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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
18/21

悪逆王女と断罪の場

 更新遅れて申し訳ありません。

 一ヶ月に4~8の更新となると思います。

(な、何故こんなことに……)


 リリアンヌ・クレア・ティメイアは、王宮にいた。

 もう一度言う。王宮である。

 その場には、リリアンヌを除き、あと二人の人間が居り、言わずもがな、敵意を向けている。


「リリアンヌ。もう一度聞くぞ?何故、何もしていないリーナに、攻撃した?」


「リリアンヌちゃん……ひどいわ!私、何もしていないじゃない。何もしていない人に、危害を加えるなんて……」


 王太子、レオンハルトと、聖女リーナに問い詰められ、リリアンヌは盛大な溜息をついた。

 

「一分前のことを、すっきりさっぱり忘れている、その頭……うらやましいですわ。

 もう一度、言わせていただきます。

 わたくしは、リーナ・メーデル子爵令嬢(・・・・)に、先に攻撃されました。

 わたくしや、わたくしの護衛、補佐官は、領地の防衛と、民や自分たちの身を護るために、魔法を使っただけです。

 それが悪いのですか?法律では、正当防衛になるはずです。

 もう一度、十一歳の勉強をやり直しては?」


 かなり失礼なことを言っているが、正論である。

 リリアンヌは、王族としては失敗作となった、レオンハルトの代わりに、かなり厳しめな、教育を受けさせられた。

 そのため、貧民街偵察のときなど、慣れぬことには、あまり頭が回らないが、このような、責任を問い詰められるときや、貴族同士の張り合い・足の引っ張り合いなどには、公正に判断が可能だ。

 

「それに、貴方がたは、最近、かなり羽目を外しすぎなのでは?

 いい噂を聞かなくてよ」


 冷えた目で問うリリアンヌの目は、以前の、兄を慕うものではなく――王族として、あるべき姿のようであった。


✫ ✫ ✫


 ティメイア国王、ハインリヒ・クレア・ティメイアは、愚かな息子であり、王太子がしでかしたことに、頭痛を覚えた。


「よもや私が呼び出されることになるとは……」


 ハインリヒは、優れた名君である。

 そのため、人を見る目がある。

 彼からみた、レオンハルトといえば――愚か、の一言だ。

 昔はあのような愚息ではなかった。

 顔が他より良い、普通の王子だった。

 そのため、毎日努力を欠かさず、懸命に、足をすくわれないように努力していた。

 それを補助していたのは――第一王女、リリアンヌだ。

 ハインリヒの最愛の妻、マリアベルに瓜二つの、昔から溺愛していた娘。

 彼女が物心ついた時から、政務が忙しくなり、あまり可愛がってやれなくなったが、毎日、教育係から報告を聞き、成長を喜んだものだ。

 やがて成人が近づき、対応が難しくなったが、それでも聡く、美しい娘になったことに、彼は喜んでいた。

 リリアンヌが暴走した理由も、ハインリヒにはわかっている。

 それを承知したうえで、彼は、クレーレに彼女を送った。

 彼女なら、クレーレ領を救えると信じて。そして、期間内に、任務を果たすことができると確信して。


 だが、レオンハルト及びリーナが騒ぎを起こした。

 あの二人は、もう放っておけない。周りの側近たちも同様だ。

 反面、リリアンヌや、その側近たち、そしてテネレス公爵家には、褒美を与えねばなるまい。

 既に算段はついている。

 ハインリヒは、目下の悩みを解決するために、渦中の人物たちをよびだした。


✫ ✫ ✫


「失礼いたします」


 火花を散らす三人の間に、一人の文官が部屋の中へ入ってきた。

 テネレス公爵家長男、ハルバード・テネレス。

 リリアンヌが信頼する、数少ない人間の一人である。


「陛下がお呼びです。リリアンヌ・クレア・ティメイア様、レオンハルト・クレア・ティメイア様、リーナ・メーデル子爵令嬢、そして、側近の方々……全員を招集されました」


「それは、わたくしの側近たちもですか?」


「はい。セシル殿、カイル殿、ジーク殿、ブレッド殿。一人は残っていただいてもよろしい、とのことです。何かあったとき、対応できなければまずいので」


「わかりました。ですが、わたくしの側近たちは、全員いなければだめだと思います。その内二人は、恐らく陛下のご用に関することだと思いますので」


「かしこまりました。そのようにお伝えいたします」


 ハルバードが退室すると、リリアンヌは真剣な顔になる。


(さてと……ここからが、本番ですわね……)


✫ ✫ ✫


 国王執務室。それは、本来、王族といえど、有事の際や、国王代理として政務を行う時にしか入れない、厳重な場所である。

 そこに、王族一名、聖女一名、そして領主一名、その他側近たちが集められた。


 そこには、ハインリヒ、ハルバード、そしてテネレス公爵、レイラ・テネレス、ユーリ・テネレスの姿。

 全員が冷たい目を向けていた――レオンハルトや、側近たち、リーナに対して。

 リリアンヌたちと言えば、高位貴族ばかりが集められているこの中で、微動だにしない。

 それは、委縮している、というよりは、貴族が全く怖くない、といった方があっている。


「単刀直入に聞く、レオンハルト、リーナ・メーデル。

 何故、リリアンヌに魔法をかけた?そして、何が目的だった?」


「何故こちらに聞くのですか?

 悪いのは、リリアンヌでしょう。ここは、リリアンヌたちが、リーナに危害を加え、断罪するための場所では?」


「そうですよ!私は、リリアンヌさまに、危うく殺されるかもしれなかったんですよ?

 私たちを責めるのは、違うと思います」


「――陛下、発言をよろしいでしょうか」

 

 それまで、黙って聞いていた、レイラが発言の許可を求めた。


「許す。ただし、程々にしろ」


「心得ております。――貴方たち、バカなんですか?」


「っは?」


「ひどいです!レイラさま、やっぱり私のこと、邪魔だと――」


 レイラの暴言に、レオンハルトは目をむき、リーナは涙目でレオンハルトに寄りかかる。

 しかし、レイラはあざ笑うように。


「誰も、ここがリリアンヌ様を断罪する場とは言っておりませんわよ?

 それに、ここにいる人間は、貴方たちの側近を抜かすと、クレーレの者であったり、親・リリアンヌ派の者です。

 分かりませんか?貴方がたが、守られていたことを。――リリアンヌさまによって」


「何を……?」


「まだわからないのか?」


 レオンハルトたちに、ハインリヒは、追い討ちをかけた。


「レイラ嬢の言う通り、お前は、リリアンヌと敵対することで、味方を得たんだ。

 ――だが、そのせいで、お前はとても愚かな、考えもしない息子になってしまったがな、レオンハルト」

ご読了有り難うございました。

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