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悪逆王女の領地経営  作者: 天月 灯翠
領地救済編
1/21

プロローグ

 初投稿。温かい目で見ていただければ幸いです。

 リリアンヌ・クレア・ティメイアは、ティメイア王国の王女であり、王国一の美女である。プラチナブロンドの腰まで伸びた髪、宝玉のような碧い瞳。その瞳を縁取る睫毛は長く、唇はふっくらとピンク色に染まっていた。

 なかなかに頭もよく、一つ一つの動作は誰よりも美しい。家庭教師からは天才と呼ばれ、性格も穏やか。国民は彼女を天使と評していた。

 だが、そんな彼女は、ある日を境に「天使」から「悪魔」へと豹変する。

 

それは、リリアンヌ十三歳のことだった。

「今日はお兄様とお茶会ね。こんなふうに会うのは久しぶりだわ」

 彼女は、兄王子であり、王太子のレオンハルト・クレア・ティメイアが好きだ。いわゆるブラコンである。忙しい父と、早逝した母の代わりに遊んでくれたのは、家族の中で兄のみだった。ブラコンになるのも致し方ない。

 今日は、そんな兄とお茶会である。普段は裏庭で遊んでいたから、こうやってお茶会形式で会うのは、久しぶりだ。何かあるのだろう、とリリアンヌは推測していた。

 裏庭のガゼボで兄を待つ。その間に侍女たちがお菓子や食器の準備をし、リリアンヌがそれをボーっと見つめていた時だった。

(——っ!あれは……お兄様と……⁉)

 こちらへぞろぞろと、人々が歩いてきたのをリリアンヌは見つけた。その先頭には、レオンハルトがおり、王太子と王太子の側近たちだと分かる。だが、妙だ。

「どういうことですか、お兄様」

 リリアンヌは、こちらへきた兄に説明を求める。

「何が、だ。何も説明することはないだろう」

「あります。何故、お兄様は女性を連れているのですか⁉側近に女性はいませんよね?」

 リリアンヌが見たのは、側近たちの中に女性が紛れていることだった。

 基本、この国の王子に女性の側近はつかない。王太子となれば尚更。仕事が忙しい故に、側近が抜けるのは困るからである。

「あぁ、そうだな。側近の中に女性はいない」

「なら、何故……⁉お兄様にはレイラお義姉様という婚約者がいたはずです!」

「あれなら婚約破棄した」

「っ!」

 レオンハルトには、婚約者がいた。レイラ・テネレス公爵令嬢である。リリアンヌはブラコンだが、レイラのことは許していた。

「婚約破棄って……陛下が許したのですか?あれは王家にとっても、公爵家にとっても大事なもののはずです」

「……」

 レオンハルトは何も返さない。図星だろう、とリリアンヌは思った。

「で、その女性は誰なのですか?」

 もし、本当にレイラと兄が婚約破棄したのなら、レイラは傷物だ。この後、碌な縁談が来ないだろう。

 だが、そんなことより、と言ったら失礼だが、今はあの女性の方がリリアンヌにとって大事だった。一瞬、嫌な考えが脳裏をよぎったのだ。

「リリアンヌ、こちらはメーデル子爵家のご令嬢、リーナだ」

 十六歳ぐらいのその女性は、リリアンヌに頭を下げ、形式通りに挨拶をする。それにリリアンヌも軽く答え、兄に聞く。

「まさか、そちらのリーナさんを新たな婚約者にするおつもりですか」

 子爵家では、王妃になることなんてできない。どこかの家の養子になったら可能かもしれないが、それでも元子爵令嬢という身分は彼女に重くのしかかるだろう。それが、リリアンヌ頭に浮かんだ最悪の展開だ。そうならないでほしい、と思うものの、神は残酷なもので。

「さすがリリアンヌだな。そうだ。私はリーナ・メーデル子爵令嬢を新たな婚約者とする」

(嘘でしょ⁉あんなに仲が良かったレイラお義姉様とお兄様が……)

「認めませんよ、お兄様。今からでも間に合います!レイラお義姉様との婚約破棄を撤回してください!」

「駄目に決まってるだろう。陛下も祝福してくれたぞ」

「陛下が……⁉」

 ありえない。あの父が——王が、それを認めるなんて。だって、あの王は、家族よりも国を優先する人だ。それは、王の鑑とはいえるのかもしれないが、もう少し子供たちを慮ってほしい、とは思っていた。                                 

 だが、祝福してくれたなんて――明日は槍でも降るのだろうか。本当だったら、の話だが。

「ですが、それは王家が、レイラお義姉様を、ひいてはテネレス公爵家を蔑ろにしたと第三者の目から捉えられますよ!」

「王が許したのだ。その事実さえあればそれでいい」

 レオンハルトは、自分が滅茶苦茶なことを言っていることに気付いていないのか。いつもの彼らしくない、とリリアンヌは思った。

「とにかく、新たな婚約者はリーナだ。それには変わらない」

「……」

 リリアンヌは、もう何も答えなかった。もう、無駄だ。この兄は、こういうことには頑固だから。何を言っても聞かないだろう。「陛下が祝福してくれた」という口実で無視されるに違いない。

「まぁまぁ、レオン、リリアンヌちゃん。そうやって喧嘩せずに、穏やかにお茶を楽しみましょう」

 そこで口をはさんできたのは、リーナだった。ピンク色のボブカットを揺らし、紅茶の入ったポットを手に取る。その表情は、慈母のような笑みを浮かべていた。

 だが、それはリリアンヌから見たら勝手にお茶会の席に居座り、己の名を許されていないのに「ちゃん」付けして呼んだ、失礼極まりない女であった。

(こいつが……こいつがお兄様を誑かした……!)

 リリアンヌは、怒りで理性を失った。席に座ったリーナを睨みつけ、紅茶の入ったカップの取っ手を力強く握る。

「やっぱり王宮の紅茶は美味しいわね……あら?リリアンヌちゃん?どうしたの?」

 穏やかにお茶を嗜んでいたリーナが、リリアンヌの殺気に近い怒気に気付き、そちらを見る。それは、「王妃」という役職の重要さを分かっていない、何も知らぬ幼子のような明るい瞳だった。

 それが、リリアンヌを余計苛立たせた。

「あなたみたいな……」

「え?何?」

「あなたみたいな底辺貴族の小娘が、高貴なわたくしの名を呼んで許されると思っているわけっ⁉」

 リリアンヌはそう叫び、リーナにカップの中の紅茶をかけたのであった。

 そのあと、リリアンヌはレオンハルトの怒りを買い、幼い頃は国で一番の仲がいい兄妹だったふたりは、国で一番の仲が悪い兄妹となったのであった。


 その後も、リリアンヌはリーナに様々な嫌がらせをした。

 リーナが好きな本を隠したり、お茶会の時間をわざと遅くして教えたり。それぞれは些細なことだが、塵も積もれば山となる、ということわざがあるように、様々な嫌がらせは、全てレオンハルトに報告され、リリアンヌの身を滅ぼすことになったのであった。

 一方、リーナは城中の者を魅了し、誰もが彼女の味方となった。彼女は、リリアンヌの嫌がらせに屈しなかったと周りからは思われている。

 彼女の悪行は、リーナ付きの侍女から、城中へ、そして市井へと伝わり、彼女は「天使」から「悪魔」へとなったのである。それにより、リリアンヌの居場所はなくなった。勿論、レオンハルトたちも怒り、リリアンヌに罰を与えたのであった。

 そのことは、一部の者達を除いて皆願ったことであった。


「リリアンヌ・クレア・ティメイアをクレーレ領へ左遷する」

こちらもよろしくお願いいたします。

「悪役令嬢の本命は最恐最悪の大悪魔 (のチート)らしいです~婚約破棄された悪女のようですが、最凶家族+幼馴染と幸せになって良いですか?」

長ったらしい名前ですが、もし私の作品を気に入っていただけましたら、読んでいただければ嬉しいです。

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