2話 ハルトは武錬科魔王学院に入学した 後編
更新が遅くすみません(´・ω・`)土日くらいしかないのよ時間が
自分は控え室を見渡す。様々な武器が立て掛けられた壁に、真ん中に一つだけある椅子が簡素であるな。
さて、まずはどう手加減しようか。自分は人間の頃よりも遥か高みに至っていることはわかる。以前なら3人がかりで四天王を倒していたが、今ならバアル四天王をまとめて相手しても、互角以上の戦いが可能だろう。つまりウルロア程度ならこのゼルを一振りするだけで真っ二つに出来る。たぶんそのままだと触れただけでもヤバい気がするので、予め手を打っておこう。
「ゼル、モード・ヒューマノイドに移行しろ」
「はーい、わぬしの言うとおりにー」
鞘から一人でにゼルが浮遊し強く輝くと、光は人形の形になっていき、収まる頃には黒いドレスを身に纏った少女がそこに立っていた。ゼルには性別という概念は無いが自分に気に入る、好みな姿がこの姿だそうだ。ほんと妹にそっくりだな・・・シスコンチガウヨー。
「ゼルセーマ、ヒューマノイドに変身完了したよー」
軽薄な口調で足を揃えて敬礼をして見せるよこの無性、まぁいいとりあえずは剣の件はどうにかなった。あとは壁に立て掛けられている平凡な剣を一本拝借して準備はできた。さてと・・・その前に壁の向こうで何が起きてるか確認をするか。自分は目に、相手の心が色でわかるようになる魔眼を移植しており、出口のある壁に目を向けると、魔眼を通してかなりの数の心が見えた。・・さて、耳を近づけて何があるのか確認と。
「さー!、我らが武錬科魔王学院のイチオシイベント、主席決定戦も残すところ後一試合!、どちらも今のところ最高の成績を叩き出した主席に1番近い二人!、え? 他の試合いらなくない?、細かいことは気にするな!、悪い言い方だと賑やかし、3位決定戦とかだけどそれはそれ。さぁまずはウルロア選手の入場だぁ!」
「おっと、そろそろ出ないとな。ゼルはここで待っていろ。なにすぐさ」
「おー、わぬし、楽しんでくるのだよー」
手を振って見送る少女姿のゼルを残し、自分は控え室を出た。その先にあったのはコロシアムまんまな形の試験会場であり、既に何百人もの観衆で埋めつくされた観客席の中、ゴーレム戦の跡が残る会場に自分とウルロアが相対して立っていた。相変わらず凄い形相で睨んでくるよこいつ、かなり嫌われているな自分。
「さー!、どちらもシュラア様の推薦にて選ばれた魔族!情報ではウルロア選手は狼人、そしてなんとあの百獣魔法を使うと書いております!」
ほう、百獣魔法か。その名の通り、あらゆる獣・・・ほとんどのやつは人間界の動物の特徴を増幅再現された魔力を身に纏って戦う、使い手があまりいない近接戦闘魔法。一部の人間、あるいは魔族は竜などの幻獣を扱えるらしく実際にこの目で見たことなんて指で数えれる程度。さてさてどうなることやら。
「対してラインハルト選手は元人間の竜人!
ただそれだけ書れております、これは期待ができますねぇ!」
「あのー、そこの実況席のあなたは誰だよ」
「申し遅れました!、私はエムシー・チムシー!、四腕魔であり、四天王親衛隊所属でこうやって実況するのが仕事の魔族です!」
チムシーと名乗った四腕魔は実況席から乗り上げ、マイクを握りしめながらヒーローっぽい、というかウサイ●ボルト的なポーズをとっている。しばらくしてまた椅子にすわり、どや顔を自分に向けてきた。なんか凄くうぜぇな。
「さて、それでは試合を初めていきましょう。両者構えて!」
お、始まるな。自分は剣を抜くとそのまま棒立ちで立ち、ウルロアは手に狼の再現魔力を纏わせ、腰を低くして構える。
(ガフフ・・・俺様のスピードは一気にマッハ2まで到達する。まず瞬き一回の間に後ろに回り込み、背後から切り裂く。これで終わりだ。ガフフ、俺様をなめたこと後悔させてやるわ)
「・・・さて」
自分は気配、というより敵意を探る。ほとんどのやつは好奇心や楽しいときにでる黄色の色をしている。観客席にはいないが、殺意や敵意を表す紅色が学院の外から一つ、高速で迫ってきている。だいたい2~3分でここに到着するなこれは。
「さぁ、最終試合━━レディゴー!」
「さぁ!い━━」
自分はウルロアが動く前に、つまりウルロアよりも更に速く動き、その死角から剣を首筋に触れさせた。
「さて、この状況ならお前はどうする?」
「━━━ありえん」
「でもこれが現実だ・・・あとさすがに気づけよ」
さて・・・まさか30秒そこらで到着か。学院の警備がザルということがわかったところで、自分はウルロアを蹴り飛ばす。直後にウルロアのいた場所に刀が刺さり、その柄に先ほどから感じていた者が降り立つ。黒で全身を包んだ服装に右目が隠れた姿はまさに忍者といった印象を受ける。
「・・・お前さんが元勇者だな。拙者はカナという、お命ちょうだい!」
「おいおいおい!、俺様を無視するな!」
蹴り飛ばされたウルロアが立ち上がって、カナという侵入者に襲いかかる。それをカナは華麗に避けるが、かすったのか口の布がとれて素顔が見える。人形のような美しい容姿だがその口角は鼻まで上がり、心も紅以外にポツポツと黄色が混じる。
「いいなお主、これならつまらない任務も楽しめるもんだ!」
「うるせぇ!、邪魔をするなよ人間がぁ!」
さて、二人が争っているうちにそこで口を開いて呆然としているエムシーに質問だな。
「おい、エムシー・チムシー。この場合試合はどうなる?」
「え?、あ、そうだね・・・どうしようか」
「自分に聞くなよ、はぁ・・・」
少しの間目を離していると、カナは刺さっていた刀を抜いて今、両足を折られているウルロアに降り下ろそうとしていた。
「くそう・・くそ、俺様もここまでか」
「ははは、なかなか楽しめたよ魔族・・・終わりだ!」
「あ、さすがにストップな」
自分はウルロアに向けて振り下ろされた刀を素手で掴み、そのまま砕いた。人の頃だと掴めたとしても砕くとまではいかなかったが、ほんといろいろと強化されているんだな。
「・・・おぬし」
カナは自分をターゲットに連続で蹴りと拳を叩き込んできたが、自分は苦もなく全て受け止めた。欠伸が出るな。
「ほう、拙者の攻撃をここまで防げたのはおぬしが初めてだよ・・・はは!」
「逃げろ!ラインハルト!、貴様でもこいつには勝てん!」
「へー、それは楽しみだな」
「ククク・・くらうがいい!、拙者の奥義を!」
カナはまるで何人も増えたかと思えるくらい残像を増やしていき、自分を囲うほどとなっていく、へーこんなに増やせるもんなのか。
「奥義!業連乱舞」
袖から小刀を取り出し握ると、一斉に残像含め自分に襲いかかる・・・うむ、
「うん、お前もう死んで良いぞ」
自分は魔眼で心が見えるわけで、それを使えばどれが本体かわかるわけだ。自分は本体の心臓辺りを剣で突くと、残像が消えてカナは血を吐く・・が、何故か絶命せずそのまま自分の剣を握りしめて折った。そのままカナは後退して刺さっている剣の刃を抜くと、みるみる傷が塞がっていく。
「はぁ・・はぁ、くっ・・・次は負けんぞ!、また強くなって戻ってくるからな!」
「あ、その前にお前って━━」
こちらが話を聞く間もないうちに、カナは凄まじい速度でこの場から去った。他の者には転移のように見えるだろう。
「いってしまった・・・まぁいいかまた会えるみたいだし、その前に・・・エムシー・チムシー、ここの医務室ってどこ?」
「え?、あ、ここから南方にあります。看板もあるんでわかるかと」
「そうか、それじゃあ運ぶか」
自分は息も絶え絶えなウルロアを背負い、医務室に向かって翼を広げて飛んでいった。