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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
13/21

悪逆王女と悪役令嬢

 本日より、更新ペースが遅くなります。(週二ぐらいになるかなぁ……)

 

「だ、だけど、そんなことする余裕なんてありませんわ……」

 執務室にて、リリアンヌは唸っていた。

 

 それもそのはず。

 ついさっき、リリアンヌは貧民街にて大口叩いてきてしまったのだから。

 その一件で、リリアンヌは周囲に『クレーレを守りたい聖女』認識されているのだが、根は『女狐リーナと王太子共に復讐したい偽善者』である。

 そんな彼女を『聖女』と呼ぶなんぞ、歴代の聖女たちに対しての不敬だろう。烏滸がましいにもほどがある。


 リリアンヌが考えていたのは、『どうやったら貧民街が救えるか』である。

 貧民街は、貧乏な人間が沢山いる場所だ。

 つまり、お金がないといけない。

 だが、その肝心のお金がないのがこのクレーレ領である。

 その資金調達をしなければならないところから始まる。

「と、とにかく目先の問題から解決せねば……ん?」

 リリアンヌの、「聖光」の魔力が、何かに反応した。


「な、何者ですの?」

 リリアンヌは、いつでも魔法をかけることができるように構える。

 その「何か」は、窓から入ってきた。

(人間……?まさか……)

「テネレス公爵家の、『影』ですね?何用ですか」

「何か」は、テネレス公爵令嬢、レイラ・テネレスが手紙を渡すために遣わした『影』であった。

 リリアンヌが手紙を受け取ることを確認すると、その『影』は、フッ……と、一瞬にして消えた。


「これは……お義姉様……ではなく、テネレス公爵令嬢から……」

 リリアンヌは、上等な紙でできた便箋の封を、ペーパーナイフで開けた。

「えぇと……一枚だけですの……?」

 おかしい。

 この国の手紙は、前置きだけでも、紙の半分は必要とする。

 一枚だけで済むのなんて、身内に対する簡易的な手紙か、紙が高価な平民同士のものだけだ。

 どんな親しい仲の貴族であっても、前置きは絶対に必要であり、なければ「礼儀がなっていない」とみなされる。

 だが、レイラの手紙に前置きはあった。そして、日付もあった。肝心の本文は……。

「なるべく早く、そちらに行く……?」

 意味が分からず、リリアンヌはその言葉を反芻した。そして……。

「テネレス公爵令嬢が、こちらに来るぅっ⁉」

 とてもまずい。本当にまずい。

 王太子の婚約者だった公爵令嬢が、貧乏領地のクレーレ領に来るのだ。

 しかも、領主は王太子の妹であった、左遷された元・王女。

 これは見ようによっては、「元・王女の貧乏領地の領主が、金持ちの公爵令嬢に寄生している」と、捉われるかもしれない。

「もぅっ!一度にふたつもみっつも問題がなだれ込んでくる……!」

「あのぉ、リリアンヌさま……」

「今度は何ですのっ⁉」

 あぁぁぁあああ、と己の不幸を嘆いていると、外からブレッドの声がした。

「レイラ・テネレス公爵令嬢がいらっしゃっておりまして……司書が対応しているのですが、相手が公爵令嬢ということもあり、恐縮しているのです……」

 早く来てくれ、と、ブレッドの副音声が聞こえたような気がした。

 というか、もう来たのか、というのがリリアンヌの感想だった。

 確か、手紙の日付は今日の昼ごろだったはずだ。今は、大体五時ぐらい。

 テネレス領はティメイア王国の西の方にあり、王都より遠い。

 一体どんな手を使って、ここまでたったの5時間で来たのか。

「……わかりました。すぐに行きますわ」


「お待たせしてしまい申し訳ございません、レイラ・テネレス公爵令嬢」

「いえ、こちらこそ急に来てしまって……ごめんなさいね」

 リリアンヌが応接間に着いた時、レイラは優雅にお茶を飲んでいた。

 こころなしかレイラの口調は軽く、昔のことを思い出す。

「ねぇ、リリアンヌさん、前みたいに話して下さらない?堅苦しくてよ」

「あら、よろしいのですか?では」


「本当に久しぶりですね、レイラお義姉様。お元気でしたか?」

「えぇ、リリアンヌさん。私は、あの王太子とその婚約者に、貴方同様、嵌められたわ」

「嵌められた……ですか、大丈夫ですか?」

「もともとあの王太子には何の情もなかったし……リリアンヌさんのような可愛い王女様の姉になれることぐらいかしら、アレの婚約者という立場は」

「まぁ、アレは今や周りが見えないただの小物ですからね。

 王になっても貴族たちの傀儡となることでしょう」

 世間話。

 本来ならば情報収集の会話だが、このふたりにはべつにそんなことをする理由がない。

 リリアンヌとレイラは、仲の良い友人であり、将来家族になる人だったのだ。

「そういえば……」

「何かしら?」

「アレが婚約破棄したのは、公の場所だと聞きました」

「……今、巷で流行っている『婚約破棄』の物語そのまんまだったわ。

 あぁゆうのって、本当にやる人がいるのね、側近の誰かか当事者ふたりがしようとしたのかしら。

 側近たちの婚約者さんも憤慨していたわ」

「あいつらは有能なのに、既に頭でっかちのお花畑野郎共ですから」

「ふふふ。言うわね」


 婚約破棄の物語とは、今市井で流行っている、身分差の恋の物語だ。

 ある国の王子と伯爵令嬢が身分差の恋をする。

 だが、悪役令嬢と呼ばれる王子の婚約者がその邪魔をするのだ。

 しかし、ふたりはそれを愛の力で乗り越え、悪役令嬢を夜会で婚約破棄し、主人公は王妃となる。


 この物語の王子はレオンハルト、主人公はリーナ、悪役令嬢をレイラに例える者たちが、リーナが王太子たちと仲良くし始めたときから多くいた。

 だが、他国の王子の婚約者たちからしてみれば、「ふざけんな!」と言いたくなるような物語である。

 それは、リリアンヌも同様であり。この物語を読んだとき、「ふざけんなっ!」と叫んでしまった。


「れ、レイラお義姉様。非常にお聞きしにくいのですが……」

「何かしら」

「そのとき、あいつらはどうでしたか?」

「あぁ、それは——」


「すっごく酷かったよ」


 第三者の声が、部屋中に響いた。

ご読了有り難うございました!

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