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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
4/21

孤児院偵察での一騒動 其の1

 短めです。

 リリアンヌは、国外追放回避のための第一歩、「孤児院偵察」をするため、セシルとブレッドを連れ、孤児院のある領主館から一番近い町、ベイエラにやってきた。

「ふむ……ここに来る途中もあまり外観がいいとは言えませんでしたが……ここもまぁまぁひどいですわね……」

「えぇ。実はここはあまり戦の影響を受けなかった場所でして……ここより南は、もっとひどいですよ。貧民がたくさんいます」

 クレーレは、ティメイア王国の最南端にあり、そのティメイアは温暖な気候が特徴的だ。故に、クレーレはバカンス地として近隣諸国の人気の的となっていた。

 だが、その有名なバカンス地……トールクというのだが、そこは最も先の戦の影響を受けたのだ。それが、先ほどセシルが言った、『もっとひどい』場所である。その周辺も、トールクには及ばないが、なかなかひどい。

(なるほど……陛下はわたくしに、それをどうにかしろとおっしゃりたいのね。それだけではないと思いますが……)

 残り十一ケ月と一週間六日……つまり、三百三十八日しかリリアンヌに残された時間はない。貧民たちを助け、尚且つクレーレ領地の経済活動を安定させるのは、難しいのだ。

(まぁ、弱音吐いても仕方ないですわね。あの無茶苦茶を達成できないのも癪に障りますし……ふふふっ、とっておきのざまぁをあの王太子たちとあの女にくらわせてやりますわっ!)


「こんな僻地にお越しいただきありがとうございます、領主様。ベイエラ孤児院へようこそ」

 ベイエラ孤児院に着くと、四十代ぐらいの女性——恐らくは院長が、出迎えてくれた。その目は穏やかに笑っているが、彼女もリリアンヌのことを警戒しているのだろう。

「えぇ、こちらこそ出迎え感謝いたしますわ。早速ですけど、中を見てもよろしくて?」

 リリアンヌは、完璧な答えを出した。院長の顔は、驚きに染まっていた。


 さて、孤児院の説明をさせていただこう。

 孤児院は、「卑しい」といわれ、選民意識が強い貴族たち、さらには平民にまで及ぶ差別された捨てられた子供たちのための施設である。彼らを育てる施設の職員は、王家から支給される金、つまりは税金で彼らを育てる。最近は、孤児を育てると偽って王家から金を貰う詐欺師もおり、問題視されていた。

 何故、ここまでに孤児を卑下するのか。それは、税金が使われるからではない。

 孤児院で育った子供たちは、なかなかいい仕事に就けない。教育が受けられていないからだ。すると、犯罪を起こすようになったり、娼婦や墓掘りなどになったりし、これらは平民たちでも卑下する。そして、貴族は差別意識が強い。平民でも卑下する彼らは、孤児なんてもっとである。そして、子供が孤児になることはとても多い。たくさんの子供がいる場合は、養えないからである。ゆえに、子供は捨てられる。これが繰り返され……。悪循環なのだ。

 これを考えれば、院長が驚いた理由がわかるだろう。リリアンヌは、元・王女の領主。貴族である。孤児を忌み嫌ってもおかしくない。

 だが。リリアンヌは、昔から選民意識がない。彼女の恨みの対象は、例の女とハーレム共だけなのである!ゆえに、貴族の令嬢子息だろうが平民だろうが孤児であろうが罪人……はないが、皆彼女の前では慈しむべき大切な民。それを彼女は今は亡き母から教えられたのだ。

 まぁあのクソ王太子共には選民意識があったようだが……。とりあえず、リリアンヌには「差別」ということの意味がわからないのだ。嘆かわしい。

 

 と、考えながらリリアンヌは孤児院の中をてくてく、と歩いて行く。その後ろを、やや警戒した院長、セシル、ブレッドが付いていく。

(ふむ……院長……バルバラさんの警戒は少し下がりましたか……)

 院長は、バルバラと名乗った。やはり、警戒されているようだが、あまり気にするほどではない。

(まぁ、王都では殺気を向けられていましたから……)

 あれは……すごかった。今思い出しても、遠い目になる。出会う貴族、女官や近衛騎士、侍女やコック、侍従に兵士、しまいには下女や下男にも殺気を向けられるのである。お前ら解雇してくれようか、といいかけたのを何度我慢したことだろうか。自分は常識の範囲内のことをしていた。最初のあれは少しやりすぎたが、飲み物をかけたり、服を裂いたりはさすがにしなかった。賊を送り込んだりもしなかったのだ。殺気を向けられるほど、嫌がらせはしなかったはず、だと思う。

 いや、したかもしれないが、とりあえず言いたいのは、ここの人たちはリリアンヌにとって、優しい人間であるということだ。命の危険を感じるのは、国外追放だけだろう。王都に居た頃は、毎日びくびくしていたのだから。


 孤児院を偵察して、このクレーレ領のことをだいぶ知った。

 まず、子供たちの栄養が足りない。王都の孤児だって、平民の子供よりちょっと痩せてるな、ぐらいの感じだが、ここの孤児たちはガリガリである。

「孤児たちを支援して、もう少し栄養を摂ってもらわないといけませんわね、セシル」

「はい。予算の中でやりくりします。あとは……」

 次に。子供たちに教育と生活に適切な環境を与えねばならない。

 孤児院の中は、不潔だった。恐らく、金がないのだ。金がなければ生活に必要な環境も、教育も受けさせられない。

「セシル、そちらも頼むわ。わたくしも王都に掛け合ってみるから」

「かしこまりました」


 孤児院から出たときは、お昼前だった。今から帰れば、お昼には間に合うだろう。

「では、今日はありがとうございました。とても有意義な時間でしたわ」

「こちらこそ……支援の約束も頂いて、感謝しております」

 バルバラの警戒心もほぼとけたようだ。安心である。

「では、後程領主館から使者を送り、支援を行いますわ。それではわたくしたちは失礼いたしますわ――ん?」

 今日は国外追放回避のためにとても有意義な時間であった。だから帰ろう、帰って一度整理しよう、と思ったのだが――。

 孤児院の壁に寄りかかった少年を見つけ、リリアンヌは立ち止まる。


 その少年を見つけることが。


 後にリリアンヌの運命を大きく左右することになったのであった。

 読んでいただき、有り難うございました。ちなみにリリアンヌはピュアです。

 これからもよろしくお願いいたします。(^-^)

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