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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
14/21

断罪の場は茶番と化す

 休日・祝日に集中して更新・不定期更新です。

「レイラ・テネレス、おまえのした、彼女に対する悪行は全て知っている。

 よって、おまえとの婚約を破棄する」

 その言葉を聞き、私は思った。


――あぁ、我らが王太子はやはりバカだなぁ、と。


「……めんどくさい」

「……何か言ったか?」

「いえ、何でも」

 何故私がこんな公の場でこんな辱めを受けなければならないのか。

 それは、殿下の腕にその細腕を絡め、べったりとくっついている、恥知らずな女のせいである。


 めんどくさい。本当に面倒くさい。

 さっさと終わらせてしまおう。

 やりたくないことは、さっさとやってしまうのが一番である。


「その理由、お聞かせ願えますか」


 私は完璧なアルカイックスマイルを浮かべて言った。


――私がそんなことされて、泣きつくとでも思ったのかな。


 もともと、王太子殿下との婚約は政略的なものだった。

 愛もないし、私は『影』を統括する公爵家の令嬢として、将来の国母となる予定だった。

 それでも、愛人のひとりやふたり、許そうと思っていた。側妃を娶るのだって、別に構わなかった。

 それを殿下に明言したし、あの娘にも普通に接していたはずだ。

 私は何もしていないし、あいつらが勝手に私に冤罪を吹っ掛けているだけだ。


「とぼけるつもりか?おまえは、彼女……リーナにわざとぶつかり、そのうえ、転んだ彼女を笑っただろう!」

「そんな醜い嫉妬をするなんて……テネレス公爵家も落ちぶれたものですね」

 王太子が言い、その側近が参戦する。確か、侯爵家のものだ。

「たかが侯爵令息が、公爵令嬢たる私に口出しするのですか?今の発言は我が公爵家への侮辱と受け取りますが」

「汚いですよ、レイラ・テネレス公爵令嬢」

 侯爵家の人間が、公爵家の人間を非難すれば、それ相応の罰が待っている。

 それも分からないのか、この無能共は。

「お言葉ですが、私はメーデル伯爵令嬢に対し、ぶつかっておりませんし、笑っておりません」

 それに――と、私はその続きを言う。

「そちらの方が、私に勝手にぶつかってきて、勝手に泣いて、勝手に去って、勝手に貴方に告げ口しただけですわ――嘘を」

 あのバカが言っているのは、恐らく学園でのことだ。

 私とリーナ・メーデル伯爵令嬢は、私と同じ学年。

 学園では、学力と魔法の技術がものを言う。それを総合し、高い順からクラスが決まり、一番上がAクラス、一番下がDクラスだ。

 彼女と私は、違うクラスで、自慢ではないが、私がAクラス、彼女はDクラスだった。

「それに、私は彼女をいじめるほど時間がありません。王妃教育に忙しいので。

 ついでと言っては何ですが、メーデル伯爵令嬢と私のクラスが全く違うこと、ご存知ですか」

「レイラさま……ひどい!私がDクラスだということを笑うんですか⁉

 確かに私は貧乏貴族でレイラさまのように賢くも、魔力の扱い方もうまくありません……けど、あなたより下の位だからといって、卑下するのは違うと思うんです……違いますか?」

「リーナ、おまえはなんて心が澄んでいるんだ……レイラとリーナが比べられるなんて、リーナに対しての侮辱だろう」

「レオン様……!」


 なんという茶番を見せつけられているのだろうか、私は。

 全く持って意味不明である。

 どこをどうすれば彼女の身分を卑下したことになるのだ。

 あのお花畑どもの頭の中を見てみたい。


「……えぇ、分かりました。婚約破棄の件、承りました。……廃嫡になっても、知りませんから」

「罪を認めるか。そしてお前は思った以上にバカだったみたいだな。私は王太子だ。次期王になる者であり、廃嫡はあり得ない」

「そうですよ!レオン様は王様の次に偉い方なんですよ!って、なに無視してるんですか⁉私の言うことなんて、聞く意味がないって言ってるんですか……?」

「いえ、今後の食料自給率と木材の自給率に関して考えていたところです」

「……?なんでそんな難しいこと言うんですか……?私にはレオン様の婚約者は務まらないって言ってるんですか……?ひどい……!」


 うざい。この上なくうざい。

 大体、何故そんなことになる。

 食料自給率と木材自給率の意味も分からないのか。

 あほかバカか、お花畑か。

 レイラは、前者ふたつだろうと見切りをつけた。


「とりあえず、今日は皆さんに失礼です。後で国王陛下を交えて相談しましょう」


 さて、レイラたちを遠巻きに見ていた下級貴族の令嬢たちは。

「ねぇっ、あれって……」

「うん!あの断罪パーティの再現じゃない!」

「殿下、かっこよかった!リーナさんもすごい役作りだった!」

「けど、再現にしてみてはレイラさんの悪役令嬢さがないよね」

「確かに……何があったんだろう?」

 芝居をしていると思い込んでいる令嬢たちは、その後、レイラとレオンハルトが本当に婚約破棄し、リーナとレオンハルトが婚約したと聞き、「芝居じゃなかったんだぁ」と、気落ちする。そして、「すっごい茶番だった!」と、後世に残る『ティメイア聖女伝』の記録に残ることになるのだが……これはまた、別の話。


 かくして、物語は進んでいくのであった。

 読んでくださり、ありがとうございました!

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