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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
6/21

孤児院偵察での一騒動 其の三 

「お話が、ありますわ」

 そう言ってリリアンヌは、セシルとブレッド、ジークとバルバラを連れ馬車の中に乗り込んだ。大事な話のため、御者には降りてもらい、馬車の椅子に全員が座ったことを確認し、口を開く。

「ジークさん、貴方、魔力過多症ですわね?」

 単刀直入。ブレッドとバルバラが目を見開く。

「え……⁉リリアンヌさま、それって、あの……⁉」

 ブレッドが聞く。バルバラは、驚きすぎるのと自分の息子がまさか、という感情がごっちゃまぜになっている様子で、何も言えないようだ。領主たるリリアンヌのいう言葉は、一平民である彼女にとっては重いのであろう。

「その様子だと、バルバラさんはジークさんが魔力過多症だということをご存知なかったみたいですね……。えぇ、その魔力過多症ですわ、ブレッド。セシル、貴女は気づいていたのよね?」

「はい。恐らくリリアンヌさまが気付くのと同じぐらいのときに」

 嘘だろ、と言いかけたのを、リリアンヌはギリギリで回避した。

 セシルの魔力量は、己の四分の一——多くても三分の一だろう。それ程感知は遅くなるはずだ。

(経験⁉経験なんですの⁉)

 と、リリアンヌは胸中で悲鳴を上げる。彼女は、あの元・クソ兄貴——もとい王太子の倍以上の魔力を母である王妃から受け継いでいた。

 王妃・マリアベル・ティメイア――旧姓マリアベル・アーゲルの実家は、魔術に長けた一族だ。

 そのような一族は国内に複数在る。中には、魔術で武勲をたて、爵位を賜った者もいる。

 だが、アーゲル家は、建国時から存在していた由緒正しき侯爵家。成り上がりとは違うのだ。

 魔力が多い上に魔術に長け、しかも侯爵家という身分もあり、マリアベルは王に嫁いだ。そして、王太子と魔力がとても多い王女・リリアンヌを産んだ……というわけだ。ちなみに、王太子の方も魔力はまぁまぁ多いが、アーゲルの息子・娘と比べると多くないらしい。ちょっと普通の貴族より多いかな、的なイメージである。

 ゆえに。魔力感知も彼女はとても早い。だが、セシルもとても早かった……嘘をついていなければ。だが、この真面目な補佐官が嘘を吐くとは思えない。経験か。それとも得意なだけか。リリアンヌが悩んでいると。

「両方です」

「まだ何も言ってませんわっ!」

「顔に出ていました」

「え……わたくしってそんな分かりやすいんですのっ?って。今はそんな場合じゃないですわっ!」

 リリアンヌは、脱線した話を元に戻した。

「ジークさん、貴方は気づいていたのでしょう?」

「……」

 ジークは、スッ――と目を伏せた。そして、ゆっくりと語りだした。


 俺、ジークは、生まれたときから魔力が異常に高かった。そして、俺の周りに漂う暗雲は、属性を意味していた。

 ある日。七歳ぐらいのときだったと思う。遠方から商人が来たと聞き、興味をもって見に行ったのが、俺の人生の分岐点だった。

 その商人は、金には目敏かったが、優しい人間だったと思う。そして、俺にこう言った。

『お前は、闇属性の魔力過多症だ』

 と。その商人は、魔力過多症のことも教えてくれたが、俺にとって重要なことは『闇魔法』の方だった。

 闇魔法は、とても珍しい属性で、見つかればすぐに王都に行くことになる。

 現代では魔力過多症より珍しいそうで、贅沢な暮らしができるらしいが、一生城の中に幽閉され、実験台モルモットにされることがあると言っていた。それは平民に限って、だ。

 それはそうだ、と俺は思った。

 闇魔法は、『幸運を呼ぶ』とされ、『神の加護』を持つものしか操れないとされる光魔法と対になっている。『災いを呼ぶ』と呼ばれる闇魔法は、ただでさえ忌避されるのだ。

 しかも俺は魔力過多症。贅沢な暮らしは孤児院をやっている父さんと母さんに申し訳ないし、まず親元を離れるのもいやだ。実験台モルモットになること確定だろうし。

 だから、隠した。父さんたちを困らせる事承知の上で。あの商人は、俺が話を聞いた次の日に消えた。どこかに行ったのだろう。

 やけに護衛が多かったが、何者だったのだろうか。お貴族様のお忍びだろうか。いや、ありえないだろう。こんな寂れた土地に、普段贅沢をしているお貴族様が来るわけない。


 だから、忘れていた。商人のことも。闇魔法のことも。日常生活の中では、ほとんどかかわりないことだったから。貧しい生活の中でも、俺はクレーレで孤児のチビたちと過ごす日々が幸せだった。


 それは、俺が森の魔獣たちを一人で狩りに行っていたことだった。

 後から来た友人から、元・王女の領主がここに来ると聞いた。

 王族は、大きな魔力を持っていると聞いていた。そして、その長女が「悪魔」と呼ばれていることも。

 まずいのでは、と思った。そんな傲慢そうな王女だった領主が来たら、母さんが対応できないのではないか。そして、何か粗相をしてしまい、潰されてしまうのではないか。

 俺の魔力のことなんてどうでもよかった。孤児院を、守りたかった。


 だけど。領主様——リリアンヌさまはうわさに聞いたような人柄ではなかった。外でしか見なかったが、優しそうな人柄だった。母さんを気遣うようなしぐさが時折見られた。

 だけど。俺は、感じていた。あの人から漂う、魔力を。それは、とても神々しくって。俺のような禍々しい魔力とは違った。

 だからこそ、恐怖を感じた。そして、怯えていた。あの人は、俺を王家に渡すつもりがあるのかないのかわからないから。

 話がある、と言われたとき、俺はあぁ、詰んだな、と思った。


「そ、それって――」

 話を聞き終わったリリアンヌは、ジークの方と未だ何も言えないバルバラの方を見、

「ほとんどわたくしのせいですのっ⁉」

「いや、違います」

 と叫び、ジークが素早く突っ込みを入れる。

「俺を産んだ父さんのせいでも、母さんのせいでも、あの商人のせいでも、リリアンヌさま――領主さまのせいでもありません。誰のせいでもありません。強いて言うなら、非力な俺のせいですから」

 話を詰め込みすぎて頭が爆発した(物理的にではなく)リリアンヌを置いて、ジークはそう呟く。その目は、リリアンヌと同い年とは思えない芯の強さが感じられた。

 すぅっ、と落ち着いたリリアンヌに対し、漸く話に追いついたバルバラがこう聞く。

「ジークを、王家に引き渡すのですか……?領主様」

 リリアンヌには、覚悟があった。王家に引き渡さなければ、苦情が入るだろう。もしかしたら、即・国外追放かもしれない。

 領主として、民の幸せを守るという責務を全うするか、それとも容赦なくジークを引き渡すか。

 後者であればクレーレの待遇がよくなるだろう。己の評価も、貴族限定であれば上がる。

 反面、平民からの支持は、漸く上がってきたのに爆下がりする。セシルとブレッドからも軽蔑されるだろう。リリアンヌは、信頼できる部下を失い、ひとりでクレーレを復興させなければならないのだ。

 前者であれば。前者であればクレーレの評判は下がる。それだけ、もしくは王家から完全に見放されるかもしれない。平民や一部成り上がり貴族、セシルたちの間の評判は良くなるだろうが。

(わたくしは……利益だけを、求める貪欲な貴族ではありませんわ)

 リリアンヌは、故人である母から教えられた。良き貴族に、そして王族になるためには利益や評判だけを求めていればいいものではないのだ、と。

 リリアンヌは、それを実行してきた。まぁ、あのクソ伯爵令嬢は例外だが。ティメイア王国の民は、たとえ戦に敗れ、奴隷へ堕ちた兵であっても、最下層の貧民であっても彼女にとっては皆平等に慈しむべき民なのだ。

 ゆえに、だ。ジークは、そしてバルバラたちは己の行使できる権力全てを使ってでも守るべき対象。

 だが、自分が罰せられては元も子もない。それではクレーレの民を守ることができない。だから。彼女の浅はか?な頭で最終的に思い浮かんだ国外追放と紙一重な全てを守る方法は。


「ジークさんの情報を王家に提供し、魔力を餌に領主館で保護させていただきますわ」

 ご読了有り難うございました!次回もよろしくお願いします!(^^)!

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