悪逆王女、左遷される
改稿しました。
リリアンヌは、左遷された。だが、反感の声もあった。何故なら、「王女」という役職から「領主」という役職に降りただけだったから。
国外追放が妥当!という声も上がったのだが、リーナが反対した。お陰でリーナの株が上がった。ついでにリリアンヌの株が下がった。
だが、後にこの罰が妥当だったということを国民たちは知る。何故なら、彼女が領主になった土地は……「クレーレ領」だったから。
クレーレ領は、クレーレ伯爵が治めていた、小さな領地なのだが、とても栄えていた。王都の次に賑やかな場所で、浜辺もあり、観光地としても知られていた。——昔は。
今現在、クレーレは昔の栄華が嘘だったように寂れ、もう見る影もない荒れた土地となってしまった。治安も悪く、昔はよく来ていた貴族もたちも、もう来ていない。その理由は、隣国・センティーガにある。
彼の国の先王は、戦好きだった。いわゆる戦闘狂である。そして、先王はティメイアを略奪する手始めとしてクレーレに戦を仕掛けたのである。それが理由でクレーレ伯爵家は葬られ、領地は寂れた。今現在は王家の所有物となっており、ちょうどいいからリリアンヌに任せよっか、という話になったわけだ。
だが、これにはティメイア現・王のある思惑もあったわけだが……それを貴族や国民、そして王太子たちまでも知る由もなかった。
リリアンヌが王都を発ったのは早朝だった。まだ民たちも起きていない時間帯を選んだのは、彼女のプライドを守るためである。さすがにそれぐらいの情は王家側も持ち合わせていた。
だが、クレーレに着いたのは昼過ぎ。なるべく休憩も挟まず、馬車で進んだのだが、クレーレは王都から遠い。それに、もっと早く到着しても歓迎されないだろうし。
——リリアンヌだって、この仕打ちには抵抗があった。だが、リーナの影響力はすごくて。最初は彼女に対して負の感情を持っていた高位貴族の令嬢たちだって、十日も経ったら味方になってしまった。いまだ敵対感情を持っているのは城内では一割にも満たないだろう。言うならば0.3割……言うならば、だが。リリアンヌは、決してバカではないので。
リリアンヌは、そういう者たちの筆頭として左遷されたのだ。だが、自分がいなくなったらリーナに敵対感情を抱いている者達もリーナ側に引きずり込まれてしまうかもしれない。
(もしもクレーレがリーナを信奉しているような地だったら……わたくし、本当に生きていけないわ)
クレーレ領地に着くと、眼鏡をかけた二十代ぐらいの水色の髪の女性が迎えてくれた。彼女は、セシルと名乗り、真面目な雰囲気を漂わせていた。領主補佐を務めるらしい。
(ふむ……。なんか、どこぞの王太子の側近であの忌々しい女狐のハーレムの一人を連想させますわね……彼女に罪はありませんが)
そう心の中で呟き、例の王太子の取り巻……もとい側近の侯爵子息を思い出す。
「こんなこと言ったら奴が悪寒でも感じているかもしれませんわね……」
「?何かおっしゃいましたか?今の説明で、分からない点でも?」
そうぼそりと呟いたが、領主の仕事を説明していたセシルにも聞こえていたようで、そう聞かれた。だが、リリアンヌは全然対応できた。聞き流しているのではなかったのだ。ただ。
「あ、そういえば、この点は……」
……良くも悪くも、リリアンヌは一つのことを考えながらもう一つのことを並行して考えられるのである。
セシルは、リリアンヌに対してあのハーレム共……ではなく、城の者達のような嫌悪感を持っていなかった。屋敷の者達も嫌悪感こそ抱いていなかったが、「王女が何故この土地に?」と、疑問には思っているようであった。
城での生活は、地獄だった。
リーナを信奉し、己を敵とみなす貴族共がうじゃうじゃいたのだ。
(フフフ……わたくし、あいつらにいつか復讐食らわせてやりますわ!)
リリアンヌは、持ち前のポジティブさでここに来る間そう決めていた。
いつか自分を貶めた奴らに復讐してやろうと。そして、それまでの間このクレーレ領での生活を満喫してやろうと。
なので。
「これだけは、あいつらに感謝してやりますわっ!」
だが。
「な……何ですのぉっ⁉これは!」
近い未来、リリアンヌはその感謝を撤回することになるのを、まだ知らない。




