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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
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孤児院偵察での一騒動 其の二

 すみません……!リリアンヌが何歳なのか書き忘れていました……!

 リリアンヌは、左遷されたとき、十四になっていました。約一年、城で粘っていました。

黒曜石のような色の髪と瞳をした、バルバラによく似た美形の少年。身なりもしっかりとしており、この貧困した孤児院には不釣り合いだ。彼は、憂い顔で孤児院の壁に寄りかかっていた。

「あら、ジーク!来ていたの?」

 リリアンヌの前で腰を折って礼を言っていたバルバラが、その紫の瞳で彼の姿を捉えると、笑顔になる。

 誰か、と思ってここを事前に調査したブレッドに視線で聞くと、バルバラの息子だと教えてくれた。

(彼は……バルバラさんの息子……?)

 リリアンヌは、人の家族関係には首を突っ込まない人間である。だって、その家族だけにしかわからないことだってあるだろうから。第三者は、求められた時だけ発言すればいい、むしろそっちの方が穏便に済むのでは?と、リリアンヌは常々思っているのである。

 だが。今度ばかりは状況が違った。彼——ジークは、魔力が桁違いだ。

 ブレッド曰く、バルバラの夫・ルークは平民ながらに魔力が少しだけあったらしい。バルバラも同様だ。

 だが。少しだけなら、ここまで魔力の高い子が生まれるはずがない。

 そうすると考えられるのは。

(魔力過多症、ですわね……)


 遠い昔。神々は、この世を建築した。そして、一番大きい、年中雪が降る北の大陸を豊穣の神、ベルズィーアに、小さいながらも豊かに資源を持つ中心の大陸を創造の神リーシュタルクに、そして、南のほとんど雪が降らず、緑があまり無い大陸を、緑樹の女神フローリアに治めさせた。三人の神たちは己が能力を発揮し、それぞれの大陸を最高神の理想に沿って変えた。

 だが、何か物足りない。

 そうだ。神々以外に見る者がいないのだ、この大陸を。

 そう思った三人の神たちは協力し、神に似ながらも、似つかない者たちを創造した。それが——人間である。

 だが、そこで神たちに予想外のことが起こった。それは、『魔力を持った』人間が生まれたことで

ある。

 魔力は、神の所有物。神々が創造するための資材のようなものである。

 魔力を持った人間たちは、神々が人間を作ったときに漏れた魔力が体内に宿ったのだ。それしか、神々は思わなかった。その程度の人間が神々に対し一揆を行っても、取るに足らない。それが、事実であり、紛れもない真実であった。

 だが。そこでも誤算が起きる。それが、『魔力過多症』を起こした魔力持ちの人間。

 彼らは、魔力を持った人間同士に魔力を持った人間が生まれ、それが『魔力過多症』の原因という訳でなく、魔力を持った者同士、魔力をどちらか片方が持った者と魔力を持っていない者同士、魔力を全く持っていない者同士と、起こる原因は法則がない。つまり、防ぐ方法がないのだ。

 これは神々も焦った。せっかく作った世界が彼らによって破壊され、己たちに襲い掛かってきては危険だからだ。魔力過多症の人間は、かなりの魔力量を持っている。あれが一気に来ては、相手が出来ない。最悪、自分たちが滅亡する。その前に世界が滅びるが。

 だから。魔力過多症の人間の多くを神々は殺した。事故に見せかけたり、腹を空かせる獣に襲わせたり。常人では老人であっても寿命とは思われなかった。魔力が高い人間は、寿命が永いから。数百年は軽く生きる。

 ゆえに。今現在生きている『魔力過多症』の人間はほとんどいない。ほとんどが殺されたからである。


 リリアンヌは、『魔力過多症』のことを頭に思い浮かべ、ジークを見る。

 リリアンヌは、魔力持ちである。『魔力過多症』に匹敵するほどの魔力を持っているのだ。魔力持ちは魔力持ちにしかわからないため、後ろにいるブレッドは分からないだろう。セシルは『氷』の魔力を持っているらしい。実際、魔力が彼女の周りにふよふよと漂っている。それと同様に、ジークの周りにはセシルよりいくらか強い魔力が漂っている……というか、どす黒い靄のようなものが雲のように彼を囲っている。恐ろしい、と人によっては思うだろう。リリアンヌは全く感じないが。

 ジークは、ようやくリリアンヌに気付いたらしい。バルバラのもとに寄っていき、口を開いた。

「こんにちは、このような孤児院に来ていただき光栄です」

「えぇ、わたくしも、いい勉強になりましたわ」

 ニコリ、と笑い、ジークを観察する。

(薄っぺらい笑みですわね……気付いておりますわよ。貴方も恐らくわたくしの周りのふよふよが見えるでしょうに……あえて気付いていないふりをしているのでしょうか……)

 おそらく、バルバラはジークが魔力過多症だということに気付いていない。少し自分たちより多いかな、ぐらいである。

 だが、ジークは自分と同じ十四だと。ブレッドは言っていた。そんなに長い間、自分が魔力過多症だと親に言っていなかったのだろう。

 強い魔力持ちは、国から優遇される。何故なら、国を守ることができるから。なので、魔力過多症だと判明したら、すぐ王宮行きである。

 だが、逆を言えば親元を離れなければならないのだ。それは、十代の子供にとって、辛いことだろう。いくら贅沢が出来るにしろ、ホームシックになる。

 だけど。リリアンヌの立場は、『領主』。魔力過多症の人間が発見されたら、速やかに王家に報告しなければならない。

(王女の身分であったら、ジークさんを、そしてバルバラさんとルークさんを守れましたのに……)

 王女の身分であったら。監視という形で庇うことができた。

 自分は、家族を亡くした悲しみを知っている。だから、ジークを守りたい。この家族は、絆が強いだろうから。

 今の身分では庇えない。だが、助けたい。かといって、報告しないわけにはいかない。

 なら。領主になり下がった小娘にできる最大限のあがきとしたら。

「ジークさん、バルバラさん」

「?何でしょう、領主様」

 ジークが、薄っぺらい笑みのままリリアンヌの呼びかけに答える。だが、その目は怯えたような瞳をしていた。


(セシル、ブレッド、面倒事を運んですみませんわ……けど)


 ——これは、自分にできる最大限のあがきであり、この家族に対する慈悲であり、提案でもある。


「お話が、ございますわ」


 後日。これを王城で報告されたある者は。

「ほぅ……我が愚娘ながら、やるではないか」

 と。独り言ちたのであった。

 ちなみに、バルバラは黒い髪に紫の瞳をしたなかなかの美形です。

 ご読了、有り難うございました!(__)

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