するもかすりもしないことから一度距離を取り油断なくシフトを見ている。

「へっ! 名前なんて覚えなくてもいいだろ? どうせこの場で殺すんだからよ!!」

ヴォーガスが右手で殴ってくるとシフトはその拳を掌で受け止めた。

「!!」

「相変わらず暴力的だな、ヴォーガス」

シフトはヴォーガスの懐に入ると手加減して腹を殴った。

普通の人間がヴォーガスの鋼の身体を攻撃すれば拳を痛めるだろうが、今のシフトにとってはそれは薄っぺらい装甲と変わりない。

その証拠に攻撃を受けたヴォーガスはライサンダーたちのほうへ吹っ飛んでいった。

「ぐはぁ!!」

ヴォーガスは地面に叩きつけられると息を思いきり吐き出してしまった。

異様な光景に先ほどまで和やかとしていた雰囲気が一変、緊張に包まれる。

「へぇ・・・この筋肉ダルマを吹っ飛ばすなんて普通はできないのにね」

「なまじ強さを持っていて神の御使いである私たちを敵にするとは・・・なんて愚かなことでしょう」

ルースとリーゼはシフトの異常な強さに警戒心を露わにした。

そこにヴォーガスが立ち上がり咆える。

「て、てめぇ!! よくもやってくれたな!!!」

ヴォーガスは怒りに身を任せ再び拳で攻撃してきた。

シフトもその拳に対して拳で攻撃する。

両者の拳と拳がぶつかり合う。

結果はヴォーガスの拳と骨に罅が入り切り裂かれ皮膚からは血が噴出した。

「!! うがあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!!!」

ヴォーガスはあまりの激痛に痛めた拳を反対側の手で押さえるとその場で狂ったように上半身を動かす。

シフトはヴォーガスの足を転ばせるとルースに向かって蹴り飛ばした。

ルースは突然のことに対処できずヴォーガスの身体を諸に受けた。

「がはぁ!!」

「きゃっ!!」

「この!! 調子に乗ってじゃないわよ!!!」

リーゼがシフトに対して【火魔法】で火球を放った。

しかしその火球はシフトに着弾する前に通路から放たれた【風魔法】によりかき消された。

「ちっ!! 誰よ!! あたしの邪魔をするのは!!!」

リーゼの声に現れたのはルマたちだった。

「私のご主人様に手を出すとはいい度胸ですね」

「ん? って、あんたまさかルマ?!」

「あら、私のことを覚えていたの? リーゼ」

「忘れるわけないじゃん♪ あんたを嵌めて今の地位を手に入れたんだから♪ あたしの邪魔をするなんてあの時ちゃんと焼死させとけばよかったわ」

「そう、あれはやっぱりあなただったのね、リーゼ」

「今度は全身火傷ではなく骨までも燃やし尽くしてあげる♪」

「できるものならやってみなさいよ」

ルマとリーゼが言い争っていると復活したヴォーガスとアーガスが割り込んできた。

「おいおい、殺すんじゃねぇぞ。 あの女はあのガキの目の前で犯すんだからよ」

「ヴォーガス、貴様には過ぎた代物よ。 あの女は某の物だ」

「あん?! 俺に喧嘩売ってるのか? アーガスよ!!」

「某が味わった後ならくれてやる」

ヴォーガスとアーガスがいがみ合っているとルースがユールに声をかける。

「あら、ユール。 あなた意識があるの?」

「! わたくしの意識を刈り取ったのはあなたなのね、ルース」

「ええ、そうよ。 あなたは煩わしかったので私特性の薬物で『聖女』候補を降りてもらったわ」

「なら、この恨みはあなたに返させていただきますわ」

「あなたにできるかしら? いいとこのお嬢様」

「ええ、できましてよ。 あなたみたいな外道なら特にね」

ユールとルースも因縁めいたやり取りをしている。

「おい、ルース! 壊すんじゃねぇぞ。 俺の楽しみを奪うなよ」

「ヴォーガスが先でも同じこと。 お主の後は反応がなくてつまらぬからな」

「へ、それは女共がひ弱すぎるんだよ」

その会話を聞いていたローザとフェイがイラっときた。

「あいつら女を何だと思っているんだ」

「奇遇だね、ローザちゃん。 ぼくもカチンときたよ」

それだけ言うとローザは剣を抜刀し、フェイは拳と拳をぶつけ合う。

「あん? こんなメスガキ犯しても全然面白くないんだけどな」

「左様、あちらの豊胸の娘たちならともかくこんなまな板娘たちを相手では萎えるな」

ヴォーガスとアーガスのやり取りを聞いたローザとフェイは能面のような表情になった。

「ご主人様の獲物だけど、こいつらぶっ殺していいよね?」

「本当はダメだけどいいんじゃないか?」

ローザがアーガスと、フェイがヴォーガスに対峙する。

こうなってしまってはルマたちを止められないと悟ったシフトは好きにさせることにした。

それで死ぬなら止む無しと諦めている。

「それで君が俺の相手をするのかい?」

「本来であればお前たち全員を相手にする予定だったんだけどな」

「俺たち全員を相手にするだと? さっきのヴォーガスとアーガスを相手に優勢を決め込んでいたようだが俺はあの2人とは違うぞ」

「知っているさ。 お前たちの強さをな」

「お前の女を全員置いていけ。 そうすれば命だけは助けてやる」

「断る。 僕のこの手でお前たちを殺す」

シフトとライサンダーが舌戦するが、お互いに譲る気配がない。

「ゆ、勇者様。 ぼ、ぼくはどうすればいいのですか?」

「とりあえず、そこの女を相手していろ。 そのくらいならお前にもできるだろう?」

「は、はい。 が、頑張ります」

ライサンダーが命令すると少年は武器をベルに向けた。

「ベル、悪いがあの少年を頼む」

「うん」

「あと僕の近くにいないほうがいい。 巻き添えを食らう可能性があるから」

ベルは頷くと少年に意識を向ける。

かくして対戦カードが決まった。

シフトVs『勇者』ライサンダー。

ルマVs『賢者』リーゼ。

ベルVs謎の少年。

ローザVs『剣聖』アーガス。

フェイVs『鉄壁』ヴォーガス。

ユールVs『聖女』ルース。

これを制したものが相手を屈服させられる。

その場にいる者たちがお互いをにらみ合う。

そして戦いの火蓋が切られた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幻世の作品一覧

【完結済】

スキル【ずらす】で無双する
全 394 エピソード  1 ~ 100 エピソード  101 ~ 200 エピソード  201 ~ 300 エピソード  301 ~ 394 エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【連載中】

追放された公爵子息の悠々自適な生活 ~スキル【現状維持】でまったりスローライフを送ります~
1 ~ 100 エピソード  101 ~ エピソード
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕


【短編】

怪獣が異世界転生!! ~敗北者をナメるなよ!! 勇者も魔王もドラゴンもみんな潰して異世界崩壊!!!~
ジャンル:パニック〔SF〕 ※異世界転生

「お前をパーティーから追放する」と言われたので了承したら、リーダーから人脈が芋蔓式に離れていくのだが・・・
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

潔癖症の私が死んで異世界転生したら ~無理です! こんな不衛生な場所で生きていくなんて私にはできません!!~
ジャンル:ヒューマンドラマ〔文芸〕 ※異世界転生

王太子殿下から婚約破棄された上に悪役令嬢扱いされた公爵令嬢はクーデターを起こすことにしました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

敗北した女勇者は魔王に翻弄される ~くっ、殺せ! こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!!~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

目の前で王太子殿下が侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すイベントが発生しました ~婚約破棄の原因は聖女であるわたし?!~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

パーティーから追放された俺に待ち受けていたのは勧誘の嵐だった ~戻ってこいといわれてもギルドの規定で無理だ、あきらめろ~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

君が18歳になったら
ジャンル:現実世界〔恋愛〕

追放した者たちは依存症だった件
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

高給取りと言われた受付嬢たちは新任のギルドマスターによって解雇されました ~新しく導入した魔道具が不具合を起こして対応できなくなったので戻ってこいと言われましたがお断りします~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

ダンジョン奥深くで追放された荷物持ちは隠し持っていた脱出アイテムを使って外に出ます ~追放した者たちは外に出ようとするも、未だにダンジョン内を彷徨い続けていた~
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕

王立学園の卒業パーティーで王太子殿下から改めて婚約宣言される悪役令嬢 ~王太子殿下から婚約破棄されたい公爵令嬢VS王太子殿下と結婚したくない男爵令嬢~
ジャンル:異世界〔恋愛〕 ※異世界転生

婚約破棄された公爵令嬢は遠国の皇太子から求婚されたので受けることにしました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

異世界にきて魔女としてエンジョイしたいのに王子殿下を助けたことで聖女に祭り上げられました
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転生

隣国の夜会で第一皇女は初対面の王太子殿下から婚約者と間違えられて婚約破棄を言い渡されました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

追放された聖女は遠国でその国の聖女と間違えられてお帰りなさいと温かく歓迎された
ジャンル:異世界〔恋愛〕

聖女として召喚されたのは殺し屋でした
ジャンル:ハイファンタジー〔ファンタジー〕 ※異世界転移

異世界から召喚された聖女?
ジャンル:異世界〔恋愛〕

この家にわたくしの居場所はないわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

闇の聖女は砂漠の国に売られました
ジャンル:異世界〔恋愛〕

「君を愛することはない」と言いますが、そもそも政略結婚に愛なんて不要ですわ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

婚約破棄? それならとっくの昔に言い渡されておりますわよ
ジャンル:異世界〔恋愛〕

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ