ゆる神
〜
初詣
やりたい時が
初詣
〜
「ゆるい!」
草薙の声が響く。
蒼生大和の神社が祀る神が詠んだ俳句である。
「ゆるい神だな。神の風上にもおけん」
「それ詠んだのお主なんじゃがの」
「なぁに、些細な事だとも」
「そじゃろか?」
草薙と天代がゆるく話をする。
そして――
「主様!」
「天代様」
女達が並んだ。
「主様
「お主ら、実質とっくに詣でとるようなもんじゃけどな。長殿にたんまり奉じておったじゃろう」
天代がうむうむと言った。
「天代様。私め達の神は主様です」
「新春落ち着いた折、改めて、尊崇の礼を尽くしたいのです」
「長殿……お主……」
「ハーレム神じゃな!」
「王とお呼び!」
神は敷居が高い。
「えっ!? 長殿がそれいう」
「王とお呼び!!」
「あ、大事な事なんじゃな」
「ゆるく生きたいんだ」
「ふぉっふぉっふぉっ。風のように自由でけっこうじゃの」
穏やかな春の風が吹く。
(嵐の前の静けかね)
束の間の平和。だが
「――それもまた良し」
◆
「「「主様」」」
女達が、詣をする。
詣でをするのは――ある
蒼生大和の女達が丁寧に手順を踏む。
手酌で水を清める。
右手で柄尺を持つ。
左手を洗う。
左手で柄尺を持つ。
右手を洗う。
柄尺を右手に持ち替える。
左手に水を受ける。左手の水を 口に含む。
左手の手の平を洗う。
「……丁寧だな」
作法にのっとっている。
「ざっくりでいいぞ。
虚神、作法とか風習とか気にせんから」
「むむぅ、奉られてる本人がいうと説得力半端ないのぅ」
「只の日本人だとも」
「も、申し訳ありません主様」
「主様の気遣ってくださるのは嬉しいのですが」
「……わかった!!」
「いやまぁお主が言うならそりゃまぁいいんじゃろうが」
「きちんとやりたいならまぁ――それもまた良し」
「自由じゃの〜」
作法にこだわらない
逆にいうと作法を真面目に守るのも良しなのだ。
「自由やで」
◆
女達が詣でる。
女達が詣でるのは――主だった。
祈る。
一斉に。
一様に。
祈る美女軍団。
女達の祈りは一つだった。
一人の主への無事。
女達の祈りが主へ向けられる。
◆
「「ありがとうございました、主様」」
姿勢を正し、礼をする女達。
二拝ニ伯手一拝。
主を詣でる美女軍団。
それは尋常の光景ではなかった。
あまりにも官能的
一つの詣
一つの信仰
一つの――ハーレム。
それもまた良し。
引用
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